著者
石井 香里
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要 (ISSN:18822851)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.65-76, 2009-09

セクシュアリティを含む生活上の問題は人権問題であるとの認識の下、セクシュアル・マイノリティの中でも特に女性カップルの生活に焦点をあて、彼女らの日常生活を描き出し、そこから女性が同性のパートナーと生活していくうえで、現実の生活においてどのような問題に直面しているのか明らかにし、合わせて問題解決に向けての当事者としての立ち位置ないしは姿勢や立場について検討、考察した。インタビューから同性パートナーと暮らしている本研究の対象者が、アイデンティティの問題やカミングアウトの問題、墓や生活保障の問題など、様々な生活上の問題を抱えていることが明らかにされた。次に、彼女らの抱えている「生きづらさ」について、「私」、「私と他者」、そして「私と社会」との関係において考察した。研究を通して、セクシュアリティに関連した様々な日常的な「生きづらさ」を抱えながらも、問題を先送りにし、誰かが世の中を変えてくれることを期待しないで待つ、という当事者の姿勢の一側面が明らかにされた。
著者
岡野 八代 野口 久美子 合場 敬子 影山 葉子 内藤 葉子 石井 香江 牟田 和恵
出版者
同志社大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の成果は、歴史的に、ほとんどの社会で女性たちが担ってきたケア実践、すなわち、育児や家事、介護や看護の経験から、女性の身体性がいかに社会的に構築されてきたかを分析し、身体をめぐる脆弱性の社会的意味や女性たちの意思決定のあり方に新しい光を当てた。本研究を通じて発表された論文・著書は、これまで社会的に過小評価されるか、社会的弱者へと押しつけられがちなケア実践を再評価するために、思想的、歴史的、そして実践現場のなかで、ケア実践の意味を新たに問い返した。

15 0 0 0 OA 座位行動の科学

著者
岡 浩一朗 杉山 岳巳 井上 茂 柴田 愛 石井 香織 OWEN Neville
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.142-153, 2013 (Released:2014-06-11)
参考文献数
62
被引用文献数
6

背景:現代社会では,移動や職場,自宅などの様々な生活場面において長時間の座位行動が蔓延している.日常生活における座位時間の多寡が,心血管代謝性疾患のバイオマーカーや2型糖尿病,ある種のがん,早世のような健康アウトカムと関連があるという証拠が急速に蓄積されつつある.重要なのは,これらの関連が身体活動に費やす時間の影響を調整した後でも認められることである.本稿では,成人を対象にした座位行動研究に関する今後の方向性を明らかにするため,近年の研究動向を行動疫学の枠組みを応用することによって概観した.内容:このレビューには,座位行動(座り過ぎ)と健康リスク指標との関連についてのエビデンス,自己報告および機器を用いた座位行動の測度,鍵となる座位行動の分布およびトレンド,座位行動のエコロジカルモデルおよび環境的関連要因,座位時間を減らすための介入の有効性,座位時間を減らすことや中断することに関する公衆衛生勧告の概要を含めた.結論:今後行うべき座位行動研究として,座位時間が健康アウトカムに及ぼす影響を明確に理解するための機器を活用した測度による地域住民を対象にした前向き研究,様々な行動場面における長時間にわたる座位行動の多水準の決定要因を解明するための前向き研究,自宅や職場,移動環境における座位行動を減少および中断させる更なる介入研究,日常生活において座位時間を減らすことに関するメッセージを広めるためのトランスレーショナルリサーチ(マスメディアキャンペーンなど),発症機序および量反応関係を解明するための実験研究などが挙げられる.
著者
田中 秀和 石井 香奈子 若林 進
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.oa.2020-0018, (Released:2021-01-13)
参考文献数
13

【目的】朝食後に赤線など一包化された分包紙へ色線を付す行為は,個々の薬局・病院において独自に配色が行われているが,転居や災害などによって調剤施設が変わると配色パターンも変更となり服用間違いが懸念されるため,配色について実態調査を行った.【方法】2018 年 5 月 16~22 日において,薬剤師を対象として Web アンケートを実施した.なお,本研究は長崎県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(長倫薬29-7).【結果】有効回答 77 件のうち,用法ごとに色線を設定していた施設は 54.5%(42件)あった.配色で最も多かった 4 色は,朝食後─赤系,昼食後─黄系,夕食後─青系,就寝前─黒系であった.アンケート中,配色パターンの統一に対して賛成 66.2%(51 件)であり,反対 15.6%(12 件)を上回った.【考察】配色パターンが未統一であることに起因するインシデント事例も存在し,統一に賛成する意見が反対する意見を上回った.配色パターンの統一が望ましいと考える.
著者
田中 秀和 石井 香奈子 若林 進
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-38, 2021 (Released:2021-04-27)
参考文献数
13

【目的】朝食後に赤線など一包化された分包紙へ色線を付す行為は,個々の薬局・病院において独自に配色が行われているが,転居や災害などによって調剤施設が変わると配色パターンも変更となり服用間違いが懸念されるため,配色について実態調査を行った.【方法】2018 年 5 月 16~22 日において,薬剤師を対象として Web アンケートを実施した.なお,本研究は長崎県薬剤師会倫理審査委員会の承認を得て実施した(長倫薬29-7).【結果】有効回答 77 件のうち,用法ごとに色線を設定していた施設は 54.5%(42件)あった.配色で最も多かった 4 色は,朝食後─赤系,昼食後─黄系,夕食後─青系,就寝前─黒系であった.アンケート中,配色パターンの統一に対して賛成 66.2%(51 件)であり,反対 15.6%(12 件)を上回った.【考察】配色パターンが未統一であることに起因するインシデント事例も存在し,統一に賛成する意見が反対する意見を上回った.配色パターンの統一が望ましいと考える.
著者
深町 花子 荒井 弘和 石井 香織 岡 浩一朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.61-69, 2017-01-31 (Released:2017-10-11)
参考文献数
27
被引用文献数
1

本研究の目的はアクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入のスポーツパフォーマンス向上への効果について系統的に概観することであった。国内外の複数のデータベースにて「マインドフルネス」や「パフォーマンス」などの関連する検索語を用いて検索を行い、11件の研究を採択した。日本では該当する研究は見られなかった。ほとんどの研究では(n=8)スポーツパフォーマンスを高めるうえでポジティブな結果が得られていた。残りの3件のうち2件でもフォローアップ期にはスポーツパフォーマンスが向上していた。本研究の結果より、アクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入は、スポーツパフォーマンス向上に効果的であると思われる。ただし、国内では全く研究が実施されていない。今後は日本のアスリートにおいてもアクセプタンスおよびマインドフルネスに基づいた介入研究が必要である。
著者
田中 稔彦 石井 香 鈴木 秀規 亀好 良一 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.54-57, 2007-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
6
被引用文献数
2

24歳,男性.初診1年半前から運動や精神的緊張によって多発する小円形膨疹を主訴に来院した.皮疹は激しい痒みをともなっていた.コリン性蕁麻疹と診断し,種々の抗ヒスタミン薬を投与したが皮疹は改善しなかった.サウナ浴によって同様の皮疹が誘発され,回収した本人の汗による皮内テストで陽性を示した.また健常人および本人の汗から精製した汗抗原で末梢血好塩基球からの著明なヒスタミン遊離が生じ,汗の中の抗原にIgE感作されていることが明らかとなった.本人の汗から回収した抗原による減感作療法を行ったところ皮疹の程度が軽減し,本人のQOLも徐々に改善した.末梢血好塩基球の汗抗原に対するヒスタミン遊離の反応性も経時的に低下し,汗抗原による減感作療法が奏効したと考えられた.
著者
桒田 寛子 木村 安美 石井 香代子 山口 享子 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.30, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】フライパンは主に炒める、焼く調理で用いるが、近年、手間や早さ等の理由から、茹でる、揚げる調理を行う際にもフライパンを使用している家庭が増加傾向にあり、メニューに対しての調理器具の固定概念が変化しつつあると推察される。使用頻度の高いフライパンを用いて、茹でるなどの調理を行い、鍋を用いたときの調理時間、調理性などと比較し、フライパン類を活用した最適メニューの提案を行うことを目的とした。 【方法】直径26cmのフライパンと直径18cmの鍋(上下2段)を用いてカボチャの煮物を同重量調理し、破断応力を測定した。また調味後の官能評価を行った。フライパン調理に最適なメニューの開発を行い、フライパンと鍋を用いて再現し、エネルギー消費量と加熱調理時間を測定した。 【結果】フライパンと鍋を比較すると、鍋の方が軟化が遅かった。また、鍋は上段と下段で煮え方が異なり、上段の方が、またカボチャの中心部の方が軟化が遅かった。調味後の官能評価において、鍋の上下段で有意差が見られた。鍋の場合、2段に分けることで味にムラができるため、フライパンの方が味が均等に染み込んだ。フライパンは、「焼く」メニューでは鍋に対し加熱調理時間が33%早く、ガス消費量は4%削減できた。これは火力を強めに設定し短時間で調理できるためと示唆された。また、「煮る」「揚げる」「茹でる」場合、フライパンでの調理が加熱調理時間で17%早く、ガスの消費量は4%削減できた。「蒸す」「炊く」場合、ガスの消費量では鍋調理が優位であった。フライパン調理の特徴として、加熱時間が短いメニューほどフライパンの優位性は増し、調理時間が長く、かつ弱火となるメニューではフライパンの優位性が低下した。
著者
小野塚 知二 藤原 辰史 新原 道信 山井 敏章 北村 陽子 高橋 一彦 芳賀 猛 宮崎 理枝 渡邉 健太 鈴木 鉄忠 梅垣 千尋 長谷川 貴彦 石井 香江 西村 亮平 井上 直子 永原 陽子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2022-06-30

野良猫の有無とその消滅過程に注目して、人間・社会の諸特質(家族形態、高齢化態様と介護形態、高齢者の孤独、猫餌の相対価格、帝国主義・植民地主義の経験とその変容、動物愛護思想、住環境、衛生意識、動物観など、従来はそれぞれ個別に認識されてきたことがら)を総合的に理解する。猫という農耕定着以降に家畜化した動物(犬と比べるなら家畜化の程度が低く、他の家畜よりも相対的に人間による介入・改変が及んでいない動物)と人との関係を、「自由猫」という概念を用いて、総合的に認識し直すことによって、新たに見えてくるであろう人間・社会の秘密を解明し、家畜人文・社会科学という新しい研究方法・領域の可能性を開拓する。
著者
光武 誠吾 柴田 愛 石井 香織 岡崎 勘造 岡 浩一朗
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.361-371, 2011 (Released:2014-06-06)
参考文献数
26
被引用文献数
3

目的 インターネット上の健康情報を有効に活用するためには,適切に健康情報を検索し,評価し,活用していく能力(e ヘルスリテラシー)が必要であるが,我が国では e ヘルスリテラシーを測る尺度すらないのが現状である。本研究では,欧米で開発された eHealth Literacy Scale (eHEALS)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性を検討するとともに,e ヘルスリテラシーと社会人口統計学的特性およびインターネット上の健康情報に対する利用状況との関連を検討した。方法 社会調査会社にモニター登録している3,000人(男性:50.0%,年齢:39.6±10.9歳)にインターネット調査を実施した。eHEALS 日本語版 8 項目,社会人口統計学的特性 6 項目,インターネット上での健康情報に関する変数 2 項目を調査した。探索的因子分析による項目選定後,構成概念妥当性は,確証的因子分析による適合度の確認,基準関連妥当性は,相互作用的•批判的ヘルスリテラシー尺度との相関により検討した。また,内部一貫性(クロンバックの α 係数)および再検査による尺度得点の相関により信頼性を検証した。さらに eHEALS 得点と社会人口統計学的およびインターネット上での健康情報に関する変数との関連の検討には,t 検定,一元配置分散分析,χ2 検定を用いた。結果 eHEALS 日本語版は 1 因子構造であり,確証的因子分析では一部修正したモデルで GFI=.988, CFI=.993, RMSEA=.056と良好な適合値が得られた。また,eHEALS 日本語版得点は,相互作用的•批判的ヘルスリテラシー尺度得点と正の相関を示した(r=.54, P<.01)。信頼性については,クロンバックの α 係数は.93であり,再調査による尺度得点の相関係数は r=.63 (P<.01)であった。eHEALS 日本語版得点は男性より女性,20代よりも40, 50代,低収入世帯よりも高収入世帯,インターネットでの情報検索頻度が少ない者より多い者で有意に高かった。また,eHEALS 日本語版得点の高い者は,健康情報を得るために多くの情報源を利用しており,その中でも特にインターネットを活用し,インターネットから取得している健康情報の内容も多様であった。結論 eHEALS 日本語版は我が国における成人の e ヘルスリテラシーを評価するために十分な信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。今後も増加するインターネット上の健康情報を個人が適切に活用するためには e ヘルスリテラシーが重要であることが示唆された。
著者
石井 香織 井上 茂 大谷 由美子 小田切 優子 高宮 朋子 下光 輝一
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.507-516, 2009-10-01 (Released:2009-11-11)
参考文献数
19
被引用文献数
6 12

Background: Perceived benefits and barriers to exercise are important correlates of exercise participation. Purpose: To develop a short version of the perceived benefits and barriers to exercise scale and to examine its validity and reliability. Methods: A population-based cross-sectional study of 865 participants (age: 20-69 years old, men: 46.5%) was conducted in four cities in Japan (Koganei, Tshukuba, Shizuoka, Kagoshima). Perceived benefits and barriers scale including five benefit subscales (physical benefit, psychological benefit, social benefit, weight management, self-improvement) with 10 items, five barrier subscales (discomfort, lack of motivation, lack of time, lack of social support, poor physical environment) with 10 items and stage of change for exercise behavior were assessed by self-administered questionnaire. Results: Confirmatory factor analyses to examine the construct validity revealed acceptable fit indices (benefit scale: GFI=.980, AGFI=.951, RMSEA=.058, AIC=151.669, barrier scale: GFI=.973, AGFI=.949, RMSEA=.060, AIC=166.084). Seven of ten subscales indicated significant linear associations with stage of change for exercise behavior, criterion-related validity was revealed. The reliability of the scale was found to be good as internal consistency and inter-rater reliability. Conclusion: The short version of the perceived benefits and barriers scale developed in this study demonstrated acceptable construct validity, criterion-related validity, internal consistency and inter-rater reliability.
著者
石井 香絵
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.43, pp.147-181, 2017-03-16

明治二一年、フランス留学から帰国した合田清は、洋画家山本芳翠とともに生巧館を設立し、日本に本格的な木口木版の技術をもたらした。初期の新聞附録から雑誌の表紙、挿絵、口絵、教科書の口絵、挿絵、広告、商標、パッケージなどの多くの複製メディアに登場し、生巧館は出版文化の隆盛とともにその活動が広く知られることとなった。しかしその全貌については不明な点が多く、研究も充分には進められていない。国文学研究資料館には生巧館が残した木口木版による膨大な数の清刷り(印刷にかける前の試し刷り)が所蔵されている。本稿では特定研究「生巧館制作による木口木版の研究―国文学研究資料館所蔵品を中心に」のこれまでの研究成果をふまえ、生巧館設立前後の時代を見直しつつ当館所蔵品の美術および歴史的価値について考察する。初期新聞附録の時代、続く雑誌・教科書の時代、後年の時代それぞれの活動状況と所蔵品がどのように関連づけられるか検討し、併せて所蔵品を手がかりに生巧館の活動の一端を明らかにしていくことを試みる。The wood block artist Gōda Kiyoshi (1862-1938) returned to Japan from a period of study in France in the twenty-first year of Meiji (1888). It was at this time that he united with Yamamoto Hōsui (1850-1906), an artist skilled in Western painting, to form the Seikō Society, which was dedicated to transmitting the techniques of wood engraving throughout Japan. The Seikō Studio, working in a time when publishing culture was at its peak, became widely known for their woodblock prints, many of which appeared in such mass-produced media as newspapers, magazines, textbooks, advertisements, as well as on business signs and the packaging for various products. Despite their fame, current research has yet to offer us a convincing picture of the overall activities of the Seikō Studio. The National Institute of Japanese Literature (NIJL) has in its possession an enormous number of test prints-those made in order to test the quality of theoriginal engraving before mass production - taken from woodblock engravings produced by the Seikō Studio. By taking into account research already conducted at NIJL on this subject, and by reexamining those historical circumstances surrounding the establishment of the Seikō Studio, this paper aims at evaluating these test prints in respect to both their artistic as well as their historical value. I will attempt, through an examination of these objects, to give a clear picture of the development of the studio’s work, tracing its appearance, first in newspapers, then in magazines and textbooks, and finally, later on, in other forms of media.
著者
山家 一哲 高橋 哲也 石井 香奈子 加藤 光弘 小林 康志
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.83-87, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
3 9

青色LED光(最大波長465 nm,80 µmol・m−2・s−1)照射が,収穫後のウンシュウミカンの青かび病抑制と果実品質に及ぼす影響について検討した.果実に青かび病菌を接種後,6日間青色LED光照射を行った結果,照射果は無照射果と比較して,腐敗部(軟化部,菌糸部,胞子形成部)が有意に小さくなった.続いて,最初に青色LED光を6日間果実に照射した後,果実に青かび病菌を付傷接種し,腐敗部の広がりを調査した.その結果,接種菌濃度が低い場合において,照射果は無照射果と比較して腐敗部が有意に小さくなった.このことから,青色LED光は青かび病菌の生育抑制と果皮の病害抵抗性を高める可能性が示唆された.青色LED光照射の有無により,果実の減量歩合とクエン酸含量に差が見られたが,その他の果実品質については照射の影響は認められなかった.
著者
柴田 愛 石井 香織 安永 明智 宮脇 梨奈 小﨑 恵生 クサリ・ ジャヴァッド 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2202, (Released:2023-03-31)

目的:本研究は,世界各国で策定された座位行動指針について概観し,その内容や特徴,策定背景を整理し,日本の成人(高齢者を含む)および子ども・青少年を対象にした座位行動指針策定に向けた基礎資料を得ることを目的とした。 方法:概観した座位行動指針は,身体活動・座位行動研究が格段に進展しており,十分な研究成果に基づいて指針が策定されているオーストラリア,アメリカ,イギリス,カナダ,WHOの5つの国・機関とした。 結果:成人に対する座位行動指針として,「長時間にわたる座位行動をできるだけ少なくすること」や「できるだけ頻繁に座位行動を中断すること」といった内容が,文章表現はわずかに異なるものの,すべての国・機関において共通して言及されていた。一方,子ども・青少年のための座位行動指針では,「余暇におけるスクリーンタイムを2時間までにすること」や「長時間の座りっぱなしを中断すること」に注目した内容が示されていた。 結論:日本の成人および子ども・青少年に対する座位行動指針を策定する際には,座位行動が種々の健康アウトカムに及ぼす影響について,諸外国および日本における研究の動向を整理し,それらの成果を踏まえた上で,日本の成人に対する座位行動指針策定の際に閾値の設定を行うかどうか十分に議論することが重要である。
著者
Kannapa Pongponrat 石井 香世子
出版者
東洋英和女学院大学現代史研究所
雑誌
現代史研究
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-20, 2015-03-31

本稿の目的は、災害弱者としての外国籍市民の置かれた状況を、現地調査をもとに明らかにすることにある。既存の在日外国人に関する研究の文脈では、在日タイ女性を対象とした研究は少なく、数少ない既存研究もタイ女性を人身売買の被害者として扱うか、もしくは蓄積の著しい在日フィリピン女性をめぐる議論を援用して扱うことが多かった。しかし東日本大震災とそれに続いた津波被害を経験しながらも引き続き被災地で生活を送る在日タイ女性への調査結果からは、調査対象となった在日タイ女性たちはそもそも被災者となる以前から、既存研究が在日フィリピン女性について指摘してきた相互扶助ネットワークや英語を活かした生存戦略に乏しく、日本人家族と暮らしながら日本社会のなかで周縁化される傾向が強かったことが浮かび上がった。この周縁化はとくに言語や情報収集の面で顕著であったといえる。この周縁性がひとたび被災者となり仮説住居で暮らすようになった場合、情報収集・情報発信の両面において深刻化した。この結果、在日タイ女性たちは、被災者としての情報収集・発信における困難と外国籍市民としての困難との、「二重の脆弱性」に晒される状況に陥っていると言うことができるのではないだろうか。