著者
脇野 定則 船木 實 野木 義史
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.43-49, 2001-03

第35次南極地域観測において, 東南極, リュツォ・ホルム湾, オングル海峡で地磁気全磁力測定を行った。オングル海峡では, 南北および北北西-南南東走行の地磁気異常が観測された。オングル海峡の南西部以外では, 負の地磁気異常が卓越する。また, 地磁気異常は, 約-100nTから80nTの間で変化している。
著者
吉田 栄夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.58-82, 1983-03

44名の第20次南極地域観測隊は, 1978年11月25日東京港を出航し, 昭和基地に向かった。観測項目は多岐にわたるが, 第20次隊から重点項目として, 3年計画によるPOLEX-Southおよび地学総合調査が実施されることとなった。夏期の観測は, 航路上および氷海接岸中の海洋観測, 昭和基地対岸大陸上での予察的人工地震探査, 露岩地域の地質調査と測地作業であった。FGGEのための漂流ブイ観測に協力して, 7個のオーストラリアのブイ投入も, 39°S;109°E, 62°S;85°Eにわたる海域で行われた。夏期建設作業は2階建の夏期隊員宿舎の基礎部分の建設, 各建物の補修, 通信機関係整備等であった。一方, 11名のNHKチームがインテルサットによるテレビ放映を, 1979年1月28日から2月3日の間実施し, このための建設作業, 取材等に観測隊, 「ふじ」乗組員が協力した。航空機損傷により越冬をとりやめた2名を含む12名の夏隊は, 1979年4月20日東京に帰着した。
著者
佐藤 夏雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.381-393, 1990-11

第29次南極地域観測隊は, 隊長渡辺興亜以下52名で編成された。このうち, 昭和基地の越冬隊は渡辺興亜越冬隊長以下27名, あすか観測拠点の越冬隊は矢内桂三越冬副隊長以下10名である。夏隊は, 佐藤夏雄夏隊長以下15名で編成され, 船舶技術者2名と報道関係者3名及び南極条約に基づく交換科学者として, 米国から1名および中国から2名が同行した。1987年11月14日, 東京湾を出港した「しらせ」は, オーストラリアのフリマントル港に寄港したのち, 12月17日, ブライド湾に到着し, 物資の輸送, あすか観測拠点における越冬態勢確立のための作業を実施した。12月30日, セールロンダーネ山地地学調査隊員を残し, ブライド湾を離れた「しらせ」は1988年1月2日に昭和基地に到着した。輸送(約700t), 大型アンテナ基礎工事や衛星受信棟などの建設作業, 野外調査などは1月31日までの間に終了し, 2月1日に越冬交代を行った。2月5日再びブライド湾に向かった。2月7日ブライド湾に到着し, セールロンダーネ山地地学調査隊の収容, 海底磁力計の揚収をした後, 海底地形観測等を実施した。2月14日から2月22日にかけてマラジョージナヤ基地, アムンゼン湾にて野外調査を実施した後, 今次隊から開始した東航(158°Eまで)及び北上中の海洋観測を行い, 3月20日シドニー湾に初寄港した。観測隊員は, 空路にて3月27日に, また「しらせ」は4月12日に東京湾に帰着した。
著者
芳野 赳夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.61-83, 1981-03

17次越冬隊員29名は, 1976年2月1日から1年間昭和基地, 5月以降はみずほ基地を加えて, 国際磁気圏観測(IMS)に関連した観測を重点的に行った。昭和基地では極光, 地磁気, 電離層, 気象, 地震, 潮汐の定常観測のほか, IMSのための観測機器の増設, 人工衛星追尾受信装置の建設を行い, 人工衛星受信, 7基(2基は夏期間)のロケット打ち上げと, 1基の大気球観測などの超高層部門の重点観測が行われ, 気象・医学の研究も行われた。みずほ基地は, IMSのための超高層観測を開始するため, 4月に観測棟1棟の建設と16kVA発電機の増設を行い, 5月14日以降4名が通年滞在し, 超高層のほか, 雪氷, 地上気象の観測を行い, 特に超高層部門の多点観測に貢献した。
著者
星合 孝男
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.72-94, 1984-03-31

第23次日本南極地域観測隊越冬隊員34名は, 1982年2月1日から1年間, 昭和基地, みずほ基地を中心とした地域で各種観測を行った。極光, 地磁気, 電離層, 気象, 自然地震, 潮汐, 測地の定常諸観測を例年どおり実施した。「極域中層大気の総合観測」(MAPの一環), 「南極沿岸生態系における生物生産の基礎研究」(BIOMASSの一環), 「東クィーンモードランド地域雪氷・地学研究計画」(IAGPの一環)の3長期研究計画に基づく初年度の研究, および医学の研究を行い, 所期の目的をほぼ達成することができた。
著者
唐沢 栄 矢沢 篤子 遠藤 陽子
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.37-45, 1977-08

1974年1月7日から2月4日まで,東オングル島で採取した16地点の土壌の理化学性に関する分析を試みた.それによれば東オングル島の土壌は,粒径の大きい粗砂あるいは細砂に属し,土壌が置換できる塩基の最大容量を示す塩基置換容量は,1.15〜5.87 me/100 g soil と日本国内の畑地の5分の1程度の値であり,養分保持力が小さく,養分欠乏を起しやすい土質といえた.また全置換性塩基は0.67〜12.7 me/100 g soil, 塩基飽和度は43〜217%であった.島の東部から西南部にかけては,海塩粒子等の影響と思われる水溶性ナトリウムが高濃度で検出された.東オングル島内で作物生育に適する地点は,島の東中央部のごく狭い地域に限られ,コケ類等の生育地点とはかならずしも一致していなかった.
著者
平川 一臣 松岡 憲知 高橋 裕平 先山 徹 小山内 康人 田中 幸生
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.206-229, 1987-11

第28次南極地域観測隊のセールロンダーネ山地地学調査は, 山地中央部において, 1月7日から2月10日にかけて実施された。調査はJARE-26,-27の調査地域内に限定し, 精査を旨とした。スノーモービルの活用と天候に恵まれ, ほぼ予定どおりの調査を行うことができた。この報告では, 主として行動とその問題点について記載するとともに行動中の気象表を提示する。地学調査の成果については別途に詳しく報告することとし, 概略を記すにとどめる。なお, 今次行動にはベルギー国から2人の地球科学者が交換科学者として参加し, 氷河地形学的調査を行った。
著者
佐藤 夏雄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.424-458, 1999-11

第34次南極地域観測隊越冬隊は, 越冬隊長佐藤夏雄以下40名で構成され, 1993年2月1日から1994年1月31日までのあいだ, 昭和基地の運営・維持管理を行うとともに, 計画に基づき昭和基地, 沿岸, 内陸で観測および設営活動を行った。越冬期間の主な研究観測計画は, 2年越しの超伝導重力計の設置観測, ドームF(現在ドームふじ観測拠点)までの内陸旅行等であった。超伝導重力計に関しては, 3月に装置が立ち上がり連続長期観測データが得られた。内陸旅行も, 冬開けには中継拠点までの旅行と夏のドームFまでの本旅行も予定どおりに実施できた。その他の宙空系, 地学系, 気水圏系, 生物系の観測も順調に実施できた。定常観測も順調に経過し, 気象部門の観測では, オゾンホールの発達を今回も捕らえる事ができた。設営関係も順調に経過し, 基地の維持・運営及び観測関係のサポートに大きく貢献した。生活面では, 管理棟内の食堂, バーや医務室などの内部設備が完成し, 使用を開始したため, この棟が生活の中心の場となった。なお, 年間の気候は気温が低く, かつブリザードに度々襲来され, かなり厳しい気象条件下での越冬であった。
著者
鮎川 勝
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.229-256, 2001-07

第41次南極地域観測隊は, 鮎川勝隊長以下60名(うち渡邉研太郎副隊長以下越冬隊40名)で構成された。このほか環境庁1名, 報道1名, 大学院学生1名(総合研究大学院大学極域科学専攻), 南極条約に基づく交換科学者としてベルギー王国から1名が同行者して, 夏隊と行動を共にした。1999年11月14日, 東京港を出発した砕氷艦「しらせ」は, 途中オーストラリアのフリマントルに寄港したのち, 12月17日にリュツォ・ホルム湾沖に到着し, 24日に昭和基地に接岸した。1999年12月20日から2000年2月14日までの間に, 昭和基地への物資輸送および基地の廃棄物の積み込み, 同基地での建設作業, 内陸および沿岸地域における野外観測などを行った。昭和基地等への輸送物資量は1117tで, 昭和基地から「しらせ」に積載した廃棄物量は195tであった。輸送物資量および持ち帰り廃棄物量ともにこれまでの最大の輸送量となった。建設作業は, 第1および第2夏期隊員宿舎の増築とその機械設備の設置, 基地電力幹線の移設埋設工事・給排水配管工事, 300kVA発電機オーバーホールなどの基地整備関連作業と, ヘリポートのコンクリート打設工事, 廃棄物保管庫の新築, クリーンエネルギー(太陽光, 風力)発電装置の設置工事などの環境保全関連作業を実施した。夏期の野外観測は, 内陸みずほルート沿い約200kmの測線で人工地震による地殻構造探査を実施したほか, 宗谷海岸露岩域一帯の生物, 地学調査, ラングホブデ地域のペンギン生態調査と氷河末端域の雪氷調査等を行った。また, 測地部門ではピラタス機による宗谷海岸露岩域の航空写真撮影を実施した。2月14日に第41次夏隊と第40次越冬隊の基地残留作業者を昭和基地から「しらせ」に撤収し, 2月15日に北上を開始した。リュツォ・ホルム湾の流氷縁の開水面南限で昼夜観測を含む海洋停船観測を実施した後, プリンスオラフ海岸沖の海底地形測量を実施しつつアムンゼン湾に移動し, この地域で地学, 生物調査を実施した。プリッツ湾の中国中山基地における宙空系の観測装置の保守点検を2月26日に行いヘリコプター支援による夏期観測を終了した。3月1日に南緯61度, 東経80度付近で係留系ブイの揚収と設置および停船観測を行った後帰路についた。3月20日, シドニー入港, 27日空路成田に帰国した。海洋停船観測は往路復路ともに計画通り実施した。
著者
工藤 栄 田邊 優貴子 飯田 高大 辻本 惠 小川 麻里 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.421-436, 2008-11-28

第49次日本南極地域観測隊(第49次)夏隊において,湖沼観測として湖沼環境観測,生物・生態学的研究試料としての湖水と湖底の生物群集採取,及び現場実験を宗谷海岸露岩域にある複数の湖沼で実施した.この湖沼観測報告は南極観測事業第VII期計画の一般プロジェクト研究(P3)「極域環境変動と生態系変動に関する研究」及びモニタリング研究観測(M4)「生態系変動のモニタリング」の両課題にかかわる観測を記録したものである.野外観測は2007年12月22日から2008年2月13日の期間,砕氷船「しらせ」が昭和基地沖近傍に滞在中に実施した.今回は夏季の湖沼環境変動と湖底の生物(藻類群集)の応答を集中的に観測すべく,スカルブスネスの長池にて観測とサンプリング・現場実験を繰り返し実施する一方,きざはし浜生物観測小屋から徒歩日帰り圏内にある周辺の14湖沼,及びヘリコプターを利用した日帰り観測にてスカルブスネス東部の4湖沼,及び他の露岩,スカーレンにあるスカーレン大池,ラングホブデ域の雪鳥池・東雪鳥池,ぬるめ池にて湖沼水質環境観測と試料採集を適宜実施した.このうち,スカルブスネス東部のなまず池 (仮称)では潜水による水中設置ビデオ装置の回収と,湖底のコケ類・藻類が作り上げている「とさか・筍状」の群落の採集,ラングホブデぬるめ池では湖底から小型カイアシ類の定量サンプリングを実施,これらを研究試料として日本に持ち帰ることができた.また,第47次隊により雪の堤防の決壊の発見(第46次越冬期間中に決壊したとみられる)が報告されたラングホブデ南部の平頭氷河末端にあった「氷河池」(仮称)の現状視察も実施,決壊前後での3m以上と思われる大幅な水位変動痕からフィルム状の生物試料を採集し持ち帰った.
著者
原田 美道
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.229-233, 1958-09

第2次観測隊は宇宙線,極光・夜光,電離層,地磁気,気象,海洋,氷河,重力,生物の船上及び基地観測と第1次越冬隊員にかわる20名の越冬隊員を残すことを目的とした。宗谷は1957年10月21日東京港を出港し,12月20日Enderby Land沖64°11'S,53°48'Eで浮氷縁に到達したが,氷状及び気候条件が悪く,1958年1月初めより宗谷は流氷群に全くとじこめられた(第1図参照)。2月6日,宗谷は浮氷域を説し,アメリカ海軍砕氷艦Burton Island号の援助をうけて第1次越冬隊の救出及び第2次越冬隊をのこすための輸送に努力したが,残念ながら第2次越冬隊の輸送には成功せず,第1次越冬隊の救出のみに終った。2月24日を以て南極地域における活動は打ち切られ,宗谷は帰国の途についた。
著者
佐藤 貢 山岸 久雄 加藤 泰男 西野 正徳
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.251-267, 1992-07
被引用文献数
1

高エネルギー粒子の降下による銀河電波雑音の電離層吸収(CNA)を測定するリオメーターは, 粒子降下領域の空間構造を求めるため, 二次元高空間分解能化への試みがなされ, イメージングリオメーターが開発された。これまでのイメージングリオメーターによるCNA観測は, 観測データを大容量MTやディスクに取り込み, ある一定期間観測後, 持ち帰り, 大型計算機処理により背景となる銀河電波雑音の静穏時の日変化曲線(QDC)を求めて, その差から真の吸収量を導き出し画像化している。本論文のイメージングリオメーター吸収画像QLシステムは, データ収集と画像化処理にパーソナルコンピューターを用いて, あらかじめ観測した十数日間のデータから1日分のQDCデータを作成し, 以後の観測では, データ収集と同時にそのQDCデータを恒星時補正して参照し, 観測データとQDCデータの比を演算する処理を行い, 吸収領域の吸収量及び形状の時間的変動の二次元カラーイメージを実時間で表示することが可能である。これにより, 観測現場で, オーロラTV観測による映像と二次元CNA画像を実時間で比較することができる。
著者
芳野 赳夫
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.899-903, 1961-01

1.目的 オーロラが出現したとき,その部分の高層大気中に局部的に電子密度の高い領域があると考えられている.その高電離気体から輻射される電波の性質を知ることはオーロラの発光機構を説明する一つの手ががりとなるので,或る角度に向け固定されたパラボラアンテナと3000MCの受信機によりノイズレベルを連続記録し,他部門のデータと比較研究する.2.結果 今回は記録装置に打点式を使用したこと,基地内部のノイズレベルが予想外に高かったため,必ずしも満足なデータを得られなかったが,オーロラおよび擾乱を受けた高層大気から輻射される3000MC帯の電波の存在が大略実証され,その地磁気,オーロラ強度,E_s電離層の突抜周波数の急変との相互相関もかなり良く,その詳細なる解析を続行中である.
著者
守嶋 圭 小野 高幸 林 幹治
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.205-230, 1993-11

1990年第31次南極地域観測隊により昭和基地において観測された多波長フォトメータデータより, 844.6nm (OI)光, 並びに670.5nm (N_21PG)光強度を用いて推定された降下電子のエネルギーパラメータの関係を, タイプAオーロラ, パルセーティングオーロラ, ブレイクアップ時のオーロラについて調べた。解析の結果, オーロラのタイプ別に, エネルギーパラメータは異なる関係を示すことがわかった。特にディスクリートオーロラでは, 降下電子の全エネルギーフラックス(E_<tot>)は平均エネルギー(E_<av>)の二乗に比例する関係(E_<tot>=K′・E^2_<av>)が多く見られた。この関係はディスクリートオーロラを励起する降下電子が沿磁力線電位差で加速されるという理論的予測と一致する。実際の観測例の中には上記の比例関係が見られないディスクリートオーロラも存在するが, その原因として, (1)通過するオーロラがフォトメータの視野範囲を十分覆っていない場合, 及び(2)磁気圏側の電子密度, 温度が時間的に変動している場合があることが示された。
著者
Khare Neloy
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.110-113, 2009-03-30

北極に氷がなくなる事は,熱帯の気候に影響を与える.北極域の氷の状態は,それゆえ,インドの気候変動を理解する鍵である.北極域で様々な研究に着手するために,2008年7月1日に,インドの基地「ヒマドリ」をニーオルスンに開設した.ニーオルスンには現在,インドを含め10カ国から15の基地が設けられている.この論文では北極域でインドが行っている主要な研究を紹介する.
著者
召田 成美 塚村 浩二 山本 雄次 古謝 三行
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.83-116, 1983-03

この報告は第20次南極地域観測越冬隊気象部門が, 1979年2月1日から1980年1月31日まで, 昭和基地において行った地上および高層気象観測の結果をまとめたものである。観測方法, 設備, 結果の取り扱い等はほぼ19次隊と同じである。越冬期間中特記される気象現象としては, 次のものがあげられる。1) 秋から冬のはじめにかけて, ぐずつき気味の風の強い日が多く, 特に4月の月平均風速は累年平均(1957年-1979年)を3.2m/sも上まわった。2) ブリザードは平年とほぼ同数襲来したが, 長続きするものは少なく, 天気の回復が早かった。3) 6,7月の平均気温が累年平均より2℃以上低く, 年間の変化傾向が「なべ底型」に近かった。4) 成層圏の突然昇温が平年より1ヵ月も早く現れた。5) 9月から12月にかけ長い周期で天気が変化し, 特に9月下旬から10月下旬, 11月下旬から12月下旬にかけては1ヵ月以上好天が持続した。
著者
和田 誠 権田 武彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.1-8, 1985-09

1979年3月から1980年1月まで南極みずほ基地で雪結晶の顕微鏡観測を行った。種々の形の雪結晶の中に, 骸晶構造を持つ角柱結晶が, 比較的多く降っていることがわかった。この論文では, この結晶の結晶学的諸特性と成長条件を議論する。
著者
木津 暢彦 金濱 晋 鎌田 浩嗣 上野 圭介 長井 勝栄
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.35-94, 2007-03-28

この報告は,第43次南極地域観測隊気象部門が,2002年2月1日から2003年1月31日まで,昭和基地を中心に行った気象観測結果をまとめたものである.観測方法,測器,統計方法等は,第42次隊とほぼ同様である. 越冬期間中,特記される気象現象として,次のものが挙げられる.1) 地上気象観測では,5月から10月にかけて気温が平年より高く,月平均気温の高い方,日最高気温の月平均の高い方,日最低気温の月平均の高い方の極値の更新があった.また9月中旬にあったA級ブリザードは,最大瞬間風速57.9m/s, 最大10分間平均風速45.4m/sであった.これは9月として1位,通年の統計でも3位の強風であった.2) 高層気象観測では,成層圏突然昇温が例年より早く発現(7月上旬)し,9月末には,南半球では初めて観測された極渦の2分離を伴う成層圏大突然昇温が起こった.3) オゾン全量観測においては,8月上旬から10月中旬にかけてオゾンホールを観測したが,10月下旬以降はこの20年間の平均よりも多い値で推移した.
著者
守田 康太郎 村越 望 西堀 栄三郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.823-829, 1961-01

雪原からの蒸発量の測定は一般には甚だむつかしい.降雪や飛雪の影響,および蒸発計の影響が大きいからである.西堀は,昭和基地第一次越冬中に,これらの影響から免れて雪面蒸発量を測定する方法を考案し,村越が実際の観測を行った.その方法は,積雪から雪のブロックを正立方形にきりとって空中に吊し,その重量変化を測定するというのである.特殊の条件下においては,その重量変化から,ただちに単位表面からの蒸発量を算出することができる.その条件は,(a)雪ブロックから融雪水の滴下が起らぬこと,(b)雪ブロックに降雪や飛雪が附着しないこと,(c)ブロックの外形が相似を保ったまま変化すること,(d)ブロックの密度変化が無視し得ること等である.昭和基地においてはこれらの条件はほぼ満されており,得られた結果はソビエト隊による推測値と比較しても,大体妥当な値と考えられる.気象要素との関係について,飽差と風の函数としてあらわされることが分った.
著者
白石 和行 金谷 弘
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.30-41, 1983-09

やまと山脈の基盤岩類からのべ63個の試料を選び, Rb, Sr, Th, Uの定量分析を行った。3種の閃長岩類を観察すると, これら元素の存在量や存在比について, 比較的顕著な差異のあることが認められる。特に, 単斜輝石石英モンゾニ岩におけるSrの濃集が著しい。また, 変成岩類相互の差異は必ずしも顕著ではなく, 全体の傾向は, 世界の盾状地での下部グラニュライト相-上部角閃岩相の変成岩の示すこれらの値と大きくかけ離れるものではない。