著者
矢澤 美香子 金築 優 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.154-161, 2010

本研究は,青年女子における完全主義認知とダイエット行動および摂食障害傾向にみられる食行動異常との関連性を検討することを目的とする.Body Mass Indexが24以下の「痩せ」「普通」体型である女子大学生・大学院生183名に対して,1)自己志向的完全主義下位尺度,2)Multidimentional Perfectonism Cognitive Inventry(MPCI),3)ダイエット行動尺度,4)Eating Attitude Test-26,5)Eating Disorder Inventryの過食下位尺度を用いた質問紙調査を実施した.相関分析の結果,MPCIの下位尺度である高目標設置,完全性追求,ミスへのとらわれすべてにおいて,ダイエット行動,食行動異常との関連性が認められた.また,重回帰分析の結果,完全性追求は非構造的ダイエット行動に,ミスへのとらわれは食行動異常に影響を与えることがわかった.さらに,ダイエット行動尺度の得点についてクラスター分析を行ったところ,4つのクラスターが抽出され,高目標設置と完全性追求の得点は,ダイエット非実践群,平均的ダイエット実践群よりも構造的ダイエット実践群,構造・非構造的ダイエット実践群で高いことがわかった.以上の結果から,ダイエット行動のパターンや食行動異常の程度の違いを考慮して,異なる完全主義認知に対する介入を行うことが,摂食障害の予防に有益であると考えられる.
著者
大坪 天平
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.154-158, 2022 (Released:2022-12-06)
参考文献数
8
著者
塩谷 友理子 我部山 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.299-306, 2017 (Released:2018-04-13)
参考文献数
16

目的:本研究は出産後1カ月までの母親と父親の抑うつ状態の変化とそれに影響する要因を検討した.方法:出産後の両親376組に,産後早期と産後1カ月時にアンケートを実施した.内容は基本属性,妊娠中の気分,出産満足度,育児不安の有無,抑うつ状態(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)等である.EPDS 9点未満を「正常」群,EPDS 9点以上を「産後うつ病が疑われる」群として検討した.結果:回答は母親307名と父親218名から得られ,産後うつ病が疑われる群は母親では産後早期12.4%,産後1カ月時16.8%,父親では産後早期3.7%,産後1カ月時6.9%であった.また,母親・父親共に産後早期と産後1カ月のEPDS得点間に有意な中程度の正の相関(母ρ=.524 p<0.001,父ρ=.480 p<0.001)がみられた.母親においては,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,産後早期では「妊娠中の気分」において「不安定な時期があった」とする割合が高く,「出産満足度」でも「満足である」と感じている割合が有意に低率であった.産後1カ月では,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,「育児不安がある」「混合栄養」「経済的な不安がある」の割合が有意に高かった.一方,父親においても,産後1カ月では産後うつ病が疑われる群は正常群よりも「育児不安がある」の割合が有意に高かった.結論:父親・母親ともに産後早期と産後1カ月のEPDS得点には関連があることから,母親のみならず,母親をサポートする上で重要な存在となる父親に対しても産後早期からの精神的サポートの必要性が示唆された.
著者
川瀬 良美 森 和代 吉崎 晶子 和田 充弘 松本 清一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.119-133, 2004-07-31 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
3

本研究の目的は,成熟期の女性のPMSの実態について即時的な記録から明らかにしようとするものである.成熟期の25歳以上45歳以下の141名の388月経周期について月経前期と月経期に記録された身体症状,精神症状そして社会的症状の合計51症状について検討した.月経前症状の頻度,平均値,最大値からみた主症状は,精神症状のイライラする,怒りやすい,身体症状の乳房の張りの3症状といえた.また特定の人に強く経験されている症状も認められた.対象者の諸属性のうち,年齢グループ別,出産経験有無別,就労形態別で検討したところ,それぞれの属性で有意に高い平均値を示す症状群が認められた.月経前期から月経期への推移について検討したところ,月経前期から月経へ減少または消失するというPMSの特徴を統計的に有意に示す症状は15症状であった.それら症状の相互関連をクラスター分析によって検討した結果,イライラ,怒りやすい,そして食欲増加という選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)に反応するような脳レベルの問題と考えられる症状のクラスターAと,乳房の張り,ニキビができやすいなど卵巣ホルモンが直接発症に関与している症状のクラスターBが見いだされた.また,クラスター分析と属性別の結果から出産経験の有無による相違が認められ,出産経験が症状と特異的に関連していることが示唆された.また,月経前期から月経期へ統計的に有意な増加を示す症状は12症状で,クラスター分析の結果,下腹痛など子宮レベルの問題を背景とした症状と精神症状と社会的症状で構成されたクラスターCが見いだされ,成熟期女性にも周経期症候群(PEMS)の概念で説明できる月経前症状が認められた.以上の結果から,本邦における成熟期女性の月経前症状は,脳レベルの問題,卵巣レベルの問題,子宮レベルの問題を背景として,PMSとPEMSという特徴的な臨床像による2つの概念で説明できる.
著者
志賀 令明
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-94, 2011-06-30 (Released:2017-01-26)

18歳から77歳までの72名の健常女性(平均年齢±1SD:33.5±18.5歳)を対象にして,血液検査と心理検査(Y-G性格検査及びPOMS)を行い,血液成分(ACTH,コルチゾール,IL-1β,TNF-α)と心理検査各因子との関連を検討した.抑うつと関係が深いとされる血漿中IL-1β濃度は,重回帰分析の結果,Y-G性格検査の抑うつ因子得点で有意に説明され,末梢でのIL-1β濃度と性格的な抑うつとの関連性が支持された.このIL-1β濃度とY-G抑うつ性得点が双方とも平均値よりも1SD以上高かったものをgroup H(n=4),その他をgroup L(n=68)として比較すると,group Hはgroup Lに比して有意にコルチゾールとTNF-α濃度が高かった.年齢,身長,体重,肥満度には有意差はみられなかった.他方,対象者全員でのIL-1βとTNR-αには有意な正の相関傾向があったが,TNF-αと心理検査各項目の得点やコルチゾールとの間には有意な相関は見られなかった.上記の結果から,抑うつ傾向の高い者ではこれまで言われてきたようにHPA-axisの亢進が起こっており,併行して血漿中のIL-1β濃度も上昇することが知られた.他方,今回の結果からは,TNR-αと心理検査各項目やコルチゾールとの間には有意な関係性が認められなかったので,抑うつが即TNF-αを上昇させるのではなく,抑うつによって生じたIL-1βの上昇が付随的にTNF-αを上昇させる,ないしは,高コルチゾール血症下での全般的な細胞性免疫や液性免疫の低下が貧食細胞系を活性化させることにより高サイトカイン状態が生じる,ないしは高コルチゾール血症によって生じた糖新生の結果としてのフリーラジカルの上昇がサイトカイン系を駆動することで結果的にTNF-αを上昇させる結果を生み出すのではないかと推測した.いずれにせよ,IL-1βとTNF-αは連動し,TNF-αは血管炎症を促進させることから,抑うつ状態を有する人は動脈硬化などの血管障害に至る危険性が高いことが示唆された.
著者
山蔦 圭輔
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.196-207, 2021 (Released:2021-12-02)
参考文献数
25

本研究では,一般女子学生の摂食障害予防を目的とした心理教育プログラムの開発と効果検証を行うことを目的としたものであった.本研究は試験的に実施された.ここでは,CBT-E(enhanced cognitive behavior Therapy)を踏まえた心理教育プログラムが開発された.心理教育プログラムは,知識教育セッション(1週間)と介入セッション(1週間)から構成された.解析の対象者は,介入群3名(平均20.33±0.58歳),統制群4名(平均21.25±1.89歳)であった.解析の結果,介入セッションの前後で,「腹囲」,「臀部」,「太もも・脚」の不満足感,全身のふくよかさ不満足感が低減した.また,介入セッションの前後で,むちゃ食いの頻度が低減した.今後,こうした予備的試行が蓄積されることで,精度が高く簡便な一般女子学生に対する予防プログラムが開発されることが望まれる.