著者
"谷川 喜美江" "タニガワ キミエ" Kimie" "Tanigawa
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.95-114, 2009-03-30

昨今、我が国では厳しい財政状況を背景に税と社会保障を一体的に捉え改革することで社会的経費を抑制し、安定的で持続可能な制度創設の要求から給付付税額控除制度が注目されている。しかし、所得税には所得再分配機能の十分な発揮が要求されており、本要求の充足には所得税の控除制度が担うべき重要な役割があると考える。そこで本論文では、まず、我が国で注目されている給付付税額控除制度をすでに所得税に取り入れている米国・英国・オランダにおける制度を整理した。その結果、複雑な税制の中に組み込まれているが故に不正受給を招き、公平を大きく阻害する制度であるという問題を抱えていることが示された。次に、我が国所得税の所得控除制度及び税額控除制度創設の背景と沿革を整理したところ、現行の我が国所得税の控除制度は昭和42年改正で制度簡素化を理由に所得控除制度へと改められたものが多数維持されていることが示された。我が国所得税では累進税率を適用しているため、所得控除制度の税軽減額は所得の大小により異なるのに対し、税額控除制度の税軽減額は変化しない。それゆえ、所得控除制度は低所得者よりも高所得者に有利に働く制度となっている。したがって、所得再分配機能を十分に発揮する所得税構築のための控除制度の確立には、複雑な我が国所得税において公平を大きく阻害し、控除制度が果たすべき機能を阻害する給付付税額控除制度の導入は認めがたく、また、所得控除制度とすべき控除は所得税を負担する者の担税力に配慮して最低生活費にまで所得税の課税が及ぶことを排除するために設けられる控除のみを認め、税額控除制度とすべき控除は制度奨励の意図や政策的意図を達成するための控除とする制度へと見直すべきとの結論に至った。
著者
上原 聡
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-14, 2010-10-25

消費者行動研究では、消費者をコンピューターに見立てた情報処理アプローチが1970年代における主要な研究パラダイムであった。情報処理アプローチのような、認知過程を中心に展開された消費者意思決定モデルの中では、感情は認知過程の付随的要素として扱われてきた。しかし、さまざまな領域で感情の研究が進展したことを受け、1980 年代から現在にかけて、消費者行動研究のテーマとしての感情研究の重要性は徐々に高まっている。 このように、感情研究の重要性は認められてはいるが、その機能および構造が体系化された先行研究がみられないことが問題点として指摘できる。 そこで本稿の目的は、人間が日常的に行う社会的判断(意思決定)に焦点を絞り、感情を考慮した消費者行動研究を拡充していくための理論的基盤として、感情がどのような機能を果たしているか、さらに、感情をどのような構造として理解すべきかを解明することにある。そして、感情の機能と構造を解明するために社会心理学や感情心理学の知見を導入している。 結論として、感情構造を「快楽-覚醒」の2 軸により分類し、これにポジティブ感情とネガティブ感情を対応させ、それぞれをムードと情動に区分した上で、4 つの感情タイプ別に感情機能を説明することができた。最後に、この仮説を裏づけるため、社会的判断の場面である購買行動について実際にフィールド調査を実施し、データによる実証分析から、選択され易い認知処理方略を含む購買行動特性を感情タイプ別に明らかにしている。
著者
"遠山 緑生 白鳥 成彦 大久保 成 木幡 敬史 和泉 徹彦 田尻 慎太郎" "トオヤマ ノリオ シラトリ ナルヒコ オオクボ ナル コワタ タカシ イズミ テツヒコ タジリ シンタロウ" Norio "Toyama Naruhiko Shiratori Naru Okubo Takashi Kowata Tetsuhiko Izumi Shintaro" Tajiri
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-88, 2012-03-20

嘉悦大学では、デジタルネイティブ世代へのICT リテラシー教育内容を再検討し、2010 年度からの新カリキュラムの主要科目としてICT スキルズ・ICT ツールズ・ICT メディア・ICTコモンズの4 科目を開講した。この4 科目は「デジタルネイティブ世代を意識した、コンピュータ<で>教えるICT 教育」をコンセプトとする。4 科目全体の目標は、いわゆる初年次教育の一環として、PC やネットの利用をきっかけとしつつ、広く知的生産において必要とされるリテラシーの育成と、知的生産を通じたコミュニケーションの経験を積んでもらうことにある。ICT を活用した情報の<入力-編集-出力>という一連のプロセスを標準形とし、これを4 科目それぞれの特色を持つ様々な形のプロジェクト課題として実践する。本論文ではこれらの科目に関して、その概要と目標を述べるとともに、現在の科目編成に至る過程で行われた議論をまとめ、紹介する。
著者
黒瀬 直宏
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.93-111, 2011-03-20

戦後実施された重要産業復興策は大企業体制確立のための「原始的蓄積政策」であり、これによる中小企業の資材難・資金難が戦後最初の中小企業問題であった。朝鮮戦争をきっかけに大企業は資本蓄積を急速に進め、大企業体制を再確立した。これとともに大企業体制に起因する中小企業問題が発生した。下請代金支払遅延、大企業カルテルによる原料高・製品安などの収奪問題、収奪問題と大企業への融資集中による資金難、大企業の中小企業分野進出による市場問題が発生した。このような中小企業問題は大企業体制が確立している先進国では共通に見られるが、日本では低賃金基盤に基づく中小企業間の過当競争が著しく、中小企業問題が深刻化し、二重構造問題と呼ばれるように、中小企業と大企業の間で生産性・賃金に関し、大きな格差が発生した。中小企業問題が壁となり、中小企業は物的生産性、付加価値率とも上昇させるのが困難となり、低賃金に依存する「問題中小企業」の厚い堆積ができた。ただし、高度成長期に発展した量産型中小企業の先触れとなる輸出軽機械工業のような革新的中小企業も現れたが、この分析は次の機会とする。
著者
平井 東幸
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-68, 2003-10-01

近年、産業集積をめぐっての論議が少なくない。学会はもとより、行政、さらには産業界でも日本経済再生とのからみもあって各方面で産業集積という用語が用いられるようなった。そして学際的な研究が国の内外で活発に行われるようになっている。ここでは、産業集積として歴史の古い繊維産地、とくに織物産地を産業集積という観点から整理をしてみたいと思う。産業集積の概念が当初の工業集積に限られた時代から最近は商業集積等を含めた広義に解釈されるようになっている。そこで、先ず産業集積の定義を試み,次いで、織物産地について歴史的形成、全国的な分布、立地条件、集積のメリットそしてデメリット等について検討する。
著者
松行 彬子
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-17, 2002-03-30

近年、企業を取り巻く経営環境は、急速に変化し、また、きわめて複雑な様相を呈している。このような環境変化に対応して、1980年代後半を境として、企業経営のパラダイムは、それまでの内部資源重視から外部資源利用による経営資源の補完へと大きく転換し、その流れは現在にいたるまで続いている。その結果、戦略的提携、アウトソーシングなどのネットワーク型のグループ経営が数多く登場してきた。これまでのグループ経営研究においては経営資源の補完という単なる機能的な側面が注目された。しかし、本論文では、グループ経営への参加企業間では、情報を媒体とした何らかの関係性が形成され、知識移転・組織間学習が生起し、それらが企業変革を促進すると考える。そこで、本論文では、このような問題認識に基づいて、企業間の組織学習と組織間学習に着目し、その概念および特性について明らかにする。そして、企業間における組織間学習を通して、知識創造が行われ、最終的には、企業変革にいたる一連のプロセスについて検討・考察する。
著者
遠藤 ひとみ
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.45-62, 2011-03-20
被引用文献数
1

近年、わが国では、地域社会の活性化、まちづくり、保健、医療、福祉、子育て支援、教育、人材育成、環境保全、食の安全と安心など、さまざまな社会的課題が顕在化している。そして、このような地域社会が抱える課題を解決するためのソーシャルビジネスが注目されている。その発展は、地域雇用政策、地域独自の雇用創出政策を目指すという観点で、大きな期待や評価を集めている。本論文では、ソーシャルビジネスに関する一考察として、その担い手として期待されるアクティブシニアに焦点を当てる。まず、ソーシャルビジネスの定義とその現状を取り上げ、その事業活動を地域課題解決型と地域資源活用型に類型し、検討していく。そして、ソーシャルビジネスの担い手であるアクティブシニアに着目し、多様な社会参画の現状と概要、ソーシャルビジネス事業における代表的な事例を取り上げ、その実態を明らかにする。また、そのアクティブシニアの多様な社会参画に欠かすことができない、ソーシャルビジネスの支援策を検討し、その可能性について論究していく。
著者
井口 正彦 大久保 ゆり
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-55, 2012-10-26

本稿は2011年12月に南アフリカのダーバンで開催された第17回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP17)における会議プロセスに注目する。京都議定書によって義務づけられている削減目標の期間は2012年で終了するため、COP17では2013年以降の国際的な温暖化対策への一刻も早い合意が期待されていたという意味で重要な会議であった。このような背景に対し、本稿では締約国が自主的にボトムアップ式で目標や対策を決めるという流れと、締約国が法的拘束力のもとに一定のトップダウンで目標や対策を定めていくという、二つの流れに着目しながらCOP17における交渉プロセスを詳細に分析する。この結果、COP17では法的拘束力を持たず、あくまで自主的にボトムアップ方式で温暖化対策を目指したコペンハーゲン合意から、法的拘束力のある次期枠組みへの交渉に向けて舵を切った会議であったことが分かった。つまり、COP17ではすべての国が法的拘束力のある枠組みの中で科学的知見に沿った削減目標を掲げるという機会を提供したといえる。このような結果を踏まえ、今後においてはトップダウンとボトムアップの両者のバランスを考慮した「衡平性」の議論が交渉の中で重要な論点になることを提起する。
著者
遠山 緑生 白鳥 成彦 大久保 成 木幡 敬史 和泉 徹彦 田尻 慎太郎
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-88, 2012-03-20

嘉悦大学では、デジタルネイティブ世代へのICT リテラシー教育内容を再検討し、2010 年度からの新カリキュラムの主要科目としてICT スキルズ・ICT ツールズ・ICT メディア・ICTコモンズの4 科目を開講した。この4 科目は「デジタルネイティブ世代を意識した、コンピュータ<で>教えるICT 教育」をコンセプトとする。4 科目全体の目標は、いわゆる初年次教育の一環として、PC やネットの利用をきっかけとしつつ、広く知的生産において必要とされるリテラシーの育成と、知的生産を通じたコミュニケーションの経験を積んでもらうことにある。ICT を活用した情報の<入力-編集-出力>という一連のプロセスを標準形とし、これを4 科目それぞれの特色を持つ様々な形のプロジェクト課題として実践する。本論文ではこれらの科目に関して、その概要と目標を述べるとともに、現在の科目編成に至る過程で行われた議論をまとめ、紹介する。
著者
森谷 智子
出版者
長崎県立大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:18841104)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1-17, 2012-03

2007年2月にサブプライム問題が表面化し、その後、2009年にかけて金融危機が生じたのは記憶に新しい。サブプライム危機が発端となり、証券化商品市場に対する様々な問題が指摘されることになった。このようなことを受け、今回の金融危機の原因究明が早急に求められている。これまで、投資するうえで安全性が高いと評価されてきた証券化商品の信用力が問われると同時に、証券化商品の発行額が低迷している。今回の金融危機は、証券化という金融技術が招いたと一般的に批判されているが、格付機関による格付けの甘さ、さらには大手金融機関(投資銀行)のお金の流れに対する問題をも指摘されるようになっている。こういった根本的な問題を解決するために、2010年7月、米国においてドッド=フランク法が施行された。このドッド=フランク法は、1930年代の脆弱な金融制度を抜本的に変革するものとして期待されている。この法律に基づき、現在、金融機能全体の見直しが進められている。そこで、本稿では、今後、証券化商品市場を再活性化させていくためには、どのような施策が必要であるのかについて検討している。
著者
古閑 博美
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.145-157, 2003-10-01

今また、論語が注目されようとしている。それは、「心の乱世」と呼ばれる現状があることと無縁ではない。社会や教育の荒廃は、人びとの行動や精神に悪影響をおよぼし、取返しのつかない状況を生む。大学教育の現場で、学生の学力低下や態度不良が指摘されるようになって久しい。社会人としてふさわしい態度を形成するうえで、徳行や礼が実行されない環境を放置してよいはずがない。歴史的経緯からも、論語は、日本にもたらされた当初から教育的価値の高い書物として活用されている。古典に親しむ教育を検証し、かつて実行された日本のよき教育的指導のあり方を、再び学ぶ必要があると思われる。筆者の実践から、現代の大学生であっても、礼をともなった交誼のあり方に心地よさを感じている者が少なくないと断言できる。政治経済・福祉・教育を取り巻く情勢は厳しい。少子化に歯止めが期待できない今日、大学の今後も決して楽観できるものではない。しかし、人間が作った社会である以上、人間がその現実を直視したうえで是正し、よりよいものにしていくしかない。論語に学ぶ意味も、まさにその点にあると思う。
著者
南 憲一
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.23-44, 2011-03-20
被引用文献数
1

意思決定は、Simonにより「プログラム化しうる意思決定」と「プログラム化しえない意思決定」に分類される(Simon,H.A.,1977pp.45-49)。Ansoffは、企業における意思決定を、戦略的な意思決定、管理的な意思決定、日常業務的な意思決定の3つのカテゴリーに分類して示している(Ansoff,H.I.,1988pp.4-9)。島田は、組織を意思決定のネットワークと捉え、企業における意思決定の連鎖を(社長、部長、課長の分類で)公式組織における目標の展開として捉えている(島田達巳=高原康彦、2007pp.50-51)。また、意思決定のプロセスをSimonは、情報活動、設計活動、選択活動、再検討活動として示している。一方、白井とBarabbaはビジネスモデルの創造や評価にシミュレーションを適用する方法を提案している(白井宏明、2001pp.8-10、Barabba,V., et al.,2002)。本研究では、経営における特に「プログラム化しえない意思決定」の支援ツールとしてシミュレーションを用いることを提案する。具体的に、経営教育におけるビジネスゲームでのシミュレーションの適用例を、島田の意思決定の連鎖とSimonの意思決定のプロセスに合わせて示す。そして、Simon、島田の問題解決のプロセスを実習において適用した効果について考察する。
著者
内藤 勝
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.85-107, 2003-10-01

最近の中国経済は、農工において発展が著しい。DGPは1兆2000億ドル(2000年)で世界第6位、しかし、12億7513万人の人口を抱えているので1人当たりの所得は847ドル(約9.3万円前後。1元は15円で計算した。)にすぎない。農林業のGDPに占める割合は17.4%である。1999年の食糧生産(米、小麦、トウモロコシ、コウリヤン、粟、その他の雑穀、いも類)の総計は5億839万tを記録している。(但し、2000年は減反政策により4億6212万tに減じた。)その内小麦は1億1440万t、米(籾)は2億0499万tを生産し米麦とも世界第1位である。その他、トウモロコシ1億262万tで世界2位、大豆1370万tで世界第4位である。かつて大躍進運動(1958〜60)の失敗と自然災害(華北の旱害、華南の水害)によって多数の餓死者を出した中国農業とは根本的に異なる。特に1978年以降、改革開放政策により農家生産請負責任制(以下個別経営と呼ぶ)が盛んになり最近(2000年)は、野菜、果物生産の増加も著しい。野菜は約4.2億tで世界1位、果物も約6.2億tで世界1位である。野菜の生産額は2500億元(3.7兆円)を上回り食糧についで2番目の額に急成長している。しかも、90年以降世界へ野菜が輸出され始め2000年のわが国への野菜輸出量は、139万tで15.8億ドルに昇る。1991年以降、我が国の農産物輸入はアメリカを抜いて中国が第1位となった。特に、華北平原(黄河がつくった中国東部の平原を指す。)からの野菜の輸入が急増している。そこで、この生産増加の要因が何処にあるのか?それを水と農法の面から考察した。特に、低エントロピー源としての水は、農業及び工業いや人類の生存にとって欠くことができない。中国農業は80年代に入るや灌漑設備が充実してきた。華北平原では黄河流域の地下水を電気ポンプで揚水する方法が90年代より急激に広まった。乾緑地帯に水が導入された事は、画期的なことであった。華北における成長要因は自由化政策による野菜、果物の需要の増加、その生産を可能にした地下水による灌漑の整備と言えよう。他方、地下水消費の増加は黄河の断流をもたらし塩害をまねいている。ここに農産物貿易の問題点がある。尚、本稿は2001〜2年にわたる山東省青州市近辺の農業調査をまとめたものである。(筆者は1980年遼寧大学の王將方氏、瀋陽大學の翁麗霞氏と瀋陽近辺の調査をしたことがある。それは個人農場制初期の調査である。あれから10年の中国農業の変化も視点に入れ考察した。)
著者
中村 博幸 内田 和夫
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.1-13, 2009-03-30

大学教育が転換を迫られて久しい。それは、学問の成果を伝授する大学から、学生が学習を進めるための大学への転換であり、大学自体も3つの類型へと分化する。大学・学生類型によって、学生の特性とそれに応じた教育の重点は異なる。カリキュラムの重視が要請される。教育目標とそれに沿った科目構成と科目内容、学生類型にマッチし、学習階梯をしっかり組んだものが求められる。初年次教育の重視も大事となる。「生徒から学生になること」を目標に、接続教育、転換教育、導入教育、の視点を踏まえる必要がある。それが2年次以降の学生生活の充実につながる。 ゼミナールは、卒業論文の執筆も含め、研究プロセスの体験に教育目標がある。それが4年間のゼミナールで達成されるよう学習階梯をしっかり組むべきである。1年と2年のゼミナールでは、大学での学びの考え方と習慣の獲得、リサーチ・スキルの習得、研究プロセスの体験・習得が柱となる。2年次のプレゼミナールは専門プレゼミナールと位置づけ、所属コースの専門分野の基礎を学び味わいつつ、リサーチ・スキルの習得、研究プロセスの体験・習得を再度積み重ねるものと考えると役割が整理できる。これからのゼミナールの視点と方法としてはアクティブ・ラーニングという考え方が重要となろう。
著者
Clay Simon
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.83-93, 2002-03-30

本稿は東京にある聖オルバン・アングリカン/エピスコパル教会においてシリーズで行われた公開講座「キリスト教と文化」の講座の一つとして、2002年1月27日に行った講演をもとに加筆、修正したものである。この講演で論じたことは16世紀及び17世紀の日本におけるカトリック伝導研究の入り口部分であり、今後はこの研究を更に進めて特に当時の日本人のキリスト教改宗者の果たした役割について研究を深めたい。
著者
小山 裕
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.115-131, 2009-03-30

平成20年12月、明治以来100年以上続いた民法第34条に基づく公益法人制度が、準則主義と公益認定による新たな制度に衣替えした。この世紀の改革とも言える公益法人制度改革がいかに始まったのかについては、あまり知られていない。公益法人制度改革は、平成12年の「行政改革大綱」によるものとしばしば誤解されるが、実はそこで予定されていたものではなく、内閣官房行政改革推進事務局公益法人室スタッフの問題提起によって、新たに政府の方針として浮上したものである。その背景には、先行して行われていた行政委託型公益法人に関わる改革、KSD事件を契機とする国所管公益法人の総点検及び中間法人法の成立があるが、この時代背景がなければ、公益法人という官の世界では「重宝な道具」と考えられていた制度を、官の裁量による公益の認定と法人設立の許可(主務官庁制)から、準則による法人格の取得(準則主義)と第三者委員会による公益性認定へという劇的な変革が行われることはなかったであろう。本稿は、「行政改革大綱」から公益法人制度抜本改革への取組みが閣議決定された平成14年3月までの内閣官房の動きを示したものであるが、これは改革前史のほんの序章にすぎない。