著者
谷口 綾子 高野 伸栄 原 文宏
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.814-820, 2003-11-01
被引用文献数
1

トラベル・フィードバック・プログラム(TFP)は, 自動車利用から公共交通機関への転換を目指して, 人々の行動に影響を与える心理要因に働きかけ, 自発的な行動の変化を目的とする交通需要マネジメントの一手法である.TFPは個人の交通行動の調査とその結果に基づく診断書を提示するなどのフィードバックを繰り返すコミュニケーション・プログラムで, 本稿ではその考え方と具体的な手順とともに, 2000年度札幌市における事例の紹介およびその実務における留意点を取りまとめる.
著者
田中 健一
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.164-169, 2010-03-01

本稿では,都市における施設サービスへのアクセスを時間軸を導入して記述するモデルを構成し,首都圏鉄道網と駅間移動データを用いて各駅の立ち寄り易さを分析する.具体的には,退社後の帰宅途中に一定時間サービスにアクセスし決められた時刻までに帰宅可能な人数をサービス利用可能者数と捉え,サービスの提供場所と開始時刻の双方が利用可能者数に与える影響を分析する.分析結果から,JR山手線の各駅は時空間的な立ち寄り易さが際立って高いことが明らかになる.このモデルを基礎として,時空間領域における配置問題として一般化する方向性を示し,今後の展望について記述する.
著者
牧本 直樹
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.418-421, 2004-07-01
被引用文献数
2

水稲では、保険リスク評価の基本モデルとして知られるCramer〜Lundbergモデルと待ち行列モデルの関連について解説する.Cram6r-Lundbergモデルにおける破産確率は,支払請求の発生間隔と請求額をそれぞれ到着間隔とサービス時間に対応させることで,待ち行列モデルの待ち時間分布として表現できる.そのため、待ち行列理論における種々の結果からこのモデルのリスク評価を行うことが可能どなる.また,破産時点など破産確率以外の評価指標や,マルコフ環境への拡張、請求額分布がファットテールを持つ場合など、双方のモデルにおける最近の話題についても概説する.
著者
臼田 光一 吉澤 睦博
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.664-667, 2009-11-01

平成21年8月11日駿河湾の地震で,静岡県内の東名高速道路が被災を受け,交通車両が迂回を余儀なくされ渋滞による物流の遅延が発生していたことは記憶に新しい.本システムは従来技術である地震発生による建物(製造拠点・物流拠点)の被害予測に加えて,周辺のライフライン(道路等)の被害予測を行い,地震発生時の製造から物流にいたるSC(サプライチェーン)に対するBCP(事業継続計画)策定を支援するシステムとして開発をした.
著者
山下 英明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.430-433, 2004-07-01

生産システムの搬送手段の中で,柔軟性の高いものにAGV(Automated Guided Vehicle ; 自動搬送車)がある.AGVはコンベヤなどと比べ柔軟性は高いが搬送量が少ないので,搬送要求が発生してから搬送が開始されるまでの搬送待ち時間が増加し、工程での仕掛品不足やリードタイム増加の原因となる場合もある.本橋では、待ち行列モデルを用いたアプローチを用いて,搬送待ち時間を削減する搬送要求の処理順序やAGVの割当て規則を検討する.
著者
竹中 毅 相澤 祐一 鈴木 晋太郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.570-575, 2009-09-01

音楽の設計は,他の人工物の設計と比べて,環境条件や目的を明示化することが極めて困難である.そのため,音楽の設計理論に対する科学的,工学的なアプローチは少なく,作曲行為は人間の暗黙知に大きく依存している.一方で,既存の音楽には時代や地域を超えた共通性が見られることから,音楽的秩序には人間の認知的・身体的特性に基づく必然性があると思われる.筆者らは,人間の認知的特性に基づいて,創発的に楽曲断片を生成することで,音楽の発生学的な根拠を理解することを目的としてきた.本稿では,筆者らの研究例を紹介するとともに,新たな音楽設計理論の可能性について議論したい.
著者
辺見 和晃
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.749-755, 2009-12-01

100年近くも前に考案されたモンテカルロ・シミュレーションは元々物理学で用いられた手法であったが,その後,金融,品質管理,経営判断など様々なビジネス分野にも応用されてきた.特にオフィスにコンピュータが普及した今日では,確率分布を含む計算を極めて手軽に行えることから,ビジネス上の確率を伴った事象である"リスク"の計量に一役買っている.本稿では,商社をはじめとする多くの国内企業において行われている,モンテカルロ・シミュレーションを用いた不確実性下の事業投資評価について紹介する.
著者
中田 和秀 梅谷 俊治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.504-505, 2009-08-01

第23回企業事例交流会は,平成21年春期研究発表会初日の3月17日に筑波大学春日キャンパスで開催された.今回の企業事例交流会では3件の発表があり,座長は日本アイ・ビー・エム(株)の米沢隆氏が務められた.この企業事例交流会は,OR学会において大学の理論コミュニティと企業の実務家コミュニティが融合する貴重な場であるが,発表の後の熱心な質疑応答を拝見し,その主旨が十分に果たされていると感じた.また,筆者も今回の企業事例交流会に参加したことで,今後の研究や大学でのOR教育を実践していくにあたり,非常によい経験となったというのが率直な感想である.以下では,3件の発表についてまとめる.
著者
枇々木 規雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.740-745, 2005-11-01

研究発表会において「金融/ファイナンス/金融工学」セッションは1990年に初めて登場した.本稿ではこの15年間を振り返り, 発表件数や内容を分野, 方法論別に分類し, 時系列推移の特徴も調べた.全体的にはポートフォリオ理論の研究および数理計画法の利用が多いが, 最近はオプション理論の研究が増加するなど, 傾向は変化している.また, 発表回数分布から常連が少ないことも分かった.これらの点は参加していて感じていたことだが, 実際のデータからも明らかになった.後半では, ORにおける金融研究の役割と位置付けについて説明し, 研究発表会に参加する目的や金融工学の研究に必要なことも述べた.
著者
福原 正大
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.631-636, 2009-10-01

100年に1度ともいわれる今回の金融危機の一因として,ヘッジ・ファンドが挙げられている.本稿は,この「ヘッジ・ファンドと金融危機」について考察することを目的とし,そのためにヘッジ・ファンドとは何か,どのような発展を辿ってきたか,なぜ発展できたのかを明らかにし,その後ヘッジ・ファンドが金融危機に与えた影響を探ることとする.この際,金融工学がヘッジ・ファンドに果たした役割についても簡単にふれる.最後に,金融危機後のヘッジ・ファンド業界の展望を述べることとしたい.
著者
中桐 裕子 栗田 治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, 2002-03-01

本研究は,従来のモデルでは追従しきれない成長現象を記述するモデルとして,階層構造を有する成長現象の微分方程式モデルを取り上げ,考察を加えるものである.ある種の成長現象は,n種の性質を順番に取得するといった「階層的な」構造を持っている.そこで本研究では,ある段階の性質を身に付ける個体数の成長速度が,その段階及び直前の段階の性質を入手している個体数に依存するという仮定を設けて,『段階的成長微分方程式モデル』を作成した.同様の仮定から,宅地化を経て市街化面積が広がる様子を上手く記述するモデル等が提案されているが,本研究では,従来の研究にはなかった多段階成長の連立微分方程式に着目して,これに一般解を与える.モデルの適用例としては,特にゲーム機の売上データを取り上げた.ハード購入希望者→ハード購入者→ソフト購入者といった階層的な構造を定式化したモデルを実データに当てはめた結果,発売直後のハード売上を再現するには,段階的成長モデルが有効であることが確認できた.更にこのモデルを応用して,値下げキャンペーンによる売上増を記述できる簡便なモデルを作成することに成功した.過去の分析例や今回の研究結果より,ゲーム機売上の記述に留まらず,他の社会現象の中にも,このモデルによる記述が有効な局面も存在するのではないかと考えられる.