著者
今井 泉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.428-431, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
15

現行の中学校理科や高等学校理科の基礎科目「化学基礎」において,「熱量とエネルギーと仕事」を関連させた内容が存在しないことは,基礎を付した科目に続いて学ぶ「化学」の「化学反応とエネルギー」を指導する上で大きな問題である。本稿ではその点を踏まえ,大学の一般化学とのギャップを埋める発展的な内容(エンタルピー変化,エントロピー変化,ギブズエネルギー変化)を含む熱化学指導について提案する。
著者
吉野 彰
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.296-299, 2018-06-20 (Released:2019-06-01)
参考文献数
1

リチウムイオン電池は小型・軽量化を実現した二次電池であり,現在のモバイルIT社会の実現に大きな貢献をしてきた。現在ではほぼすべてのモバイルIT機器の電源として世界中で用いられている。このリチウムイオン電池の市場状況,電池の仕組み,特徴,構成材料,電池構造,電極構造を解説する。こうしたモバイルIT用途分野(小型民生用途)においての25年以上の市場実績により,電池性能の向上,信頼性の向上,コストダウンの実現がなされてきた。こうした市場実績によりリチウムイオン電池は車載用(電気自動車用)という次の転換期を迎えている。
著者
沢辺 大輔 鳥越 宣宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.130-131, 2016-03-20 (Released:2017-06-16)

我が国の漆喰は1500年近くの歴史をもつ水酸化カルシウム(消石灰)を主成分とした建築材料である。住宅様式の変化からその需要が失われた漆喰は,近年,住まいの安全・安心に対する意識の関心の高まりやユーザーのライフスタイルや価値観の多様化から機能性・意匠性の両面から再び注目されている。消石灰と砂だけの西洋の漆喰に対し,我が国では天然由来の有機物を加えて作業性を向上させ,独自の左官技術と文化を構築するに至った。主成分となる消石灰の生成過程や漆喰の硬化,漆喰が住宅環境にもたらす安全性や機能性などについて紹介する。口絵9ページ参照。
著者
齊藤 幸一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.432-435, 2017-09-20 (Released:2018-03-01)
参考文献数
8

原子価殻電子対反発(VSEPR:valence shell electron pair repulsion)モデルは,分子をルイス構造(電子式)で表し,電子対間の反発を考えることにより,分子の形を定性的に簡便に予測できる。この考え方は,化学基礎の教科書にも登場し,大学入試問題にも出題されている。分子の構造を丸暗記に頼らず予測できるVSEPRモデルや,それを考える上で前提となるルイス構造,VSEPRモデルより理論的な背景をもつ混成軌道の概念などを高校現場の経験をふまえ,いつどこまで教えるのか振り返ってみた。
著者
西川 純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.432-435, 2015-09-20 (Released:2017-06-16)

理科は実験方法の検討,実験結果の予想で子どもたちが話し合う場面が多い。また,実験・観察では子どもたちが主体的に学習している。本稿では,『学び合い』という授業によって,理科が国語,英語より優れた言語学習の場になることを紹介する。
著者
松井 亨
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.326-329, 2017-07-20 (Released:2018-01-01)
参考文献数
3

筑波大学理工学群化学類で実施される入学試験のうち推薦入試とAO入試を取り上げ,試験の内容・特徴と実施結果,それにより生じた課題を論じる。推薦入試では思考力や発想力に富んだ真面目な学生を,AO入試ではより自主性に富んだ学生が入学する傾向にある。これらの試験によって,通常のペーパーテストでは獲得しにくい層が取り込まれて,本学における多様な人材育成に貢献している。受験者の減少などの問題を抱える一方で,成績調査の結果では化学類においては入学経路に依存した大きな差異は見られないことから,さらなる人材の多様化を目指すためには今後これらの制度を活用した入試形態が望まれる。
著者
菅野 政勝
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.596-597, 1991-10-20
著者
山崎 昶
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.320-321, 1989

英語に限らずヨーロッパの諸言語では, 普通の単語を限られた分野の専門語としても使用することが多い。そのために一部の拝外主義者は, 二言目には「だから日本のアカデミズムは……」などという無責任な言辞を弄(ろう)する。だがデータベースの検索などで多義語の処理に苦労したことのない人間の世迷い言に過ぎない。
著者
宇根山 健治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.410-413, 2007
参考文献数
3

健康で文化的な日常生活をおくるために深く関わっているフッ素系物質が,私たちの身の回りには意外なほど使われている。しかし,そのユニークな機能とフッ素の役割についてはあまり解説されていない。フッ素原子の三大要素(小さい,硬い,電子を強く引きつける)と炭素-フッ素結合の特徴(強い,分極性1)が小さい)を基にして,フッ素を含む化学物質が何故ユニークな性質を示すのかを解き明かす。
著者
秋鹿 研一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.680-684, 1994

アンモニア合成反応は平衡論(ルシャトリエの法則)の説明の実例として教科書になじみ深い。一方, 化学工業的大量生産の最初の例としても有名である。1913年ハーバー, ボッシュ等により開発されたこの高圧合成プロセスと(鉄)触媒は基本的にはそのまま今日まで用いられてきた。しかし1992年から, はじめて非鉄系のルテニウム触媒が商業生産に用いられはじめ, 新しい考えのプロセスも発表されている。アンモニア合成のブレークスルーとなったルテニウム触媒をはじめて本格的に研究したグループにいた著者が鉄とルテニウムの違いをできる限りやさしく解説した。