著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫 小笠原 英樹 成田 慎一郎 形浦 昭克
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.435-442, 2004
被引用文献数
6

2003年に札幌市南区にある耳鼻咽喉科診療所を発症後受診したシラカバ花粉症(鼻または眼症状の季節性とCAP陽性[スコア2以上])を対象にOASの有症率を調査した.また以前の1992年と最近の1998年の調査結果と一部比較した.シラカバ花粉症153例のうち42%(65例)が問診上OASを有していた.このOASの有症率は92年(24%)より多く,98年(45%)とは同様であった.シラカバ花粉症の中ではシラカバCAPのスコアが高いほどOASが多く,女性が男性よりOASが多かった.2003年は有意差はなかったが,98年には花粉症の初診日(その年に花粉症の症状発現後の最初の受診日)が4月までの患者が,5月以降の患者よりOASが多かった.2003年はイネ科とヨモギ花粉の陽性例にOASが多かったが,シラカバ花粉の感作の程度のためと思われた.
著者
増田 佐和子 鵜飼 幸太郎 竹内 万彦 大川 親久 坂倉 康夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.570-576, 1996
被引用文献数
3

スギ花粉の飛散状況は気候に大きく左右され, 総飛散量, 飛散パターンは年により大きく異なっている. 1993年から1995年までの三重県各地の2月, 3月のスギ花粉飛散数を示し, 全県下の耳鼻咽喉科診療施設の新患総数と, これに占めるアレルギー性鼻炎新患の総数を検討したところ, 飛散数に関わらず三分の一から二をアレルギー患者が占めていた. 1995年の飛散数は津市で17943個/cm^2,全県下で99512個/cm^2に達し, 12年間の観測史上最高であった. また, 症状出現前から酸性抗アレルギー剤を服用し, アレルギー日記による症状記録を行った同一患者の過去3年間における飛散期重症日数は, ばらつきが大きいものの飛散数に応じて変化しており, ある一定以上の飛散で症状が出現するが, その後の重症度は総飛散数にかなり依存することが示唆された. 1995年津市においては2月中はほとんど飛散がみられず, 3月になってから爆発的ともいえるほど大量の飛散があり, 患者30名の症状出現率と累積飛散数の対数はよく相関した. また花粉が累積で100個/cm^2飛散すると約半数の患者に, 1000個/cm^2飛散するとほとんどの患者に症状が出現し, これは1993年の結果と一致するものであった. 花粉飛散数が年により変動するのみならず, 患者の症状発現時期, 重症度は個々において大きく異なるものであり, それぞれの患者の状態を見極めた上でそれに応じた治療法を選択することが大切であると考えられる.
著者
上田 雅乃 井口 淑子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.358-366, 1987
被引用文献数
2 1

国療中部病院に施設入院中の7-17歳の喘息児を対象にイヌとネコを対比させながら, それぞれの皮内反応, 特異的IgE抗体, 接触歴, 臨床症状などにつき検討し次の結果を得た.1)皮内反応陽性率は166名中ネコ毛, ネコ毛皮屑, イヌ毛それぞれ17%(28名), 7%(12名), 13%(22名)であり, 1980年を境にネコ毛皮屑とネコ毛の陽性率が逆転していた.2)イヌの方がネコより約2倍多く飼われていたにもかかわらず, RAST陽性率は92名中15名(16%)とネコの101名中57名(57%)にくらべて低かった.3)飼い猫のいるもの6名中5名(83%)がRAST陽性であり, scoreも高い傾向にあったが, イヌでは19名中5名(26%)と低く, 必ずしもscoreは高くなかった.4)飼い猫のいないものでも95名中50名(53%)にIgE抗体をみとめ, 飼い猫以外での感作が考えられた.5)ネコではRAST陽性群50名中31名(62%)に何らかの症状が出現し, 13名(26%)に喘鳴・発作をみたが, イヌでは喘鳴・発作は14名中2名(14%)と低かった.6)ネコやイヌによるアレルギーは今後ふえる可能性があり, 抗原性の検索がすすめられ, major allergenを用いての診断がされるべきと考える.
著者
高村 節
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.479-488,531, 1972

スギ花粉症患者を対象に鼻アレルギー患者の血中セロトニン(5-HT)についての検索とその測定意義を検討してみた.スギ花粉症患者を選びだすために, まず臨床的鼻アレルギー検査を皮膚反応試験, 鼻粘膜誘発反応試験, またはPK反応試験で行なったところ, これら3試験の成績はいずれも高度の陽性率を示した.また鼻粘膜の 5-HT に対する感受性試験を行なったが, 患者は健康者に比べ 5-HT に対して過敏であることを認めた.次いで患者の血中 5-HT をスギの非開花期と開花期, あるいは鼻粘膜誘発試験前と試験後とで測定比較してみたが, いずれも後者において有意に高値を示した.さらに人為的に 5-HT を変動させ, 鼻症状の消長を観察する目的で nialamide, reserpine さらに cyproheptazine を患者に投与した.Nialamide では血中 5-HT の上昇とともに鼻症状の増悪をきたしたが, cyproheptazine のように血中 5-HT に変動がなくても鼻症状は軽減し, reserpine では血中 5-HT の減少をきたすにもかかわらず鼻症状は増悪する傾向が観察された.以上のことから, 鼻アレルギー発症と血中 5-HT との間には一致した相関性は認められず, 鼻アレルギー患者の血中 5-HT の測定は鼻アレルギーの補助的診断としての示標にはなり得ないことが立証された.
著者
有馬 雅史 湯川 瀧雄 寺師 義典 相良 博典 牧野 荘平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.141-146, 1991
被引用文献数
2

我々は, すでに卵白アルブミン (OA) 反復吸入能動感作モルモットで抗原曝露後, 50%以上の動物に遅発型発作 (LAR) の出現と, さらに24時間から5日後に気道反応性の亢進が認められることを報告している. 今回, 血小板活性化因子 (PAF) の関与を検討する目的で, 特異的 PAF 桔抗薬である WEB2086 の影響をこれらのモデルを用いて検討した. OAの反復吸入曝露によって感作したモルモットの呼吸低抗は, oscillation 法によって行い, 気道過敏性は, histamine の aerozol 吸入にて呼吸抵抗が baseline の200%に増加する濃度 (PC_<200>Hist.) を以って評価した. OA 10mg/ml を5分間, 感作モルモットに吸入曝露し, 曝露の30分前および3時間後に投与した WEB2086 (3mg/kg×2, i.v.)は, 曝露24時間と5日後における気道過敏性の亢進を有意に抑制した. また, diphenhydramine hydrochloride (60mg/kg, i.p.) を15分前に処置した感作モルモットに OA の20mg/ml を10分間吸入曝露させた場合の即時型の呼吸抵抗の亢進 (IAR) およびその後の LAR において, 曝露30分前および3時間後の WEB2086 (3mg/kg×2, i.v.) の投与は, IAR には影響を及ぼさなかったが, LAR の出現を明らかに抑制した. 以上より気管支喘息患者の LAR 及び気道過敏性の亢進の発現には, PAF の関与が示唆された.
著者
大谷 武司 衣川 直子 飯倉 洋治 星 房子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.454-462, 1984
被引用文献数
4

ダニアレルギーのある小児気管支喘息児の家庭について, 家屋塵, 床材, 寝具, 家具, 玩具などのダニについて調査した.結果:1)家屋塵(床塵)0.5g当り, 平均393匹のダニが検出された.ヤケヒョウヒダニ(D.p)とコナヒョウヒダニ(D.f)が優占種であり66%を占めた.2)家屋では, カーペットのある家屋と古い家屋にダニが有意に多かった.3)床材では, カーペットにダニが多く, 板の間が少なかった(1畳当りのダニ数は, カーペット418匹タタミ131匹, 板の間27匹であった).4)布製のソファー・イス・ぬいぐるみから多数のダニが検出された.5)フトン, マットは1枚当り(上面)238匹のダニが検出された.以上より, 喘息児の家屋でダニが多く問題となるのは, 床材ではカーペット, 家具では布製のソファー, 玩具ではぬいぐるみであり, これらの家庭内からの撤去が望ましい.
著者
子安 ゆうこ 酒井 菜穂 今井 孝成 神田 晃 川口 毅 小田島 安平
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.484-493, 2004
被引用文献数
5

【目的】シックハウス症候群(sick house syndrome;SHS)とは,建物の室内環境が原因で健康被害を呈するものである.SHSは社会的には認知されているが,医学的な定義はなく疾病概念も曖昧である.今回,SHSの病態解明のために大規模疫学調査を行った.【方法】厚生労働科学研究費補助金生活安全総合研究事業シックハウス症候群に関する疫学的研究班における調査用紙を用いた.【結果】成人8737人,小児9387人の回答が得られた.疾患の定義の仕方により,SHSと判断されたのは成人女性で3.0〜23.3%,成人男性2.9〜16.1%,小児で5.6〜19.8%であった.原因環境因子は小児・成人とも「シャンプ- ・化粧・香水」,「壁や床の建材のにおい」,「塗料」が上位であった.住居の築年数,増改築の状況でSHS発症に有意差はなかった.ライフスタイルの特徴として,ストレスが多く,においに敏感なものに有病率が高かった.【考察】SHSをどのように定義するかによって,有病率が大きく異なった.SHSを解明するためには,国際的な基準もふまえた定義づけが必要と考える.
著者
寿 順久 小豆澤 宏明 西田 陽子 室田 浩之 片山 一朗 吉川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.1510-1514, 2007

症例は33歳の女性.赤い食品の摂取後に出現する顔面を中心とした膨疹,嘔吐,下痢,呼吸困難などの症状を主訴に来院.紅白蒲鉾の負荷試験にて膨疹の出現を認め,紅色の色素成分であるコチニールのプリックテストにても陽性反応を確認した.さらにコチニールの主成分であるカルミン酸を用いた,プリックテスト,スクラッチテストは共に陽性であったため,本症例をカルミン酸によって誘発された蕁麻疹と診断した.コチニール色素はカイガラムシから抽出される紅色の天然色素で,食品や衣類などの染色に幅広く応用されている.近年コチニール色素が原因と考えられる1型アレルギーの報告が散見されるようになり,その背景に関する考察を加え報告する.
著者
中田 安成
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.10, pp.649-657,660, 1973

ラット肋間筋より, myofibrilの混入をほとんどなくし, 筋膜を純粋に分離する方法を確立した.分離した筋膜は, 位相差顕微鏡下では中空の円筒形で透明な一重の膜として, 電子顕微鏡では3層構造を有した膜として観察された.筋膜の化学組成は, lipid34.4%, 蛋白質61%, 総炭水化物はglucoseとして2.8%, methypentoseはfucoseとして0.4%, hexosamineはglucoseamineとして0.8%であった.アミノ酸組成はglycine, glutamic acid, alanine, aspartic acidなどを高率に含有していた.分離筋膜は, そのままでは免疫生物学的に応用するには制約が多すぎるので, 各種溶解液にてとかすことを試み, 筋膜蛋白量の溶出比で比較検討した.その結果, sodium dodecyl sulfateが56.4%ともっとも高率を示し, 以下pH9.5蒸留水(35.4%), 8M urea(22.8%), sodium desoxychoate(18.3%), collagenase(7.7%)の順であった.すなわち蛋白質の溶出を目的とした場合には, sodium dodecyl sufateが効果的な溶解液であることが判明した.
著者
藤原 英憲
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.29-37, 1982

近年, IgE によって mediate されるアレルギー反応の chemical mediator である histamine または bradykinin が, 標的細胞からの histamine の遊離を抑制するのみでなく, 遅延型アレルギー性反応または細胞性免疫応答の発来を阻止することが報告されてきた.今回, 私は IgE で mediate されるアレルギー性反応の chemical mediator (histamine, bradykinin, serotonin, acetylcholine) が, 抗原または mitogen (PHA, Con A, LPS) によって誘導されるリンパ球の活性化に及ぼす影響について検討した.その結果は次のとおりである. 1) 抗原で誘導されるリンパ球の活性化は, histamine (10^<-4>-10^<-5>M) または bradykinin (10^<-5>M) の処理によって有意に抑制された.また, serotonin の処理によっては軽度に抑制される傾向を示したにすぎず, また, acetylcholine の処理によっては何らの抑制作用も認められなかった. 2) mitogen (PHA, Con A) で誘導されるリンパ球の活性化は, 10^<-4>M serotonin の処理によって抑制されたが, acetylcholine によっては何らの抑制効果も認められなかった. 3) 抗原またはmitogen (Con A) によって誘導されるリンパ球の活性化に対する histamine または bradykinin の抑制効果は, H_1antagonist (dexchlorpheniramine) によって阻止されなかったが, H_2-antagonist (cimetidine) によってかなりよく阻止された.これらの結果は, histamine または bradykinin によるリンパ球の活性化の阻止は, リンパ球の H_2 receptor を介するものであろうことを示唆している.また, このことは, 即時型過敏反応はそれに引続いて起こる細胞性免疫反応に影響を及ぼすものであることを示す.
著者
秋山 一男 三上 理一郎 可部 順三郎 江頭 洋祐 岩田 猛邦 田口 善夫 赤木 克巳 竹山 博泰 羽間 収治 浜野 三吾 河田 兼光 信太 隆夫 三島 健 長谷川 真紀 前田 裕二 永井 一成 工藤 宏一郎 佐野 靖之 荒井 康男 柳川 洋 須藤 守夫 坂東 武志 平賀 洋明 上田 暢男 宮城 征四郎 中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.727-738, 1992
被引用文献数
15

我が国における成人気管支喘息の実態を, 主として患者へのアンケートを中心に調査し, 小児発症群と成人発症群及び成人再発群の3群に分類しその比較を試みた. 1) 成人喘息に占めるそれぞれの頻度は小児発症群11.1%, 成人発症群77.3%, その他11.6% (成人再発群3.7%及び不明) であった. 2) 成人喘息に占める小児発症群は年齢と共に激減し, 一方成人発症群は年齢と共に増加し50歳以後では90%以上を占めた. 3) 小児発症群では男, アトピー型, アレルギー疾患既往・合併症, 軽症例, 夜間外来受診歴, 発作時O_2吸入・人工呼吸歴の頻度が成人発症群に比べて有意に高く, 他方成人発症群では感染型, 薬剤常用者, ステロイド常用者, 重症, アスピリン過敏症の頻度が小児発症群に比べて高かった. 4) 成人再発群は小児発症群と成人発症群との中間に位置する群と考えられた. 5) 以上より発症年齢を基準とする分類法が現時点で臨床上分類が容易かつ曖昧さが少ない点より, 成人にみられる気管支喘息を小児発症喘息・成人発症喘息・成人再発喘息の3群に分類する新しい分類法を提唱した. この分類は今後成人喘息の病因・病態の解明に有用と考える.
著者
大石 拓 森澤 豊 安枝 浩 秋山 一男 脇口 宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.1163-1167, 2004
被引用文献数
2

症例は11歳女児と10歳男児の姉弟である. それぞれ1999年5月と10月に気管支喘息を発症した. 劣悪な家族環境と発症年齢が高いことから心因性の喘息発作が疑われていた. 母親も2001年から喘息発作が出現した. 詳細な病歴聴取の結果, 室内清掃がなされておらず, ゴキブリが多数生息していることが判明した. CAP-RASTでは3例ともゴキブリが陽性反応を示したことから, ゴキブリが主要アレルゲンの気管支喘息と考えられた. 本邦では喘息も含めたゴキブリアレルギーはあまり認知されていない. 本邦においても喘息のアレルゲンとしてゴキブリの存在を念頭におくべきであると考えられた. 1964年にBerntonらが最初にゴキブリアレルギーを報告して以来, 海外では多数の基礎, 臨床研究が報告され, アメリカの都市部で救急外来を受診する喘息児の多くはゴキブリが主要アレルゲンであることが報告されている. しかしながら, 本邦ではゴキブリアレルギーの認知度は低い. 今回, 心因性喘息と考えられていたがゴキブリが主要アレルゲンと考えられた気管支喘息姉弟例を経験したので報告する.
著者
黨 康夫 小川 忠平 大友 守 荒井 康男 佐野 靖之 田代 裕二 古田 一裕 若林 邦夫 伊藤 幸治
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.50-55, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
5

症例は30歳女性. 1997年5月中旬頃よりの腹痛, 腹部膨満感で当院救急外来を受診. 腹部X線写真にてイレウスを疑われ, 緊急入院となった. 白血球数の増加(12300/μl)及び好酸球比率の上昇(42.5%)を認めたが, CRPは陰性であった. 腹部CTにて大量の腹水貯留及び回腸から上行結腸にかけて広範囲に腸管壁肥厚が認められた. 腹水中細胞のほとんどは好酸球であった. さらに末梢血及び腹水中IL-5が著明高値を呈した. 消化管粘膜生検では好酸球浸潤は証明されなかった. 6月3日よりプレドニゾロン50mg/日の経口投与を開始し漸減. 症状は著明に改善し末梢血好酸球数, IL-5も正常化した. これらの所見から漿膜下優位型の好酸球性胃腸炎と診断した. 鑑別には腹水中好酸球増加の確認が有用で, かつIL-5が疾患活動性の指標となりうる可能性が示唆された.
著者
福録 恵子 荻野 敏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.385-393, 2001
被引用文献数
15

通年性アレルギー性鼻炎は患者の日常生活に様々な影響を及ぼす.しかし患者の主観的健康観については現在よくわかっていない.そこで通年性アレルギー性鼻炎患者のQOL向上のため,個別的ケアに役立つ情報の一般性評価を目的としSF-36を用いて主観的健康観のQOL測定をおこなった.14施設において,1999年6月から同年8月にかけて,外来受診した通年性アレルギー性鼻炎患者252名を対象とした.その内,有効回答を得た249名について患者背景因子を調査し,健康関連QOLスコアに影響を与える因子の同定を行った.また,健康人及びスギ花粉症患者とのHRQOLスコアを比較検討した.結果として,年齢,性別,合併症の数は,HRQOLに対する有意な寄与因子であった.鼻閉がQOLに最も大きい影響を及ぼしており,他症状と比較し重症度に及ぼす影響が大きいと考えられた.スギ花粉症患者と通年性アレルギー性鼻炎患者は健康人と比較し,QOLスコアが有意に低下していた.両者に有意差は認められないが,スギ花粉症患者は通年性アレルギー性鼻炎患者と比較し低いQOLスコアを示した.
著者
中山 壽孝 中山 壽之
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.629-635, 2001
被引用文献数
2

空中花粉調査における染色封入方法は施設ごとに異なっており測定される花粉数に差異が生じている.スギおよびヒノキ料花粉数の測定において染色封入方法が与える影響について検討した.Durham型補集器2台を同一場所に設置し,台上にワセリンを塗布したスライドグラスを置き,24時間空中に曝露した.Calherla染色法(C法)とgentiana-violet-glycerin jelly法(G法)を用いて花粉数を測定した.C法が花粉シーズン中の観察開始から終了までの期間が長く花粉の検出に優れていたC法とG法による花粉数には,有意に相関が認められた(p<0.001).C法によるスギおよびヒノキ料花粉数はG法によるそれぞれの花粉数の38.7%,120.3%増しであった.花粉調査には全国統一してCalberla染色を使用することが望ましい.また,花粉数を公表する場合には捕集法と染色封入方法を併記することを推奨する.
著者
月岡 一治 広野 茂 石川 和光
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.853-858, 1984
被引用文献数
2

ナシ花粉症の2症例を報告した.症例1)は28歳の女性で, ナシ栽培に従事して3年目よりナシの開花期間中に鼻炎と結膜炎症状が出現するようになった.ナシ花粉抗原液による皮内反応とPK反応および鼻粘膜誘発試験と眼瞼結膜誘発試験が陽性であった.職業性のナシ花粉症と診断した.症例2)は14歳の男性で, ナシの開花期間中だけでなく通年性に鼻炎症状があった.ナシ花粉抗原液による皮内反応と鼻粘膜誘発試験が陽性であった.家族も本人もナシ栽培には従事しておらず, ナシ栽培地域に居住しているだけでナシ花粉に感作され発症したと思われた.