著者
野田 洋子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.53-63, 2003-03-31 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
2

本研究は18歳,19歳を中心とした女子学生の月経の経験と関連要因を明らかにすることを目的として,1年間の間隔で縦断的調査研究を行った.対象はA女子短大生で,月経調査への協力に同意し,2回の調査にともに有効であった18〜22歳の1,045名である.調査は自己記入式記名式で,質問紙は月経の経験(月経状況,初経観・月経観,月経周辺期の変化,月経痛とセルフケア)と関連要因(自尊感情,楽観性・悲観性,ジェンダー満足度,ストレスとストレス発散,自覚的健康観,ライフスタイル)に関する調査項目で構成される.第1報では月経の経験の実態および経時的推移について報告する.90%の者が月経痛を自覚しており,ほぼ全員(98.4%)が月経周期に伴い何らかのネガティブ変化を自覚しているが,ポジティブ変化を自覚している者はほとんどいない.月経周辺期のネガティブ変化をその時期と程度により4群に分類した結果,月経前のみ(PMS傾向群)あるいは月経期のみ(月経困難I群)は少なく,月経前から月経期にかけて引き続き強い変化を自覚する群(月経困難II群)が多かった(34.5%).また2回の調査を経時的に再分類した結果,月経周辺期のネガティブ変化が継続して強度であるハイリスク群(困難不変群)が26.9%を占め,若年女性における月経教育・月経相談の必要性が再確認された.
著者
松浦 倫子 安達 直美 小林 俊二郎 中埜 拓 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.114-120, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
34

【目的】睡眠に関する訴えは50代以降の女性で高率に見られる.本研究では,睡眠の質の低下を訴える中高年女性の主観的な睡眠改善を目的に,αs1-カゼイン加水分解物(カゼインペプチド)+L-テアニン含有食品の有効性をプラセボと比較し検証した.【対象と方法】56~69歳の女性11名を解析対象者とした.参加者は,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品あるいはプラセボ食品をそれぞれ10日間ずつ就床1時間前に摂取した.各条件の間で4日間のウォッシュドアウト期間を設けた.食品摂取の順序は,参加者間で順序効果が相殺されるようランダムに配置し,食品条件についてはダブルブラインドとした.各条件の後半3日間は,就床・起床時の気分と眠気(Visual Analog Scale),起床時の睡眠内省(OSA睡眠感調査票MA版,入眠感調査),最終日にはピッツバーグ睡眠質問票を聴取した.事前調査時と各条件の最終日には,参加者に簡略更年期指数質問票の記入をさせた.【結果】カゼインペプチド+L-テアニン含有食品の摂取は,プラセボに比べて就床前に眠気が高まっており,PSQIにより評価した睡眠の質が高かった.また,カゼインペプチド+L-テアニン含有食品を摂取した条件でのみ簡略更年期指数による自律神経症状の得点が,事前調査時に比べて有意に低下し改善した.【考察】カゼインペプチドとL-テアニンを併せて摂取することにより,就床前の眠気を高め,睡眠の総合的な質を改善する可能性が示唆された.
著者
松岡 治子 花沢 成一
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-28, 1999

本研究の目的は,褥婦とその夫の母性度・父性度の測定を行い,マタニティ・ブルーズとの関連をみることを通して,日本における産褥期のマタニティ・ブルーズの意味を再考することである.褥婦とその夫28組(56名)を対象として「マタニティ・ブルーズ質問紙」と「母性度・父性度尺度」による調査を行った.その結果,父性度の高い褥婦のマタニティ・ブルーズ得点は,父性度の低い褥婦の得点よりも「神経過敏」の項目が有意に低かった.また,夫の年齢が高い新婦のマタニティ・ブルーズ得点は,夫の年齢が低い新婦の得点よりも有意に低かった.以上のことから,褥婦は夫の年齢などに影響を受けるが,新婦自身が「やさしさ」や「あたたかさ」といった母性的な側面だけでなく,ある程度の「きびしさ」や「たくましさ」などの父性的な側面を合わせ持つことにより,産褥期をより安定した状態で過ごすことができるのではないかと考えられた.
著者
齋藤 益子 木村 好秀
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.54-59, 2000

平成9年12月から3月まで,都内のS病院産婦人科の初診患者292人に性に関するアンケート調査を行った.対象と方法は第1報と同じである.性生活の頻度は週1回以上36%,月1〜2回40%で,55歳以上では無しが35%で,1回の性交時間は20〜30分か約7割で,年代と共に短縮する傾向がみられた.「性交時間が長くて疲れる」は43%で,35歳〜44歳は有意に低く,「短くて不満」は45歳〜54歳が有意に低かった.「性的欲求に対して夫が応えてくれない」約3割,「夫との不一致感」「夫が満足しないのではないか」は約4割であった.また夫の性的欲求に対しては「煩わしいと感じる」「拒んだことがある」は共に5割で,45歳〜54歳が有意に高かった.
著者
宮中 文子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.173-180, 2001
被引用文献数
2

中高年女性(祖母)が孫との関わりを持つことは心の健康にプラスに影響するかどうかを明らかにするため,3〜5歳の幼児の母親と祖母に対して質問紙調査を行い,祖母と母親528組について,抑鬱度と主観的幸福感の満足度を心理的健康として分析した.その結果,心理的健康にプラスに影響していた因子は,「健康と感じている」,「日常活動に自立している」,「配偶者が健在である」,「子育てに疲れを感じていない」,「母親との育児方針の相違がない」,「子どもの世話が好き」,「遊びなどを中心とした社会・文化的な子育て参加が多い」などであった.これらのことから,中高年女性では,孫と関わるライフスタイルを主体性に選択すること,母親との豊かな人間関係,遊びを中心とした子育て参加をすることなどを通して,その中で幸福感を見いだしていくことが,心の健康にプラスに影響すると考えられる.
著者
平出 麻衣子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.144-148, 2019 (Released:2020-01-15)
参考文献数
11
著者
太田 大介
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.215-220, 2020 (Released:2020-04-09)
参考文献数
8

総合病院総合病院心療内科を訪れる原因不明の身体症状を有する患者は,これまでに受診した医療機関での説明に納得がいかなかったり,本人の望むレベルでの症状改善が得られなかったり,またそのためにドクターショッピングを重ねてきた方々であり,そのような患者のニーズに応えるには,初診時にある程度の時間をかけて,患者の解釈モデルとこちらへの期待を聴取し,必要に応じて検査を行い,身体科医としての経験に基づきこちらの患者理解を伝え,その上で,患者の期待に対する現実的な治療目標を設定する必要がある.忙しい外来では再診時に十分に時間をかけることが難しいが,診察時間が短いことは必ずしも悪いことではない.短い診察時間のもとで患者も治療者も重要課題を意識するため,治療目的を志向しやすくなり患者が治療者に過度に依存的になるなどの退行を防止することができる.そのような短い診察時間の中では,治療者が話しすぎないよう留意することで患者が自分の話を聞いてもらえたという満足度もあがる.患者が主役であることを意識させることで治療者への依存が適度に抑制される.そのような短い診察の繰り返しのなかでは,治療の継続性が治療的に重要な役割を果たしており,安定した治療構造自体が患者の精神状態や身体症状を安定させる働きを持っている.原因不明の身体愁訴の背景にある抑うつ,不安,認知機能低下,患者自身の身体的な衰えなどの諸要因を意識しながら,患者自身の健康な部分を伸ばしていくことも重要である.「この症状さえなければ」と症状に固執しがちな患者に対して,症状の原因検索はほどほどに,症状のためにうまくいかなくなっている日々の生活全般を整えていくことに目を向けるように促していく.日々の生活全般を可能な範囲で整えていくことで,やがては身体症状も改善するという見通しを伝えることが重要である.
著者
大関 信子 大井 けい子 佐藤 愛 葛西 紗幸 池田 礼美
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.213-219, 2012

本研究は,産後1年未満の母親を対象に次子を産みたいがが産まない理由を明らかにすることを目的とした.本研究は,調査結果を基に周産期ケアや母子保健サービスの向上を図り,母親の次子出産意欲向上へつなげるものである.A県在住の1,8OO名の母親へ質問紙調査を実施した.有効回答499名のうち,次子を「望まない」と答えた母親はI4.6%であった.最も重要な因子が経済的側面であった.また,「今回望まない妊娠・出産」と次子を「望まない」とに関連が見られた.女性の心理社会的観点から,以下のケアが次子出産意欲へつながる可能性か示唆された.1.望まない妊娠をした母親に対しては.児の受容と子を持つことの喜びを感じることができるようなケア.2.妊娠・出産がつらく卜ラウマになっている母親に対しては,異常の早期発見と予防,満足感が得られる出産体験となるケア.3.子育てに自信が持てない母親には,子育て支援及び子育ての喜びを発見できるケア.4.経済状況により次子を「望まない」理由が異なることから,母親の状況に応じたケアを優先させることが重要である.
著者
岩崎 和代 齋藤 益子 木村 好秀
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.225-233, 2013-11-30 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
2

20歳女子大生,小学生保護者,勤労女性の3群62名を対象に子宮頸がん検診行動の影響要因をフォーカス・インタビューで明らかにした.過去2年以内の子宮頸がん検診率は,保護者群90.5%,勤労女性群66.7%,女子大生群0%で,住民検診の利用が多く,きっかけは年齢的な動機や自治体からの案内であった.検診行動への影響要因として8カテゴリーが集約され,「必要性に対する情報不足・知識不足」「検診方法のためらい」「受診行動の相互影響」「受診アクセスの不便」「受診環境への不満」「きっかけ不足」「皆で受ける安心感」「教育不足」であった.このうち,検診行動を高める要因は「皆が受ける安心感」に集約され,連帯意識や待ち時間が少ない巡回検診車の利用,集団検診が支持された.保護者群や勤労女性群でも検診目的の理解は不十分で,検診環境への不満や検診時に痛みや出血を経験し,医師への技術不信を抱いていた.大学生群は子宮頸がん予防行動への教育機会の不足が伺われた.物理的な検診促進の要件として夜間・土日の検診を求めていた.