著者
大類 洋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 58 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral31, 2016 (Released:2019-10-01)

HIV感染(エイズ)は作用機序が異なる複数の薬を併用するHAARTが開発され致死から臨床的に処置が可能な長期感染症となっている。しかし、現在のHAARTには依然として耐性HIVの発現や、毎日飲まねばならない複数の薬の副作用などの問題点があり、より優れた薬剤の開発が望まれている。演者は耐性HIVを発現させないヌクレオシド薬の創製を考えている間に、ウイルスが薬剤耐性を獲得する突然変異が抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の鍵であることに気付き “抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の為の基本概念” を提出した。更に、HAARTの問題点を解決出来る修飾ヌクレオシドの分子設計の為に4つの作業仮説を立てその検証する研究を行い非常に優れた抗HIV活性を持つEFdA(4’-ethynyl-2-fluoro-2’-deoxyadenosine、表1)を創製した1)ので報告させて頂く。 抗ウイルス活性修飾ヌクレオシド創製の為の基本概念2)ウイルスは突然変異して薬剤耐性を獲得するので“ウイルス感染症の治療は難しい!”と考えられている。しかし、演者は“突然変異は優れた抗ウイルス活性を持つ修飾ヌクレオシド薬創製の為にある事象である”と考えている。即ち、“突然変異とはウイルスがA:T,G:Cのペアリングを無視し設計されていないヌクレオシドを取り込んで遺伝子を変えることである。これはウイルスの核酸合成酵素の基質選択性が非常に甘いことを示している。一方、人はその様なことをしない。これは人の核酸合成酵素の基質選択性が非常に厳格であることを示している。この基質選択性の違いを利用すれば、ウイルスの核酸合成酵素の基質となり(ウイルスに活性)、人の核酸合成酵素の基質とならない(人には低毒性)修飾ヌクレオシドの創製が可能である。” HAARTの問題点を解決する為の4つの作業仮説1)① ヌクレオシド薬に耐性HIVを発現させない方法 図1現在臨床に用いられている逆転写酵素(RT)阻害ヌクレオシド薬は全て2’,3’-dideoxynunucleoside(ddN)誘導体であり、“ddN構造はヌクレオシドがRTのチェインーターミネーター(CT)になる為に必須である”と考えられていた。しかし、全てのddN薬に短期間で容易に耐性HIVが発現した。演者は“耐性とはHIVがddNを生理的2’-deoxunucleoside(dN)と識別しddNをRTの活性中心に取り込まない能力を獲得したことである”と考えた。dNとddNの構造の違いは3’-OHを持つか否かであるので “HIVは3’-OHの有無で両者を識別している”と考えた。それ故、耐性HIVを発現させない修飾ヌクレオシドは“HIVによってdNと識別されないように3’-OHを持たなければならない、しかも3’-OHを持ちながらRTのCTと成らなければならない”と考えた。その目的を達成出来るヌクレオシドとして4’-位に置換基を持つ4‘-substituted- 2-deoxynucleoside(4’SdN)を設計した(図1)。その理由は“4’-位に置換基を導入すると3’-OHは反応性が非常に低いネオペンチル型2級水酸基となるのでこのOH基は認識には使えてもRTによるウイルスのDNA鎖延長反応には使えない”と考えた為である。しかし、RTが4’SdNを基質として受け入れて4’SdN(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
丸田 聡 山岡 薫 大越 夏実 山下 まり
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 49 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.443-448, 2007-08-24 (Released:2017-08-18)

Tetrodotoxin (TTX) and saxitoxin (STX) bind to a single site in the outer pore of the voltage-gated sodium channels (Na_vs), formed by the amino-acid residues in the outer-pore loops (p-loops) located between the S5 and S6 segments of each of the homologous domain (I-IV) of the a-subunit. Since puffer fish and newts accumulate TTX at high concentration in their tissues, they are thought to have special defense systems against their own TTX. We previously obtained a cDNA encoding Na_v from Fugu pardalis skeletal muscle (fMNa1=fNav1.4a). In fNav1.4a protein, the aromatic amino acid in p-loop region of Domain I in TTX-sensitive Nays was replaced by Asn. Also, Kaneko et al. reported that similar mutation was found in Na_v of retinal neuron of the newt, Cynops pyrrhogaster. In this study, we confirmed that these mutations are responsible to TTX-resistance of puffer fish and newts by evaluation of IC_<50>-TTX values of the corresponding mutants of rNav1.2a transiently expressed in HEK293 cells by electrophysiological study.
著者
渡邉 瑞貴 領田 優太 浅野 理沙 Khamb Bilon 薄田 晃佑 飯田 圭介 岩田 淳 佐藤 慎一 酒井 寿郎 長澤 和夫 上杉 志成
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral15, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 背景 現代人を悩ます生活習慣病の一つ、脂質異常症(高脂血症)は肥満など多くの疾病の起因となる。それら多数の疾病の予防・治療のためにも、脂質生合成機構の制御と解析は重要な課題である。 脂質生合成において、転写調節因子SREBP(Sterol regulatory element- binding protein)は中心的な役割を担う(図1)1。小胞体膜貫通型タンパク質として存在する前駆体SREBPは、キャリアータンパク質SCAP(SREBP cleavage-activating protein)と複合体を形成している。この複合体は、脂質レベルが低下すると小胞体からゴルジ体に輸送される。ゴルジ体において前駆体SREBPは酵素による二度の切断を受けて活性型となる。活性型SREBPは核に移行し、転写因子として脂質生合成に関する遺伝子群の発現を亢進する。ステロールや脂肪酸などの脂質類が産生される。 SREBPの活性化は内因性物質であるステロールによって厳密に制御されている。ステロール過多になると、ステロールはSCAPに直接作用し、SREBP/SCAP複合体の小胞体からゴルジ体への輸送を阻害する。脂質生合成は種々の複雑な制御を受けることが知られており、ステロール以外の内因性物質による直接的なSREBP活性化調節機構の存在が予想される。しかし、その詳細は未だ不明な点が残る。 私たちの研究室が化合物ライブラリーから見出した合成小分子ファトスタチン(1, 図2)は、ヒト細胞内でSREBPの活性化を選択的に阻害して脂質生合成を抑制する2,3。ファトスタチンは、SREBP活性化を阻害する初めての非ステロール合成化合物となった。さらに私たちの研究室は、ファトスタチンを誘導体展開し、ファトスタチンよりも10倍阻害活性に優れ、経口投与可能なFGH10019(2)も報告した4。一連のケミカルバイオロジー研究によって、ファトスタチンはステロールと同じSCAPを直接の生体内標的とするが、ステロールとは異なる部位に作用することを示した。この結果は、ファトスタチン様に作用する、ステロール以外の内因性物質の存在の可能性を示唆する。2. 新たなSREBP制御天然化合物の発見 以上をふまえ私たちは、SREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、280種の脂質化合物を新たにスクリーニングした。その結果、細胞内でSREBPの活性化を阻害する複数の内因性脂質化合物が見出された。これら見出された化合物類は、濃度依存的にSREBPの活性化を阻害することがわかった。さらに、ある一連の内因性天然脂質化合物類は、ステロールと同様にSREBPの小胞体からゴルジ体への輸送段階で活性化を阻害するが、その作用メカニズムはステロールと異なることが示唆された(図3)。CHO-K1細胞をステロールで処理すると活性型SREBPが消失し、前駆体SREBPが蓄積する。一方、内因性天然脂質化合物Aで処理すると、活性型および前駆体両方のSREBPが減少した。これら新たに見出した内因性脂質化合物類とSREBPとの直接的な関係について、現在のところ報告はない。これら脂質化合物はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。3. SREBP制御天然化合物の作用メカニズムの解明研究 スクリーニング(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
畑中 顯和 梶原 忠彦 関谷 次郎
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 22 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.657-664, 1979-09-20 (Released:2017-08-18)

Endogenous linolenic acid in Thea chloroplasts is cleaved into cis-3-hexenal and 11-formyl-cis-9-undecenoic acid via a very labile intermediate by E_2 of an enzyme system E_2 (E_2 and E'_2+E"_2) bound to the lamellae membranes of chloroplasts under aerobic condition. On the other hand, in external addition of a large amount of linoleic acid to chloroplasts, E'_2 and E"_2 activities newly are induced in addition to E_2 activity, and E'_2 catalyzes the formation of 13-Hydroperoxide and then it was cleaved to n-hexanal by E"_2. The substrate specificity of the enzyme system E_2 in Thea chloroplasts was clarified with an entire series of synthesized positional isomers, in which the position of cis-1,cis-4-pentadiene system varies from C-3 to C-13 in C_<18> fatty acid and geometrical isomers of linoleic acid. The structural requirement for the substrate of E_2 is the presence of cis-1,cis-4-pentadiene system between ω-6 and ω-10. The enantiomeric composition of the 13-Hydroperoxide produced by E'_2 was determined by GLC and NMR analysis: After a large amount of linoleic acid was incubated with tea chloroplasts, a mixture of hydroperoxides (13-hydroperoxy-cis-9,trans-11-/9-hydroperoxy-trans-10,cis-12-octadecadienoic acid=84/16: crude-I) was isolated. The major hydroperoxide of the crude-I was identified as 13-L-hydroperoxy-cis-9,trans-11-octadecadienoic acid (80) containing a small amount of its enantiomer(13-D=20). So, it was demonstrated that E'_2in Tea chloroplasts catalyzes the stereospecific oxygenation of linoleic acid to the 13-L-hydroperoxide.
著者
三島 鮎美 高橋 裕美 奥 尚枝 松野 純男 十万 佐知子 中林 利克 石黒 京子
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 47 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.541-546, 2005-09-15 (Released:2017-08-18)

The petal of Hibiscus mutabilis L. f. versicolor MAKINO shows a white color after the flowering, and it gradually changes in the red. Though it is reported that the color changes are due to the storage of the anthocyanin in the petal vacuole, the mechanism has not been clarified. Thus, the mechanism of the color change was elucidated by expression analysis of mRNA of anthocyanidin synthetase (ANS) in the petal. Extraction and purification of mRNA: petals of white, pink and red organization of freezed fresh H. mutabilis were crushed in the liquid nitrogen and total RNA was extracted using the CTAB method, followed by the refinement of each mRNA by Purification Kit (TaKaRa). The several kinds of primer of actin and ANS were designed from the homology with other plants respectively and then RT-PCR was done using these primers. On cDNA fragment amplified by RT-PCR, the base sequence was analyzed by the conventional mannner. Using the primer which efficiently amplified the cDNA fragment, the expression of mRNA of the ANS with the change of the flower color was examined by RT-PCR. The amplified fragment of about 600bps was assigned to that of actin and the amplified fragment of about 500bps expressed only in the deep red petal was assigned to that of the ANS of H. mutabilis, referring to the sequence of actin and the ANS respectively. The amino acid sequence of mRNA of actin of H. mutabilis showed a homology over 91% with those of the other type plant and that of the ANS showed a homology over 82%. The expression level of mRNA of the ANS was consistent with the increase in the deep red from the white color. Furthermore, the color change was dependent on temperature but not the light.
著者
山田 諒介 安達 庸平 横島 聡 福山 透
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral3, 2015 (Released:2018-10-01)

1. 背景 ダフェニリン(1)は、ユズリハ属植物であるDaphniphyllum loungerasemosumの果実より単離されたダフニフィラムアルカロイドの一種である1。このアルカロイド群には、抗HIV活性やマウス腫瘍細胞に対する細胞毒性などの生物活性を有するものが知られており2、1に関しても有用な生物活性が期待される。しかし、現在までに十分な生物活性評価はなされておらず、その生物活性は不明である。一方で、1の構造的特徴としては、6つの不斉中心を含む複雑な六環性骨格を有していることが挙げられる。さらに、他のダフニフィラムアルカロイドにはない芳香環を有しており、合成化学的に興味深い化合物である。今回我々は独自の合成戦略に基づき、効率的な合成経路の確立を目的として、1の合成に着手した。2. 合成計画 まず我々は、芳香環を含むDEF環に着目し、本三環性骨格の立体配座について考察を行うこととした。そこで、D環内にAC環構築の足がかりとなる二重結合を有するモデル化合物2を用いて配座解析を行い、最安定配座を求めた。その結果、C5位メチル基はC10位不斉炭素上の水素原子と同一方向に配向していることが示唆された。C10位不斉中心より誘起された三環性構造の立体的特性を利用し、残る不斉中心を構築できるのではないかと考え、逆合成解析を行った。 ダフェニリンの有するABC環部位は、合成終盤において3のような環状アゾメチンイリドからの分子内1,3-双極子付加環化反応により一挙に構築することとした。3はアルデヒド4より導くこととし、さらにこのアルデヒドの有するC2位不斉中心は、[3,3]シグマトロピー転位により制御できるものと考え、5へと逆合成した。この2つの反応における面選択性は、先程考察した三環性構造の立体的特性により制御できるものと期待した。続いて、5は三環性化合物6に対して増炭を行うことで容易に合成可能である。まずはラセミ体での全合成を目指し、文献既知の三環性ケトン73より合成を開始することとした。3. [3,3]シグマトロピー転位前駆体の合成 まず、インデン8を出発原料として文献既知法に従い三環性ケトン7へと導いた(Scheme 1)。続いて、位置選択的なC-H酸化反応4によりC1位に炭素ユニット導入の足がかりとなる水酸基を導入した後、ケトンへのメチル基の付加と位置選択的な脱水、続くフェノール性水酸基のトリフラート化によって11とした。つぎに、薗頭カップリングにより炭素ユニットを導入後、三重結合部位をRed-AlRまたは、Lindlar触媒により部分還元することで、EもしくはZ体のアリルアルコール13a,bを合成した。次に、それぞれのアリルアルコールをビニルエーテル化することで14a,bとした。 4. C2位不斉中心の構築 得られたビニルエーテルに対して、トリイソブチルアルミニウムをルイス酸としたClaisen転位5の検討を行った(Table 1)。はじめにE体の14aを用いたところ、反応は円滑に進行したものの、新たに形成されるC2位不斉中心の立体選択性は、2:1と乏しかった(entry 1)。次に、Z体の14bを用いたとこ(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
尾山 公一 山田 智美 伊藤 大輔 渡邉 紀之 関口 由紀子 鈴木 昌子 近藤 忠雄 吉田 久美
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP61, 2015 (Released:2018-10-01)

【緒言】我々は、アジサイの花色変異の現象に興味を持ち研究を行っている。一細胞分析により、アントシアニンのdelphinidin 3-O-glucoside (1)が、助色素(5-O-caffeoylquinic acid (neochlorogenic acid (2))、5-O-p-coumaroylquinic acid (3)、3-O-caffeoylquinic acid (chlorogenic acid (4))の組成比、液胞pH、及びAl3+量の違いによって多彩に赤から紫、青に発色をすることを明らかにした (Figure 1) 1-3。アジサイの青色は、pH 4の条件下、1、2または3及びAl3+を混合すると再現できることがわかった4,5。この青色色素は、水溶液中だけで安定に形成される金属錯体で、ツユクサなどに見いだされた自己組織化超分子金属錯体色素(メタロアントシアニン)とは全く異なる性質を持つ非化学量論量の分子会合錯体である。これまで、結晶化の成功例はなく、1H NMRスペクトルもブロードで複雑なため、構造は今も不明である。本研究では、5-O-アシル化キナ酸類の効率的合成方法を新たに開発した。次に、合成した助色素を用いて青色色素を再構築し、解析可能なNMRスペクトルを得ることに成功した。【5-O-アシル化キナ酸類の効率的合成法の開拓】従来の2と3の合成4-6では、1位のカルボン酸の保護基にメチル基を用い、アシル基のフェノールの保護基にアセチル基を使用しているために、最終ステップの脱保護反応で競争的脱アシル化反応とアシル転移が起こり、収率が著しく低かった。また、5位へのエステル化は酸クロリドを用いていた。そこで、合成経路を見直し、1位のカルボン酸の保護基としてPMB基を持つキナ酸誘導体5を新たに分子設計して、Scheme 1に示すように(–)-キナ酸 (4) から5段階79%で合成した。5の5位アキシアルヒドロキシ基へのアシル化反応は、遊離カルボン酸にTsClとN-メチルイミダゾール (NMI)を加えてアシルアンモニウム中間体を生成させて、そこへアルコールを反応させる田辺法7を検討した。i-Pr2NEtの添加によりアルコールとカルボン酸の求核性が上がり収率が向上した(Scheme 2)。また、アンモニウム中間体の生成と同時にアルコール5が本中間体をトラップすることを目指してNMIを最後に加えた。その結果、収率はさらに向上した(Scheme 2)。この改良法を用いてp-クマル酸やコーヒー酸などの種々の遊離カルボン酸のエステル化反応を行い、72–94%の高収率で6-12を得た (Scheme 3)。得られたアシル体6-11の脱保護反応を検討した(Table 1)。芳香環部分に酸素原子のない6-9では、いずれも高収率(79-87%)で目的のアシル化キナ酸を得た。しかし、フェノール性ヒドロキシ基をMOM保護した10と11では、収率は40%以下と低かった。種々検討した結果、BCl3/C6HMe5を作用させると高収率(69,73%)で脱保護体が得られた 8。これらにより、市販のキナ酸(4)から7段階、通算収率45–60%で種々の5-O-アシル化キナ酸類の合成を達成した9,10。【アジサイ青色金属錯体色素の化学構造】合成した助色素類を用いて、アジサイ萼片の青色再現実験と得られた溶液の可視吸収スペクトル、円二色性、およびNMR分析を行った。これまでの知見により1-5、(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
松田 侑大 淡川 孝義 脇本 敏幸 阿部 郁朗
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral33, 2013 (Released:2018-03-09)

1. はじめに メロテルペノイドとはテルペノイド骨格を部分構造として有する化合物の総称である1。特に糸状菌からは、コレステロール低下剤として臨床応用が期待されるpyripyropene A2や、その誘導体が免疫抑制剤として用いられるmycophenolic acid3を始めとして、構造多様性ならびに生物活性に富むメロテルペノイドが報告されている(Figure 1)。したがって、その生合成遺伝子の解明や生合成酵素の機能解析は、今後の創薬を指向した物質生産において重要である。 Figure 1. 代表的な糸状菌メロテルペノイド 糸状菌メロテルペノイドのうち、3,5-dimethylorsellinic acid(DMOA)を共通中間体とするメロテルペノイドにはとりわけ多様な骨格が知られている。Terretonin4、austinol5、andrastin A6は、いずれも共通中間体であるDMOAおよびファルネシル二リン酸に由来するが、テルペノイド部位の環化様式や閉環後の種々の修飾反応の多様性によって、これら化合物群の構造多様性が生み出される。当研究室ではこれまでに、terretoninの生合成遺伝子クラスターを同定し、その生合成経路の最初の5つの反応を異種糸状菌にて再構築するとともに、生合成に関わるテルペン環化酵素(Trt1)の同定に成功している7, 8。すなわち、本生合成経路においては、ポリケタイド合成酵素(PKS、Trt4)、プレニル基転移酵素(PT、Trt2)、メチル基転移酵素(MT、Trt5)、フラビン依存型酸化酵素(FMO、Trt8)、ならびに、Trt1により環化体preterretonin Aが生成する(Figure 2)。興味深いことに、Trt1はepoxyfarnesyl-DMOA methyl esterのみを基質として受容し、そのカルボン酸体からは環化産物を与えない。Figure 2. Terretoninの生合成経路 今回我々は、DMOA由来メロテルペノイドの構造多様性を生み出す酵素群についてさらなる知見を得るべく、Trt1とは閉環様式を異にする環化酵素や、閉環後の修飾反応に関わる酵素群の探索ならびに機能解析を行うこととした。2. テルペン環化酵素群の機能解析 新規活性を有するテルペン環化酵素を探索すべく、Trt1とは閉環様式を異にする環化酵素の生合成への関与が予想されるaustinolおよびandrastin Aに着目した。Austinol生合成に関しては、すでにAspergillus nidulansのゲノムデータベースより生合成遺伝子クラスターが同定され、ausLと命名された遺伝子が環化酵素をコードすると推定されているが、その詳細な機能は不明であった9。一方、andrastin A生合成に関しては、これまでに生合成遺伝子の報告はなかったため、andrastin類の生産が報告されている糸状菌種のうち、ゲノム情報が公開されているPenicillium chrysogenumのゲノムデータベース中に生合成遺伝子群を探索した。その結果、11遺伝子からなる推定生合成遺伝子クラスターを見出し、環化酵素をコードすると予想した遺伝子をadrIと命名した。次いで、Trt1に代えてAusLまたはAdrIを発現する5遺伝子発現系を異種糸状菌Aspergillus oryzaeにて構築したところ、それぞれ異なる閉環産物protoaustinoid A(1)およびandrastin E(2)を生成した(Figure 3)。AusLおよびAdrIによる閉(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
どど 孝介 高橋 正人 山田 雄次 杉本 芳一 橋本 祐一 白井 隆一
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 42 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.667-672, 2000-10-01 (Released:2017-08-18)

Dysidiolide (1), a novel sesterterpene from the Caribbean marine sponge Dysidea etheria de Laubenfels, inhibits the protein phophatase cdc25A (IC_<50>=9.4μM) that promotes the Gl/S transition of the cell cycle by dephosphorylation of the cyclin/CDK complex. Cdc25A is known to be oncogenic and overexpressed in a number of tumor cell lines. Therefore, cdc25A inhibitor dysidiolide is regarded as a novel candidate agent for the treatment of cancer and other proliferative diseases. Although some groups accomplished total synthesis of dysidiolide, a synthetic approach to its struture-activity relationship has not been reported yet. We developed an efficient synthetic route to dysidiolide and its analogs in order to investigate the structure-activity relationship. The retrosynthetic analysis is shown in scheme 1. The octalin framework was constructed by intermolecular Diels-Alder reaction of the chiral triene (5) with crotonaldehyde (scheme 3). Subsequently, the quaternary center at C6 was created by methylation of the exocyclic enolate (scheme 4). Finally, the γ-hydroxybutenolide residue was introduced by addition of 3-furyllithium to the aldehyde (2) and successive photochemical oxidation of the furan ring. A series of dysidiolide analogs were synthesized according to the same procedures. To investigate the structure-activity relationship of dysidiolide, dysidiolide and its analogs were examined for cdc25A/B inhibitory activity and antiproliferative activity (table1). Searching for simple and strong cdc25A inhibitors, we designed and synthesized novel cdc25A inhibitors using Windaus-Grundmann ketone derived from Vitamin D3 (figure 1, table 2). Finally, to comfirm the effect of cdc25A inhibitors on cell cycle progression, cell cycle analysis was performed (figure 2).
著者
保野 陽子 品田 哲郎 大船 泰史
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 55 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP-23, 2013 (Released:2018-03-09)

【緒言】 ホモプシン類は、カビの一種Diaporthe toxica(以前はPhomopsis leptostromiformisと呼ばれていた)の代謝産物として単離・構造決定されたマイコトキシンである。1)このカビは、ルーピン(マメ科植物、キバナハウチワマメ)を主要な宿主としている。カビに汚染された植物をヒツジやウシなどの家畜が摂取すると、肝障害を引き起こすことが知られている。ホモプシンのラット(15日齢)におけるLD50は1.6 mg/kg(皮下注射)である2)。また、チューブリンに対して高い結合親和性を示し、微小管重合を協力に阻害する3)。 ホモプシン類にはA (1)、B (2)、D (3)の3種が存在している(Figure 1)。高度に不飽和化、官能基化された非天然型ヘキサペプチド構造を構造上の特徴とし、その内、3つのアミノ酸は13員環を形成し、残り3つは鎖状側鎖としてマクロラクタム環に連結している。1は最も官能基化が進んだ天然物である。2は1のクロロ基が水素に置換しており、3はデヒドロアスパラギン酸部位が還元された同族体である。これまでに2の全合成が1例報告されている。4)側鎖やマクロラクタム部の合成研究もいくつか報告されているが、ホモプシンの構成アミノ酸が全て非天然型であるために、その合成には多段階を要している。5) 我々は、他に類例のない特徴的な構造と生物活性に興味を持ち、未だ全合成が達成されていない1の全合成研究に着手した。本討論会では、側鎖の連続デヒドロアミノ酸部位の立体制御合成を中心としたこれまでの成果について報告する。【合成計画】 1を13員環部位とトリペプチド側鎖に切断し、それぞれを構築した後に連結する計画を立てた。始めにトリペプチド側鎖の合成を検討することとした。側鎖にはb,b-ジ置換デヒドロアミノ酸としてE-DIleが、b-モノ置換デヒドロアミノ酸としてE-DAspが連続して存在する。これらの立体選択的合成は報告されているものの、いずれも多段階を要している。5a, 5c)そこで我々が開発した、a-ジフェニルホスホノグリシネート4を用いた立体選択的なE-デヒドロアミノ酸エステル合成6)を経由する、効率的な合成法の開発に取り組んだ(式 1)。【E-選択的デヒドロアミノ酸エステルの合成】6) 1にはE-DAspが含まれている。これまでに報告されているa,b-デヒドロアミノ酸エステル合成法では、そのほとんどが熱力学的に安定なZ体を与えている。1に含まれるDAspはE体であるため、その立体選択的合成法を開発することとした。その結果、我々は、安藤法7)を組み込んだ4を用いた、E-選択的なデヒドロアミノ酸エステルの新規合成法を見出した(Scheme 1、式 2)。 4とのオレフィン化反応は様々なアルデヒドに対して良好に進行し、E-5を与えた。それらの結果は次のようにまとめられた。(1)芳香族またはa位にアミノ基を持つアルデヒドに対しては、NaH-NaIを用いることでE-5を高収率・高立体選択的に得られる。(2)アルキル基を持つアルデヒドは、DBU-MgBr2・OEt2を用いることでE-選択性が向上する。(3)a位に酸素官能基をもつアルデヒドでは(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
古森 徹哉 瀬戸口 信郎 川崎 敏男
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 10 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.216-223, 1966-09-15 (Released:2017-08-18)

The unknown, nonsteroidal, nonglycosidal and N-free substance, which had been obtained as crystals from the root tubers of Dioscorea bulbifera L. forma spontanea Makino et Nemoto, was found to be a mixture of at least three compounds. One of them, named bulbiferin C, m.p.255°, (α)_D +17.3°, was isolated only in trace and the structures of major component, bulbiferin B, m.p. 285°, (α)_D+103.0° and minor, bulbiferin A, m.p. 283°, (α)_D +16.2°, were investigated. Bulbiferin B, C_<19>H_<20>O_6, m.w. 344 (mass) has γ-lactone, β-substituted furane and no hydroxyl groups (positive Ehrlich reaction, I.R., U.V. and mass spectra). B is converted to A by hydrolysis with NaOH in pyridine followed by neutralisation and methylation with diazometane. Bulbiferin A,C_<20>H_<24>O_7, m.w. 376 (mass), has hydroxyl, ester, γ-lactone and β-substituted furane functions (Ehrlich reaction, I.R., U.V. and mass spectra). On treatment with NaBH_4 B is unchanged but by catalytic hydrogenation over PtO_2 it gives a hexahydro-compound having tertiary hydroxyl group indicating B (and also A) has an ether oxygen. The hydrogenated B is reduced with LiAlH_4 and the product is subjected to the Se-dehydrogenation to give 1,2,5-trimethyl naphthalene. The N.M.R. spectra of tetrahydro-B and -A indicate the presence of one tertiary methyl group. From these and other experimental data B and A are respectively assigned the partial formulae (a) and (b) of furano-norditerpene type. The results of a further investigation on the location of the functional groups which lead to the tentative structures of B and A are presented.
著者
寺山 直樹 中曽根 和樹 牛嶋 将大 安井 英子 宮下 正昭 南雲 紳史
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 56 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Poster60, 2014 (Released:2018-07-19)

1. 序論抗がん剤による化学療法で深刻な問題となっている一つに多剤耐性がある。抗がん剤治療を続けていくうちに、多くの抗がん剤が効かなくなるというもので、ABCトランスポーター、アポトーシス抑制、細胞生存シグナルなどと関係するいくつかの機構が知られている。瀬戸らは新規多剤耐性克服活性物質の探索研究を続ける中で、1991年に埼玉県秩父周辺の土壌から採取したSaccharothrixide sp. CF24の発酵培地よりSekothrixideを見出した。1) この化合物はコルヒチン耐性を獲得したKB細胞(KB-C2)に対して、コルヒチンとともに相乗的な阻害活性(IC50 = 6.5 mg/mL)を示した。その構造は4つのメチル基を有する14員環マクロラクトンと、C13位から分岐した7連続不斉中心を持つ側鎖からなる (Fig. 1)。最初の論文では二次元構造のみが報告されていたが、第38回の本討論会において2のような立体構造が示された。2) 側鎖部の7連続不斉中心の相対配置は、天然物を化学分解することで得られたC11-C21断片の詳細なNMR解析により決定している。一方、ラクトン環上に関する立体配置の決定方法は、計算化学によるコンフォメーション解析が利用されており曖昧さが残っていた。このような背景のもと、我々はその化学構造と生理活性に興味を持ち、閉環メタセシス反応によるマクロライド構築を基盤とする合成研究を検討してきた(Scheme 1)。その結果、Sekothrixideの初の全合成を達成することができ、また真の立体構造は2ではなく4, 6, 8位の配置が全て逆の構造1であることを見出したのでここに報告する。3) 2. セグメントC1-C10の合成最初に我々は、瀬戸らが提唱していた構造2を目的物質として合成検討を行った。まずマクロラクトン部に相当するセグメントC1-C10 (14)の合成を進めた(Scheme 2)。既知のアルコール34) をIBX酸化後、光学活性アミドを組み込んだHorner-Emmons反応に付し共役アミド5へ導いた。接触還元により6とした後、そのメチル化反応を試みたところ、収率、選択性、ともに良好な結果で7が得られた。化合物7はLiBH4による還元に付し、生じた一級水酸基をTBDPS基で保護することでシリルーテル8へ導いた。化合物8のPMB基の脱保護後、ヨウ素/Ph3Pの条件でヨウ素化し9を得た。これにTHF溶媒中-20℃、イソプロペニルグリニャール試薬4.5当量と、ヨウ化銅を1.5当量用いイソプロペニル基を導入し10を得た。化合物10はTBAF処理によりTBDPS基を脱保護しアルコール11へ変換した。ちなみに、鏡像異性体のent-11は既知物質で、そのNMRは我々が合成したものとよく一致していた。また、ent-11の比旋光度は-26.4 (CHCl3)であるのに対し、合成した11は+33.9 (CHCl3)であった。次に、化合物11のIBX酸化を行い、得られたアルデヒド12に対して向山アルドール反応を行った。その結果、カップリングが進行すると同時に、生じた水酸基にシリル基が移り良好な収率で13が得られた。さらに、13をアルカリ加水分解に付しセグメントC1-C10 (14)を合成した。3. セグメントC11-C21の合成次に、セグメントC11-C21 (25)の合成を以下のように行った。既知の(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
我妻 勉 赤間 勉 奈良 真二 中井 龍一郎 小川 はる美 斎藤 裕 池田 俊一 松宮 茂樹 大瀧 静夫 神田 裕
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 43 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.431-436, 2001-09-01 (Released:2017-08-18)

In the course of our search for new antitumor agents from microorganisms, the fungus Acremonium sp. KY4917 was found to produce novel compounds. Two novel compounds, UCS1025A (1) and B (2), were isolated from the culture broth by chromatographic methods. Molecular formulae of 1 and 2 were determined to be C_<20>H_<25>NO_5 and C_<20>H_<25>NO_6 from HRFAB-MS data, respectively. Structures of 1 and 2 were elucidated on the basis of spectroscopic methods, mainly by detailed analyses of their NMR spectra. Absolute stereochemistry of 1 was established by an X-ray crystallographic analysis of the 3'-bromo derivative 3'. As a result of spectroscopic analyses and chemical transformations of 1, the unique chemical equilibrium of 1 was found out. Three tautomeric isomers of 1 have been identified to be ketone 1a in CDCl_3 by NMR analyses, enol 1b by an X-ray crystallographic analysis, and enedione 1c in an aqueous buffered solution, respectively. UCS1025A (1) exhibited antimicrobial activity against Gram-positive bacteria, Staphylococcus anreus, Bacillus subtilis and Enterococcus hirae, and Gram-negative bacterium, Proteus vulgaris with the MIC values ranged from 1.3μg/mL to 5.2 μg/mL, and antiproliferative activity against human tumor cell lines (A431 and MCF-7) with the IC_<50> values 55 μM and 21 μM, respectively. In contrast, UCS1025B (2) showed weak antimicrobial and no antiproliferative activity.
著者
西村 吉雄 齋藤 仁 好川 博 近藤 信一 竹内 富雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 30 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.508-515, 1988-09-26 (Released:2017-08-18)

The semi-synthetic podophyllotoxin glycosides, VP-16-213 (1) and VM-26 (2) showing a marked clinical efficacy and the intriguing mechanisms of action have stimulated interest in the synthesis of new active analogues of the podophyllotoxin glycoside. The systematic chemical modification of podophyllotoxins was studied. 1) Aminoglycosidic lignan variants (6, 7, etc.) of 4'-O-demethy1-1-epipodophyllotoxin were synthesized by a stereoselective BF_3-catalyzed coupling of 5 with the corresponding aminosugar derivatives. N-Alkylaminoglycosyl analogues (8, etc.) of 1 were also derived from 6. 2) Syntheses of all possible diastereomers (1, 6, 8, and 15-23) of 1, 6 and 8 were achieved via optical resolution of (±)-podophyllotoxin by glycosidation with D- and L-sugars. 3) Glycosidic variants of 1-β-hydroxy-α-peltatin and 1-β-hydroxy-8-O-methyl-a-peltatin (24-26) were synthesized by glycosidation of 28 and 29 with the corresponding sugar derivatives. 4) The syntheses of carbocyclic lignan variants (34-37) of 4'-O-demethyl-1-epipodophyllotoxin were achieved by coupling of 5 with chiral aminocyclitols. 5) 1-O-(2-Aminoethyl) ethers of 4'-O-demethyl-1-epipodophyllotoxin (38-42, etc.) were synthesized by coupling of 5 with the corresponding 2-aminoethanol derivatives, and with ethylene glycol followed by reductive amination of its aldehyde. Among all derivatives synthesized, 6 and 8 were found to have superior antitumor activity to 1.
著者
竹元 万寿美 山本 裕一 阿知波 一雄 James P. Kutney Nikolay M. Stoynov
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 38 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.643-648, 1996-09-02 (Released:2017-08-18)

In recent years, much attention has been paid to the ability of cultured plant cells to transform not only secondary metabolites, but also organic foreign substrates. Therefore, we have studied in the feasibility of using plant cell cultures as the reagents of organic synthesis. In this symposium, we report the synthesis of biologically active com-pounds by using plant cell cultures (N. tabacum, D. carota, C. roseus, P. peltatum) as follows (1) Synthesis of optically active α-phenylpyridylmethanols as organic foreign substrates i) enantioselective reduction of ketone ii) asymmetric hydrolysis of the acetates iii) optically active alcohols production from the corresponding racemates (deracemization of racemates) (2) The efficient synthesis of podophyllotoxin derivatives as starting materials in the clinical anti-cancer drug, Etoposide
著者
森本 俊明 阿知波 一雄 千葉 三男
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 31 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.183-189, 1989-09-17 (Released:2017-08-18)

We found that neutral and cationic rhodium (I) complexes of (S,S)- or (R,R)-MOD-DIOP (1 or 2) showed very high enantio-selectivity in the catalytic asymmetric hydrogenation of α-arylidenesuccinic acid half-esters (3). The optically active α-aryl-methylsuccinic acid half-esters (4) obtained are useful inter-madiates for the synthesis of optically active lignans. Total syntheses of (+)-collinusin (7), (-)-deoxypodophyllotoxin (9), and (+)-neoisostegane (14) were achieved using asymmetric hydrogenation catalyzed by the rhodium(I) complex with (S,S)-MOD-DIOP (2) as a key reaction. Thus, the absolute configurations of natural (+)-collinusin (7) and (+)-neoisostegane (14) were determined to be (R) and (M,6R,7R), respectively. The present asymmetric hydrogenation can provide a practical method for the synthesis of various optically active lignans.
著者
飯田 彰 松本 洋亘 富岡 清 和田 俊一
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 44 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.617-622, 2002-09-01 (Released:2017-08-18)

DNA topoisomerases are nuclear enzymes responsible for biological processes of DNA metabolism such as replication, transcription, recombination and chromosome segregation at mitosis. Therefore, compounds that inhibit these enzymes as the primary cellular target are of special interest since those are promising candidates for anticancer drugs. Our previous studies demonstrated that the ortho-quinone or catechol moiety in aza-deoxypodophyllotoxin analogues plays a critical role in showing topoisomerase II (topo II) enzyme inhibition, in which proton transport during cutting and resealing of DNA is presumed to be blocked by a small structural unit like ortho-quinone. We report herein the synthesis and biological evaluation of nucleoside analogues as novel topo II inhibitors that are hybrids with aza-podophyllotoxin analogues. Our synthesis contains a Michael addition reaction of 1,3-dithianes to chiral butenolide 2, an equivalent to the deoxyribose moiety of a nucleoside, and a Silyl-Hilbert-Johnson reaction as key reactions. As predicted, ortho-quinone 1 and catechol 6 showed topo II inhibition, while dimethoxy derivative 7 was inactive. Unexpectedly, intermediates 6 and 8 were shown to be potent inhibitors. In addition to the active nucleosides, it was found that several lactone derivatives lacking a thymine base also inhibited topo II, indicating that a thymine base is not requisite to topo II inhibition. Structure-activity relationship of these lactone derivatives showed that the presence of the TBS group or dithiane moiety in the molecule is essential for topo II inhibition in the case of non-nucleoside derivatives. Further study is now in progress to examine their possible mechanism of action as topo II inhibitors.
著者
亀谷 哲治 津吹 政可 日暮 勝之 加藤 正 本多 利雄
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 27 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.176-183, 1985-09-07 (Released:2017-08-18)

The stereocontrolled synthesis of steroid side chain has been developed. The major interest has been forcused on the synthesis of the side chain of ecdysone as well as crustecdysone from 20-oxosteroid via furan derivatives. Reduction of the olefin (21) over palladium-carbon afforded the (20S)-20-furylsteroid (22), stereoselectively, whose hydrogenation over rhodium-alumina, followed by ruthenium tetroxide oxidation and treatment with methylmagnesium bromide, gave the triols (28) and (29) having an ecdysone-type side chain, respectively. The stereoselective reduction of the lactone (33) as a key reaction to give the δ-lactone (35) and the γ-lactone (36), under various conditions has also been investigated. Grignard reaction of both lactones with methylmagnesium bromide led to the synthesis of the tetraol (37) possessing a crustecdysone side chain. The total synthesis of 2-deoxycrustecdysone (3) has also been achieved by application of the above method.
著者
南 篤志 劉 成偉 田上 紘一 松本 知之 Jens Christian Frisvad 鈴木 秀幸 石川 淳 五味 勝也 及川 英秋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral34, 2015 (Released:2018-10-01)

ペニトレムA(1)は、Penicillium crustosumなどの糸状菌から単離されたインドールジテルペンである(図1)1。同菌は、酸化度や修飾様式が異なる構造類縁体{ペニトレムB-F(2-6)}に加えてパスパリン(7)2、PC-M5(8)、PC-M4(9)なども生産する3, 4。1は、パキシリン(10)やアフラトレム、ロリトレムなどの多くのインドールジテルペンと同様に7をコア骨格とする一方、インドール環上にある4-6縮環骨格や8員環エーテルなど他のインドールジテルペンではみられない特徴的な構造を有する(図1)。その特異な化学構造は有機合成化学者からも注目され、4については全合成も達成されている5。一方、その生合成については、標識化合物の投与実験などから1-6が生合成後期における酸化的修飾によって構築されると推定されていたものの6、骨格構築機構については不明であった。最近我々は、麹菌異種発現系を用いることで17種の遺伝子が関与するペニトレム生合成マシナリーの解明に成功し、特徴的な骨格構築機構を含む生合成経路の解明に成功した7。本討論会ではその詳細を報告するとともに、我々が改良してきた麹菌異種発現の有用性についても議論したい。ペニトレム生合成遺伝子クラスターの同定 ペニトレム生合成マシナリーの解明へ向け、生合成遺伝子の探索を試みた。予想生合成中間体である7の生合成に関与する遺伝子(paxGCMB)8を指標としてペニトレム生産菌(P. simplicissimum9)のドラフトゲノムデータを精査したところ、ptmGCMBを含む15個の読み枠から構成される生合成遺伝子クラスター(cluster 1:図2)を見いだした。しかしながら、酸化的な修飾反応を触媒する酵素遺伝子が明らかに不足していたため、遺伝子クラスターの分断が示唆された。分断した遺伝子クラスターを同定するためにRNA-Seqによる発現解析を生産/非生産条件で行ったところ、4種の酸化酵素遺伝子と1種のプレニル基転移酵素を含む遺伝子クラスター(cluster 2:図2)を新たに見いだした。1と同じ分散型生合成遺伝子クラスターはfusicoccin10、austinol11などで報告されているが、いずれも類縁化合物の相同遺伝子もしくは経路特異的な遺伝子を指標としてゲノムデータから探索されたものである。これに対して本結果は、植物由来の天然物と同様、発現解析が糸状菌天然物における分散型遺伝子クラスターの同定において有効であることを示す結果であると考えている。 麹菌異種発現系を利用したペニトレム生合成マシナリーの解明 最近我々は麹菌を宿主とした異種発現システムに着目し、代表的な糸状菌由来二次代謝産物であるインドールジテルペン7,8,12、テルペン13、ポリケタイド14の生合成マシナリーの再構築と物質生産を行ってきた。本手法の特徴は、①導入した遺伝子の確かな機能発現、②生合成経路の同定と物(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
井原 正隆 川口 明洋 加藤木 守 千尋 正利 福本 圭一郎 亀谷 哲治
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 28 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.339-346, 1986-09-09 (Released:2017-08-18)

Synthesis of angularly tricyclopentanoid sesquiterpenes, was investigated via tricyclo[7.3.0.0^<1,5>]dodecane derivatives using intramolecular Diels-Alder reaction or intramolecular double Michael reaction as a key step. (1) Highly Stereoselective Total Synthesis of (±)-3-Oxosilphinene via Intramolecular Diels-Alder Reaction-(E,E)-3-(8-Phenylthio-octa-5,7-dien-2-yl)-2-methyl-2-cyclopenten-1-one (19) was prepared from the bromocyclopentenone (16) in three steps. Cycloaddition of 19 gave only one stereoisomer of the tricyclo[7.3.0.0^<1,5>]dodecene (20) having all correct four contiguous asymmetric centers. The cyclo-adduct (20) was converted into the tricyclo[6.3.0.0^<4,8>]undecane (25) via Wolff rearrangement. According to usual procedures, the ester (25) was then transformed into (±)-3-oxosilphinene (1). (2) Synthetic Study of Pentalenene and Pentalenic Acid via Intramolecular Double Michael Reaction-Barbier reaction of 4,4-dimethyl-2-cyclopenten-1-one (34) followed by oxidation with pyridinium chlorochromate gave the enone (36), which was converted into the bis-enone (33) in four steps. Intramolecular double Michael reaction of 33, carried out by heating with trimethylsilyl chloride, triethylamine, and zinc chloride, gave tricyclo[7.3.0.0^<1,5>]dodecanediones (40), which were subjected to Wolff rearrangement to afford the tricyclo[6.3.0.0^<4,8>]undecanes (41) possessing all carbon skeleton of natural products (4 and 5).