著者
福島 健介 島田 文江 松波 紀幸 生田 茂
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.56-61, 2006-06-01 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
2

小学生から大学生までを対象に,同一の検索テスト及び情報環境についてのアンケートを実施し,検索能力の差異に及ぼす要因の検討を行った。小学生の被験者は,都下小学校4校の5年生と6年生453名であった。また,小学生では市内統一の学力調査と検索テストとの関係も調査した。本稿では,その調査を通して得られた小学生の検索能力の実態と差異に及ぼす要因を報告する。小学生の検索能力は,高校生同様,PC利用環境,検索経験の多寡など情報環境との相関が見られた。しかしながら,高校生と異なり,主要な要因として「学力」,とりわけ国語に関する学習内容との顕著な相関が確認された。小学生で情報検索能力の高い児童のモデルは「言語に関する知識・理解が的確で,かつ検索経験の豊富な児童」であった。また,検索テストについては学校間・学級間での得点差が大きく,その要因は「学力」だけでは説明できないことも確認された。
著者
師 茂樹
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.12-17, 2009-12-01 (Released:2014-11-01)

テキストデータは,コンピュータ上におけるデータの中心的存在である。そして文字コードは,テキストデータの基盤となるものである。本稿では,文字コードについてのあまり知られていない基礎知識や,Unicodeの抱える実用上の問題点について紹介する。
著者
森本 康彦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.18-27, 2015-06-01 (Released:2015-12-01)
被引用文献数
1

高等教育機関を中心に,教育の質保証・質向上の実現のためにeポートフォリオが急速に導入され,初等中等教育においても,学びの過程で生成される児童生徒の学習記録をICT機器を用いて蓄積し,いわゆるeポートフォリオとして学習指導や学習評価に活かそうとする取り組みが始まっている。一方,学習行動ログやICTの操作ログなどの学習履歴データを分析・可視化するラーニングアナリティクスが注目を集めている。しかし,ラーニングアナリティクスにおいて,どんな意味のある有用なデータをeポートフォリオとして蓄積・分析し,学習者にどのように提示すべきかなどの教育的観点からの議論は十分にされていない。そこで,本論文では,eポートフォリオを活用した学習におけるラーニングアナリティクスについて明らかにする。さらに,教育ビッグデータのあり方について言及するとともに,教育ビッグデータに対応した新時代のeポートフォリオシステムのコンセプトである「eポートフォリオ2.0」について説明する。
著者
岩崎 公弥子 大橋 陽
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.98-103, 2015-12-01 (Released:2016-06-01)

専門知識の教授だけでなく汎用的能力を育成するために,高等教育機関では様々な教育手法を取り入れ,試行錯誤を行っている。そのひとつが,アクティブラーニングである。筆者らは,反転授業(Flipped Classroom)を導入し,知識習得の部分を宿題(予習動画)にすることで,専門知識に基づくアクティブラーニングを実施した。本研究では,中規模クラスにおいて反転授業を導入し,1)質の高いグループアクティビティの実施,2)予習動画を閲覧させる工夫,3)予習動画のナレーション(人の声,合成音声)の違いについて検証し,より深い学びや動機付けがなされたか,国際情報概論(1年生必修)のなかで考察した。
著者
長澤 直子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.58-63, 2019-06-01 (Released:2019-12-01)

本稿では“PCが使えない大学生”の問題を文字入力の観点から論じる。大学生を対象としたアンケート調査によると,2,000文字のレポートをPCで作成する際にすべての作業をPCですると回答した人は約80%であった。一方で,約6%が先にスマートフォンで入力すると回答し,手書きまたはスマートフォンで下書きをする人が約13%存在した。また,PC以外のツールを用いて作業をする人は,将来へ向けてのICT利活用に対する自己評価が低いということが明らかになった。この評価を高めるには,初等中等教育からPCを使う頻度を増やし,キーボードにも慣れておくことが必要だと考えられる。
著者
清水 克彦
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.13-20, 2002-11-29 (Released:2014-12-25)
被引用文献数
2

初等中等教育段階の算数・数学教育において電卓の活用が注目され推進されている。本稿では、算数・数学教育用に開発された諸電卓の機能をまとめ、その教育的可能性を指摘する。さらに、その活用の実際について、外国のカリキュラム・ドキュメント、国際調査の結果、日本の指導要領、教科書、算数・数学教育研究の点から検討し、日本での活用が遅れていることを同定した。さらに、活用の推進を遅らせている要因について、外的・内的の2面から指摘した。
著者
福島 耕平 下村 勉
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.31-36, 2017-06-01 (Released:2017-12-01)

2015年度と2016年度の2年間,小学6年生を対象に,Moodleとタブレット端末を活用した発信・交流をとり入れた授業実践をおこなった。授業実践後,質問紙による調査をおこなったところ,Moodleとタブレット端末を活用した発信・交流は,従来の挙手・発言による発信・交流よりも,児童の緊張が少ないことがわかった。この発信・交流方法は,授業時間内に児童全員の意見の発信を保障することができ,発信・交流内容が文字記録として残る。児童がそのことを自分たちにとってメリットだと感じていることも明らかになった。
著者
板垣 翔大 浅水 智也 佐藤 和紀 中川 哲 三井 一希 泰山 裕 安藤 明伸 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.58-63, 2021-12-01 (Released:2022-06-02)

本研究では,中学校技術・家庭科技術分野におけるAIを活用したプログラミングを取り入れた授業を実施し,生徒のAIに対する意識の変容から授業を評価した。授業は3単位時間で行い,ビジュアル言語に,AIによる画像認識を組み合わせることができるツールを用いて,身近な問題解決の活動に取り組ませた。授業前後のAIに対する意識を比較したところ,AIの進歩に対する不安の軽減やAIを活用して身近な問題を解決できる自信の高まりなどが確認された。
著者
藤本 徹
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.10-15, 2011-12-01 (Released:2014-09-01)
被引用文献数
4

近年,欧米を中心に海外でデジタルゲームを利用した教育が活発さを増してきており,多くの研究・実践から知見が示されている。国内でのこの分野の研究は,体系的な理解が十分に進んでいないのが現状である。本論では,これまでの先行研究で示されている知見を整理して議論し,より効果的な実践を行っていくために必要な考え方を提示する。まず,これまでのデジタルゲーム利用教育の変遷を俯瞰し,近年の研究動向を論じる。次にこれまでの先行研究から,デジタルゲームの教育利用を進めるうえで考慮すべき長所と短所として明らかになっている点を整理したうえで,教育現場での導入を効果的に進めていくために考慮すべき諸論点の検討を行う。
著者
鈴木 雄介
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-17, 2000-06-05 (Released:2015-02-03)

もし、本がすべて電子化されたら、いつでもどこでもほしい本が手にはいる。印刷代、紙代がなくなるからもっと安くなる。ベストセラーの売り切れがない、返品がない、絶版がない、断裁しなくていい。10年後には100万冊の中から自由に本を選べる時代がやってくる。そんな、いいことづくめの期待を込めて「電子書籍の衛星配信の実験」が行われた。シンクロニシティな現象として、話し合いもないまま、ほぼ同時に、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで「eBOOK」の事業化へ向けた組織が産声を上げた。パソコンやパソコン以外のものが、やっと「ものを読むメディア」としての十分な機能が、技術的に保証しはじめた。「ものを知るメディア」と「ものを読むメディア」の差を十分意識して、電子書籍という商品の「潜在能力」を引き出すことが実証されたと言っていい。高精細液晶の表現力、ネットワークの実力、出版資産の再活用、新しい表現作家の登場。近い未来に向けて、電子書籍ビジネスの可能性を「実証実験」の結果から、展望する。
著者
三井 一希 佐藤 和紀 渡邉 光浩 中野 生子 小出 泰久 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.78-83, 2021-06-01 (Released:2021-12-01)

本研究では,1人1台の情報端末を活用した児童の発表場面に,モバイルディスプレイを導入することの効果を検討した。その結果,モバイルディスプレイの導入前は,情報端末の画面サイズや画面の提示方法に困り感を持つ児童が一定数いたが,モバイルディスプレイの導入によってこれらの困り感が軽減され,グループ発表の場面にモバイルディスプレイが有効に作用する可能性が示唆された。また,モバイルディスプレイの活用を経験すると,多くの児童が必要感を持つことが示された。
著者
吉田 文
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.9-13, 2001-05-31 (Released:2014-12-25)

本稿は、アメリカのオンライン高等教育を市場とみなす近年の動向を、1)私企業と2)既存大学の2つの組織を対象とし、事例にもとづいて検討し、それが高等教育システムに投げ掛けている問題について考察することを目的とする。検討の結果、1)私企業は、オンラインによる営利大学を、設置認可や単位や学位などに関して従来の大学の枠組みの外で設立し、2)既存大学は、大学外部に私企業を設立し、ビジネスとしてオンライン教育を行うという新たな動向が生じていることが明らかになった。そして、それらの新たな動向は、「教育機会の拡大」と「教育で収益をあげる」というまったく異なる考え方がオンライン教育の登場によって両立可能とみなされるようになったことを示しており、それはまた、「大学」とは何かという問題の再考をわれわれに迫っている。
著者
吉冨 朝子
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.26-31, 2015-12-01 (Released:2016-06-01)

本稿は,国際英語を身につける上で重要なコミュニケーション能力,とりわけ英語の社会言語的能力(sociolinguistic competence)の育成に焦点を当てたプロジェクト・ベース学習(project-based learning)を推奨することを目的とする。グローバル社会においては,日本人としてのアイデンティティを保ちつつ,異文化状況に応じた柔軟な語用論的交渉能力(negotiative competence)と異文化間インテリジビリティ(intercultural intelligibility)を身につけることが求められており,それには世界の英語変種(World Englishes)や第二言語語用論に対する意識を高める活動(consciousness-raising activities)が有効である。大学の英語教育においては,既存の無料サイトで提供されている言語データ・研究データ・関連する英語の講義などを活用し,高校までの基礎的な言語運用能力を伸ばしつつ,4技能を統合した内容言語統合型学習(Content and Language Integrated Learning:以下CLIL)を積極的に取り入れるべきであろう。
著者
Alberizzi Valerio Luigi
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.11-17, 2014-06-01 (Released:2014-12-01)

2010年5月に内閣IT戦略本部にて決定された「新たな情報通信技術戦略」では,「デジタル教科書・教材などの教育コンテンツの充実」が掲げられているが,高等教育におけるデジタル教科書・教材の位置づけおよびそれらをどう捉え,どのように推進すればよいかについてはほとんど触れられていない。本稿では,イノベーション理論の観点から高等教育におけるデジタル教科書の意義とあり方について論じた後,外国語のデジタル教材に的を絞り,それがiBooks Authorで作成された場合どのように実現できるか,また練習問題のウィジェットが本来持つ限界と外国語習得向上・到達度確認を目的とする充実した練習問題の作成について述べる。さらに,2013-14年度において早稲田大学のオープン教育センターで実施された,ピア・サポートを中心としたデジタル教科書・教材を活用したイタリア語講座で得られたデータを基に,学習媒体として,読み手の関心を惹き,学習意欲を増進させるデジタル外国語教科書の設計について考察する。
著者
柏原 昭博
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.30-37, 2019

<p> ロボットを学習支援に用いる場合,学習支援メディアとしてのロボットの適性を見極めることが重要である。本論文では,主体的学習を支えるエンゲージメントに着目し,エンゲージメント促進にロボットが適していることを示した上で,ロボットによる学習支援をいかにデザインするかについて論じる。また,エンゲージメントが学びの鍵となる文脈として,(1)コミュニケーションを要する英文読み合い,(2)学習者の注意・集中を要する講義を取り上げ,それぞれの文脈におけるエンゲージメントの要因を分析し,エンゲージメントを引き出す支援を実装した英文読み合いロボットパートナーおよび講義ロボットについて論じる。</p>