著者
山田 誠二
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.12-16, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

現在の第3次AIブームを牽引しているのは,機械学習を中心とした人工知能AIの応用である。そこでは,医療・ヘルスケアを中心に様々な分野でAIの社会導入が始まっているが,現在注目されているのが教育へのAI応用である。これまで,知的教育システムITSを中心にAIベースの教育システムが研究・開発されてきているが,現在アダプティブラーニングの発展と共にAIと教育のコラボレーションが一層活性化することが期待されている。本稿では,AIの現状,今回のブームの特徴,背景について触れ,これまでの教育へのAI導入であるITSを概観する。続いて,教育におけるIT導入,あるいはe-learningのホットトピックであるアダプティブラーニングをAI研究の視点から眺め,筆者の専門領域でもあるHAIヒューマンエージェントインタラクションに密に関連するペダゴジカルエージェントを初めとする教育のAI化について考察する。
著者
田島 貴裕 大津 晶
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.103-108, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

LMSとクリッカーを積極的に活用して大規模講義での学生間コミュニケーションの活性化と効率的な授業運営を両立させるアクティブラーニング手法を開発し,初年次キャリア教育科目に導入した。授業アンケートの結果,当該科目の受講学生は多数の学生との交流やグループワークに満足していることが示された。また「学生の理解を促す工夫」「学習資料の提示」「私語や遅刻への対処」「教室環境」は,他の初年次共通科目群の平均値よりもやや高い値を示し,同手法を用いた大規模クラスの参加型講義運営には大きな問題が無いことが分かった。他方「学生に合わせた対応(質問等への対応や進度調整)」の平均値は相対的に低い評価となり,事前課題・事後課題の頻度や回数の設定に課題がみられ,改善の必要性が示された。
著者
三井 一希
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.61-66, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)

本研究では,プログラミング体験アプリであるScratchJrを用いて小学校低学年対象のプログラミング教育を実践した。授業のデザインにあたっては,学習者同士が教え合い,学び合う相互作用を軸にした。その結果,教師の講義形式の指導が無くても低学年においてプログラミングの学習が可能であり,児童もプログラミングの授業を好意的に評価していることが明らかとなった。また,学習者同士の交流が多い者と交流が少ない者の作品を比較したところ,作品の出来に交流人数は関係ないことがわかった。
著者
阿濱 志保里 阿濱 茂樹
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.33-39, 2016-12-01 (Released:2017-06-01)

デジタル教科書を実際に授業等で利用する立場の教員養成系学部の学習者とデジタル教科書を利用できるようにシステム開発を行う立場の工学系学部の学習者を対象に,デジタル教科書の教育における活用やデジタル教科書に関連する著作権や著作権法に関する授業を行い,それぞれの立場からのデジタル教科書に対する意識がどのように変化するのか解明を試みた。その結果,定量的な分析からは,教員養成系学部の学習者はデジタル教科書の長所及び短所を理解することで,デジタル教科書の導入を積極的に考えている導入積極群が慎重になる傾向が見られた。一方,デジタル教科書の導入に慎重な群については,積極的になる傾向が見られた。一方,工学系学部の学習者のうち導入積極群は慎重になる傾向が見られたが,導入慎重群は変化が見られなかった。
著者
藤本 徹
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.10-15, 2011
被引用文献数
1

近年,欧米を中心に海外でデジタルゲームを利用した教育が活発さを増してきており,多くの研究・実践から知見が示されている。国内でのこの分野の研究は,体系的な理解が十分に進んでいないのが現状である。本論では,これまでの先行研究で示されている知見を整理して議論し,より効果的な実践を行っていくために必要な考え方を提示する。まず,これまでのデジタルゲーム利用教育の変遷を俯瞰し,近年の研究動向を論じる。次にこれまでの先行研究から,デジタルゲームの教育利用を進めるうえで考慮すべき長所と短所として明らかになっている点を整理したうえで,教育現場での導入を効果的に進めていくために考慮すべき諸論点の検討を行う。
著者
佐田 吉隆
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.61-66, 2017

<p> 本研究では,ローマ字教育とローマ字入力の関係に注目した。150名の大学生が,漢字変換なしのローマ字テキスト入力において,どのようにローマ字入力を行うか,ローマ字入力の速度で比較した。その結果,ローマ字入力は,小学校で学ぶ「訓令式」が基礎になっていることがうかがえた。その結果,打鍵数の多くなる綴りを選択していたり,動かしにくい指を使った綴りを選択する傾向がみられた。また,拗音に関する綴りの知識が欠落している可能性が高く,入力速度の劣る学生は,ローマ字の理解も不十分であることがうかがえた。</p>
著者
亀田 久雄
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.37-40, 2018

<p> 近年では話題を目にしない日はないほど,"AI・人工知能" は注目のキーワードとなっている。教育の業界においても,AIを用いた未来的な授業のビジョンが数多く描かれている。本稿では,AIを利用する教育の現状にフォーカスし,実際に塾や学校で活用されているe-learning教材「すらら」と,「すらら」の一機能として,生徒に対してコーチング・モチベーティングを行う機能である人工知能「AIサポーター」についての事例を紹介する。また,「AIサポーター」を利用する生徒の学習量を,そうでない生徒の学習量と比較したとき,有意な差が見られ,その効果測定結果についても共有する。</p>
著者
小宮山 利恵子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.17-22, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

本稿では,諸外国の教育領域におけるAI(人工知能)活用の政策や事例を紹介し,世界で教育がどのように変化しているかを俯瞰する。日本においてAIの教育利用は始まったばかりだが,AI領域の二強とされる米中以外にも,「途上国」と呼ばれている国においても政策としてAIを積極的に取り入れている国がある。世界で起きていることを俯瞰しつつ,AIの教育利用の課題について考える。
著者
三井 一希 八代 一浩 水越 一貴 佐藤 和紀 萩原 丈博 竹内 慎一 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.79-84, 2018-12-01 (Released:2019-06-01)

本研究では,小学校のプログラミング教育において,学習状況の共有化ツールを活用して児童のプログラミングの状況をクラス内で共有した場合の効果について検討した。その結果,学習状況の共有化ツールを活用すると,プログラミングに使用するブロックの数や種類が増える,他グループの工夫に気付きやすくなるなど効果的に学習できる傾向が見られた。また,児童は見やすさなどの理由から,共有化ツールを活用する授業を好意的に評価していることがわかった。
著者
岡本 薫
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.52-55, 2002-05-31 (Released:2014-12-25)

教育現場にあって、ともすれば著作権に対する配慮が不足する傾向のあることが指摘できる。著作権とは人権と密接に関係していることを、教育現場での具体的事例を引用してその本質を解説する。
著者
鈴木 雄介
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-17, 2000

もし、本がすべて電子化されたら、いつでもどこでもほしい本が手にはいる。印刷代、紙代がなくなるからもっと安くなる。ベストセラーの売り切れがない、返品がない、絶版がない、断裁しなくていい。10年後には100万冊の中から自由に本を選べる時代がやってくる。そんな、いいことづくめの期待を込めて「電子書籍の衛星配信の実験」が行われた。シンクロニシティな現象として、話し合いもないまま、ほぼ同時に、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで「eBOOK」の事業化へ向けた組織が産声を上げた。パソコンやパソコン以外のものが、やっと「ものを読むメディア」としての十分な機能が、技術的に保証しはじめた。「ものを知るメディア」と「ものを読むメディア」の差を十分意識して、電子書籍という商品の「潜在能力」を引き出すことが実証されたと言っていい。高精細液晶の表現力、ネットワークの実力、出版資産の再活用、新しい表現作家の登場。近い未来に向けて、電子書籍ビジネスの可能性を「実証実験」の結果から、展望する。
著者
中田 平
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.40-45, 2005-06-01 (Released:2014-12-01)

1937年に開催された名古屋汎太平洋平和博覧会は,第二次世界大戦の前夜に開催されたことにより,昭和史に埋もれて忘れ去られてしまった。筆者はゼミのテーマとしてこの国際博覧会を取り上げ,2003年10月から2005年2月までゼミ学生と共同で,Web上で再現するプロジェクトを遂行してきた。プロジェクトの目標はWebアーカイヴ・コンテンツのオーサリングとそれを配信するサーバーの構築である。またコンテンツは3D-CGによる静止画および動画,QuickTimeストリーミング映像,などである。本論文はこのプロジェクトの記録と報告である。
著者
長澤 直子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.67-72, 2017

<p> 大学生がスマートフォンで文字入力をする際,日本語入力では90%以上がフリック入力・トグル入力を利用し,外国語入力ではフリック入力・トグル入力とQWERTY配列での入力がほぼ50%ずつであることがアンケート調査によって明らかになった。そして,PCでのタッチタイピング習熟度とスマートフォンでの外国語入力にQWERTY配列を利用する人との間には有意な関連が見られた。日本の大学生がPCよりもスマートフォンを好む理由のひとつには,日本語入力に五十音との親和性が高く入力技能習得が容易なフリック入力が使えることが考えられる。</p>
著者
武田 俊之
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.12-17, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)
被引用文献数
1

教育におけるデータの増加と,証拠にもとづく教育改善などへの要望からラーニング・アナリティクスという研究領域が活性化している。本論文では,この新しい領域について,背景,定義,フレームワーク,データ,事例の面からの分野の概要と実践事例を紹介する。
著者
古閑 恭子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.84-89, 1999-11-30 (Released:2015-02-03)

朝鮮語と日本語は、構造的によく似た言語である。そのため、構造的に日本語との違いの大きい英語などの言語に比べ、日本語への機械翻訳にはかなりの精度が期待できそうである。しかしながら、実際に市販の翻訳ソフトを用いて朝・日翻訳を試みると、その性能は決して高くはないことが分かる。本稿では、言語学的に誤訳の種類を①単語そのもののレベルに関わる誤訳、②単語の共起関係レベルの誤訳、③文法レベルの誤訳、④テクスト論レベルの誤訳に分類し、数種類のテクストを用いて実験し、その種類別の誤訳の割合を調べてみた。実験の結果、誤訳の過半数は共起関係レベルのものであることが分かった。
著者
鵜飼 政志
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション
巻号頁・発行日
vol.18, pp.27-33, 2005

1990年代後半,いくつかの歴史資料館や博物館が,ウェッブサイトを開設したことを契機に,日本史研究の世界でもインターネットに対する関心が高まっていった。ただし,これらサイト開設の背景には,行政改革や大学改革などが関係していた。情報公開・経費削減の観点からインターネットによる情報発信が促進されたのである。その後,多くの日本史関係サイトが開設されていったが,日本語の異体字をシステムフォントでは表現できない問題点や,高解析度の画像を閲覧する場合の接続上の難点は解決されていなかった。今日では,閲覧ソフトの技術革新やインターネット回線の高速化により,日本史関係のサイトも容易に閲覧できるようになった。ただし,歴史資料に関するサイトの構築には,かなりの人員や予算を必要とすることもあり,現在の状況が将来も続くかは不透明である。また,日本史研究者のインターネットに対する関心は,総じて,ネット上の歴史資料情報に限定されがちであり,インターネット全般を研究や教育に利用しようとする学界的な合意はなされていない。そこで筆者は,筆者はインターネット上における日本史関係の諸情報を網羅し,適切なサイトへの接続を可能にする学術ポータルサイト開設の必要性を提言した。
著者
阿部 学 藤川 大祐 狩野 明香理
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.46-51, 2016-12-01 (Released:2017-06-01)

将来の「教育の情報化」を担う教員を養成することをねらい,教員養成学部においてアプリ教材を制作する授業を行い,小学校でのアプリ体験の実践までを行った。小学校での実践の結果や,学生へのアンケート結果からすると,この授業では概ねねらいを達成できたと考えられる。
著者
針持 和郎
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.32-37, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)

広島修道大学は5学部・4大学院研究科からなる学部生・院生数約6,000名の文科系私立大学である。本稿では,本学の障害学生支援環境を述べるとともに,与えられた学習教育環境と障害学生支援体制の中で,英語英文学科の発達障害のある学生がコンピュータを単なる清書マシーンとしてのみ使用するのではなく,インターネットを通じて信頼するに足る試料を取得し,コンコーダンスプログラムで試料を加工し,スプレッドシートを用いて統計処理を行い,ワードプロセッサで論述を展開するまでのプロセスの報告を通して,ICTの利用が発達障害のある当該の学生にとってどのようにメリットがあったかを述べる。
著者
篠田 有史 鳩貝 耕一 岳 五一 松本 茂樹 高橋 正 河口 紅 吉田 賢史
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.67-72, 2016-06-01 (Released:2016-12-01)

より学習者に適応した教示の実現を目指して,取り上げる題材の難易度の調整を行うのではなく,学習者の個性豊かな学びに寄り添うという取り組みが行われている。学習者の好む教示方法や学び方を調査するため,本研究では「学びのスタイル」アンケートを提案し,主成分分析と決定木構築手法を組み合わせて分析する。情報基礎教育科目の授業に参加した学習者を対象にアンケート調査を実施し,取り上げた授業における学習者の学び方がどのようなものであるかを,取り組みを通じて明らかにする。