著者
花井 俊一朗 佐藤 健夫 武田 孝一 永谷 勝也 岩本 雅弘 簑田 清次
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.1269-1273, 2015 (Released:2015-12-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は18歳女性,主訴は多関節痛.16歳より尋常性ざ瘡に対してミノサイクリン200mg/日(ミノサイクリン塩酸塩錠® 50mg,1回2錠,1日2回)を内服していた.入院約3カ月前より発熱を認め,1カ月前より手指や膝などの関節痛を自覚した.近医で抗DNA抗体高値を指摘され,膠原病が疑われ当科へ紹介となった.また,入院約1カ月前より残薬がなくなったためミノサイクリンの内服を自己中断していた.初診時,抗核抗体640倍(homogeneous pattern),抗ds-DNA抗体20.1IU/mLと高値であり,肝逸脱酵素上昇を認め,精査のため入院した.入院時,発熱および関節痛は改善し,血球減少や血清補体価の低下,紅斑や重要臓器障害は認めなかった.薬剤中止後に症状が改善したことから,ミノサイクリンによる薬剤誘発性ループス(drug induced lupus:DIL)と診断した.その後も発熱や関節痛の再燃はなく,抗ds-DNA抗体は約3カ月後に3.4IU/mLと陰性化した.また,肝逸脱酵素も正常化した.今回,尋常性ざ瘡治療での長期ミノサイクリン内服によるDILの1例を経験した.ミノサイクリンによるDILの報告は本邦では少なく,貴重な症例と考え報告する.
著者
浅井 貞宏
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.22-31, 2008-01-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
10
著者
坂井 堅太郎 松岡 葵 牛山 優 下田 妙子 上田 伸男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.1176-1181, 1998-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4

鶏卵の卵白中のオボムコイド(OM)は, 他の卵白タンパク質に比較してアレルゲン活性が最も高く, 加熱により凝固しない特徴を持っている.鶏卵を15分間沸騰水浴中で作成したゆで卵の卵黄をOMに対する特異抗体を用いたイムノブロットとELISAにより分析したところ, OMは加熱凝固卵白の水溶性成分として卵黄側へ拡散・浸透していることを認めた.卵黄中のOMは, ゆで卵作成直後で卵黄1g当たり4.8±0.8μgと定量された.ゆで卵を室温に120分間放置したゆで卵から取り出した卵黄中のOMは卵黄1g当たり78.8±31.3μgと定量され, ゆで卵作成直後の16.4倍であった.加熱凝固卵白水溶性画分のOMとタンパク質量は, それぞれ14.2±11.9mg/mlと37.7±3.2mg/mlと定量され, OMは全タンパク質量の約40%を占めていた.ゆで卵の作成により卵白中のOMが卵黄側へ拡散・浸透することは避けられないと思われるが, アレルゲン性の強いOMの感作をできるだけ回避するには, 長時間放置したゆで卵の卵黄を使用するのは望ましくないであろう.
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一 西岡 清 足立 満
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.593-597, 2007-06-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12

症例は30歳の男性.アワビの貝殻に盛られた魚の刺身を食べた直後にアナフィラキシーショックを認めた.以前にもアナフィラキシーショックの既往があり,いずれも海産物を摂取した後に発症していた. CAP-FEIAでホタテと牡蟻で陽性を示し,貝類をアレルゲンとして疑った.そこで市販のアレルゲンエキスによる皮膚試験に加え,種々の貝類を用いたprick by prick testを施行した.その結果アワビのみで陽性を示し,貝殻に残っていたアワビの成分が付着した刺身の摂取が今回のアナフィラキシーショックの原因であると考えた.臨床検査に項目がない,あるいは皮膚試験用エキスが国内で販売されていない食材がアレルゲンとして疑わしい場合や,事情により負荷試験ができない場合にprick by prick testは外来診療で実施可能かつ有用な検査方法と考える.
著者
原田 晋 堀川 達弥 市橋 正光
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1066-1073, 2000
参考文献数
37
被引用文献数
33

food-dependent exercise-induced anaphylaxisの本邦報告例167例を集計し, その臨床的特徴の解析を行った. その結果, 1)本症は男性特に10歳代に好発する, 2)原因食物は小麦が最多で次いでエビであるが, 20歳未満の症例ではエビが最多となる, 3)原因食物に対する即時型アレルギー検査は大部分で陽性を示し, 基本的にI型アレルギーに基づく反応と考えられる, 4)約40%の症例でアトピー性疾患の既往ないし合併を認め, 両者間には関連性があると考えられる, 5)誘発試験にアスピリンを加えたすべての症例でアスピリンの関与が認められ, アスピリンは本症の増悪因子として作用している可能性がある, 6)本症の報告は年次毎に増加傾向を認めている, 7)学童の昼食後の昼休みないし5時間目の体育の授業中での発症例が17例(10.2%)ある等の特徴が認められ, これらの結果から特に学校関係者に対し本症に関する知識を啓蒙する必要があると考えられた.
著者
蓑島 宗夫 徳永 舞 小池 由美 伊藤 靖典
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.1258-1262, 2023 (Released:2023-12-13)
参考文献数
33

近年,食用昆虫が注目され,摂取時のアレルギーリスクも指摘されているが,症例報告は少ない.我々は,アレルギー疾患の既往がないため発症の予見が困難であった食用コオロギによる即時型アレルギーの症例を経験した.コオロギせんべい2枚を摂取後に,くしゃみ,鼻汁,咳,眼瞼浮腫を呈した3歳男児で,エビの摂取歴はあるが食用昆虫の摂取歴はなかった.プリックテストと食物経口負荷試験の結果からフタホシコオロギが原因であることを確認した.IgE inhibition testでは,フタホシコオロギにより蛾,エビ,ヤケヒョウヒダニそれぞれの特異IgE値が著明に抑制された.本例では人生初のアレルギー症状が食用コオロギによって生じており,食用昆虫によるアレルギーのリスクを示す重要な事例である.昆虫アレルゲンには節足動物に共通したトロポミオシンやアルギニンキナーゼが含まれるが,他にも多くのアレルゲンが報告されており,交差反応による感作の可能性もある.昆虫食の普及に伴い,アレルギー発症例が増える可能性があるため,食品表示や予防策の検討をする必要がある.
著者
亀好 良一 田中 稔彦 望月 満 高路 修 三原 祥嗣 平郡 隆明 田中 麻衣子 秀 道広
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.130-137, 2008-02-28 (Released:2017-02-10)
参考文献数
11
被引用文献数
10

【目的】アトピー性皮膚炎(AD)対策としての,学校でのシャワー浴の有効性について検討した.【方法】厚生労働科学研究AD治療ガイドラインにおける中等症以上の症例を対象とした.小学校1年生から中学校2年生までの患児58名を,シャワー浴非実施群(A群,15例),4週間実施群(B群,22例),前半または後半の2週間のみ実施群(C1群,11例およびC2群,10例)に割りつけ,9月上旬から学校でのシャワー浴を実施し,開始時,2週間後,4週間後の状態をSCORADにより評価した.【結果】いずれの群も4週間後にはSCORAD値の低下を認めたが,有意の改善はB群,C1群に限定された。重症度別に検討すると,シャワー浴の効果は重症以上の群で明らかであった.SCORADから自党症状を除いたスコアでも同様の結果が得られ,シャワー浴が皮膚炎の改善にも有効であることが示された。【結語】対象者,時期を適切に選ぶことにより,学校でのシャワー浴はADの改善に有用な対策となりうることが示された.
著者
福田 早紀子 吉永 健 平田 奈穂美 石塚 洋一 入倉 充 入江 徹美 興梠 博次
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.1521-1529, 2009-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
17
被引用文献数
3

【目的】気管支喘息の薬物治療には,吸入薬が多く使用されている.しかしながら,不適切な操作やアドヒアランスの不良により,症状の改善につながらない場合もあるために,吸入治療には適正操作を習得できるように吸入指導が必須である.そこで,我々は,従来行っていた吸入指導よりも効果的な吸入指導方法を立案し,その有用性について検討した.【方法】2008年4月から8月の5ヵ月間に,熊本中央病院呼吸器科を外来受診した気管支喘息患者で,保険薬局に吸入薬を含む処方箋を持参した患者28名を対象とし,薬局で手技実演および視覚的ツールを活用した新たな吸入個別指導方法を導入し,操作改善について評価した.さらに,19名については,喘息コントロールテスト(Asthma Control Test:ACT)を用いて治療効果を評価した.【結果】保険薬局での新たな吸入個別指導法の導入によって,吸入操作が適切でなかった20例において,不適正操作項目の有意な改善がみられた.さらに,対象者のうち19名においては,ACTスコアの有意な上昇(19.1から21.4)が得られ,症状の改善が証明された.【結論】喘息治療に対して保険薬局における吸入手技実演および視覚的効果を生かした吸入個別指導の有用性が確認された.さらに,病院・薬局間での連携(病薬連携)が治療向上につながったと考える.
著者
城 智彦 勝谷 隆 猪子 嘉生 大塚 正 鹿内 喜佐男 高橋 睦子 豊島 照雄 森川 修次
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.88-99,170-171, 1964
被引用文献数
2

広島県下のかきのむき身業者の間に近年喘息様疾患が多発している.私どもはこれにかきの打ち子喘息と命名して研究し, 次の結果をえた.1.本症は1951年頃より発生して以後年々増加する傾向があり, 県下全域の養殖場にひろく分布し, 各地域とも20%をこえる発生率を示した.打ち子の年令, 性別は本症の発生と関係なく, 発病までの従業期間は5年以内のものが過半数をしめた.2.本症の症状はかき打ちに従事した場合にのみ発生し, かき打ちの季節外や, 作業を休んだ時には無症状である.症状により4型をわけたが, 2型, 3型, 4C型, 4D型などの病型に属するものが多く, 1型, 4A型, 4B型などは少なかった.また発病後の経過年数の短かいものには軽症型, 長いものには重症型が多かった.Spirometryでは発作時に一般の喘息同様, 閉塞性の呼吸障害の存在がうかがわれた.3.本症患者はホヤ抗原液に対して特異的に高い皮膚反応性を示し, その一部では同抗原液の吸入により喘息様症状が誘発された.また本症患者血清による.P-K反応は陽性であった.これらのことから本症はホヤ体液による吸入性, アレルギー性喘息であると推定される.4.ホヤ類(特にシロボヤ, エボヤ)の付着状況と本症発生状況の間には密接な関係がある.戦後筏式養殖法が普及し, かき殻にホヤの付着をみるようになったことが, 近年になって本症の発生をもたらした原因と考えられる.5.蕁麻疹の既往のあるもの, 血族に喘息のあるものは, そうでない者に比して本症にかかりやすい.6.かき打ちに際して眼あるいは皮膚に〓痒感を訴えるものがあった.7.本症の治療にはホヤ抗原液による減感作が全症例において有効で, 一般の喘息剤も対症的には有効であった.8.ホヤ体液の吸入を防止すれば, 本症の発生は相当程度防げるものと思われる.

7 0 0 0 OA TRPチャネル

著者
吉原 重美
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.826-828, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
15