著者
松田 瑞史 栗城 眞也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.1534-1537, 2002-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
2
被引用文献数
2

SQUIDは超伝導の量子力学釣な性質を利用しており,磁束量子φ0以下の微小磁束変化に対しても応答する超高感度なセンサーである.この磁束センサーの動作について,ジョセフソン効果,磁束の量子化などの原理にたちもどって解説する.また,実際に磁場を計測するシステムにおいて使われるいくつかの技術について述べる.
著者
小林 篤 上野 耕平 藤岡 洋
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.411-415, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
36

窒化ニオブ(NbN)は,単一光子検出器や量子ビットに搭載されている超伝導材料である.興味深いことに,NbNはワイドギャップ半導体AlNと格子整合性が高いため,両材料の持つ機能をエピタキシャル成長によって融合できる可能性がある.しかしながら,AlNをはじめとする窒化物半導体にエピタキシャル成長させたNbN薄膜の基礎的な特性には不明な点が多い.本稿では,スパッタ法でAlN上に成長させたNbN薄膜の構造特性と電気特性について紹介する.さらに,AlNとNbNの結晶構造の相違がNbNの双晶を生み出すメカニズムを示し,NbN双晶の制御技術についても紹介する.
著者
山本 純也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.370-373, 1994-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
8

核融合科学研究所が岐阜県土岐市に建設中の大型ヘリカル装置はそのプラズマ閉じ込め用の磁場をすべて超伝導コイルによって発生する世界で最初の核融合実験装置である.ここで使用する超伝導コイルは世界最大の蓄積エネルギーを持つもので,その設計,製作は超大型超伝導技術の歴史を塗り替えるものである.本稿では装置本体の超伝導マグネットシステムの構成,各要素の条件などの設計方針,および製作についての主要な点について述べている.使用する超伝導材料はひずみに強いNbTiであり,ヘリカルコイルは浸漬冷却方式,ポロイダルコイルは強制冷却方式である.電流値としては,10kA~30kAという超伝導としてはかつてない高い値となる.この装置は, 1997年に完成し年間2000時間10年間の核融合プラズマ実験を支える.
著者
井ノ上 泰輝 項 栄 千足 昇平 丸山 茂夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.351-355, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
30

単層カーボンナノチューブの表面に窒化ホウ素ナノチューブやMoS2ナノチューブを化学気相成長することで,異種ナノチューブの同心複合構造であるヘテロナノチューブの創出が実現した.2次元物質におけるファンデルワールスヘテロ構造の研究が近年盛んであるが,本成果は擬1次元的なナノチューブにおいて同様の自在な物質設計の可能性を開くものであり,ナノチューブ構造に特有の新たな物性の発現やデバイス応用が期待される.本稿では,ヘテロナノチューブの合成と構造評価,およびその物性計測や応用について紹介する.
著者
宮坂 等
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.334-339, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)
参考文献数
30

遷移金属錯体は,中心金属イオン周りの配位子場を調整することで,その酸化還元特性やd電子スピン軌道を変えうる.その特徴を基に,酸化還元活性架橋配位子と連結することで,d-p軌道が共役した電荷移動型の錯体多次元格子,いわゆる,電子ドナー(D)と電子アクセプタ(A)の交互格子を構築できる.このようなDmAn格子でも,D部位のイオン化ポテンシャルとA部位の電子親和力と電子対反発エネルギーを分子・配位子修飾による可変数として捉えることで格子内電荷移動を制御することが可能である.同時に,格子で囲まれた“空間”を利用することで,ゲストの脱挿入による構造変調や格子‐ゲスト相互作用をトリガーとする動的な電荷移動を誘起できる.本稿では,主に電荷移動型錯体格子の電子・スピン制御について,格子上の電荷移動設計と空間利用という観点から解説する.
著者
小倉 繁太郎
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.273-275, 1997-03-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

芸術工学(デザイン)専攻学部学生に「フーリエの冒険」を教科書として使用した際に得られた,おもに波動物理の教育の結果と問題点について報告した.
著者
岡田 至崇 八木 修平 大島 隆治
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.206-212, 2010-03-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
22
被引用文献数
5

近年,従来の延長線上にない新しいアプローチにより,単接合太陽電池のエネルギー変換効率を上回り,かつ低コスト化が展望できる次世代型高効率太陽電池の研究開発が活発になっている.本稿では,理論変換効率60% 以上の超高効率化が可能な量子ドット超格子を利用した中間バンド型太陽電池について,その動作原理と開発動向について述べる.
著者
鈴木 健吾
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.266-270, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
8

我々は,宇宙機への応用を目指した新しい方式の水素センサを,JAXAと共同で開発している.宇宙機向けの水素センサには,酸素が共存しない環境や真空中でも微量の水素を検知することが求められる.開発したセンサは,酸化物イオン・電子混合伝導体である酸化セリウム(セリア)を感応材料に用いた基板型で,500℃に加熱して動作させる.不定比性の酸化物であるセリアは,加熱状態で酸素分圧に応じて酸素を吸蔵・放出する性質がある.一方,水素共存下では,水素はセリア表面に解離吸着し電荷が移動することで電子伝導性(抵抗値)が変化する.つまりセンサの抵抗値は,全圧にはよらず酸素/水素分圧比に依存する.このセリア表面での平衡反応をクレーガー=ビンク表記法で表し,ガス分圧とキャリヤ濃度の関係からセリア表面のガス吸着の状態を考察した.さらにin-situ XAFS観察により,水素吸着前後のセリアの価数変化はわずかであることを確認し,これらの結果から検知メカニズムを明らかにした.
著者
高辻 正基 金子 忠男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.529-539, 1977-05-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
40
被引用文献数
1
著者
福田 益美
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.779-785, 1993-08-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
18

GaAsFET, HEMT, GaAsICなどのデバイスやGaAs結晶材料の簡単な歴史,現状および将来について述べる.ある技術が世の中に受け入れられるためには,その恩恵を受けるであろう最終顧客(消費者)や経済の動向が大切で,単に当事者のその技術に対する思い入れだけでは不十分である.うまく市場に参入できたGaAsFETやHEMTを例にあげ,まだ市場規模が小さく今後の動向に結晶材料サイドからも大きな関心が寄せられているGaAsICにつき,今後どんなアプローチが考えられるか私見を述べる.
著者
財満 鎭明 安田 幸夫
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1093-1105, 1994-11-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
55
被引用文献数
12

シリコン大規模集積回路 (ULSI) の極微細化とともに,オーミックコンタクト抵抗やその信頼性が,デバイスの高性能化を制限しかねない状況に至っている.このため,金属/半導体界面の微視的な固相反応の理解と,新しい低抵抗コンタクト材料の開発が必要となっている.本報告では, Ti, Zr, Hfなどの高融点金属とシリコンの界面におけるシリサイド形成と電気的特性の関係を明らかにし,コンタクト抵抗率を支配している要因を界面反応,化学組成,結晶学的構造などの観点から議論する.
著者
堀 義和 加藤 誠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.1401-1406, 1999-12-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
16

光ディスクは,近赤外領域(波長~780nm) のAIGaAs系半導体レーザーの実用化とともに,音楽や映像のレコートとしてコンパクトディスク (CD) やレーザーディスク (LD) のように案用化された.その後,コンピューター用の記録メディア (650MB) として, CD-ROM, CD-R, MO, PDが広く使用されるようになった.現在では,赤色領域(波長~65Dnm) のAIGaInP系率導体レーザーの実現とともに, DVDのようにマルチメディア対応の高密度記録メディア (4.7GB) として,さらに発展を遂げ普及し始めている.ここでは,光ディスクの儒号の記録再生を行う光ピックアップヘッドについて,その光学系の基本構成と儀号検出原理,ならびにホ翻グラム素茅を用いた小型化,光源と光検出器の一体集積化への取り組みについて解説する.
著者
篠田 政一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.789-794, 1975-07-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
18
著者
小林 禎作
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1234-1248, 1975-12-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
81

Habit and growth type of snow crystals was consolidated by Kobayashi in 1961 as far as single crystalline forms are concerned. But much has been left unknown about poly-crystalline forms of snow crystals. Kronberg-Wilson's concept of Coincidence-Site Lattice was successfully introduced to explain the structure of “twin prisms” and twelve-branched snow crystals as rotation twins which have each a twin axis parallel to the composition plane. A generalized CSL theory is now proposed to explain the structure and growth of poly-crystalline shaped crystals including a combination of bullets, a spacial assemblage of plane branches, and some of the “peculiar shaped crystals” as rotation twins which have each a twin axis perpendicular to the composition plane. Thus an important step is forwarded for the understanding of the morphology of snow crystals. Methods of microscopic observation in situ of growing ice crystals are described with the aid of illustrations and photographs.
著者
内田 龍男
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1150-1154, 1998

反射型力ラーLCDは近い将来急速に普及すると予測される高機能携帯情報端末のキーデバイスになるものと考えられる.このLGDは反射と散乱の機能の点から,3種類に分類することができる,現在,低電圧駆動,広視野角,高速応答性,中間調表示,フルカラー表示などが達成されており,視賢角をある程度隈定すれば高品位のペーパーホワイトディスプレイを実現できる見込みである.将来的には携帯情報端末のみでなく,目の疲労の少ない,高品位の情報用モニターディスプレイとして広く適用される可能性がある.
著者
楢岡 清威
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.10, pp.877-883, 1984-10-10 (Released:2009-02-09)
参考文献数
15

半導体プロセスではエッチングのドライ化が進み,また工業的な結晶研磨にはメカノケミカル・ポーリッシュが使われてきた.しかし半導体などのリソグラフィーでアンダーカットによる線編誤差を補正できる場合,ウエットエッチングがなお適用されている.さらにウエットエッチング速度は材料の種類,結晶方位,あるいは不純物濃度による選択性をもつ.この特徴を欠陥現出,材料の評価,および各種加工に活用している.このような転換後のウエットエッチングの状況を概観する.この他,酸化物結晶材料の欠陥評価および研磨のためのエッチ液を探索する選択基準につき解説する.
著者
平野 嘉仁 辰巳 賢二
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.916-919, 1995

高出力化が容易なLD側面励起方式をNd:YLFに適用するため,励起効率を高くとれるc軸ロッドを用い,TEM<sub>00</sub>出力平均パワー10Wを,光-光変換効率19%で実現した.熱レンズ効果は,Nd:YAGの報告値の1/3程度で,光学的に等方性に近いc軸ロッドの熱複屈折の影響も励起平均パワー52Wまでの測定では観測されなかった.さらに,このc軸Nd:YLFロッドを用い,高効率,高ビーム品質が要求される航空機搭載ライダー用レーザー送信器を試作し,繰り返し50HzにおいてQスイッチ出力100mJ,電気一光変換効率7%を回折限界の1.2倍のビーム品質で得た.
著者
前田 豊
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1077-1082, 1984

メスバウアー効果が生物,とくに鉄タンパク質の研究にどのような問題意識をもって利用されてきたかについて述べる.また,最近,明らかになってきた生物における強磁性体,とくにマグネタイトの存在とその合成過程について,走磁性細菌とピザラガイの研究を中心に述べる.