著者
二村 昌樹 伊藤 浩明 尾辻 健太 平山 美香 林 啓一 大矢 幸弘 益子 育代
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1610-1618, 2009-12-31 (Released:2017-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【背景】小児アトピー性皮膚炎に対する治療教育を目的として,我々は1泊2日教育入院プログラム「スキンケアスクール」を実施している.これは6歳未満で中等症以上を対象にし,正しい洗い方と軟膏塗布の実習指導および講義で構成している.【方法】本プログラムの効果を評価する目的で,参加した56組の養育者に対して参加前,直後,1ヵ月,6ヵ月後にアンケート調査を実施した.【結果】プログラム参加により,医師の指導歴があっても参加前の軟膏量や塗布の方法は不十分であったと認識した.皮疹の状態の改善とともにかゆみや睡眠障害といった症状も1ヵ月後には改善したと養育者は回答しており,その改善度は6ヵ月後まで維持された.一方,ステロイド使用量は参加前と比較して1ヵ月後には減少し,6ヵ月後にはさらに減少したと評価された.【結語】本プログラムは,養育者のスキンケアに対する理解と実践を達成する上で有効であった.皮膚洗浄と十分な軟膏使用を柱とする正しいスキンケアは,湿疹の改善効果をもたらし,結果的にステロイド減量も可能にする事が示唆された.
著者
堀向 健太 津村 由紀 山本 貴和子 正田 哲雄 二村 昌樹 野村 伊知郎 成田 雅美 大矢 幸弘
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1543-1549, 2011-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5

【背景と目的】重症アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の治療を行っている最中,特にステロイド外用剤(以下ス剤)の連日塗布から間欠塗布へと移行する寛解導入期の終わりから寛解維持期の始めに相当する時期に,全身の皮疹や掻痒は改善しているにも関わらず,患者の掌蹠に汗疱様の水疱・丘疹が出現することがある.我々はこの病態を「AD寛解前汗疱様発疹」と称している.AD寛解前汗疱様発疹はス剤抵抗性の皮疹やアトピー性皮膚炎の再燃と誤解し治療が頓挫する危険性がある.そこで,発症率や患者の特徴について,後方視的に検討し,重症患者の治療上留意すべき現象として本邦初の症例集積研究として報告する.【対象と方法】2007年4月から2009年3月までに当科にADの治療目的に入院した89例を対象とし,発症年齢,AD治療開始後の発症病日,治療後の寛解までの日数,季節性,治療経過,AD重症度との関連,検査所見との関連を後方視的に調査した.【結果】AD寛解前汗疱様発疹は13例(14.6%)に発症しており,治療後の発症病日は16.7±10.4日(4〜32日),平均年齢は6.2±6.1歳(3カ月〜23歳)だった.入院時のSCORADは平均50.8±17.9(16〜91)であり,1歳未満を除いてSCORADを検討すると発症者が無発症者に比べ有意に高値であり,重症患者がより発症しやすいと考えられた.ス剤の局所的な強化により全例が軽快したが,治療後の軽快まで18.5±12.0日(4〜50日)を要し,概して難治であった.なお,汗疱は一般に夏に悪化するといわれているが,季節性は認められなかった.【結論】AD寛解前汗疱様発疹の病態に関しては不明な点が多く,皮疹が改善してきている時期に発症するために,患者が不安に感じる.標準治療の普及の障害になりうるため,その周知と検討が必要と考えられた.
著者
油井 泰雄 清水 章治 柳原 行義 信太 隆夫
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.817-826,839, 1977
被引用文献数
1

1.今回対象としたキク科花粉はブタクサ, ヨモギ, セイタカアワダチソウ, キク, タンポポ, オナモミ, デージー, コスモス, センジュギクで, 皮内反応, RASTによる相関から, キク科花粉としての共通抗原性が存在することが推測された.2.ブタクサとヨモギは共通抗原性はあるがmajor allergenではなく, mino allergenで共通しているものと思われる.3.セイタカアワダチソウはブタクサ, ヨモギと共通抗原性を有しているが, ブタクサよりもヨモギに近い抗原性を示した.4.ヨモギとキクは皮内反応, RAST, ウサギ抗血清に対する反応よりmajo allergenを共有しているものと思われた.5.一般に, 今回対象としたブタクサ, ヨモギ以外のキク科花粉はブタクサないしヨモギとの共通抗原性のために反応が惹起されているものと思われるが, オナモミ以外はブタクサよりもヨモギに近い抗原性を有しているものと考えられる.
著者
古川 充 中沢 次夫 小林 節雄
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.760-764,779, 1974-11-30 (Released:2017-02-10)

毛垢アレルギーに起因する気管支喘息については職業との関連性から検討されているが, その報告は比較的少ない.今回, われわれは愛玩用にハムスターを飼育し気管支喘息の発症をみた1例を経験したので報告する.症例は23才, 男性, 会社員.下宿の8畳一間でハムスターを数匹飼育していたが, 5ヶ月後に咳嗽・喀痰を伴う呼吸困難発作が発現した.この発作は下宿にいなければみられなかった.実験用ハムスターからその毛およびフケを採取し, 生食水にて抽出した抗原液を用い各種アレルギー反応を行った.皮内反応, 眼反応, Prausnitz-Kustner反応, 吸入誘発反応はいずれも陽性反応を示した.皮内反応と吸入誘発試験は即時型および遅発型反応に陽性で, これらのいわゆる dual reaction について前述のハムスター抗原を用いて沈降反応やリンパ球の blast-like formation などを行って遅延型反応などを行い, その機序について検討を行ったが, 明確な結論はみいだせなかった.
著者
松田 健
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.49-55, 1987-01-30 (Released:2017-02-10)

正常肺, 線維化肺, 気管支喘息及び過敏性肺臓炎患者の生検肺組織を電顕的に観察し, ヒト呼吸器肥満細胞のアレルギー状態における超微形態学的特徴について検討した.観察された肥満細胞は安定型渦巻(scroll)構造優位型(S-type)と, 部分的脱顆粒状態を示唆する粒子(particulate)構造優位型(P-type)の二者に分類できた.P-typeでは粒子状顆粒はときに融合し, 化学伝達物質の急速な放出現象を示唆する迷路(labyrinth)構造(L-type)を形成した.正常肺と線維化肺ではL-typeは全く認められずS-およびP-typeが様々な程度に出現したが, 気管支喘息患者肺および過敏性肺臓炎患者肺では観察した肥満細胞の約1/4が迷路構造(L-type)を示した.これらの顆粒像の特徴からL-typeはアレルギー性肺疾患での典型的な脱顆粒形態の一面を示唆すると考えられた.一方, 同一組織中の隣接する肥満細胞間でもときのその顆粒形態に大きな違いがあることが認められ, 肥満細胞は微小環境単位で反応し脱顆粒現象を伴うものと考えられた.
著者
花城 和彦 玉城 昇 小杉 忠誠 嘉数 朝一 兼島 洋 斎藤 厚
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.434-448, 1998
参考文献数
25

喘息発作の出現と亜熱帯地域に位置する沖縄県地方の気象因子との関連を追求した.気管支喘息患者27例を対象とし過去2年間を, 喘息日記を用いて調査した.喘息発作の程度は, 喘息日記の記載から発作点数合計として算出した.一方, 喘息発作患者の救急車搬送頻度は, 那覇市消防局による過去3年間の調査結果を基にした.沖縄県那覇市の各気象因子が調査期間の平均値より高いか否かと, 喘息発作の発生との因果関係を, 2×2分割表にて分析した.その結果, 喘息日記の調査からは, 平均気温ならびに最低気温がそれぞれ調査期間の平均値を上回る日に喘息発作点数合計の上昇が認められた(p<0.05).一方, 救急車搬送頻度の調査からは, 平均気温および最高気温, 最低気温が調査期間の平均値を下回る日(p=0.0001, p=0.0001, p<0.0001), 平均蒸気圧が平均値を下回る日(p=0.0002), 平均海面気圧が平均値を上回る日(p=0.0016)に喘息発作が起こりやすいと推察された.さらに, 重回帰分析により, 低温の救急車搬送頻度に及ぼす影響の大きいことが示唆された.また, 台風接近にともなう気象因子の急変, 特に, 気温や気圧の急激な低下は喘息発作の誘因になる可能性が示唆された.
著者
安藤 克利 大国 義弘 小松 あきな 松沼 亮 中島 啓 浅井 信博 牧野 英記 金子 教宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.604-609, 2011-05-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14

症例は61歳男性.重症持続型気管支喘息にてPSL 5mg/日内服加療中であった.平成21年12月よりOmalizumabの投与を開始したところ,投与1〜2週目の臨床所見は著明に改善するも,投与後4週目より自覚症状が再燃した.さらに週単位での平均SABA使用回数も投与1-2週目の平均0.61回/日から4週目には平均0.95回/日へと増悪した.このため,平成22年4月よりOmaluzumabを3週間毎投与へと投与間隔を短縮したところ,投与間での症状再燃が消失し,ACTの平均も21.33(投与開始前9.45,4週間毎投与中15.67)まで上昇した.現在,PSL定期内服を減量,中止し,経過良好である.Omalizumabは臨床症状を改善させ,経口ステロイド使用を減少させるが,実地臨床では推奨通りの投与継続にあたって問題点も複数存在する.今回我々は推奨量の4週間毎投与で効果が不十分であったため,3週間毎投与へと投与間隔を短縮したところ,奏効し,PSLの減量,中止が可能になった症例を経験したため若干の文献的考察を踏まえて報告する.
著者
渡部 達 福家 辰樹 田島 巌 野村 伊知郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1541-1547, 2013-11-30 (Released:2017-02-10)

今回,我々は蛋白漏出性胃腸症を伴う消化管アレルギーを呈した乳児例を経験したので報告する.症例は5カ月の女児である.2320gの低出生体重児で,完全母乳栄養で育ち,成長発達に異常は認めなかった.生後55カ月頃に暇吐,下痢を主訴とした胃腸炎の診断で入院した.入院時に全身浮腫,胸腹水,血便を含む消化器症状を認め,低アルブミン血症,低ガンマグロブリン血症の状態でCRPも高値であった.消化管アレルギーが原因と考え,診断的治療として新生児乳幼児用成分栄養剤(エレンタール[○!R]P)の摂取を開始した.その後症状は改善したが3週間後に症状が再燃した為,国立成育医療研究センターに入院となった.消化管内視鏡検査では大腸に多発する輪状発赤斑を認め,生検組織検査では盲腸から直腸にかけて中等度の慢性炎症性病変を認めた.臨床経過とあわせてエレンタール[○!R]Pによる消化管アレルギーと診断された.アミノ酸調整乳(エレメンタルフォーミュラ[○!R]に変更して症状は改善し,成長・発達を含めた経過は順調である.近年注目されている本疾患について若干の考察を加えた.