著者
平賀 正樹
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.170-178, 1989-04-14
被引用文献数
1

近年,情報処理分野で日本語プログラミング言語が話題になっているが,その中の代表的なものにMindがある.Mindは,もともとForthから派生したパソコン用コンパイラ言語である.そして,その日本語記述能力による初心者用言語というイメージに反して,最近では開発用言語として使用されている場合が増えてきている. 本稿では,このMindの概要を述べるとともにそのプログラム記述能力などについても言及する.またMindによるアプリケーションの開発事例を紹介し,今後の課題も含めて考察する.
著者
横田 隆夫
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.412-419, 1996-09-17

今年の2月21日の朝日新聞夕刊に「2000年,コンピュータが迷う,ソフト修正1兆円の特需」という記事が第1面に載った.コンピュータのソフトウェアが西暦の年数を下2桁でしか持っていないために,西暦2000年になると多くのシステムが故障をするという.その対応策を2000年到来前に立てなければならないが,それを多くの企業がここ数年のうちに実施するために情報処理業界は特需になるということである.また,「日経コンピュータ」の今年の5月27日号にも「2000年問題待ったなし」という見出しで特集された.ユーザーの動きに呼応して,メインフレーマを中心にベンダー側も2000年対応のサービスとツールを整備しつつある,と最近の状況を伝えていた.他にも,昨年から今年にかけて新聞や週刊誌にまで,2000年問題の大きさや喚起に関する記事が数多く掲載された.果たして2000年問題の実態はどうなのであろうか.最近では,インターネットのニュースグループを通じて,この2000年問題に関する議論が学者や企業の専門家の間で活発に行われているが,この内容などを参考にして2000年問題の起こった必然性とその大きさ,対応策などについて論じ,日本ソフトウェア科学会員の皆様のお役に立てばと思う次第である. 以下,アプリケーション,特に業務システムを中心に論じる.
著者
山本 哲男 松下 誠 井上 克郎
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.250-260, 2001-05-15
被引用文献数
1

近年,ハードディスクの容量は飛躍的に大きくなり,その値段は急速に低下してきている.ディスク容量が十分に大きければ,不要なファイルを消す必要がなく,変化する全てのバージョンを保存できると考えられる.本論分では,まず自動的に全てのファイルの変更を保存する堆積型ファイルシステムMoraineを提案する.Moraineでは常に最新のバージョンが透過的に操作可能であり,記録されたバージョンを容易に取り出すことが可能である,また,Moraineを用いたソフトウェアメトリクス環境であるMAME(Moraine As a Metrics Environment)を提案する.MAMEはソフトウェア開発に用いることにより,開発の途中あるいは終了時にさまざまなメトリクスデータを収集し分析することを可能にする.
著者
原田 康徳 Yasunori Harada NTT基礎研究所 NTT Basic Research Laboratories
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.271-274, 1996-05-15
参考文献数
3

3回目となったWISS (Workshop on Interactive Software and Systems)は広島県加計町温井スプリングスで開催された.プログラム委員長は,2年間続いたSony CSLの竹内影一氏に代わり,筑波大学の田中二郎先生である.今回の参加者は約90名と,年々増加の傾向にある.古くて新しいテーマであるインタラクティブシステムも,ハードウェアの進歩に伴い,次々と新しいアイデアが産まれているようである.
著者
河邊 昌彦 二村 良彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.363-368, 2003-07-25

頂点にラベルの付いた連結グラフのランダム生成は,グラフアルゴリズムの評価のために重要である.本稿では,グラフのランダム生成に必要な構成比を近似する方法を提案し,それによって高速な生成が可能であることを示す.グラフアルゴリズムの評価には,特定の性質を有してランダムに生成されたグラフが多量に必要である.また,ネットワークのシミュレーション等に関しても,テストデータとしてランダムに生成されたグラフを必要とすることがある.その際,グラフ生成が高速であることと同時に,生成されるグラフのランダムネスに関しても高精度であることが要求される.例えば,[1]において最小全域木問題を線形時間で解く確率的アルゴリズムが示されているが,このアルゴリズムの検証を実際に行うためには,テストデータとしてランダムに生成された重み付き連結無向グラフが必要となる.このようなグラフは,ランダムに生成されたラベル付き連結無向グラフから生成可能である[6].指定された頂点数nと辺数mを持ち,頂点にラベルの付いた連結無向グラフをランダムに生成する既存の方法として,以下のものが挙げられる.頂点数nの木をランダムに生成し,これにm-m+1本の辺をランダムに付け加えることによって連結グラフを生成できる(全域木法).また,m本の辺をランダムに決定して生成されたグラフが連結となるまで繰り返して,連結グラフを生成する方法もある(生成検査法).或いは,構成比というグラフ総数に関する指標を用いて,ランダムにグラフを生成することができる(構成比法).しかし,全域木法に関してはランダムネスの精度に,生成検査法と構成比法に関しては生成時間に問題があり,必ずしも実用可能ではない.また,これら以外で効率的なグラフ生成を可能とする方法は,我々の調査では見出せなかった.本稿では,構成比を高い精度で近似する単純な近似式を提案する.それにより,構成比法によるグラフ生成の時間を改善し,大規模なグラフに関しても現実的な時間で生成できることを示す.
著者
大澤 一郎
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.147-156, 1996-03-15
被引用文献数
1

人間との円滑なコミュニケーションが実行可能な知能エージェントのモデルを提案し,そのモデルの有効性を検証するために実装した知能エージェントシステム「ラスカル」を紹介する.知能エージェントのアーキテクチャとしては,即応(reactive)システムをベースにして,センサ系と動作選択系の間に「因果シミュレータ」と呼ぶ新しい系を導入している.因果シミュレータは,センサ系から得た情報と直前の状況情報に基づく因果の拡散伝搬計算を,因果ネットワークによる超並列協調計算により行なう.そして,センサ系だけからは得られない有用な動作選択用の情報を短時間で求めている.例えば,人間と自然言語でコミュニケーションする場合には,対話相手の意図および信念に関する情報などを適切に管理する.このような知能エージェントモデルに基づいて実装した知能エージェントシステム「ラスカル」は,自分の発話をセンサ系からフィードバックさせて他人の発話同様に解釈するなどして,流れる時間の中で動的に状況の変化を捉え,状況に応じた適切な動作系列を創発的に選択し実行していく.
著者
伊藤 純一郎 横手 靖彦 所 真理雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.30-34, 1997-01-16

インターネットで現在利用されているIPv4プロトコルは,インターネットの爆発的成長に耐えられない,という指摘がある.このため,IPv6プロトコルが提案され,現在移行へ向けた考察が行われている.しかしながら,現在のルータソフトウェア構成法では,今後行われるプロトコル策定やプロトコルの仕様変更などに柔軟に対処することが困難である.本論文では,Apertosオペレーティングシステム上にIPv6ルータのプロトコル処理部を実装することで,これらの問題の解決を目指している.本方法では,並行オブジェクトによるソフトウェア構成によりプロトコル処理部のモジュール間の独立性を確保し,自己反映計算に基づくOSアーキテクチャの利用によりプログラマに最適なプログラミング環境を提供することができる.
著者
西田 健志 五十嵐 健夫 Takeshi Nishida Takeo Igarashi 東京大学大学院情報理工学系研究科 東京大学大学院情報理工学系研究科:科学技術振興機構さきがけ Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo:JST PRESTO
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.69-75, 2006-10-26
参考文献数
7
被引用文献数
3

本論文では,参加者間で画像を共有し,それら画像の特定部分に会話を結びつけることのできるチャットシステムLock-on-Chatとその運用により得られた様々な知見をまとめる.文書や画像と会話を結びつけるほかのシステムが,ひとつの文書について深く議論するのに適しているのに対して,我々のシステムは複数の画像に分散した会話をしやすくすることに重きを置いてデザインされている.Lock-on-Chatは学術会議において発表中に聴衆が会話するためのシステムとして運用された.Lock-on-Chatが局面に応じてさまざまな使われ方がされる様子,多くの参加者が活発に議論する様子が観察された.
著者
佐藤 健 井上 克巳 岩沼 宏治 坂間 千秋
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.27-35, 2003-01-24
被引用文献数
1

現在のマルチエージェントシステムでは,エージェントが他エージェントに質問を与えた場合に, 質問を受けたエージェントが答を返すまでは, 質問したエージェントの処理は中断されることが普通である. インターネットのような通信が必ずしも保証されていないような環境下においては, このような中断がデッドロックを引き起こすことがありうる.また, たとえ通信が完全であっても, 他エージェントの処理に時間がかかっていれば、通信が不完全な状態と同じような状態になることがありうる. 本論文は、このような通信が必ずしも保証されていないマルチエージェントシステムにおける分散問題解決の手法を与える. 本手法は, 質問に対するデフォルトの回答を用意しておき, 回答が戻らなくても, デフォルトを用いて計算を進め, その後, 送られてきた真の回答がデフォルトと異なるときのみ, 計算をやり直すというものである. 本論文では, マスタースレーブマルチエージェントシステムにおいて,副作用が存在しない処理での投機的計算手法を仮説論理プログラミングの枠組みで実現し, 手法の健全性を示す.
著者
辻田 眸 塚田 浩二 椎尾 一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.18-28, 2010-01-26
被引用文献数
1

距離を隔てて暮らす人たちに,相手の存在感や振る舞いなどのアウェアネスを伝えることで,従来の電話やメールを補完もしくは置き換えようとする新しいコミュニケーションシステムが多数提案されている.本研究では,日常生活における行動の偶然の一致が,話題のきっかけ,親近感,連帯感などをもたらすことに着目し,遠隔地にいる人々の行動が偶然一致したことを伝達する,新しいコミュニケーションシステムを提案する.また,ドアの開閉,ソファーへの着席,テレビの視聴などを検出して一致を伝達するシステムを試作し,研究室間での評価実験を行った.さらに2家族間での遠隔実験の結果を示し,今後の展望を述べる.
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.20-32, 2008-07-25
被引用文献数
7

Prologがベースとしているホーン節論理に基づく論理プログラミングでは,構文的制約があって確定的知識しか表現できないことが,現実的な知識表現のためには限界であるとされていた.この問題点を克服するために,論理プログラミングにおいて不完全・不確定な情報を扱うための拡張理論が1980年代後半から数多く提案された. 1999年にはこれらに加えて制約プログラミングの概念を融合した解集合プログラミングの概念が確立され,現在では論理プログラミングの中心的な研究テーマの1つになっている.本稿では過去からのこうした研究の流れと新しい論理プログラミングの可能性について探る.
著者
中野 浩
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.324-328, 1987-10-15

コンビーネーターを用いた作用的(applicative)プログラミングの実現系における実験から,2つのプログラミング技法を抽出する.また,これらの技法を,Lispにおける場合と比較し,コンビネーター法という新しいアーキテクチャにおいては,既存のものとは異なるプログラミング技法が有効であることを示す.
著者
横尾 真 北村 泰彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.379-387, 1997-07-15
被引用文献数
8

複数のエージェントが1つの問題を並行して解く協調探索において,進化的計算における淘汰と同様なアイデアを用いてエージェント間の競争を導入したアルゴリズムを開発した.本アルゴリズムでは,状態空間探索問題を解くマルチエージェントReal-Time A^*アルゴリズムにおいて,複数のエージェントが定期的に適合度に応じて確率的に次世代の子を作る.適合度はエージェントの現在位置の評価値によって決定され,より良い評価値を持つエージェントが次の世代により多くの子を残せる.この方法により,有望な経路に労力を集中しアルゴリズムを効率化することと,多様性を保ち知識の誤りに対して頑健であることが両立可能である. 例題を用いた評価により,nパズルのように問題の目標が直列化可能な複数の副目標(serializable subgoals)に分解可能な場合には,エージェントは副目標に関する知識を持っていないにもかかわらず,本方式により劇的な高速化が得られることを示す.特に,本アルゴリズムは48パズルを安定して解くことが可能である.この問題は副目標に関する知識を陽に与えない限り,従来のヒューリスティック探索アルゴリズムでは現実的な時間内で解を得ることは不可能であった.
著者
小関 悠 角 康之 西田 豊明 間瀬 健二
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.41-50, 2007-07-26
被引用文献数
2

本稿では研究発表会や博物館見学といったイベント空間において取得可能な体験データを,ユーザーが閲覧・編集するためのシステムを提案・実装する.種々のカメラやセンサー機器の発達により大量の取得が可能となった体験データを,ユーザーの扱いやすい形にすることで,その編集や共有を促すことが狙いである.システムは大きく二つの部分に分けられる.一つは体験データを自動的に要約してユーザーに提示するシステムであり,特にセンサー情報を用いることで映像データを「ぱらぱらアニメ」,すなわち,シーンを表現する複数枚の特徴的なスナップショットのセットへと変換する手法について述べる.もう一つは要約された体験データの鑑賞・編集システムであり,こちらでは「ぱらぱらアニメ」の特性を生かし漫画的なレイアウトを組むことで体験データを好みの観点で観賞・編集が出来ることを中心に述べる.本システムは体験データの閲覧や編集へのアクセシビリティを高めるため,Webアプリケーションとして実装した.
著者
松尾 真一郎 秋山 浩一郎 尾花 賢 岡本 健 面 和成 鈴木 幸太郎
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.74-77, 2002-09-25

2002年3月11日から3月14日まで,バミューダにてFinancial Cryptography 2002(FC2002)が開催された。本稿では,FC2002の概要について報告する.
著者
二村 良彦 大谷 啓記 青木 健一 二村 夏彦
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.588-605, 1997-11-17
被引用文献数
1

長さnの順列を等確率,即ち1/n!で生成するO(n)アルゴリズムは知られている.しかし,整列アルゴリズム等の精密な評価のためには,このような一様乱順列による評価では不十分である.例えば,一様乱順列に含まれる葉数(自分よりも小さい隣人を持たない要素の個数),ランズ,および上昇部分の個数(即ちn-ランズ)は,平均各々約(n+1)/3,(n+1)/2,および(n-1)/2である.これは一様乱順列が極めて偏った特性を有することを意味する.アルゴリズムの性能に影響を及ぼす性質(例えば葉数)を制御しながらランダムに順列を生成し,それを用いてアルゴリズムの性能を評価する必要がある.本稿では,順列から非負の整数上への関数および関数値を順列の特性指標と呼ぶ.特性指標の中でも,順列の葉数,ランズ,上昇部分数等に対応するクラスを単純指標と呼び,それを形式的に定義する.そして長さn,単純指標mを持つ乱順列をO(nm)で生成する計算機オーバーフロー(またはアンダーフロー)無しの方法を提案する.また,単純指標が葉数である場合には順列をO(n)で生成する実用的近似方式について報告する.

1 0 0 0 OA COLING '94報告

著者
田中 久美子 宮田 高志
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.184-188, 1995-03-15

第15回計算言語国際会議(International Conference on Computational Linguistics,略称COLING)が,8月5日から9日にかけて5日間,京都で開催された.プログラム委員長にSheffield大学のYorick Wilks,会議委員長に京都大学の長尾真という顔ぶれで,参加者は約600人,採択論文は197件であった.また一般発表の他に招待講演が4件,招待パネルが2件,チュートリアルが6件,日本企業のデモンストレーションが7件,行なわれた.さらに本会議の前後に2つの併設ワークショップ(Second Annual Workshop on Very Large Corpora (8月4日)およびInternational Workshop on Sharable Natural Language Resources (8月10日,11日))が開かれた.