著者
五十嵐 大悟
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.200-205, 2015-05-01

成長産業として捉えられている「コンテンツ」を地域振興に活用しようという動きが見られるが,本論ではコンテンツの語彙を精確に定義し,かつそれに包含され得ない生の体験を,エクスペリエンスという語を以って定義することで,健全な議論の基礎を構築する。更に情報の社会的性質を示し俯瞰的に論じる。その上で筆者が学術的フィールドワーク及び,アニメーション製作の実務経験を元に,コンテンツを用いる地域振興においてはコンテンツとエクスペリエンスの双方の視点から実践,研究する必要性とアイディアを示す。本論は,地域における情報のハブを構築する実務にてプラクティカルに活用できる知見の提供を行う。
著者
中村 陽一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.395-400, 2014-10-01

本稿では,社会デザインからみた図書館を考察するため,まず,社会デザインのなかでのコミュニティデザインの可能性を探り,そこで行われている「つながりを編み直すワーク,活かすワーク」について,事例とともに考えた。続いて,社会デザインとしての事業取り組みモデルを紹介した後,コミュニティデザインの変容から「サードプレイス」としての場の可能性に言及し,公共ホール・劇場を例にとった。そのうえで,最後にソーシャル・インクルージョン,サスティナビリティ,ソーシャル・キャピタルという3つのキーワードと「野生の社会デザイン」の必要について述べた。
著者
高橋 克巳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.585-590, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)

個人情報の活用と保護の技術に関して,個人情報の取り扱いの原則を解説し,個人情報の定義を述べた上で,原則に基づいたデータ収集,データ処理,データ保管の技術的観点からの解説を行う。個人情報取り扱いの原則はOECD8原則やISO/IECプライバシーフレームワークを参照しながら,利用目的,データ最小化などという独特の概念を説明し,個人情報保護法が求める保護の技術的意味に迫る。さらにこれらに対してデータ最小化に貢献する匿名化技術や情報セキュリティに貢献する暗号技術の概要を解説する。
著者
杉本 まゆ子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.164-168, 2015-04-01

宮内庁書陵部図書寮文庫の保存と公開に関しての紹介と今後の課題について述べた。図書寮文庫は,大宝律令で定められた図書寮を淵源とし,直接的には1884年に設けられた図書寮を受ける部署である。まず,天皇・皇族の御蔵書を核に,公家や武家の所持していた本,学者の蔵書などが加わって形成された広範な蔵書群の特徴を述べた。また保存の核となる修補係・出納係について,原態を留めることに注力し,状況を悪くしないための綿密な防黴防虫作業を紹介した。最後に2013年に開始した書陵部所蔵資料目録・画像公開システムの紹介とともに,今後の公開の鍵となるデジタル画像の公開方法について,現状思うことを述べた。
著者
鈴木 尊紘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.233-237, 2007-05-01

図書館情報学と哲学の接点の一つは,図書館等のアーカイブ機能に関して倫理的な検討を行うことにあることを提示する。幾人かの図書館情報学研究者は,図書館が権力性を持ち,コミュニティー・文化・イデオロギー等を形成する力能を有することを指摘している。そうした認識を,ミシェル・フーコーや彼の哲学に大きく影響を受けたメディオロジーは共有しつつ,アーカイブという営為の権力性に自覚的であるための倫理学を提唱していることを説明する。各国国立図書館およびGoogle Book Search等が世界規模のデジタル・アーカイブを構築しつつある現在,こうした倫理学の存立は不可欠であるという主張を行う。
著者
石田 喜美
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.10, pp.531-537, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)

近年,大学図書館において積極的に,情報リテラシーに関わる教育活動が行われるようになってきた。一方,1990年代後半から,さまざまな「新しい能力」に関する概念が提案されてきており,情報リテラシーという概念もその拡張を余儀なくされている。本稿では,「新しい能力」の視点から,大学図書館において求められる情報リテラシー教育とはどうあるべきかを検討し,その展望を描きだすことを目的とした。具体的には,「つながる学習(Connected Learning)」の学習論に着目し,本学習論から導きだされる情報リテラシー学習のための学習原理および学習環境のデザイン原理について考察する。
著者
三根 慎二 MINE Shinji
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, 2010-04 (Released:2010-10-29)

オープンアクセスに対する社会的関心の高まりや,その促進を後押しする欧米政府・研究機関による政策・制度の策定が続いている。オー プンアクセス関連の情報は大量に流通し続けており,一人ですべてを発見し読むことはもはや不可能である。よって,情報収集の負担を軽 減しより効率的にするためには,何らかの方策が必要となる。本稿では,オープンアクセス関連の情報を収集するための重要な10 大ツー ル(人,イベント・学会・各種委員会,Twitter,メーリングリスト・メールマガジン,ブログ,Web サイト,ソーシャルブックマーク, ニュースレター,雑誌,図書)を紹介する。
著者
渡辺 智暁
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.64-69, 2011-02-01
被引用文献数
2

本稿ではウィキペディアを使う上で重要となるメディア・リテラシーを論じている。具体的には, ウィキペディアの運営・品質管理体制や方針, 参加者の動機, 利害関係者の動機や影響力などを解説し, ウィキペディアの特定の項目の信頼性を見積もる上でそれらがどのように手がかりとなるかを論じる。また, ウィキペディアの信頼性・品質に関する既存の調査の傾向に触れつつ, 限界を指摘する。他の資料との併用が有益であること, ウィキペディアは他の資料への入口としても有用性を増しつつあることを述べる。最後に, 中長期的な視点に立つと, ウィキペディアへの貢献も, 信頼性の問題への有意義な解決方法であり, 直接的な貢献の他にも多様な間接的貢献法があることを説明する。
著者
岡本 耕太 清水 裕史 津田 英隆 仲 美津子 伏見 祥子 堀口 泰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.345-351, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

近年,企業活動における情報分析の重要性が大きくなっている。本稿は,筆者らは空気清浄機を開発,製造,販売する電機メーカA社の経営企画担当者であると仮定して,公開情報(製品,特許,論文など)を分析して新事業創出のための提案を作成する手法の検討を行った。手法の検討にあたっては,以下(1)~(3)の観点からのアプローチを行った。(1)A社空気清浄機技術の強み,(2)空気清浄機技術と既存技術の組み合わせ,(3)社会ニーズに対応する次世代技術
著者
重田 暁彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.312-317, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)

知的財産の中でも技術関係の情報が中心となる特許関係の特許庁の審査・審判,更には訴訟に見る最近の動きを把握し,特許調査や発明を捉える際の影響などで考慮すべきことを述べる。特許庁の判断と裁判所の判例には微妙な違いが見られる。特許庁の審査は,ある程度の技術内容の開示があれば,比較的広い範囲での請求項が認められる。しかし,権利解釈などの裁判になると具体的な実施態様に限定される傾向が見られる。特許調査や発明を捉える際の影響を考えると,技術的内容を何処まで細かく,必要十分な範囲または観点で取り組むべきかが重要になる。調査であれば技術用語による全文検索を,発明開示であれば出来得る限りの下位概念をしっかりと実施態様に述べることが求められる。
著者
谷口 祥一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.482-488, 2010-12-01

メタデータについて,特に最近の重要トピックを取り上げ解説する。(1)RDFaを用いたメタデータの公開とサーチエンジンによる活用,(2)Linked DataとLinking Open Dataによるメタデータ公開,(3)国立図書館などによるRDF,SKOSを用いたメタデータ公開,(4)その他を取り上げる。併せて,ダブリンコアの現在の状況について解説を加え,いっそうの構造化,セマンティックWebへの志向性を確認する。最後に,セマンティックWebとメタデータの関係,RDKF,RDFスキーマ,OWLなどの位置づけを整理し論じる。
著者
久永 茂人 高久 真一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.140-145, 2014-04-01

国立国会図書館では多数のマンガ単行本(コミックス)やマンガ雑誌を所蔵している。マンガ雑誌を中心とした所蔵および利用状況について踏まえたうえで,マンガの破損の実例とその補修方法について事例報告する。当館で所蔵しているマンガ雑誌は約1200誌である。利用冊数が多い雑誌の上位15誌に,マンガ雑誌は6誌が入っている。マンガ単行本は,分類による抽出が十分にできないためリスト化が困難である。作りが簡易であること,材料の質がよくないこと,利用が多いことから当館ではマンガの破損が問題となっている。破損したマンガ単行本は,主に無線綴じの綴じ直しの手法で補修している。破損したマンガ雑誌は,再製本したり破れたページを和紙で補修している。