著者
茂木 伸之 三澤 哲夫
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.33-39, 2013 (Released:2014-11-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

立位作業時における作業面高の適切な高さを確保する条件としては,肘頭高を基準とすることなどが推奨されている。そこで本研究は,作業面高を設定するとき,その最適値と調節範囲について明らかにすることを目的とした。主観評価から,肘高差が10cmである条件が 『丁度よい』 という評価が最も多かった。順位評価は,10cm,15cm,5cm,20cmの順であった。作業姿勢では,最も発生頻度が多かった角度は4条件すべて0~10度であった。本研究における適切な作業面高は,肘頭高と作業面高の肘高差が10cmである条件となった。作業面高の調節は必要と考えられ,主観評価および作業姿勢角度から条件10cm,調節範囲は±5cmが望ましいことが明らかになった。(図3,表2)
著者
佐々木 司 松元 俊
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.174-194, 2013

国際線運航乗務員の年齢構成,乗務編成,睡眠-覚醒パターンを模擬して,調査対象者X(男性,36歳)とY(男性,47歳)の2名が,睡眠脳波,直腸温,パフォーマンスを測定する予備調査を行った。乗務条件は,往復夜間乗務でシングル編成のデリー便および,往路昼間乗務,復路夜間乗務でマルチプル編成のムンバイ便であった。両便の往路乗務直後の睡眠は,睡眠間隔が通常より長いにも係らず短縮した。復路乗務前に現地の昼間時刻帯にとる予防的仮眠は,勤務開始時刻に制限されて出発時刻の早いムンバイ便でより短縮した。これらの睡眠の劣化は,若年者であるXより熟年者であるYで大きかった。また昼間乗務より夜間乗務,また往路乗務より復路乗務の反応時間の劣化が著しく,その対策として現地の昼間にとる補償的仮眠と,とりわけ熟年者には夜間乗務中の仮眠が重要と結論付け,調査方法を再検討して本調査に資することにした。(図4,表4,写真2)
著者
坂口 舞 三木 明子
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.1-13, 2014 (Released:2015-09-25)
参考文献数
35
被引用文献数
3

看護師におけるパワーハラスメントの被害経験が外傷性ストレス反応に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。無記名自記式質問紙調査を実施し,11病院の看護師1,890名を分析した。外傷性ストレス反応を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,情報を与えてもらえなかった,仲間はずれにされた,間違いや誤りを繰り返し思い出させられた,無視された,仕事を監視された,沢山の仕事を与えられた等の行為を経験した者において,有意に外傷性ストレス反応が高かった。看護師へのメンタルヘルスケアを推進する上で,パワーハラスメント防止に向けた職場環境改善の必要性が示唆された。(表6)
著者
渡邉 雅之
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.71-75, 2014 (Released:2016-01-25)
参考文献数
6

呼吸用保護具の漏れ率を確認する定量フィットテスターは日本では 「労研マスク・フィッティングテスターMT-03(柴田科学株式会社製)」,欧米では 「PortaCount Pro(米国TSI社製)」 が主に使用されている。本研究では株式会社重松製作所からの提案のもと柴田科学株式会社が開発した定量フィットテスター 「マスク内圧・フィッティングテスター(MNFT)」 のマスク内圧および漏れ率について検証を行った。対象マスクは取替え式防じんマスク(DR)と電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)を使用した。結果よりMNFTは呼吸用保護具の漏れ率をリアルタイム観察できるため,装着状況の改善や呼吸用保護具の性能評価に有用であることが示された。(図7,表1)
著者
今井 靖雄 蓮花 一己
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.91-103, 2019 (Released:2020-08-08)
参考文献数
35

本研究では,テレビゲームを用いて,運転場面における感情と生理反応の攻撃行動への影響を検証した。実験参加者は,16名の若年群と15名の中年群であった。実験参加者は,カーレースゲームをプレイし,普段の運転やゲームに関する質問紙に回答した。ゲーム中の攻撃行動とゲーム中の生理指標が測定された。重回帰分析を行った結果,若年群の攻撃行動は,主観的欲求不満感情と複数の生理反応が有意になったものの,中年群の攻撃行動は欲求不満感情も生理反応も影響を及ぼしていなかった。(図2,表7)
著者
堀口 俊一 寺本 敬子 西尾 久英 林 千代
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.130-142, 2012 (Released:2014-03-25)
参考文献数
46

我が国において,1895(明治28)年に「所謂脳膜炎」と称される乳幼児の疾病が報告されて以来,その原因が母親の用いる白粉中の鉛による中毒であることが1923(大正12)年京都大学小児科教授平井毓太郎によって明らかにされた。以来,小児科学領域において,該疾患に対する研究報告が堰を切ったように発表された。本稿では,前報及び前々報に続き,1927(昭和2)年以降,鉛白使用化粧品に対する規制が明文化された1930(昭和5)年までの4年間に「児科雑誌」に発表された該疾患に関する諸論文,学会発表等83編を内容別に分類し,今回はそのうち総説,症例,臨床所見,診療,病理・剖検の各項目について取り上げて論考した。(写真3)
著者
飯田 裕貴子 吉川 徹
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.53-64, 2014 (Released:2016-01-25)
参考文献数
20

本研究では,呼吸用保護具の着用教育未経験者11名,着用教育経験者1名に折りたたみ式使い捨て呼吸用保護具を着用させ,着用方法の教育前後での全漏れ率を評価した。また,着用教育未経験者から観察された代表的な着用方法の間違いについて検討を行った。漏れ率の測定は米国労働安全衛生局の定量的フィットテスト手順に従い,測定器は労研式マスクフィッティングテスターMT-03™を使用した。着用方法の教育後,漏れ率の減少が確認された。また,着用時の動作よりも,着用教育の有無が漏れ率に大きく影響していた。代表的な着用方法の間違いとしては,折りたたみ面体を立体にしない,締め紐の位置不適切等が確認された。(図8,表4)
著者
湯淺 晶子 吉川 悦子 吉川 徹
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.10-29, 2019 (Released:2020-02-10)
参考文献数
35

参加型職場環境改善の評価における課題と生産性・職場活力向上に資する指標について文献検討した。3つのデータベース(医中誌,,PubMed,,CHINAL)から1999〜2016年に発表された原著論文のうち,参加型職場環境改善の介入研究において何らかの評価結果が記載されている文献を分析対象とし,コーディングシートに従って文献に記載されている内容を整理した。その結果,32編の論文が抽出された。評価指標は,「身体的な健康アウトカム」,「心理社会的な健康アウトカム」,「職場風土・職場文化に関する指標」,「生産性に関するアウトカム」,「労働災害・災害休業・職業性疾患の発生件数」,「その他」に分類され,すべての研究が複数の評価指標を設定していた。この中で12編は介入により有意な改善がみられた。参加型職場環境改善に対する評価指標の選択には,改善する動機や目的を主効果として測定しており,それぞれの取り組み背景や主目的により設定する評価指標そのものが異なっていた。有意な改善が見られていない報告もあり,職場環境改善の目的に応じた適切な評価指標の設定と体系的な評価方法を用いることが重要である。(表1)
著者
松元 俊
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.39-44, 2015

<p>本研究は,16時間夜勤をともなう2交代勤務の導入が,看護師の夜勤明けおよび休日の生活行動時間に及ぼす影響について調べた。18名の女性看護師(平均年齢38歳)が2交代勤務に1ヶ月間従事し,その後1ヶ月間は3交代勤務に従事した。その結果,夜勤明けの睡眠時間に勤務間で有意差はみられず,16時間夜勤での仮眠取得有無で分けても同様であった。夜勤明けでは食事時間が16時間夜勤後(60.8分)で8時間夜勤後(43.0分)より有意に長かったが(p=0.014),反対に休日では自宅外での趣味・娯楽が2交代勤務(161.5分)と比較して3交代勤務(234.6分)で長かった(p=0.028)。以上より,2交代勤務化が生活時間を改善する様子はみられず,むしろ自由時間が減少していた。(表2)</p>
著者
一杉 正仁
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.240-247, 2011 (Released:2013-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
4

運転中の急激な体調変化によって運転操作に支障をきたし,結果的に事故につながることがある。運転中にひとたび体調変化が生じると,ほとんどの例で適切な回避行動がとられず,事故につながる。社会の安全や自身の健康を確保するためにも,運転中に軽微な体調不良を自覚した際には,積極的に自動車運転を中止する必要がある。薬剤を内服することで,原疾患のコントロールを良好に保つことは運転中の疾病発症を予防するうえで重要であるが,その際には運転に支障がない薬剤が選択されるべきである。各事業所で運転中の体調変化を予防する取り組み,あるいは体調変化が生じても事故に至らないようにする工夫が必要である。(図3)
著者
越河 六郎 藤井 亀
出版者
労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.p229-246, 1987-05
被引用文献数
40
著者
渕 真輝 臼井 伸之介 藤本 昌志
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.71-80, 2012

護衛艦「あたご」事件のように重大な船舶衝突事故が発生すると,両船の海上交通ルール履行の有無が注目される。海上交通ルールでは両船の位置関係が重要で,小さい船舶の方が衝突を回避しやすいものの,船舶の大きさ(船型)は関係がない。本研究では,1977年から2008年までの海難審判庁裁決録から,基本的な海上交通ルールが適用された衝突事件を抽出し,両船の船型を調査した。その結果,「横切り船の航法」が適用される状況において異船型間の衝突が多いことが示唆された。このことから衝突回避には,海上交通ルールの知識に加えて操船経験や判断時機等を考慮する必要があり,操船者のヒューマンファクター研究の必要性を指摘した。(表8,図2)
著者
松元 俊
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3-4, pp.39-44, 2015 (Released:2016-11-02)
参考文献数
13

本研究は,16時間夜勤をともなう2交代勤務の導入が,看護師の夜勤明けおよび休日の生活行動時間に及ぼす影響について調べた。18名の女性看護師(平均年齢38歳)が2交代勤務に1ヶ月間従事し,その後1ヶ月間は3交代勤務に従事した。その結果,夜勤明けの睡眠時間に勤務間で有意差はみられず,16時間夜勤での仮眠取得有無で分けても同様であった。夜勤明けでは食事時間が16時間夜勤後(60.8分)で8時間夜勤後(43.0分)より有意に長かったが(p=0.014),反対に休日では自宅外での趣味・娯楽が2交代勤務(161.5分)と比較して3交代勤務(234.6分)で長かった(p=0.028)。以上より,2交代勤務化が生活時間を改善する様子はみられず,むしろ自由時間が減少していた。(表2)
著者
仁科 雅晴 久米 雅 芳田 哲也 高井 由佳 後藤 彰彦
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-11, 2013 (Released:2014-09-25)
参考文献数
17

伝統金属工芸におけるはんだ付に関する知見は,暗黙知と称する職人の経験に基づくコツやカンに依存する場合が多く,技能伝承のためには暗黙知を形式知化していく必要がある。そこで本研究では,旗金具製作におけるはんだ付作業の工程を作業ごとに分割した。さらに3次元動作解析と眼球運動解析を用いて,はんだ付作業における身体と眼球の運動を定量化した。旗金具の三方剣のはんだ付作業における工程は,「準備」,「仮組」「組立」「後処理」の4段階に分けられた。組立段階では,はんだのヌレ速さを視認し,はんだごての温度管理を行っていることが示唆された。はんだごてを母材とはんだの間で往復させる動作では,右MP2が視線よりも早く動き出し,視線が追いつき,追い越し,先に対象物に到達し,最後にはそれぞれ1周期における開始位置に戻っていた。(表3,図9)
著者
黄 河 松田 文子 三澤 哲夫
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.12-19, 2011

中国の金属加工労働者100名を対象に,日本の「蓄積疲労度自己診断チェックリスト」「自覚症しらべ」等を用いて疲労の状況を調査した。結果,調査対象者全体の傾向として,蓄積性疲労が基準値と比べてやや高いことが伺えた。自覚的な疲労感としては,上肢と下肢に訴えが集中していることがわかった。調査対象者の6割以上が「休み時間が短い」「休憩施設が無い」などの理由で,「昼休みで十分な休みがとれない」と回答し,7割以上が,昨年1年間で,風邪,腰痛などの病気をしたこともわかった。残業に関しては,「仕事の量が多い」「仕事が急に入ってくる」等の理由で,8割が日常的に経験していた。本研究では,労働者の健康を守るために,労働時間の短縮とともに,労働環境や人間工学的条件の改善が必要であることを明らかにした。(表1,図4)