著者
橋口 暢子 栃原 裕 高山 真一
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.101-107, 2003-11
被引用文献数
1

浴室内暖房の方法の違いが生理心理反応に及ぼす影響について、健康男子10名を被験者とし検討した。実験条件は、被験者が浴室入室する前に予備暖房を行い、入室後もそのまま温風暖房を運転させた場合(温風暖房:A)、入室直前に温風暖房から放射暖房に切り替えた場合(放射暖房:R)、入室直前に予備暖房を停止し、その後暖房運転を行わない場合(暖房停止:Off)と、さらに、浴室の暖房を最初から行わなかった場合(暖房なし:C)の4条件を設定した。脱衣室の室温と相対湿度は10℃・50%である。被験者は、浴室入室後、洗面器でお湯を身体にかけ、洗い場に5分間滞在した後、湯温40℃の浴槽に5分間浸り、出浴後5分間洗い場に再度滞在した。測定項目は、血圧、脈拍数、皮膚温、主観申告(温冷感、不快感、気流感)である。お湯かけ直後は、温風暖房での血圧の上昇が放射暖房、暖房停止に比べ大きく、温冷感、不快感も寒い、不快側の申告であった。暖房停止条件では、出浴後の血圧の上昇と、温冷感、不快感の、寒い、不快側への移行が大きいことが認められれた。放射暖房では、血圧の変化が最も小さく、お湯かけ直後も浴後も温冷感、不快感が他の条件に比べ、暖かい、快適側の申告であった。安全で快適な浴室温熱環境を作るうえでの暖房方法としては、放射暖房の方がより適していることが示唆された。
著者
藏澄 美仁 土川 忠浩 近藤 恵美 石井 仁 深川 健太 大和 義昭 飛田 国人 安藤 由佳 松原 斎樹 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.115-127, 2012-11
参考文献数
55
被引用文献数
1

本研究の目的は、屋外環境における至適温熱環境の範囲を提案することである。実験は、夏季と冬季の屋外温熱環境における人体の生理的・心理的反応を求める実測を被験者38名を用いておこなった。延べ実測数は906であった。ETFeと人体の生理的・心理的反応との関係を明確にした。得られた知見を以下に示す。暑くもなく寒くもない温熱的に中立な温冷感申告をすると考えられる夏季のETFeは31.6℃、冬季のETFeは36.0℃を得た。季節により温冷感申告の評価に違いが示され、夏季の場合と比較して冬季の場合の方がETFeに対する傾きが大きくなり、暑さに対する反応よりも寒さに対する反応が強くなる傾向を明らかにした。快でもなく不快でもない快適感申告をする寒い側の温冷感申告値は44.7、暑い側の温冷感申告値は55.1を得た。この条件を快適温熱環境範囲としてETFeと温冷感申告値との関係から快適なETFeの範囲を求めると、ETFeが31.6〜38.5℃を得た。
著者
浅井 秀子 長野 和雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-17, 2006-05

本報では,山陰地方の町家3軒を対象に,2001年8月29日から9月6日までの8日間において,室内から戸外に至る一連の空間の夏期温熱環境を実測した.その結果,トオリニワの土間空間と小さな坪庭において気温が低かった.その結果を踏まえ,坪庭と連結した居住空間への影響を詳細に把握するために町家1軒を対象に,2003年8月22日から8月25日までの4日間において,坪庭及び隣接する2室に熱電対を60点に設置し観測を行った.坪庭が冷涼な外部空間を形成していることが確認され,さらに坪庭との仕切りを開放することによって,坪庭からの冷気が各室に染み入り,室温を下げることが示された.すなわち,坪庭は隣接する各室に対し有効な暑熱緩和性能を備えており,環境共生の視点からみて重要な空間であるといえる.
著者
庄山 茂子 川口 順子 栃原 裕
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.55-62, 2007-11
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究は、虹彩の色の多型性に着目し、虹彩色が茶系と青-緑系の異なる2群を対象に、日常生活での紫外線に対する意識や対策の実態を調査した。さらに、照度500lx、301xの条件下で100hueテストを用いて色彩弁別能力を測定し、サングラスの使用頻度別に分析し、次のような結果を得た。紫外線対策として、茶系群は主に日傘や帽子を、青-緑系群はサングラスや帽子を使用していた。それらの使用目的は、茶系群は日焼け防止、青-緑系群は目の保護と回答した。2群間に紫外線に対する対策や意識の差がみられた。サングラスの使用頻度別に色彩弁別能力をみると、茶系群では、500lx、301xの両条件下でサングラスを使用していない群の総偏差点は、時々あるいは頻繁に使用する群よりわずかに高かった。青-緑系群では、500lxで使用していない群の総偏差点と時々あるいは頻繁に使用する群の総偏差点との間に有意差が認められ、使用していない群の総偏差点は高く色彩弁別能力が劣っていた。虹彩色が青-緑系でサングラスを使用しない群は、紫外線の影響を受けているのではないかと推察される。
著者
石井 仁 渡邊 慎一
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.65-74, 2018 (Released:2021-04-07)
参考文献数
30

野外音楽フェスティバル会場において気象要素の測定を行い,暑熱ストレスの評価ならびにアンケート調査により主に来場者の防暑対策行動の実態調査を行った。調査は夏期(2011年7月)と秋期(2011年10月)に開催された野外音楽フェスティバルで実施した。夏期の野外音楽フェスティバル会場は,学協会の指針等から判断して暑熱ストレスの高い環境であった。そして熱中症のような暑熱障害の予防には先行研究と同様に気象要素の会場現地での実測が重要であることが示された。来場者の多くはタオル,水などの飲料,帽子,うちわ・扇子を防暑対策として持参していた。夏期のフェスティバルにおいて暑熱障害は発生しなかったが,これは来場者が防暑対策を主体的に行っていたことが一因として考えられる。秋期開催の野外音楽フェスティバル会場は暑熱ストレスが高くはない環境であった。秋期の野外音楽フェスティバルでは暑さが厳しくないと予測して防暑対策の携行品を持参しない来場者が増えた。
著者
窪田 敏行
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.14-19, 1996 (Released:2018-03-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1

阪神淡路大震災による,コンクリート系構造物の被害について述べた。震度7の地域に建つコンクリート系構造物の全数被害調査データを分析した結果を紹介した。また,特徴的な被害について述べ,その問題点をまとめた。さらに,既存建物の耐震診断についても言及した。
著者
内山 巌雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.63-69, 2002 (Released:2018-03-22)
参考文献数
5
被引用文献数
2

IPCCが2001年に公表した第3次評価報告書では,地球温暖化の影響が世界各地で現れてきたと結論し,2100年には1990年と比較して平均気温が1.4〜5.8℃上昇すると予測している。また影響を直接影響と間接影響に分け,生態学的影響に加え社会・経済・人口学的影響も考慮している。東京では最高気温が30℃を超えると熱中症の発生が増加することが観察されているが,65歳以上の高齢者がハイリスクグループである。また日最高気温と死亡率の関係では,日最高気温の上昇とともに日死亡率は低下するが,33℃を超えると再び日死亡率が上昇する。死亡率の最も低い日最高気温は日本の各地で異なり,平均気温が低い地域はこの気温が低い傾向が認められ,温暖化の影響はどの地域でも認められる可能性がある。暑熱に対する反応を自律神経機能の1種であるLF/HF,HFを指標として日本人とタイ人の成人,高齢者を比較したところ,タイの成人が最も暑熱に対する反応は優れていたが,日中空調のあるオフィスで働く成人はその機能が低下していることが示唆された。その他,動物媒介性感染症の増加,光化学オキシダントの悪化による呼吸器疾患の増加の可能性について解説した。
著者
長田 泰公
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-24, 1998 (Released:2018-03-22)
参考文献数
14

女子短大生6名を対象に,日常生活24時間での騒音暴露を10分ごとに測定させた。平均の騒音レべル(等価騒音レべル,L_<Aeq>)は68dBであった。また行動別の騒音レべルを330名の学生での生活時間調査データに応用したところ,1日平均レべルは67dBであった。このレべルはUSEPAによる騒音性難聴防止基準の70dBに近い。毎日の暴露レべルのうち最も高かったのは通学,それも電車による通学時間に得られ,75dBを越えていた。地下鉄や乗換え駅での騒音レべルは地上線のそれより高く,また反響やアナウンスによって前者のほうが喧しいことがわかった。電車の中でへッドホンで音楽を聴いているときのレべルは90-100dBであった。労働基準からみると,このレべルの許容時間は1日2時間以下である。
著者
吉田 郁美 竹森 利和 山崎 政人 道広 和美 都築 和代 裏出 良博 吉田 政樹
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.101-106, 2012 (Released:2018-03-22)
参考文献数
22

ミストサウナ入浴が睡眠に与える影響を把握することを目的に、冬季の実生活において被験者実験を実施した。実験は、被験者の自宅において就寝約1.5時間前に40℃10分間の通常入浴とミストサウナ入浴をそれぞれ10日間ずつ連続して実施した。浴室の設定温度、寝室の温湿度ならびに入浴前後の舌下温を10日間測定・記録した。また、1日の活動量(活動量計)、夜間就寝時の脳波(携帯型1チャンネル脳波計)を計測し、睡眠後の眠気(KSS調査票)や温冷感、目覚めの感覚等を記録した。睡眠効率、入眠潜時、および覚醒指数については条件間に有意な差はなかったが、第一周期デルタパワーについてはミストサウナ入浴の方が通常入浴よりも有意に高かった。入浴による舌下温の上昇度についても通常入浴よりミストサウナ入浴の方が有意に高かった。寝室温・湿度に両条件間の差は無かったが、被験者の申告結果からは、ミストサウナ入浴の場合、就床前はより暖かく感じ、起床時には目覚めの爽央感が得られるとの評価が有意に高かった。
著者
呉 邵忠 中村 昭夫 森田 矢次郎
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.33-39, 1998 (Released:2018-03-22)
参考文献数
6

灸療法は,艾の燃焼によって人間に温熱刺激を与える伝統的な方法である。温熱刺激量は艾の燃焼の仕方,あるいは艾の燃焼温度特性によって大きく左右される。従来の艾の燃焼温度特性における研究では各影響因子(環境側の因子及び艾側の因子)を十分に注意してこなかったため,結論不十分のところがあると,思われる。本研究では,灸による温熱刺激の熱工学的研究の一環として,艾の燃焼温度特性に与える各影響因子を検討し,測定方法を工夫し,この特性と各影響因子の具体的な関係を調べた。主な結論を次に示す。 1) 艾の燃焼温度変化特性は艾の重さと密度に関係するほか,艾の寸法との関係もある。 2)環境温度,湿度と空気の流れは艾の燃焼温度変化特性に影響を及ぽす。 3) 灸が人間に与える温熱刺激の時間的変化特性を希望通りに実現しようとすると,燻焼前の艾の重さ,密度,寸法,形状を調整するだけでは不確実な結果しか期待できない。
著者
森田 矢次郎 今井 文雄 呉 邵忠
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.29-33, 1996 (Released:2018-03-22)
参考文献数
6
被引用文献数
1

灸療法の研究は東洋医学の観点から行われ,疾病の治療と健康の維持に大きな効果を挙げてきた。本研究では,灸の一種である塩灸を取り上げ,灸のメカニズム解明のため,熱工学的アプローチを採用する。灸そのものの熱工学的データを取り,人間の灸による感覚(温熱感と快適感)を調べた。主な結論を次に示す。1) 塩の量と艾の量をパラメーターとし,各種の艾を用いて,塩灸の実験データを取り,1個の艾柱が燃え尽きるまでの熱の発生と散逸,人体表面の界面の温度変化について,定量的な知見を得た。2)被験者の皮膚の熱伝導率と熱拡散率に個人差があると考えられる。3) 塩灸実施時の温熱変化の特徴は,施灸者が艾柱を燃やすという過程を数回繰り返すので,人間の皮膚が熱の吸収と放散を繰り返す,という点である。4)塩灸被験者の温熱感覚が快適となるのは,皮膚から熱の放散がある時と皮膚が熱を吸収し,皮膚表面の温度が上昇し始める期間である。
著者
高崎 裕治 大中 忠勝 栃原 裕 永井 由美子 伊藤 宏充 吉竹 史郎
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.65-71, 2010 (Released:2018-03-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2

パイロットスタディとして大阪と秋田で冬期に入浴と排泄の模擬行動を観察し,高齢者におけるヒートショックの状況を検討した.さらに,全国調査で収集した室内温熱環境の資料を用いて,浴室とトイレの暖房設備等と気温の関係,居間との気温差,高齢者の温冷感を検討した.パイロットスタディでは寒冷地において居間と他の部屋の気温差が大きく,居間から浴室やトイレに移動したときに大きな血圧上昇を示すものがいた.全国調査の資料より,居間と浴室やトイレとの気温差は夕方8時前後に最大となった.同じ温冷感であるにもかかわらず,浴室やトイレでの実際の気温は居間の気温よりも低かった.高齢者は身体にストレスを受けているが,浴室やトイレの寒さには寛大であるように思われる.居間と浴室の気温差は浴室での死亡率と相関する傾向にある.
著者
片山 徹也 庄山 茂子 栃原 裕
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-38, 2015

本研究では、女子大学生16名を対象に、白文字に対して明度と彩度が異なる青色相を背景色にした陰画表示画面8配色を用い、VDT画面の配色が作業効率と疲労に及ぼす影響について検討した。30分間の文字探索課題によるVDT作業の結果、作業量及び誤入力率については8配色間に有意差はみられなかった。8配色のうち2配色において作業後の収縮期血圧及び心拍数が有意に高く、6配色において作業後のCFF値が有意に低かった。画面に対する見やすさや読みやすさの機能性に関する印象評価では、文字色と背景色の明度差が大きいほど機能性の評価が高かった。文字色と背景色のコントラスト比が国際基準WCAG2.0に適合する配色においても、生理的疲労及び主観的疲労感に影響を及ぼす場合が確認された。文字色と背景色のコントラストが確保された配色の場合、文字色と背景色の彩度差が小さい配色ほど、疲労感を軽減する傾向がみられた。
著者
美和 千尋 河原 ゆう子 吉田 久美子
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.85-89, 2009
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究は,障害者の入浴介護においてミストサウナを利用することで,介護者の介護負担を軽減できるかどうかを検討した.対象は若年男性10名(平均年齢20歳)とし,片麻痺患者を模擬させてミストサウナと浴槽入浴での入浴介護を行った.介護者の介護負担として,介護時間,筋活動量,血液検査(乳酸脱水酵素酵素,白血球),気分変化(POMS)を測定した.その結果,ミストサウナによる入浴介護は浴槽入浴と比較して,介護負担の指標とした介護時間が短く,介護時間全体の総筋活動量が有意に小さく,乳酸脱水素酵素の不変,疲労気分の軽減が図れた.ただ,白血球数の増加が浴槽入浴ではみられなかったがミストサウナではみられた.このことより,ミストサウナは,障害者の介護における介護者の身体的,精神的負担を軽減させる入浴方法として利用できると考える.
著者
河原 ゆう子 美和 千尋 出口 晃 水谷 行雄
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.23-30, 2010 (Released:2018-03-22)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では,入浴介護の労働負担について,入浴介護方法の違いによる生理的心理的影響を明らかにし,介護負担を軽減するための新たな入浴設備「ミストサウナ」の導入の可能ら生を検討した。小山田記念温泉病院に勤務する看護師と介護職員10名を対象とし,大浴場での入浴介護,油圧昇降式浴槽を用いた入浴介護,入浴介護以外の介護をそれぞれ60分間行わせ,介護前後の血液成分,血圧,心拍数,握力,自覚症しらべ,POMSの測定を行い,実験後に温冷感などのアンケートを行った。その結果,大浴場での介護は油圧昇降式浴槽を用いた介護に比べ,上下移動と暑熱暴露があるため,全身疲労を伴い陰性な気分を保持しやすい介護形態であることがわかった。その対策のひとつとして,ミストサウナ専用室の設置が考えられた。入浴者,介護者双方にとって有用な入浴介護設備の開発と導入が期待される。
著者
廣瀬 正幸 棚村 壽三 山本 健 光田 恵
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-7, 2016 (Released:2018-01-10)
参考文献数
8

食品を用いた官能評価のパネルを選定するための味の識別試験の呈味物質濃度に関しては、約40年前から研究がなされているが、約40年前から食の多様化による変化によって、若者の味覚が変化している可能性がある。そこで、本研究では、既往の研究濃度を参考に、三点識別試験法を用いて大学生の味の識別能について検討を行った。得られた知見は以下のとおりである。1)味の検知率は、甘味が47.9%、塩味が98.6%、酸味が47.9%、苦味が49.3%、うま味が91.8%であった。味の認知率は、甘味が39.7%、塩味が68.5%、酸味が34.2%、苦味が35.6%、うま味が60.3%であった。2)既往の配偶法と今回の三点識別試験法の認知率を比較すると、塩味とうま味はほぼ同じ値であったが、甘味や酸味、苦味は三点識別試験法の方が約20~30%程度低い値であった。