著者
石川 敬史 渡辺 哲成
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.268-271, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)

十文字学園女子大学司書課程と日本事務器株式会社は,2013年より産学連携による教育実践を積み重ねてきた。これらの実践の目的は,学生と企業社員らが図書館システムを通して図書館の可能性をともに創造することであり,両者がとともに学びあうプロセスを重視している。本稿ではこうした実践のうち,①Pepperと図書館システムとの連携づくり(2016年度),②手話・字幕つきOPACガイダンス動画の制作(2017年度)を中心に,「学生傍聴」による図書館システムリプレイス(2017年度)についても報告する。産学連携による学びあいは,多くの学生や企業社員らを巻き込みながら広がっていく。
著者
岩﨑 崇宏 梶原 瑠衣 木下 博貴 竹内 嘉与子 平野 かおる
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.165-168, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)

九州大学附属図書館では,2018年10月にグランドオープン予定の新中央図書館に対する利用者の期待感創出等を目的として,2017年6月から附属図書館公式Instagramアカウントの運用を開始した。運用開始にあたっては,運用ガイドラインを定めると同時に,動作検証を重ねて投稿要領を作成した。情報の拡散のため,Instagramへの投稿内容は,附属図書館公式Twitter・Facebookアカウントとも連携させている。投稿前には,図書館広報室内で内容を精査し,適切かつ効果的な広報となるよう調整している。新中央図書館の建物等だけではなく,図書館移転全般に関わる内容をコンスタントに投稿することにより,2018年1月時点で約240人のフォロワーを獲得している。
著者
小川 晋平
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.416-420, 2011-10-01

電子ジャーナル時代におけるILLについて,大阪大学附属図書館生命科学図書館のこれまでのILL受付件数の推移から今後の課題を述べる。最初にこの20余年間の受付件数の増減の経緯と特長を示す。さらには,今後の電子ジャーナル購読規模縮減があった後,冊子体のない図書館でのILLによる効率的な文献情報提供には,電子媒体での新たな文献情報提供システムと文献情報と文献所在情報が統合的に検索可能なシステムの開発と運用が必要なことを述べる。
著者
神崎 正英
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.622-627, 2017-12-01 (Released:2017-12-01)

リンクするデータ(Linked Data)は,リソースの識別に用いられるURIをリンクとしても機能させ,データの連鎖を生むことで「データのウェブ」を構成しようという考えである。URI設計に作法が求められることもあるが,重要な点はアクセスしたらデータが取得できるようにするところにある。これを優先することで,語彙についてはデータ取得後に確認できるというRDFの利点を生かし,より柔軟なデータ提供と再利用が可能になる。JSON-LDのような緩やかな記述は,特定アプリケーション用のデータを無理なく外部からも利用できるようにし,分野を超えた新たな応用の可能性を開く。
著者
浜田 雅美
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.193-200, 2013-05-01
参考文献数
10

医学中央雑誌刊行会は,国内の医学および関連領域の文献データベースを医中誌Webにて提供している。データ内容は,(1)書誌事項,(2)抄録,(3)索引データに大別される。索引データを付与することで,特定の主題について記述された文献が,効率的に検索される。索引作成は,専門のインデクサーが1つ1つの文献に目を通し,主題となる概念を抽出し,それを適切な索引語に置き換えて付与することにより行われる。索引やシソーラスを理解することはそれほど容易でないことから,医中誌Webではシソーラスを意識しなくとも,それが検索に活かされるような機能の充実も図ってきた。しかし,索引データの意味を知って頂くことで,検索の多様性は広がるものと考える。この索引データについて「医学用語シソーラス」を中心に,米国国立医学図書館が発行するシソーラス「Medical Subject Headings」(MeSH)との比較に焦点をあてて述べる。
著者
関 秀行
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.405-409, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)

日本の大学図書館においては,図書館員を一定期間海外の図書館に派遣する滞在型の海外研修が人材育成の手段として一つとして実施されている。本稿では,図書館員の海外研修派遣の事例として,慶應義塾大学メディアセンターが長年に渡って実施している派遣の実績を紹介する。また,派遣を調整する立場からの視点で,海外研修の実施に当たって重視すべき要素として,研修者の人選,英語力の強化,研修先機関との互恵関係への配慮,経費補助のための財源確保に焦点を当て,慶應義塾大学の実状に触れながら,それぞれの重要性について述べる。
著者
福嶋 聡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.71-77, 2008
参考文献数
4

配本された新刊書をジャンルに分け,しかるべき書棚に収める。購入した資料一点一点にコードを振り,配架する。書店員にとっても図書館員にとっても,「分類」は基本的な日常業務である。「本と読者を結びつける」という点では共通しながらも,書店と図書館には,「商品の販売」と「資料の貸し出し」という業務内容の大きな違いがある。その違いはそれぞれの書物の「分類」,具体的にはコード体系や作業工程の違いとなって現われてくる。そのことを検証するとともに,「分類」そのものの「困難」に触れながら,「困難」と表裏一体のものとして書物の「進化」をとらえ,近年の人文書の趨勢に,その実例を見いだしていく。
著者
パテントドキュメンテーション委員会
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.339-339, 2017-07-01 (Released:2017-07-01)

新聞やインターネットでは,毎日のように人工知能(AI:artificial intelligence)に関する記事が掲載されており,最近ではチェス・将棋だけでなく,より複雑といわれる囲碁で対局しても,名人に勝利できるほどに進化しているようです。日本国特許庁(JPO)でも,将来,人工知能を業務システムに組み込むことを検討していることについて,「特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」や,「人工知能技術を活用した特許行政事務の高度化・効率化実証的研究事業」などの資料にて公表しました。また,ここ数年の間には,人工知能を用いて特許情報を分析・解析するというシステムが,各情報提供事業者より発表され,業務の効率化やユーザの問題解決に利用する動きが始まりました。一方で,数年前に話題となったオックスフォード大学の論文で,コンピュータ(人工知能)によって「消える職業」「なくなる仕事」として,サーチャーが上位にランクされたこともあり,特許情報の検索者とその業務は,人工知能によって,少しずつ業務の範囲を狭められていくのか,それとも共存していくのかについても,興味のあるところだと思います。そこで,今号では特許情報と人工知能(AI)というテーマで,人工知能という技術を特許情報に対しどのように適合させていくのか,あるいは,特許情報を人工知能というフィルタに通した場合,どのような知見をえられるのかについて,参考となる特集を企画しました。はじめに,桐山勉氏と安藤俊幸氏の共著による総論によって,現状における特許情報と人工知能の全体動向について論じていただきました。つづいて,岩本圭介氏には人工知能を用いた情報処理システムの概念と株式会社NTTデータ数理システムにおける分析ツールへの取組みについて,鈴木祥子氏には特許文書解析へのアプローチ方法と課題について,藤田肇氏には独自開発の人工知能エンジンについて,その開発の経緯や実務への応用例など,太田貴久氏には,特許情報を人工知能に適用させる際の問題点について,田辺千夏氏には,サーチャーとシステムユーザーという複数の視点から,人工知能というツールをどのように利用するのかについて,それぞれ解説をいただきました。今回の特集が,「人工知能」というツールに興味をもたれている方の参考になるだけではなく,既に利用されている方にも新しい何かに気づくきっかけになっていただくことになれば幸いです。(パテントドキュメンテーション委員会)
著者
佐藤 匡
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.211-215, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

本稿の目的は,図書館のレファレンス調査における発想の技法に焦点を当て,その本質について考察することである。その手掛かりとして,G. ポリアによる,数学の問題を解く際に有用な発想のリストを利用した。これによって以下の2点が明らかになった。第一に,ポリアのリストがレファレンスの問題を考える上でも有効であること。第二に,レファレンス調査の技法はポリアのリストに還元可能であり,その調査技法の核は<類似性>と<変形>という発想の技法に帰着することである。最後に,ポリアのリストによって図書館レファレンスのみならず,広くインフォプロの調査技法の全体を包括的に理解できる可能性があることを示唆した。
著者
矢吹 命大
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.185-189, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

横浜国立大学は理工系,人文社会系,教育系及びその融合型の学部・大学院で構成される医学系部局を持たない中規模総合大学(学生数約1万人,教員数約600人)である。URAが設置されて以来,研究IRへの取り組みも活発に行われ,引用文献データベースを用いた大学の強み・特徴の分析が行われてきた。一方,横浜国立大学の研究活動には,引用文献データベースでは見えづらい分野も多々含まれているため,そういった分野も含めた分析を可能とする視点が求められていた。本稿では,この課題への取り組みとして,広い研究分野を網羅し,他機関の動向も知ることができる科研費の採択状況に着目した分析事例を紹介し,その有効性と限界を論じる。
著者
酒本 裕明 法宗 布美子 有賀 康裕 左右内 敏浩 丹 美幸 都築 泉
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.194-201, 2017-04-01 (Released:2017-04-03)

商品開発ではニーズの把握が非常に重要である。そのため,将来のニーズ(例えば次のブーム)を予測する手法が今後益々必要とされる。そこで,本研究では,次世代商品ニーズの予測手法を確立することを目的とした。題材には身近な商品であるシャンプーを選択し,次に来るシャンプーブームを予測した。今回,各年代に発生したブームについて,出願件数の経年変化の数値に対して統計処理を行なう手法を試みた。その結果,いずれのブームにもブーム発生以前に前兆となるシグナルが確認された。この手法を用いて,種々の手法により抽出したニーズ候補を評価し,次世代商品ニーズ群の選定を試みた。
著者
藤江 昌嗣
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.517-522, 2008-10-01

日本初の図書館PFI事業「桑名市立中央図書館」を取り上げ,PFIによる図書館経営としての評価を試みた。BOT方式という施設建設後も,所有権を移さず管理・運営を図書館専門サービスのノウハウを持つ企業に任せる方法を選択している点,また,事前に行政の要求水準を実現するべくデザイン-いわゆるデザイン・イン-していった特殊な例として桑名市立図書館の経営は評価できる。財務情報を共有し,図書館を含む複合施設全体のパフォーマンスとリスクを明らかにするとともにリスクを最小化する具体策を講じ,地域のコアとなる図書館を継続的,安定的に「経営」するという高い意識での精緻な分析が今後とも大変重要なものとなる。
著者
瀬戸口 誠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.316-321, 2009-07-01

大学図書館および図書館員がどのように関わっていくべきかという観点から,情報リテラシー教育におけるアプローチの意味について検討する。情報リテラシー教育におけるアプローチを,スキル志向と利用者志向という2つのアプローチに分けて,(1)情報リテラシーを捉える視点の所在,(2)前提事項,(3)学習成果という観点からそれぞれの特徴を抽出する。今後の情報リテラシー教育を構想するに当たって,両アプローチを組み合わせることで,図書館員と教員の連携に対して有効な視座を提示することを指摘する。
著者
依田 紀久
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.90-95, 2006-03-01
被引用文献数
2

レファレンス協同データベース事業は,全国の図書館で行われているレファレンスサービスの記録や,そこで蓄積された調べ方に関する情報などをデータベース化し,図書館におけるレファレンス業務や,一般の人々の情報検索に役立てることを目的とする協同事業である。本稿ではまず,この事業の概要と現況を解説する。その上で,事業を通じて見て取れる参加館のレファレンスサービスの変化を,具体的に紹介する。最後に,今後のデジタルレファレンスサービスの課題について私見を述べる。
著者
稲木 竜
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.14-18, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)

慶應義塾大学メディアセンターでは2016年2月にディスカバリーサービスである,Primo Centralを導入した。本稿では,ディスカバリーサービス導入までの過程と運用開始後の電子書籍検索への活用事例について述べる。本学の資料検索システムであるKOSMOSにて大規模電子書籍コレクションの収録タイトルを検索できるようにすることを目的にディスカバリーの導入を進めてきた。サービス開始後はディスカバリーを用いた資料検索により,DDA(Demand-Driven Acquisitions)による資料購入や試読のアクセス状況に基づいた選書などの新しい業務の流れも生まれている状況である。今後,業務面では新たな資料購入フローに伴う購入決定判断の変化,システム面ではディスカバリーに搭載されるメタデータの質や新刊タイトル搭載の即時性やソート順などが課題となる。