著者
倉沢 一 Hajime KURASAWA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.58, pp.204-234, 1977-03

南極の火山の分布は,後期新生代に関して,いわゆる造山帯の傾向あるいは歴史と同様な特徴をもっている.南極のマリー.バードランドとビクトリアランド地域はアルカリ岩系の岩石区の特徴をもって,さまざまな変化をみせている.南極半島地域の南シェトランド諸島は玄武岩~安山岩の組み合わせで,Na成分に富むとはいうものの,それらの性質からは,アルミナに富む高アルカリソレアイト系列に属すると考えられる.ストロンチウム同位体組成などから,ロス島火山岩類は,大陸に隣接していながら,ホット・スポットという意味をもって,海洋島のそれらによくにた性質をもっているという結論がえられた.同位体地質学的あるいは化学的性質から,南極地域の火山および火山岩類を検討した.
著者
神沼 克伊 高橋 正義
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.75-83, 1975-12

1973年9月,第14次越冬隊により,上下動1成分の地震計を用いた地震観測がみずほ観測拠点で行われた.観測条件の悪い南極の内陸基地での地震観測の試みは南極点基地以外には例が無いと思われる.基地内の人工的雑音などのため十分な観測ができなかったが合計210時間の間の記録をとることに成功し多くの氷震を観測した.その結果,この地域では気温が-35℃以下で,その変化の割合が1時間に-2.5℃以下,または-1℃/hourが数時間続く時には例外なく氷震が発生している.
著者
渡辺 研太郎 中嶋 泰 内藤 靖彦
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.75, pp.p75-92, 1982-03
被引用文献数
1

1981年1月15日から31日にかけて, 昭和基地付近の3点(底質は砂地と岩場)において, 第21次南極地域観測越冬隊および第22次夏隊に参加した3名が, SCUBA(自給気潜水器)を用いた生物調査を行った。潜水回数は15回, 延べ33回・人。各回の潜水時間は約45分, 最大55分で, 最大潜水深度は18mであった。使用したドライスーツをはじめとする潜水機材は, 南極の夏季の潜水作業には十分な性能を備えていることが判明した。調査の結果, これまでトラップでは採集できなかったナンキョクツキヒガイなどのろ過食性生物を含め, 約200点の底生生物を採集した。このほか35mmカラーフィルムで約250こま, 8mmカラーフィルムで約400フィートの水中写真に生物の生態を記録し, 所期の目的を達成した。
著者
倉沢 一
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.58, pp.p204-234, 1977-03

南極の火山の分布は,後期新生代に関して,いわゆる造山帯の傾向あるいは歴史と同様な特徴をもっている.南極のマリー.バードランドとビクトリアランド地域はアルカリ岩系の岩石区の特徴をもって,さまざまな変化をみせている.南極半島地域の南シェトランド諸島は玄武岩〜安山岩の組み合わせで,Na成分に富むとはいうものの,それらの性質からは,アルミナに富む高アルカリソレアイト系列に属すると考えられる.ストロンチウム同位体組成などから,ロス島火山岩類は,大陸に隣接していながら,ホット・スポットという意味をもって,海洋島のそれらによくにた性質をもっているという結論がえられた.同位体地質学的あるいは化学的性質から,南極地域の火山および火山岩類を検討した.
著者
江崎 雄治 栗田 邦明 松島 功 木津 暢彦 中嶋 哲二 金戸 進
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.125-204, 2000-07
被引用文献数
1

この報告は第38次南極地域観測隊気象部門が, 1997年2月1日から1998年1月31日まで昭和基地において, および, 1997年1月25日から1998年1月20日までドームふじ観測拠点において行った気象観測結果をまとめたものである。観測方法, 測器, 統計方法等は第37次観測隊とほぼ同様である。越冬期間中特記される気象現象として, 次のものがあげられる。1) 昭和基地での年平均気温はほぼ平年並みであった。9月の月平均気温は-23.6℃であり歴代1位の低さであった。2) 昭和基地において, 9年連続で大規模なオゾンホールを観測し, オゾン全量の最低月平均値は10月の164m atm-cmであった。これは観測開始以来2番目に低い記録であった。3) 昭和基地において, 1年を通して地上オゾン濃度観測を行った。8月28日から29日にかけて地上オゾン濃度急減現象を観測した。4) 昭和基地において, エアロゾルゾンデにより成層圏エアロゾルの観測を行った。年間を通して6台のエアロゾルゾンデを飛揚した。5) ドームふじ観測拠点における1997年の年平均気温は-54.4℃, 最低気温は7月8日に観測した-79.7℃であった。
著者
植竹 淳 東 久美子 本山 秀明
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-67, 2012-03

氷床アイスコア中には,鉱物粒子と共に輸送されてきた微生物が含まれる事が知られている.これら微生物の細胞数の計測には,蛍光顕微鏡による直接観察法が用いられるが,細胞数が少ないアイスコア試料では蛍光染色試薬の退色により数を過小評価しやすい一方で,含まれる鉱物などの非特異的な蛍光により過大評価しやすいため,定量的に細胞数を測定する事が困難である.本研究では5種の退色防止試薬から退色が最も少ないもの,19種の蛍光染色試薬から非特異的蛍光との選別が容易な試薬をそれぞれ選出し,細胞壁構造の異なる6種の微生物株を用いて染色選択性を確認し,鉱物の混入による染色への影響を調べた.その結果,退色防止試薬にはEverBrite Mounting Medium(Biotium製),蛍光染色試薬にはYOYO-1(Molecular Probes)が最も適していることがわかり,鉱物が混入する場合は濃度をやや高めに調整することで定量性が高くなる事が示された.
著者
渡辺 隆 岩上 直幹 小川 利紘 中村 正年 Takashi WATANABE Naomoto IWAGAMI Toshihiro OGAWA Masatoshi NAKAMURA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.69, pp.111-115, 1980-03

冬期高緯度において,中間圏オゾンのロケット観測を太陽吸光法を用いて行った.得られた高度分布は,典型的な中緯度の値にくらべて著しく小さい.
著者
西脇 三郎 Saburo NISHIWAKI
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.44, pp.93-99, 1972-08

第12次南極観測海洋生物部門の定常観測として1970年11月26日から1971年5月1日まで観測船「ふじ」の航路にそって,北太平洋西部・インド洋・南極洋にわたる115地点の表面海水中のクロロフィルa量の測定を行なった.南極洋および南緯32°以南のインド洋ではクロロフィルa量の分布にかなりの変動がみられたが,全体的にはその他の海域におけるよりも高い値が見られた(0.05~1.10mg/m^3).北太平洋西部・南シナ海・南緯32°以北のインド洋では,比較的高い値がみられたオーストラリア沿岸・南アフリカ沿岸・マダガスカル島沿岸・マラッカ海峡などの沿岸海域を除けば,南極洋などに比べ全体的には低い値がみられた(0.02~0.17mg/m^3).今回の観測で得られたクロロフィルa量の地理的分布の様相は,これまでのほぼ同じ航路において得られた結果と全般的傾向としてはほぼ一致していた.
著者
増田 彰正 田中 剛 朝倉 純子 清水 洋 Akimasa MASUDA Tsuyoshi TANAKA Junko ASAKURA Hiroshi SHIMIZU
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.197-203, 1977-03

やまと隕石(j),(k)および(m)の中の希土類元素(REE),Ba,Rb,Srを安定同位体希釈法によって定量した.(j)については,任意に二つの部分をとって分析した(提供された試料は,やや粗い粉末試料だった).最も代表的な希土類元素相互存在度を示すと考えられるLeedeyコンドライトの値で規格化すると,(k)は最も小さい分化を示すが,Euによく見られる異常は別として,GdとDyとの間に不連続性が見られるのが特徴である.(m)と(k)は,成因的な関連が深いと判断された.(j)の二回の定量値の間には,興味深い,系統的な差がある.(m)と(k)との関連,および(j)の内部的分化は,共に,もとの母体小惑星内での溶融と結晶分化の効果を強く示唆すると解釈できる.
著者
平山 善吉 Zenkichi HIRAYAMA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.980-990, 1961-01

1956年以来昭和基地の建築は毎年,改造,増築等を行いつつ現在(1960年)に至っている.その間1957年から58年迄の基地放棄の1年間があったにせよ,建物は充分にのそ機能を発揮しつつ,健全な成長をとげている.ここでは,初期の平面計画の問題からおし広げられた,現在迄の様子を,新めて基地の立地条件,輸送の問題にふれながら,年ごとにその成長の過程を述べてある.この中では1956年当時の建築面積が,250.6m^2から413.0m^2(1960年)と飛躍的な発展をしたものの,これらのうちの多くは,現地で建設された,簡易建築物であることも見のがすことはできない.またその是非については色々と問題もあろうが当然なされるべき処置であると同時に,その結果は今後の参考になろうと考えられる.最後に1959年,すなわち基地再開時の建物の考察の結果を述べてある.最後にこの建物について検討を加えるならば,そこには若干の不備があったにせよ,南極大陸に立ち自然の猛威に抗しつつ,充分にその目的を達し得たと思う.
著者
菊池 徹 北村 泰一 Toru KIKUCHI Taiichi KITAMURA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.625-660, 1960-01

(1)第1次越冬隊に使用させていただいた犬ぞりは,その準備と訓練に多大の努力を払って下さった加納一郎氏,北海道大学の犬飼哲夫教授,芳賀良一講師など,北大極地研究グループの人達に負う処が極めて大であった.厚く御礼申し上げる.(2)南極や北極で,外国隊の使用した犬はすべてハスキー種(又はその同属)であるが,日本隊は,1910~12年の白瀬隊の時もそうであった様に,今回も樺太犬を使用した.(3)越冬した樺太犬は,越冬初期に19頭(内雌1頭)であったが,越冬中に3頭をなくし,8頭の仔犬が産まれたので,その末期には24頭(雌1頭,仔犬8頭を合む)であった.この内,15頭の雄成犬が,第2次越冬隊を待ったまま昭和基地に残った.(4)IIの項では,昭和基地の犬小屋,犬の食糧(第1表),犬の体重変化(第2表),仔犬の出産及び8月に行なった訓練(第3表)について書いた.(5)IIIの項では,始めにそりその他の用具についてふれ,続いて,パッダ島並びにその南の上陸地点への偵察行(8月28日~9月4日),ボツンヌーテン行(10月16日~11月11日)及びオラフ行(11月25日~12月10日)の3つの旅行をあげ、それぞれ第4表,第5表,第6表にその概要を記した.(6)犬ぞり旅行を,数字で説明する一つの試みとして,Wt=(4rtfgaWdN)/V(荷重の法則)なる式を仮定し,3つの旅行について,その分析を行なった.第7表,第8表,第9表に示す通りである.(7)15顛の犬達が,オングル島に残らざるを得なかったのは,実現はしなかった第2次越冬隊を送り込む事に最大の努力がはらわれ,犬達は新しい隊の来るのを待っていたのである事実を明記した.(8)最後に犬達の冥福を心から祈って,この拙い報告書を彼等の霊に棒げる.
著者
青柳 昌宏 上田 一生
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.p88-95, 1989-03

第1回国際ペンギン会議が, 1988年8月, ニュージーランド, オタゴ大学で開催された。123名が参加し, 口頭発表, 展示発表合わせて53の論文が提出された。アデリーペンギン属, エンペラーペンギン属の5種のペンギンの発表論文が, そのうち22を占め, これらのペンギンが主たる研究対象となっていることを示していた。海中におけるペンギンの行動研究の手段として, 深度計, 電波による追跡装置が関心の的であった。これらの装置を用いて, 採餌, エネルギーの移動の研究が進められている。ロス海における, アデリーペンギンの長期個体数変動調査の結果が, 南極海洋生態系を知る手掛かりとなるものとして評価された。ニュージーランドに生息するキガシラペンギンの個体数減少が報告された。
著者
松田 達郎 Tatsuro MATSUDA
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.87-93, 1968-03

The experimental cultivation of vegetables was carried out at Syowa Station by the wintering party of the 7th Japanese Antarctic Research Expedition. Vegetables were cultivated in the room, using an artificial light and chemical fertilizer, with artificial soil or with sand taken from the vicinity of Syowa Station. Radish was the main species of cultivated vegetables and the cultivation was continued throughout the wintering season. The fresh vegetables gave variety to daily meals, but a more important fact was that the wintering party members very much enjoyed growing plants in such a barren environment.
著者
本多 一郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
no.73, pp.p178-188, 1981-09

1979年4月, 日本政府は, 「ふじ」の輸送能力の限界と老朽化を考慮して, 南極地域観測支援のため, 新しい後継艦を建造することを決定した。新砕氷艦は, 「ふじ」に比べると大きさで約2倍, 軸馬力で約3倍であり, 砕氷能力は, おおよそアークティッククラス4と見積もられる。本艦は観測隊員等60名, 貨物1000トンを昭和基地に輸送する能力をもっており, CH-53級輸送用ヘリコプター2機とOH-6級偵察用ヘリコプター1機を搭載する予定である。推進装置としては, ディーゼルエレクトリックAC-R-DC, 3軸推進方式が採用されている。宙空, 海洋, 生物, データ処理等5つの観測室が設けられ, 種々の洋上観測作業をすることができる。本艦の初の南極行動は, 1983年末に予定されている。In April 1979,the Japanese Government decided to build a new icebreaker to take over the function of the icebreaker FUJI, because the latter's capability in the Antarctic activities was reduced due to aging. The new ship also engages in such operations as the transportation of the personnel and cargo and on the onboard observations. The ship's capabilities are improved. The standard displacement is 11,000 ton, which is twice that of the FUJI, and the propulsion capacity is 30,000 SHP, which is about three times that of the FUJI. The diesel-electric AC-R-DC is used for the propulsion. Six sets of generators and motors drive three propellers through three shafts. The capability of breaking the sea ice may be estimated as Arctic class 4. Accommodations for 60 scientists and 170 crew and holds for cargo of 1000 tons are prepared. Laboratories for the onboard research of the space science, oceanography, biology, geosciences and gravimetry and a data processing room are provided. The first cruise of the new ship is planned in the 1983-84 season. Two CH-53 class cargo helicopters and one OH-6 class reconnaissance helicopter will be equipped.