著者
柊 和佑 阪口 哲男 杉本 重雄
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.389-393, 2008-08-01 (Released:2017-04-28)
参考文献数
22

現在,膨大な数のWebページが日々作成され,更新されている。一方,それに伴って消えるWeb情報資源の存在が問題となっている。そのため,様々な国の図書館が中心となり,Web情報資源を収集し保存するWebアーカイブの構築と運用に取り組んでいる。2003年より,Webアーカイブに取り組む組織が協調してInternational Internet Preservation Consortium (IIPC)を作り,共通の規格とツールの研究開発を行っている。本稿では,先進各国のWebアーカイブの現状について,IIPCを中心とした視点から解説する。
著者
上野 佳恵
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.397-402, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)

世界各国においても,日本と同様,各種の統計調査が行われ,そのデータが公表されている。しかしながら,日本との対比や複数国間での比較を行う際には,国ごとの統計サイトを参照するのでは非効率であり,さらに国による調査頻度や調査方法,言語,通貨単位などの違いによって単純な比較が難しいことも多い。各国の基本的社会・経済データの入手においては,あらかじめ比較可能なデータを提供している国際連合やOECDなどの国際機関の統計ウェブサイトや,それらのデータを元とした日本の総務省統計局やジェトロが提供しているウェブサイトを参照し活用していくことが欠かせない。
著者
山澤 成康
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.370-376, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)

統計とは,合理的決定を支援する強力なツールである。公的統計は,国や地方自治体が国民に提供するために作っている統計で,GDP統計や国勢調査など重要な統計は基幹統計として適切な運用がされるように統計法で定められている。公的統計はe-Statによって入手することができる。統計の分析法としては,記述統計や推測統計といった統計学が基本となる。さらに,被説明変数と説明変数の間に一定の関係を想定する回帰分析が重要だ。機械学習による分析も増えており,分類やクラスター分析などで使われている。新型コロナウイルス感染拡大以降は,コンピューター上に記録されたログデータなどを利用したオルタナティブデータも脚光を浴びている。
著者
倉家 洋介
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.377-382, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)

リサーチ・ナビの統計関連コンテンツでは,公的統計だけでなく,業界団体や民間企業が作成する統計が掲載された資料及びWebサイトも紹介しているため,幅広く統計を探す際の入口として活用できる。近年の統計はインターネットで探すことができるものが多いが,過去の統計は紙媒体の資料のみに掲載されている場合も多く,リサーチ・ナビで紹介している統計索引などの情報が役に立つ。リサーチ・ナビを使った統計データの探し方のコツは,検索機能のみに頼らず,「産業情報ガイド」など,統計に関連するコンテンツが多く含まれているカテゴリをブラウジングして探すことである。
著者
米澤 彰純
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.212-218, 2023-06-01 (Released:2023-06-01)

人文科学・社会科学は,極めて多様な対象と方法論にまたがって展開しており,各大学や学協会も学術に用いる言語について共通見解に立った組織的行動をとることが難しい。本稿では,教育学分野での英語論文執筆を通じた国際発信を題材として,日本からの人文科学・社会科学の国際発信を推進していくための現状・課題・展望を論じる。研究者養成を担う大学院や学会では若手研究者を対象とした英語論文執筆指導の体制整備が進められている。国際的学術貢献を果たすには,技術的な側面を超えた研究枠組,理論における国際的な学術コミュニティへのコミットメントと戦略的で自律的な学術活動を行っていくことが必要である。
著者
横田 雅弘
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.19-24, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)

2000年にデンマークの野外ロックフェスティバルの片隅で始まった人を貸し出す図書館「ヒューマンライブラリー」は,瞬く間に世界中に広がり,現在は世界90か国以上で開催されている。日本でも大学を中心に図書館での開催もあり,筆者はゼミ活動として主催して今年9回目を迎える。すでに全国で100回程度開催されていると思われる。2017年10月には日本ヒューマンライブラリー学会も立ち上がり,研究関心も高まってきた。この仮想の「図書館」では,いったい何が行われ,何が起こっているのか。偏見の低減にも効果があるとされるこの催しの意味と効果について述べる。
著者
古村 隆明 渥美 紀寿
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.220-225, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

京都大学では教員の教育・研究活動等の状況を公開するための教育研究活動データベースを運用している。本データベースでは,研究業績の一部をresearchmapと連携し,researchmapに登録された業績を取り込んでいる。また,京都大学での職歴や京都大学が発行した研究成果をORCIDに機関として登録することで,信頼性の高い情報として公開している。本稿ではこれらをどのように学内システムと連携しているかを紹介する。
著者
永田 治樹
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.54-59, 2016-02-01 (Released:2016-04-01)
被引用文献数
1

社会発展や,情報技術の急速な進展によって,図書館の価値がこれまでのように自明とはみなされず,その果たす役割が問われるようになった。本論は最初に,図書館のインパクトを紹介した国際規格ISO 16439:2014(図書館インパクト評価のための方法と手順)を取り上げる。次いで,学生の学習成果に関する分析事例を検討し,図書館の意義を実証するためのインパクト評価に,これまでのメトリクスだけでなく,種々の外部データを取り込んでデータにおける意味のあるパターンを発見・提示するというアナリティクスの適用を示唆する。
著者
渡邉 幸佑
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.192-194, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

坂口安吾の作品について,先行研究によると1945年ごろを境に一人称が「僕」から「私」に転じ,ふたたび「僕」に戻ることも混用もなかったという。しかし,この先行研究は「僕」と「私」の頻度を数えたものではなく,直感による論考に留まる。そこで,本稿では,坂口安吾のエッセイを対象に,KH coder(計量テキスト分析のためのフリーソフトウェア)を用いて,「僕」と「私」の頻度を数え,一人称の変化について検証した。その結果,1945年以前に「私」のみを使用した作品があり,1945年以後に「僕」と「私」の混用があるとみられるものがあった。先行研究の指摘は必ずしも妥当するものではなく,「僕」と「私」の使い分けについてさらなる検討が必要である。
著者
永田 知之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.178-183, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

古代以来,日本では漢籍が多く収蔵されていたが,伝統的な四部分類に基づく書目は中世ではごく稀であった。これは,当時の書目の多くが仏典を対象とする聖教目録だったことを主因とする。19世紀に入ると,漢籍(非仏典)に四部分類を用いる書目の編纂が顕著となる。漢籍の増加,寺院の外での漢学の隆盛,『四庫全書総目』等による中国からの分類法の流入がその原因だろう。大正期以降は漢籍に特化し,四部分類を施す目録が珍しくなくなる。これは日本文化からの漢学など中国文化の析出が漢籍を他の書籍から独立させたことを一因とする。総じて言えば,書目での漢籍の扱いは中国文化が日本で占める位置の反映であり続けたと思しい。
著者
角田 裕之 長塚 隆 原田 智子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.410-415, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)

鶴見大学が2015年9月より開講している履修証明プログラム図書館員リカレント教育コースは,司書資格を有する現職の図書館員のために最新の知識や技術を学習するプログラムである。図書館員に対する研修は,国立国会図書館や日本図書館協会における研修があり,一部の大学でもリカレント教育が実施されているが十分とはいえない。本学では春季(4月~7月)と秋季(9月~2月)に各6科目ないし7科目を履修できるように開講している。6科目の単位取得が認められると計120時間になり,文部科学省が推奨する履修証明制度の条件を満たし,本学学長名の履修証明書(専門司書)を取得できる。授業は火・木曜日の夜間と土曜日の午後に行い,4名の教員が担当している。開講して2年が経過するが,現職の図書館員への教育プログラムをさらに浸透させてゆくためにはその内容をさらに見直し拡充することが必要と思われる。
著者
池上 雅人
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.81-86, 2023-03-01 (Released:2023-03-01)

あらゆるものがインターネットに繋がっている現在,サイバー攻撃は社会に重大な影響を及ぼす脅威となっている。サイバー攻撃のトレンドは時代とともに変化しており,新型コロナウイルス感染症拡大の対策として急速に普及したリモートワーク環境は攻撃者に新たな攻撃の隙を与えた。2020年以降,マルウェアの検出数は高い水準で推移しており,その中でもとくに猛威を振るうマルウェアがLockBitなどのランサムウェアとEmotetである。本稿では,マルウェア解析者の視点でそれらの脅威を解説し,一般のユーザーが実施可能かつ実効性のある対策を紹介する。
著者
関口 兼司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.51-57, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

大学医学部は,大学病院として診療面で,大学院医学研究科として研究面で,医学部医学科として教育面でそれぞれコロナ禍の影響を著しく受け,少なからずデジタル化が後押しされた。診療に関してはオンライン診療体制の導入の遅れが露呈されたが,ようやく素地が整った。研究面での遅れは少なかったものの,オンライン会議を除き研究環境のDXは進んでいない。医学部教育では公的な支援(Plus DX)をきっかけに,ハイブリッド講義室の整備や,VRやメタバースの活用など新しい教育手法の開発が進められた。今後医学教育はDXを進めて,増え続ける医学関連知識の習得を効率化し,直接対話による臨床教育の価値を再認識し実践していく必要がある。
著者
斎賀 和彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.44-48, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)

カメラの普及,その動画ファイルを編集,加工するパソコンの低価格化と普及により,動画制作はプロだけのものではなく身近になった。時を同じくするように拡大したコロナ禍におけるオンライン授業の流れは,教育における講義用の動画コンテンツ制作を加速し,多くの教育関係者が動画制作に関与せざるを得なくなった。しかし,動画作成と言っても,その範囲は広く何億ドルというハリウッド映画からTikTokのような数十秒に満たないショートビデオまで含むと,その制作思想も手法も多岐に渡る。本稿では主に大学での発信を想定した広報(インフォメーション),講義配信を基本として制作フローの解説と基礎知識のまとめを行う。
著者
増田 豊
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.386-391, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)

本稿では,学術コミュニケーションの中で信頼される学術成果を発信する役割を負っている学術出版社の近年の動向を,世界的な業界団体として存在感のある国際STM出版社協会の活動から考察する。具体的には,同機関が毎年発表する業界の動向予測「STM Trends」を現状俯瞰のための材料として取り上げ,利用認証のイニシアチブSeamlessAccessやフルテキストアクセスのGetFTR,AIなどへの取り組みも概説する。
著者
倉田 敬子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.352-357, 2013-09-01 (Released:2017-04-18)
被引用文献数
1

e-Scienceを厳密に定義することなく,検討する視点として1)研究プロセスと2)基盤を,指向として1)技術的と2)社会的を定めた。当初から,研究を支援する基盤という方向からの議論が存在した。研究プロセスとしてのe-Scienceの構成要素として,1)共同性として「共同研究」と「オープンサイエンス」を,2)データとして「データ駆動科学」と「データ共有」を挙げた。オープンサイエンスとデータ共有が最近は注目されてきていることを示した。現在のところ,研究者はデータ共有の意義は認めながらも消極的であることを述べた。