著者
井関 貴博
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.e11-e17, 2023 (Released:2023-03-23)
参考文献数
13

本稿は、大学の授業で電子教科書をバンドル型ライセンスモデルで利用した実験の報告である。近年、大学の授業は専門書などの教科書に代わり、書籍の一部複製や教員自作スライドを教材とする傾向にある。その場合、著作権法に抵触する懸念と教科書離れによる出版社の収益悪化から、ひいては大学が不利益を被る可能性がある。この問題の対策として、教員希望の複数の電子教科書を利活用できるバンドル型ライセンスモデルを試みた。延べ8つの授業で実験の結果2授業は本採用に至り、利用モデルの可能性が確認できた。
著者
中村 覚
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.348-351, 2020-10-01 (Released:2020-11-16)
参考文献数
9

日本国内では、国の分野横断型統合ポータルである「ジャパンサーチ」が公開され、国内の多様なデジタルコンテンツに対するアクセスが容易となりつつある。一方、国外の機関が所蔵・公開する日本文化に関するデータの発見可能性は十分に高くない。そこで筆者らはIIIF/RDFなどのデータ相互運用技術を活用して、世界中の機関が公開する日本文化に関するデータを収集し、それらの発見可能性を高める仕組みである「Cultural Japan」の構築を行っている。本研究ではこの構築において、特に「ジャパンサーチ利活用スキーマ」の利用について述べる。本研究が、他のプロジェクト等での「ジャパンサーチ利活用スキーマ」の利用における参考事例となることを目指す。
著者
細矢 剛 神保 宇嗣
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.159-162, 2022-11-01 (Released:2023-01-05)
参考文献数
18

自然史データの代表として生物多様性情報をとりあげ、その基盤となる標本情報の集積・利用上の課題を議論した。国立科学博物館においては、館内のデータ管理には「標本・資料統合データベース」が、国内の自然史博物館のデータの集積を目的として「サイエンスミュージアムネット(S-Net)」がある。両者のシステム導入とデータの長期保管・長期利用における課題をスペック、仕様書、長期の維持と保証、データフォーマットとデータ移行の点から比較した。これらの観点に加え、今後は外部連携・セキュリティなどが評価できる人材の育成や、システム構築のノウハウ共有が大切である。
著者
橋詰 知輝
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s2, pp.s153-s156, 2021 (Released:2021-12-10)
参考文献数
4

祭りや信仰、日々の衣食住など、生活の中で繰り広げられる森羅万象について、ある地域ごとにまとめて写真で記録し、保存しておくことは、そこでの人々の生活についての可視化されたデータの集積(アーカイブ)となる。こうした写真を人知れず撮影し続けている人は少なくないが、日の目を見ることが少ないのが現状である。また、彼ら/彼女らの写真は、一般的な行政等の記録写真や、それ一点で作品となるようなアート寄りの写真、そしてハレの日の集合写真などに対して、写真の一枚一枚がより素朴に撮影され、かつ人々の生活に近づいていることから、肖像権といった形での問題が立ち現れることが多く、他とは切り分けて考えるべきだと考える。そこで、本論ではそれらを「生活写真」と名付け、その利用の現状や保存手法などを特定地域(県)に限定して調査したうえで、こうした問題に対応した、新たなアーカイブ実践を試みたものである。
著者
前川 道博
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s3, pp.s162-s165, 2022 (Released:2022-11-02)
参考文献数
9

全国の学校でGIGAスクールが実施されながら、学校で地域学習を計画しようとすると、地域を知る情報源がネット上には極めて少ないことが直ちに顕在化する。特に学校区の情報源は殆どの地域においても存在しないと言って過言ではない。さらには地域資料があっても、教員の経験不足等の理由によりその活用が図りにくい課題がある。以上の課題を解決するため、これからの学校教育に求められる児童生徒の主体的で探求的な学びを包摂的に支援できる分散型デジタルコモンズサービスd-commons.netを用いた「d-commonsメソッド」により、校内資料のデジタルアーカイブ構築に取り組んだ。校内資料のデジタル化は「やればできる」ことなのに、学校現場ではその課題の気づきや実践が行えない壁がある。その壁を取り除き、DX時代にふさわしい地域学習の環境づくりが全国の学校で進んでいくことを期待したい。
著者
宮本 聖二
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.312-317, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
5

テレビの放送が始まって65年、各テレビ局と「放送番組センター」は大量の番組や映像素材を積み上げてきた。それらの番組や映像は、私たちの社会の移り変わりを記録してきた貴重な公共資産と言える。また、ビデオテープやフィルムからのデジタル化も進められている。そのアーカイブコンテンツの保管から、公開、利用、活用についてNHK、民放、放送番組センターがどんな取り組みを進めているのか調査した。筆者は、様々な方法で放送コンテンツの公開や利活用が積極的に進められるべきだと考えるが実際には思ったように実現していない。保存や公開の現状と、アーカイブコンテンツの公開性を確保するためにどんな課題あるのかを報告する。
著者
美馬 秀樹 中村 覚 中澤 敏明
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.127-130, 2022-08-01 (Released:2022-10-05)
参考文献数
5

本稿では、ビヨンドブック(以下、BBと略)機能を支える要素技術の設計と開発について述べる。BBのプロトタイプ制作にあたっては、必要な要素技術について検討を行い、実験、評価を目的として可能なものの実装を進めた。具体的には、1)コレクション機能、2)カテゴライズ機能、3)テーマ抽出機能、4)マイクロコンテンツの最適配置機能、5)コンテンツ間のリンク推定機能、6)インターネット情報の取り込み機能、7)翻訳/著者と読者の共同編集機能、及び8)ユーザーアクションからの自動知識獲得機能、が挙げられる。これらの技術はいずれもデジタルアーカイブ全体の機能向上に役立つことを念頭において設計し、開発を進めたものである。
著者
大髙 崇
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s2, pp.s86-s90, 2022 (Released:2022-06-13)
参考文献数
2

放送局がアーカイブとして保存する放送済みの番組の大半が「死蔵」状態にある。また、ICT活用が進む教育現場からは、放送アーカイブの授業での活用を望む声が多い。このため本稿では、著作権法に新たな権利制限規定を設ける私案を設定し、検討する。著作権法35条と授業目的公衆送信補償金制度に基づき、31条3項の国会図書館による「絶版等資料」の公衆送信の規定と運用を参照しながら、市場に流通していない放送アーカイブをアウトオブコマース(OoC)と仮定し、各番組に関わる権利者の許諾なく、授業等での利用に限定した配信を行えるという私案である。「死蔵」状態の放送アーカイブは事実上、OoCの定義に適い、私案はスリーステップテストにも適合することを確認した。私案の実現によって期待される効果と求められる取り組み、また、拡大集中許諾制度などの可能性と課題を示した。
著者
黒橋 禎夫
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.s1, pp.s23-s24, 2022-06-01 (Released:2022-05-28)
参考文献数
1
著者
向井 紀子 高橋 良平 中川 紗央里
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.333-337, 2020-10-01 (Released:2020-11-16)
参考文献数
10

「ジャパンサーチ」は、我が国が保有する多様なコンテンツのメタデータを検索できる国の分野横断型統合ポータルである。内閣府をはじめとする関係府省及び国の主要なアーカイブ機関等と連携・協力し、国立国会図書館が中心となって2017年から構築を進め、2019年2月の試験版公開を経て、2020年8月の正式版公開に至った。本稿では、まずジャパンサーチに登録されているメタデータについて、分野別、権利区分別等の状況を分析することで、ジャパンサーチで検索可能なコンテンツの内容等を概観する。続いて、ジャパンサーチとアーカイブ機関との連携の現状を紹介した上で、今後の連携拡大に向けて目指す方向性などを示す。