著者
加藤 俊徳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.505-510, 2020-10-01 (Released:2020-10-01)

カスタマーハラスメントは,これまで,顧客からのセクシュアルハラスメントに主な焦点が当てられていた。近年,情報産業の発達に伴い,不特定多数の顧客から情報サービス従事者(接客・営業担当者を含む)へのハラスメントが問題となっている。本稿では,カスタマーハラスメントを起こしやすいカスタマーの脳について,1)睡眠,運動,食生活などの生活習慣,2)注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害などの発達障害,認知症やうつ病など脳機能に問題のある疾患,3)8つの脳番地の機能がそれぞれ低下または未熟である場合,の3つの観点から概観した。加えて,カスタマーハラスメントを予防するために必要な課題を述べた。
著者
酒井 美里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.355-359, 2020-07-01 (Released:2020-07-01)

本稿では,海外代理人の意見やテストコレクション評価の現状,また特許管理業務への導入例などを通して「AI(人工知能)系調査ツールとの付き合い方」を考察する。海外特許庁では,審査引例調査へのAI導入が積極的に検討され始めている。一方,無効資料調査などの場面では「どんな手段で調査をするかは依頼者の責任」という考え方もあり,AIは補助手段に留まる傾向が強い。今後,私たちサーチャーはAI系調査ツールとどのように付き合っていくべきなのだろうか。本稿では導入に対する費用対効果や,海外でのAI系調査ツール評価に関する話題,音楽配信サービス用のレコメンドAIなどの例を通して,AI系調査ツールについて考える「視点」を提案する。
著者
徳原 直子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.88-94, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)

最初に,平成30年の著作権法改正により新たに設けられた「柔軟な権利制限規定」について概説する。その上で,国立国会図書館が取り組んでいる当該規定に関連するものとして,デジタル化資料(画像)のテキスト化事業及びそのテキストデータを活用した本文検索サービス,並びにデジタル化資料の閲覧・検索機能の利便性向上のためのAI(機械学習)を用いたサービス開発について,平成30年の著作権法改正による影響を考察しつつ紹介する。
著者
宮原 志津子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.192-197, 2022-06-01 (Released:2022-06-01)

本稿は,図書館情報専門職の資格について,国内外の動向を明らかにすることが目的である。かつては,専門職として働くためには資格を所有することが要件となっていたが,今日では学位や資格の質保証の証明が必要となっている。学位・資格に対する質保証制度を検討するために,海外のLIS専門職資格を「教育資格」「職業資格」の2種類に分けて比較する。教育資格の例としてアメリカ,職業資格としての例としてフィリピンを対象とし,LIS専門職の質保証ツールとしての両者の特色を整理した上で,日本の司書資格が,教育資格としても職業資格としても,質保証が十分おこなわれていないことを明らかにする。
著者
高梨 章
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.155-159, 2019-04-01 (Released:2019-04-01)

大学図書館において,レファレンス・サービスを利用する大学教員の減少は顕著である。もともとさしては多くなかったものの,これでよいのか? 教員の利用を開拓する手立てはないのか? どこを糸口に開拓したらよいだろう? ということで,まずは最初にILL,文献複写依頼を取り上げる。事例をあげながら,仕掛けるレファレンス,複写依頼(所在調査)から主題調査依頼(事項調査)への道を提示する。複写依頼以外にも,糸口はある。わたしたちが彼らの同僚として受け入れられるなら,実りはもっと多いはずである。このほかに,自己研鑽の事例として,種々のデータベース遊びを紹介する。盛んになってきている文献探索ガイダンスを,もっと面白いものとするために。
著者
橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.98-103, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)

人には,性格のコアと言われる気質があり,それは遺伝子レベルで規定されているため,一生変わらないものである。メンタルヘルス不調を予防するには,自分の気質の良さを理解し,その気質の弱点を補うためのセルフケア法を知ることが有効である。また,労働者の強いストレスとなっている人間関係の問題は,気質の違いによるものが大きい。人間関係の改善や対人ストレスの軽減のためには,自分とは異なる気質を持つ他者を理解し,他者との関わり方を知ることが必要である。そこで本稿では,気質理解によるメンタルヘルス不調の予防法と人間関係ストレスの軽減法を紹介する。
著者
林 正治
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.159-164, 2021-04-01 (Released:2021-04-01)

機関リポジトリとは「機関の構成員が作成した学術資料についてのオープンなウェブベースのアーカイブ」である。情報システムとしてみると,ウェブサーバとデータベースから構成される所謂ウェブアプリケーションであるが,そこには機関リポジトリならではの技術が存在する。本稿では,機関リポジトリに関係する標準化された技術について,メタデータ流通,アイテム登録,ユーザ認証という視点から説明する。また,その技術が登場した背景,特徴,課題について解説する。
著者
植松 貞夫
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.52-57, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)

単なる建築空間を図書館として性格付ける要素であることから,図書館家具は図書館建築の主役の一つである。書架や閲覧机等の形状とその配置は利用者と職員の使いやすさ,働きやすさを左右する。本論では,図書館職員に家具についての理解が深まることを目的に,はじめににおいて,家具について分類や備えるべき性能等の基本的な事項をまとめるとともに,本体工事と家具工事の違い等について概説した。続いて,主要な家具である書架と閲覧用の机と椅子,カウンターについて,寸法や素材等,既製品から選択する際や特別設計の注文に際して注意すべき点を整理した。
著者
赤池 伸一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.358-363, 2019-08-01 (Released:2019-08-01)

科学技術基本計画は,科学技術基本法に基づき5年毎に策定される政府全体の科学技術政策の基本文書であり,現在,第5期科学技術基本計画の計画期間の中途にある。次期科学技術基本計画の策定に向け,政府内外での検討が始まりつつある。本稿では,科学技術政策の枠組みとして,その対象と政策領域及び組織の構造を示すとともに,戦前からの科学技術行政体制の歴史を概観する。また,科学技術を巡る歴史的背景を踏まえ,科学技術会議の基本答申,科学技術政策大綱,各期の科学技術基本計画等の特徴を示す。さらに,次期基本計画の策定に向けて,科学技術政策における今後の課題を展望する。
著者
古崎 晃司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.406-412, 2020-08-01 (Released:2020-08-01)

Webで公開したデータを相互につなげる(リンクする)ことにより,データのWebを形成しようとするLinked Dataの取り組みは,2010年ごろから盛んに進められている。中でもオープンなLinked DataであるLinked Open Data(LOD)は,さまざまな分野で構築されており,その有効活用が期待される。本稿では外部のLODとつながったデータを作成することで,複数のデータを統合して活用する方法について解説する。特にLinked Data用のクエリ言語SPARQLを用いて,複数のデータセットを横断して検索する統合クエリ(Federated Query)の基本的な使い方を紹介する。
著者
緑川 信之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.238-243, 2007-05-01 (Released:2017-05-09)
参考文献数
9

フォークソノミーという用語はフォーク(folkまたはfolks)とタクソノミー(taxonomy)の合成語である。Wikipediaによれば,フォークソノミーは,インターネット上での情報検索の方法論であり,協同的かつ自由に付与されるタブで構成されている。このダグによって,ウェブページやオンライン上の写真,ウェブリンクなどのコンテンツがカテゴリ分けされる。本稿では,フォークソノミーに関するいくつかの論文・記事を分析し,フォークソノミーの新奇性がどこにあるのかを明らかにした。
著者
鈴木 みどり
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.388-395, 1998-07-01 (Released:2017-05-25)
参考文献数
15

メディア・リテラシーとは何かについて, 理論と実践の両面から概観する。多様な領域で行われてきたメディア研究を3つの流れに整理して振り返ると, それらの流れの接近と交差が顕著になる1980年代に, メディア・リテラシー研究という独自の研究領域が形成されてきたことがわかる。本稿では, このような理論的位置づけを行う一方で, メディア・リテラシー研究の基本的枠組みについて述べる。さらに, メディア・リテラシーの実践として, 学校教育, 市民講座, メディアによる取り組み, パブリック・アクセス活動, の4側面からその展開を概観する。