著者
関内 淳
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.13, no.7, pp.483-490,530, 1964

寒冷刺戟に過敏性を有する所謂寒冷アレルギー現象の発症に, 抗体素因が関与するとすれば, その抗体素因の形成に必要な抗原は何か, 化学物質の移入なく本症が寒冷によってのみ発症するから寒冷によって自己抗原が遊離され抗体素因が形成されるのではないかと考え, ウサギ自己血液を24時間0°〜5℃に冷却し, そのまゝもとのウサギに静注した.この操作を隔日に35回行い, その間10日毎に沈降反応, 抗原感作赤血球凝集反応, 補体結合反応, クームス試験, 寒冷凝集反応, アルチウス反応, PK反応, RAテスト等を行い, 37℃並びに0°〜5℃で判定し更に寒冷曝露試験を行った.又末梢血液像, 血清蛋白像, 諸種の肝機能検査並びに組織学的検索を行った.その結果冷却自己血液が抗原性を獲得した明らかな確証は得られず従って冷却自己血液の感作では寒冷に特異的な自己抗体素因は作り得ないものと考える.
著者
鳥居 新平 坂本 龍雄 平山 耕一郎 深尾 敏幸 近藤 直実
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.605-620, 1999
被引用文献数
15

小児気管支喘息を持つ親又は保護者が記入する,身体,社会,家族,感情,個人の発展の5つの項目からなるQOL (quality of life)調査票を作成した.回答は最大の支障を1点,支障なしの5点の5段階評価とし,4歳未満は23問,4歳以上は31問とした.本報告は初診時のデータに基づき,反復再現性等の信頼性,因子的妥当性を検討した.2週間発作発現の回数が安定していた喘息患児,4歳未満8例,4歳以上26例の級内相関係数は0.879,0.793を示し,再現性を示した,喘息患児102例,健常児40例,感冒等の罹病中の非喘息患児12例のQOL総合点のCronbachαは0.6329〜0.8829で内的一貫性を示した、喘息患児の個人の発展項目以外の身体,社会,家族,感情との関連質問の回答は健常児と比べ有意(p<0.05)に低下した.因子分析により,QOLを構成する5つの項目および項目内の各機能が累積寄与率60%以上で確認され,本QOL調査票は再現性,構成上の信頼性,因子的妥当性を有し,経時的な治療法のなかで調査票の適用が可能と考えられ,喘息管理と治療目標のあり方を検討する上で有用な調査票と考えられた.
著者
水谷 民子 藤崎 洋子 馬場 実 吉住 昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.700-705,752-75, 1971
被引用文献数
2

新潟地方にハンノキの分布が多いことに注目し, ハンノキ喘息と考えられた2例の定型的な症例を報告した.1) 新潟地方のハンノキ空中花粉は, 3月中旬から5月中旬にかけて飛散し, 4月末から5月初めに高値を示した.2) 1, 000倍ハンノキ抗原液で皮内反応を行ない, 新潟地方では105例中27例, 25.7%, 東京地方では36例中4例, 11.1%が陽性であった.3) 15例について稀釈試験を行ない, 10^<-5>が1例, 10^<-4>が1例, 10^<-3>が13例であった.4) 9例にPK試験を行ない, 8例が陽性であった.5) 9例に吸入誘発試験を行ない, 2例が陽性であった.6) 2例の定型的ハンノキ喘息を診断した.7) ハンノキ皮内反応陽性例に, ヤマハンノキ皮内反応, 稀釈試験, PK試験を行ない, 共通抗原の存在が疑われる成績が得られた.
著者
森川 みき 金光 祥臣 塚本 宏樹 森川 昭正 富岡 佳久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.200-205, 2016

症例は,牛乳アレルギーおよび気管支喘息既往歴を有する6歳女児.インフルエンザB型に罹患し,ラニナミビルオクタン酸エステル水和物吸入粉末剤(イナビル®)を使用後にアナフィラキシーを起こした.プリックテスト並びに薬剤刺激好塩基球活性化試験を実施したところ,イナビル®と添加剤の乳糖水和物に陽性を示し,ラニナミビルオクタン酸エステル水和物は陰性を示した.本症例では,添加剤の乳糖に夾雑する乳タンパク質がアレルゲンとなった可能性が考えられ,その同定を試みた.ウェスタンブロット(WB)により,添加剤の乳糖水和物中からβ-ラクトグロブリン(β-LG)が検出され,その分子量およびin vitro実験の結果から糖鎖付加体であると推定した.さらに患者血清を用いたWBの結果から,本症例のアレルゲンが,糖鎖付加されたβ-LGである可能性が高いと判断した.本研究は,吸入粉末製剤の添加剤乳糖が乳アレルギーを起こす危険性を示す結果となった.本症例のようなインフルエンザ患者は,気道過敏性が亢進しているため特に注意が必要である.
著者
大西 正樹 肖 水芳 大久保 公裕 池田 雅一 横島 一彦 奥田 稔
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.228-235, 1993
被引用文献数
5

スギ花粉飛散開始の2週間前よりfluticasone propionate (FP) の局所投与を行いスギ花粉症患者の鼻粘膜粘液上皮層に浸潤した好塩基性細胞, 好酸球の動態を観察し, FPの鼻アレルギー症状抑制機序を検討した。スギ花粉症患者を2群に分け実薬投与群は季節前, 初期にFP局所投与, プラセボー群はプラセボーの局所投与を行った。また季節中期, 後期は両群ともFP局所投与を行った。実験は二重盲検法で行った。投与前, 初期終了時, 後期終了時に鼻粘膜擦過を行い擦過片中の好塩基性細胞, 好酸球数のカウントを行った。同時に擦過片を蒸留水中で凍結融解した後, 両細胞数を定量的に評価するため擦過片中の総ヒスタミン, eosinophil cationic protein (ECP) の含有量を測定した。季節前からFP局所投与を行った実薬投与群は, プラセボー群に比べスギ花粉症状をよく抑制し鼻粘膜粘液上皮層中の好塩基性細胞, 好酸球の増加を抑制した。粘膜擦過片中のヒスタミン量, ECP量はFP局所投与で減少傾向を示した。
著者
富川 盛光 鈴木 直仁 宇理須 厚雄 粒来 崇博 伊藤 節子 柴田 瑠美子 伊藤 浩明 海老澤 元宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1536-1542, 2006
被引用文献数
3

【目的】エビアレルギーの患者背景をまとめ,エビの主要抗原のトロポミオシンと交差抗原性のある他の甲殻類・軟体類・貝類の摂取時の症状,特異的IgE抗体価の相関を検討した.【方法】各施設に質問紙を配布し,エビ摂取で確実に症状を呈した99症例について検討した.【結果】エビアレルギーは20歳代までの発症者が多く,1時間以内に症状が発現する症例は87.9%であった.皮膚症状が最も多く,以下OAS様症状,呼吸器症状と続き,アナフィラキシーが61例,ショックも2例みられた.エビアレルギーを有しかつカニを摂取したことがある患者68例中44例(64.7%)がカニアレルギーで,イカ摂取では63例中11例(17.5%)とカニに比べ少なかった.特異的IgE抗体価はエビとカニで相関係数は0.954(p<0.001),エビとイカは0.582(p<0.001)と強い相関を認めた.【結論】エビアレルギー患者では,トロポミオシンの相同性が高く交差抗原性を持つカニ摂取でアレルギー反応を認める例が多いが,軟体類や貝類とはカニほど臨床的な相関はないと思われた.
著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.169-181,234, 1970

近代大学あるいは病院にアレルギー疾患の疹療を系統的に行なう目的でアレルギークリニックが設置されるようになった.われわれの国立静岡病院アレルギーセンター開設以来5年間の来院患者総数は1183名で, うち気管支喘息653名, アレルギー性鼻炎126名, 蕁麻疹306名, その他98名であつた.年次別にみると毎年増加の傾向が認められ, 年令別にみると気管支喘息で小児が全体の半数を占めるのが注目される.住所別集計をみると大半は静岡市及びその周辺であるが気管支喘息では隣接県はもちろん, 遠隔の地からもより適切かつ効果的疹療を求めて患者が来院している.著者は本邦各大学の内科, 小児科, 耳鼻咽喉科, 皮膚科教室を対象にアレルギークリニックに関するアンケート調査を行なつた結果回答が得られた183教室中69教室にアレルギークリニックが設置されていることがわかった.独立の診療室を有するものは少く, 大部分は一般外来疹療終了後同一場所で週1〜3日疹療を行なつており, 専任医師が配置されているのは37教室である.アレルギークリニックを有する教室の殆んどはアレルギー関係の研究テーマを掲げており, 診療と研究とが密接な関係を有すると思われる.国立病院及びその他の一般病院に対しても同様の調査を行なつたところ回答を寄せた国立病院71施設中19施設, 一般病院33施設にアレルギークリニックを有し, 大部分のものは大学との技術提携を有することがわかつた.アレルギークリニックはかくて時代の要求に応じ, 地域社会に著しい貢献をしているが, なおアレルギークリニック過疎地帯も少なく, 患者数の増加にも拘わらず全国のallergistの絶対数不足が目立ち, このため診療日も週3日以内に止めざるを得ないところが多く, 診療日には多数の患者の診療に忙殺されているのが現状で, 今後更に充実と発展がのぞまれる.臨床面からまずallergistの養成が急務であり, 医療法上アレルギー科の独立もぜひ実現させねばならない.
著者
脇坂 ちひろ 飯豊 深雪
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.569-571, 2005

アリルイソプロピルアセチル尿素(以下AIAU)は緩和な睡眠鎮痛作用をもつモノウレイド系の薬剤で多数の一般医薬品に配合されている. 今回我々は月経痛の度に内服していたイブA(R)に含まれていたAIAUによる固定薬疹の一例を経験したので報告する. 症例:46歳, 女性. 初診:2003年8月4日. 既往歴家族歴:薬剤アレルギーはない. 現病歴:約5年前より月経の度に口唇, 陰部, 手指に水疱, びらんが出現. これまで数件皮膚科を受診し単純性疱疹の診断でアシクロビルを投与されていた. また, 月経痛のため月経時にイブA(R), テプレノンを, 鉄欠乏性貧血のため時々クエン酸第一鉄ナトリウムを内服していた. 皮疹が肛囲や四肢にも広がってきたため, 症状出現の約3日後に当科受診. 現症:口唇に水疱, びらんを伴う発赤, 腫脹があり, 陰部, 肛囲, 両手指, 右前腕, 右臀部, 右大腿部後面, 左足関節部にも周囲に紅量を伴う水疱やびらんを認めた. また, 全身倦怠感もみられた. 病理組織像(右大腿部後面の水疱):表皮内に壊死した角化細胞が多数あり真皮表皮境界部は著明な空胞変性のため表皮下水疱を形成していた.
著者
清水 紘昭
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.192-200,229-23, 1973

初乳中のIgAの免疫学的意義を明らかにする目的で, 初乳および対応血清を用いて各免疫グロブリンの定量を行ない同時に感作血球凝集反応, 同阻止試験, 同吸収試験により各種細菌菌体成分に対する抗体価を測定し, 以下の成績をえた.1) 初乳中の免疫グロブリンは血清のものに比較して, 高濃度のIgAを含むこと, IgG含量がごく微量であることが注目され, 各免疫グロブリンとも程度の差はあるが分娩後3日目には急激な減少を示す.2) 大腸菌 lipopolysaccharide, レンサ球菌 peptidoglycan に対する抗体活性は両者ともに初乳ではIgAクラスに存在し, 血清中では lipopolysaccharide 抗体活性は IgM クラスに, peptidoglycan 抗体活性は IgG クラスに存在し, 血清抗体価と初乳抗体価の間には相関傾向がみられなかった.3) ジフテリア・トキソイド, 破傷風毒素に対する抗体活性は血清, 初乳ともに IgG クラスに存在し, ジフテリア・トキソイドに対する抗体価は血清-初乳間で相関傾向を示し, 破傷風毒素に対する抗体価では陽性例が少ないため明らかでなかった.以上より乳腺において局所抗体産生機構が働いている可能性を示唆し, 初乳が以上より減感作有効例の大部分では BA が形成され, 遅れて reagin が減少するものと推定した.
著者
代田 明郎 富田 一男 飯田 安彦 遠藤 昌夫 松永 睦郎 恩田 昌彦 柳沢 公則 服部 博之
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.13, no.8, pp.559-578,581-58, 1964

From the point of allergy, the authors studied on the production of cholelithiasis and cholecy-stitis and the results obtained were as follows: 1. By agglutination reaction with the antigen of E. coli (O-6) isolated from human faeces and the normal human serum, it was found that the aggulutin in titer was so low in the infant and the titer rising up rapidly with the age to 10 years old. Thereafter the titer is coming close gradually to that of the adult. These facts suggest that tha natural sensitization by E. coli exists in the human being and it may be strengthened gradually with the age. 2. Natural sensitization by E. coli was also found in the normal rabbit and it was also observed that the natural sensitization was enphasized by the oral administration of E. coli. 3. The disturbance of the liber may produce dysbacteria of the intestinal flora and the dysbacterial condition of the intestinal flora and the disturbance of the liber-function may emphasize the natural sensitization by oral administration of E. Coli and moreover it may be an important factor in the appearance of orally administered E. Coli in the bile. 4. The bile of gastro-ulcer showihg no precipitation reaction with anti-E. Coli rabbit serum was mixed with E. Coli (O-6) and after 24 hours' incubation at room temperature the bile showed positive reaction with anti-E. Coli rabbit serum. 5. The remarkable growth of E. Coli was found in the group of rabbits blocked the bile-duct injected E. Coli via bile-duct, however no growth of bacilli was observed in the normal rabbits; moreover, the bile in the former cases showed positive reaction with anti-E. Coli rabbit serum. 6. Electromicroscopic findings show that the breaking or dissolution of cell wall or cell membrane and the prolapse of the protoplasma of E. Coli at the high concentration of Desoxycholic acid or glycodesoxycholic acid. 6. The gall-bladder isolated from the guinea pig administered orally E. Coli and showing high aggulutinin titer showed anaphylactic reaction by Schultz-Dale technique. Anaphylactic reaction of the isolated gallbladder in the guinea pig sensitized with anti-E. Coli rabbit was alse demonstrated and also the desensitization phenomenon was clearly demonstrated with the addition of the same antigen. These results suggest that allergic or anaphylactic reaction in the gall-bladder with antigen-antibody system of the components of E. Coli might be existed.
著者
田中 稔彦 石井 香 鈴木 秀規 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.54-57, 2007
被引用文献数
1 2

24歳,男性.初診1年半前から運動や精神的緊張によって多発する小円形膨疹を主訴に来院した.皮疹は激しい痒みをともなっていた.コリン性蕁麻疹と診断し,種々の抗ヒスタミン薬を投与したが皮疹は改善しなかった.サウナ浴によって同様の皮疹が誘発され,回収した本人の汗による皮内テストで陽性を示した.また健常人および本人の汗から精製した汗抗原で末梢血好塩基球からの著明なヒスタミン遊離が生じ,汗の中の抗原にIgE感作されていることが明らかとなった.本人の汗から回収した抗原による減感作療法を行ったところ皮疹の程度が軽減し,本人のQOLも徐々に改善した.末梢血好塩基球の汗抗原に対するヒスタミン遊離の反応性も経時的に低下し,汗抗原による減感作療法が奏効したと考えられた.