著者
石川 雅紀
出版者
廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.268-274, 2015

本稿では日欧の循環政策を比較した。<br> EU は複数の PRO (Producer Responsibility Organization) を認め市場競争を利用して静脈市場を効率化し,日本は個別企業レベルでの環境配慮設計 (DfE) を促進している。競争を促進すればコストの低減が期待できるが,コスト情報の開示は困難で,情報開示度が下がり,フロー監視も困難となる。生産者と資源化事業者の間での契約も短期となり,情報のやりとりも難しく,DfE は効きにくい。<br> EU は超国家組織として,統合の深化を目指し,合意しやすい抽象化レベルの高い目標,政策の大枠,期限を設定し,実際の政策では各国が柔軟性をもって施行している。循環政策と資源政策の整合性をとりやすい。日本では,個別製品特性に配慮し,制度設計されているので,DfE は進むものと期待され,排出者責任原則も個人レベルで担保されるが,資源政策との統合は難しい。<br> 日本の家電リサイクル制度については,資源政策との整合性をどうとるのか,他のリサイクル制度も含めて検討することが必要である。
著者
川野 豊
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.165-170, 2016-05-31 (Released:2020-07-01)
参考文献数
6

わが国においては,「食品ロス」は 642 万 ton と推計されており,食品関連事業者と家庭からそれぞれ同程度排出されている。 食品ロスの削減に向けた取り組みとして,以下の取り組みがある。・食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律 (以下,食品リサイクル法) に基づく新たな基本方針を策定し,食品廃棄物等の発生抑制を最優先とすることことし,関係者が連携して食品ロスを削減する。・食品リサイクル法に基づき,31 業種について発生抑制の目標値を設定した。・「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム (WT) 」 が設置され,4 年間の討議を通じて,商慣習の見直しについて検討が行われた。・食品ロス削減に関わる省庁が連携して,食品ロス削減国民運動を展開し,関係者の実践を促進した。 大量の食品ロスを排出し続けることは,世界的にも大きな課題である。食品関連事業者,関係府省庁,地方自治体,そして消費者一人ひとりが協力して食品ロス削減に向けて取り組むことが重要である。
著者
髙橋 一彰
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.377-384, 2016
被引用文献数
2

水銀に関する水俣条約について,日本は水銀による環境の汚染の防止に関する法律や大気汚染防止法の一部を改正する法律をはじめとしたさまざまな法令や政策の整備を進め,2016 (平成 28) 年 2 月 2 日に条約を受諾した。水俣条約の実施のための法令により,大気排出の削減や水銀需要の減少が見込まれるところであるが,今後の水銀の需給バランスに影響するとみられる。今後の水銀の適切な管理の推進のため,マテリアルフローの充実を図ることが求められる。<br> また水俣条約は間もなく発効と予想されるところ,地球規模での水銀対策についてさまざまな取り組みが行われることが見込まれる。水俣病を経験した国である日本は,水俣条約の効果的な実施について重要な役割があるといえる。今後,国内制度の着実な運用を図っていくとともに,水俣条約締約国会議等における議論への貢献やさまざまな国との連携を図りつつ,途上国における取り組みの支援等を推進していくことが期待される。
著者
佐藤 順子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.294-300, 2020

本稿はフードバンクによる食料支援にはどのような意義があるかについて考察することを目的としたものである。フードバンクは生活困窮者支援においてインフォーマル・サービスとして位置づけられている。社会保障制度ではフォーマル・サービスとしての所得保障が重要でありつつも,フードバンクによる食料支援は,生活困窮者支援団体との連携によって,所得保障を補完し,同時に所得保障に橋渡しをする役割を担っている。フードバンクが困窮者支援の役割を果たすためには,国および自治体による恒常的な支援が今後さらに必要となってくると考える。
著者
吉識 宗佳
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.215-222, 2018-05-31 (Released:2019-05-31)
参考文献数
16

リサイクルビジネスでは,人口減少等の社会経済動向を受けて,今後効率化と付加価値創造の両面で生産性向上が必要となる。IoT,ビッグデータ,AI,ロボット等のテクノロジーは,生産性を向上させ成長を実現する有力なツールである。現在,廃棄物処理・リサイクル IoT 導入促進協議会の場等で,産官学連携による IoT 活用の検討が進められている。本稿では,リサイクルビジネス事業者の課題と関連業界での活用の先行事例に基づき,これらテクノロジーの活用分野と普及に向けた課題,IoT 活用研究の可能性について論じた。
著者
遠藤 和人
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.39-48, 2019-02-28 (Released:2020-02-06)
参考文献数
24
被引用文献数
1

特定一般廃棄物や特定産業廃棄物 (事故由来放射性セシウムが 8,000 Bq/kg 以下) は,入念的措置が加えられて既に多くの最終処分場で埋立処分されている。また,福島県内の特定廃棄物 (8,000 Bq/kg を超える指定廃棄物と対策地域内廃棄物) は,減容化施設やセメント固型化処理施設や特定廃棄物埋立処分施設が整備され,処理・処分が進められている。本論では,これら放射性物質汚染廃棄物の埋立処分の現状,処分場内の放射性セシウム溶出挙動,埋立処分方法やセメント固型化方法の科学的根拠について紹介する。事故後に実施された政策対応研究の記録の一つとしてここに記した。
著者
松本 亨
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.438-447, 2017-11-30 (Released:2019-06-27)
参考文献数
25

まず,国や自治体の循環型社会形成推進基本計画,さらに国から公開されているガイドラインや手引きにおいて,地域循環圏の評価がどのように扱われているか検証した。次に,地域循環圏の評価手法開発を行った研究のレビューを行い,物質の収支バランス,低炭素化,事業採算性,生態系サービスによる評価事例を紹介した。また,地域循環圏の一形態とされるエコタウンを対象とした研究では,CO2 削減効果や立地自治体の域内循環率,調達と供給の物質移動距離が採用されていること,さらに指標の経時変化の要因分析が実施されていることを示した上で,地域循環圏にかかわる個別事業の効果を中長期に評価するためには必要な視点であると指摘した。環境面以外の副次的効果に着目した評価もあり,分別への住民の参加意識,施設の住民受容性,地域福祉力等が採用されている例を示した。最後に,今後の地域循環圏の評価指標・手法のあり方として,要件とともに実行可能性の面から考察した。
著者
北村 亨
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.210-214, 2017-05-31 (Released:2019-11-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1

近年,長寿命化や高齢者のみの世帯の増加が進む中で,遺族にとって遺品整理が困難な状況が増えていると考えられ,それとともに遺品整理ビジネスが事業化されてきている。本稿では,遺品整理業者をめぐる状況および遺品廃棄物の運搬・処分と廃棄物処理法における業の許可との関係について述べるとともに,遺品廃棄物の運搬・処分を自治体の一般廃棄物処理計画の中に位置づける必要性を指摘した。その上で,対応の可能性として,① 直営による運搬・処分,② 一般廃棄物収集運搬許可業者による家庭系一時多量廃棄物の収集・運搬についての特例容認,③ 遺品廃棄物の収集・運搬に対する限定許可の付与,④ 一定の条件の下で,遺品整理事業者による遺品の収集運搬を例外的に容認する国のガイドラインの策定,の 4 つを示した。そして ④ のガイドライン素案を提案した。最後に高齢者の立場から,生前整理を容易にするための廃棄物行政上の課題について述べた。
著者
松原 斎樹 澤島 智明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.101-107, 2009 (Released:2013-12-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本の木造住宅の寿命が短いことはよく知られている。本稿では,住まいの寿命と建物の環境性能との関係について論じる。高断熱高気密住宅は,断熱・気密性能が高いという意味であって,風通しの良くない家ではないが,一般的には誤解も少なくない。本稿では,断熱気密性能の違いと住まい方の関係に関する実態調査結果を紹介する。冬期には,断熱気密性能の向上は生活の質の向上につながっているが,夏期には,必ずしも向上するとはいえない。また,断熱気密性能は住まいの評価基準として重要ではあるが,多くの評価基準の一つに過ぎない。住まいの寿命を長くするためには,断熱気密性能も含めた評価基準の総合的なバランスの良さが重要である。
著者
西谷 隆司 山内 淳行 永山 貴志
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.347-357, 2010 (Released:2015-01-27)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

わが国では,経済成長が進む中で急速に増大し続ける都市ごみを適切に処理するために,焼却処理がその中心的な役割を担ってきた。しかし,資源の消費と環境の負荷への限界が意識され,社会の持続的発展が危ぶまれるに至り,それまでの社会全体のシステムの転換が迫られることとなった。各自治体においても,分別等の導入が急速に広がった。焼却ごみの量と質も,導入された分別等の施策に応じて変化することとなり,ごみ焼却施設の役割についても,システム全体の中で検討される必要がでてきた。そこで,分別等を先進的に取り組んでいる自治体でのごみ量やごみ質の変化を整理し,分別等の施策が焼却ごみにどのような影響を及ぼすのか推計した。その結果,今後10年で,焼却ごみ量は20%程度の減量となり,その組成については可燃ごみが減少するが,発熱量は8,000kJ/kg程度までの減少にとどまると見込まれた。
著者
上村 繁樹 大久保 努 多川 正 大野 翔平 荒木 信夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.303-312, 2017
被引用文献数
1

インドネシア,ジョグジャカルタのスクナン村では,住民による革新的なごみマネジメント・システムが運営されている。住民は,家庭ごみを,プラスチック,紙,金属・ガラス,生ごみに分別し,資源ごみは売却され,生ごみはコンポストにされて肥料として利用されている。また,プラスチック袋等のごみから作られた工芸品 (エコ雑貨) を生産・販売するなど,さまざまな工夫を凝らしたリサイクル活動がなされている。この活動によって,村に収入が入るだけではなく,村の生活環境も大幅に改善された。本稿では,この地域密着型ごみマネジメント・システムの詳細を紹介するとともに,途上国の農村における廃棄物管理のあり方について考察する。
著者
貴田 晶子
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.363-374, 2011 (Released:2016-09-14)
参考文献数
22

国連環境計画 (UNEP) の進めている水銀条約の中での重要課題の一つである水銀の大気排出量について,既報およびUNEPの報告をまとめるとともに,日本における排出量推定値を概説した。また過去の採掘量,消費量も併せて示した。1900年からの世界の採掘量55万tonのうち,日本は1956年以降2.7万tonを消費し,1970年代に世界の1/5を消費した時期もある。水俣病の発生原因でもあり,UNEPの水銀プロジェクトのきっかけとなった極地への移動とそれに伴う食物連鎖の高位にある生物群への高濃度蓄積の事実に鑑み,日本の責務が求められる。世界の水銀排出量は年間1,930ton (1,220~2,900ton) と推定され,そのうちの56%をアジアが占めている。現在の採掘量1,300tonよりも多い量が大気排出されていることになるが,これは水銀使用製品以外に,不純物として原燃料に含まれるものの熱処理による大気排出量の寄与も大きいことがあげられる。日本の水銀の大気排出量は21.3~28.3ton/年と推定された。日本の特徴として,世界では石炭火力が45.6%と排出源としてもっとも大きな寄与があるのに対し,日本ではセメント製造 (31~42%),非鉄金属精錬 (2~13%),鉄鋼・製鉄 (14~19%) など製造業からの排出量が約60%を占めている。化石燃料燃焼は10~14%であり,世界全体に比べて日本での寄与は小さい。また廃棄物焼却全体は8~12%であり,下水汚泥焼却・医療廃棄物焼却,産業廃棄物焼却がほとんどを占め,一般廃棄物焼却は1%程度であった。一般廃棄物焼却では入口で,電池等,水銀不使用製品が普及したこと,また焼却炉内部では2000年前後にダイオキシン類対策のために集じん装置がバグフィルターに換わり,活性炭吹込も行われていることが,水銀排出量が小さい理由と考えられる。水銀排出量については,1980年代半ば以前には焼却ごみ中に1~2mg/kg程度あった可能性があり,また電気集じん機が主たる集じん設備であった当時の水銀排出量は年間30~60tonあった可能性がある。
著者
磯辺 篤彦
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.270-277, 2018-07-31 (Released:2019-07-31)
参考文献数
31

東アジアや東南アジアから発生する大型プラスチックごみ (マクロプラスチック) は,世界の合計値の55%を占める。マクロプラスチックの海洋での移動は海流と風による。海洋に流出したマクロプラスチックは,海岸に漂着したのち,紫外線や物理的な刺激によって破砕され,プラスチック微細片 (マイクロプラスチック) となる。海洋に浮遊するマイクロプラスチックは海流とストークス・ドリフトによって輸送されるが,生物付着に伴う沈降等,表層からのさまざまな消失過程を伴う。マイクロプラスチックの行方,すなわち海洋での移動や消失過程を包括する海洋プラスチック循環の全容は,まだ解明されていない。
著者
立藤 綾子 平田 修
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.308-313, 2009 (Released:2013-12-18)

日本では一般廃棄物の最終処分場の多くにおいて準好気性埋立構造が採用され,焼却や破砕選別処理などの中間処理の発展によって,最終処分場の不要論が飛び交う昨今でも従前として最終処分場の主要な構造となっている。これは,本構造が浸出水の汚濁負荷の削減や廃棄物層の早期安定化等の最終処分場の維持管理の主目的である環境リスクの低減において,嫌気性構造よりも優位であるばかりでなく,建設および維持管理が比較的簡便であるためと考えられる。海外における本構造の適用は実施国に決定権があるため,実施国の政策決定者に浸出水浄化機能やメタン削減効果などの環境リスクの低減効果を理解してもらうことも重要であり,これまで本構造を採用した国々における水質およびガス質などの科学的データの蓄積を,実施国の研究機関と連携して行う必要がある。近い将来,準好気性埋立構造がコベネフィット (Co-benefit) CDM技術の一つとして国際的に評価されるための方向性と課題について報告する。
著者
鈴木 剛 仲山 慶 前川 文彦 Tue Nguyen Minh 木村 栄輝 道中 智恵子 松神 秀徳 橋本 俊次
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.470-481, 2018-12-31 (Released:2019-12-05)
参考文献数
37

臭素系ダイオキシン類は,POPs 条約の規制対象物質ではないが,対象であるダイオキシン類と同様の特性を示すため,リスク管理の必要性が国際的に共有されている。国内では,環境省による臭素化ダイオキシン類の排出実態調査が実施され,臭素系難燃剤の decaBDE を使用する施設や含有製品を取り扱う施設で,ダイオキシン類の排出基準や作業環境基準を超過する値で検出されることが明らかにされた。臭素化ダイオキシン類の排出は,2017 年に decaBDE が POPs 条約上の廃絶対象物質となったことに伴い,動脈側で減少することが予測されるが,静脈側で含有製品の再資源化や廃棄を通じた排出が当面継続する見込みであり,引き続きその実態把握が必要である。DecaBDE の代替物使用の臭素系ダイオキシン類の排出への影響についても,今後の排出実態調査や関連研究で明らかにされることが期待される。また,臭素化ダイオキシン類の適切なリスク管理には,WHO と UNEP の専門家会合が指摘しているとおり,魚類・哺乳類毒性試験に基づく TEF を補完していく必要がある。
著者
中井 八千代
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.288-294, 2010 (Released:2014-12-19)

現在の容器包装リサイクル法 (容リ法) は,発生抑制と環境配慮設計に切り替えるインセンティブになっていない。使い終わった後の処理責任を事業者がきちんと果たし,その費用は製品価格に内部化し,買って使う消費者が負担する仕組みの構築が必要である。「環境を守るためのコスト」を,きちんと消費者にメッセージとして伝え (見える化),生産者と消費者が各々の環境配慮責任を分かち合い,持続可能な社会をつくっていきたい。現在,国では市民が参加しやすく,かつ効率のよいプラスチックの資源化手法,容器包装以外のプラスチックのリサイクルが検討されている。店頭回収の拡充,ソーティングセンターの導入など,自治体と事業者の役割分担と連携の新たな発展を求めたい。容器包装の3Rを進める全国ネットワーク (3R全国ネット) は,積み残した課題を今度こそ実現させようと,容リ法の再改正に向けての市民案を発表している。
著者
浅利 美鈴 丸川 純 酒井 伸一
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.412-425, 2011 (Released:2016-12-26)
参考文献数
14
被引用文献数
1

日本における使用済み小形電池の回収方法とその実態を把握し,回収・リサイクル検討に向けた基礎的知見を得ることを目的に,小形電池の回収率を推定した後,使用済み小形電池に関する自治体収集分類等に関する調査,消費者アンケート,小型家電製品からの小形電池取り外し実態調査を行った。その結果,日本における小形電池の回収率は26%と推定され,特に二次電池等は低く,欧州各国と比較しても,向上の余地があると考えられた。また,自治体における収集分類等は,自治体および電池間で統一されておらず,必要な情報発信も不十分と考えられた。小型家電製品からの小型電池取り外し実態に関する調査からは,特に二次電池を利用する小型家電製品について,ほとんど電池が取り外されずに捨てられていることが明らかとなった。これらの背景としては,アンケート調査より消費者の情報・認知不足や負担感が示唆され,検討を要する点が抽出された。
著者
木村 照夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.140-147, 2010 (Released:2014-10-07)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

循環型社会形成の重要性からリサイクルを義務づける数多くの法律が施行されている中で,繊維製品に関してはいまだ法律が施行されていない。現在,回収された衣類廃棄物の大半は中古衣料,反毛およびウエスとしてリサイクルされているが,衣類に関するリサイクル率は20%程度に留まっている。リサイクル率が低い大きな理由は繊維製品の多様性によるリサイクルの難しさにある。本稿では繊維製品の中でもわれわれに一番身近な衣類を対象に,リサイクルの現状と課題を整理している。さらに,筆者らの衣類廃棄物を用いた木材代替材料ならびに天然繊維複合材料としてのリサイクルの試みを紹介している。また,環境負荷の小さなリサイクルを推進する上でLCA解析が重要であること,ならびにリサイクル推進には技術開発のみでなく国民の意識改革が必要であることを述べ,教育用に作成された漫画本の反響についても言及している。