著者
玉森 聡 石黒 祥生 廣井 慧 河口 信夫 武田 一哉
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.33-46, 2019-05-24

名古屋大学COIでは,高齢者が元気になるモビリティ社会の実現を目指した研究開発を進めている.高齢者が「いきいきした生活」を送るために,外出や他者とのコミュニケーションを継続的に行うことが重要である.我々は高齢者の外出促進を目的として,スマートフォンを利用した個人適応型行動認識とチャットアプリケーションを開発した.これは,高齢者の行動を逐次認識し,蓄積されたデータを活用して地域のイベントなど外出につながる情報を,チャット対話を通じて高齢者に提示する外出促進チャットアプリケーションである.本論文では,愛知県豊田市にて10名の実験協力者に対し実証実験を行い,実環境下での行動認識結果の報告およびアプリの実現可能性や製品化に向けての問題点の確認を目的としている.この実証実験から,アプリに導入した個人適応学習型行動認識について,実環境下で特定の行動「テレビの視聴」の認識が最大46%の精度で可能であることが分かった.この認識結果に基づいたチャットが行える一方で,行動認識上の問題点として,周囲の環境音が大きく精度に影響を与え,チャットのやりとりの阻害原因になる.それゆえ,誤った認識結果に基づくチャットをできるだけ減らす必要があり,より多くの高齢者の外出促進を行うには年齢や忙しさに応じた会話内容や提示内容,提示手法の検討も必要であることが分かった.
著者
池田 和史 服部 元 松本 一則 小野 智弘 東野 輝夫
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.82-93, 2012-03-21

近年,TwitterのようなブログやWeb掲示板などに投稿された商品やテレビ番組などに対する口コミ情報を分析してマーケティングなどに応用する評判解析技術に注目が集まっている.これらは手軽に情報発信することが可能なため,新鮮かつ多数の意見を即座に収集するツールとして,その活用は大きな可能性を持っている.一方で,評判は投稿者の年齢や性別,趣味などのプロフィールに応じて異なることが多いが,ブログや掲示板には投稿者の年齢や性別が記載されていない場合が多く,投稿数や平均的な意見などの表面的な情報しか抽出できず,プロフィールごとの意見を抽出できないことが課題であった.この問題を解決するため,著者らはTwitter上の口コミ投稿者の日常的な投稿内容を解析することで,年代,性別,居住地域などのプロフィールを推定する技術を開発した.本技術を利用することで,ネット上の口コミ情報をプロフィールごとに分類,集約することが可能となり,商品の改善やテレビ番組の企画などに生かすことが可能となる.性能評価実験の結果,提案手法の汎用的な推定精度は性別で88.0%,年代で68.0%,居住地域で70.8%であり,視聴率測定などへの応用を想定したプロフィール分布誤差の評価では,分布に偏りがある場合でも性別で8.8%,年代で12.4%,居住地で14.0%と実利用に十分な精度であることが示された.
著者
高橋 雄太 音田 恭宏 藤本 まなと 荒川 豊
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.43-55, 2018-05-22

老後を健康にすごすうえで,歩行能力は非常に重要である.そのため,歩行能力を改善あるいは維持するためのリハビリテーションがケアの一環としてよく行われている.しかしながら,超高齢化社会が進むと,ケアワーカ不足によって,このようなリハビリテーションが十分に受けられなくなる可能性が高い.そこで,センサを用いて,日常の歩行から歩行能力の評価を行うことができれば,歩行能力の低下の検知,歩行能力の改善度の把握,効果的なリハビリテーション計画が可能となると考えている.歩行能力の評価では,ウェアラブル機器を用いることも考えられたが,ヒアリングの結果,高齢者は機器の装着を好まないことが分かったため,我々は,杖に注目した.本研究では,杖を使い,歩行リハビリテーションを行っている高齢者の歩行能力を計測,評価可能なシステムを提案する.本提案システムの特徴は,歩行者ではなく,杖にセンサを取り付け,杖の動きから,歩行者の歩行状態を推定する点である.試作したセンサを用いて,実際の杖利用者の歩行データを用い,加速度センサの変化に基づく歩行検知アルゴリズムと,重回帰モデルに基づく歩行距離推定アルゴリズムを提案する.そして,高齢者,片麻痺患者,健常者を含む16名に協力いただいた実験の結果,提案システムは95.56%の精度で健常者の歩行を検出するとともに,88.06%の精度ですべての実験協力者の歩行距離を推定可能であることを明らかにした.
著者
瀬古 俊一 青木 良輔 井原 雅行 小林 透
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.12-21, 2013-12-25

本論文では,Web上の興味を刺激される情報を煩わしい操作なく取得可能な操作ユーザインタフェース,InfoSkinを提案する.簡易かつ容易な情報取得操作を実現するために,実世界でのウィンドウショッピングの行動メタファに着目した.本論文では,そのメタファに基づいて情報の取捨選択を容易に行える操作ユーザインタフェースを実現するための要件を定義し,その要件に沿ったシステムを設計・実装し,検証実験を行った.その結果,実装したシステムが既存の操作ユーザインタフェースと比較して興味が刺激され,情報の認識を向上させる効果があることを確認した.また,商用サービスなどへの適用を通して本ユーザインタフェースのシステムとしての汎用性の高さを確認した.In this paper, we propose "InfoSkin", an user interface that is able to simply and easily collect information on the web. In order to achieve such information retrieval, we focus on the behavior in the shoe store. We designed and implemented the user interface for content selection based on the metaphor, and validated the effective of our proposal. Evaluations show that our proposal makes users take a broad view of information and improves willing for viewing and inputting operations. Then we confirmed that the user interface was high general-purpose by applying business.
著者
市川 裕介 林 阿希子 美原 義行 清水 健太郎 峰野 博史
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.50-57, 2020-02-26

訪日外国人の増加にともない,空港,駅,等公共施設の混雑機会も増えている.混雑状態は施設の安全性,快適性を損なうことから,施設利用者を誘導し,動きを制御することで,混雑を緩和するシステムの導入が重要となる.我々は,刻々と変化する施設内の混雑状況を計測し,空いているルートを動的に案内する動的案内サインシステムを構築し,実際に羽田空港国際線旅客ターミナルにおいて評価した.本稿では,混雑度の表示による誘導効果計測の結果について報告する.
著者
長谷川 達人 田中 基貴
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.38-48, 2022-05-31

2018年に本国において70年ぶりの漁業法の一部改正が決定された.新漁業法の主な目的は,水産資源の持続的な利用を確保し漁業生産力を発展させることとされている.この目的の達成には,操業や水揚げ等の情報を用いた資源調査を行い,科学的な知見に基づいた客観的な指標により資源評価を行い,評価結果に基づく指標に従った資源管理を行うことが重要である.一方,漁獲した尾数や,魚種,魚体長といった資源評価に必要な基礎情報は,各漁場で手動で計測されていることが多い.本研究では,Mask R-CNNを用いた画像認識により漁獲物の基礎情報を自動で収集するシステムを提案する.特に,Copy-Paste Augmentation(CP-Aug)と敵対的訓練により少量のラベル付きデータのみを用いてモデルを訓練した点と,クラス分類Headを1 class分類に変更した点が特色である.評価実験の結果,CP-Augにより複数魚の検出精度が大幅に向上した.また,敵対的訓練によりアノテーション誤差に頑健な特徴表現の獲得がなされ,1 class分類により未知魚に対する精度向上も達成した.
著者
松本 紀子 小坂 忠義 中島 洋平 櫻田 崇治 田野 俊一
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.11-23, 2020-10-06

物流市場では,荷主企業より物流業務を包括的に受託する3PL(3rd Party Logistics)事業と呼ばれる事業形態が拡大してきている.3PLでは,コストの6割をピッキング作業が占めることもあり,ピッキング作業効率の向上が重要な課題なっている.そこで,直感的な指示提示に有効なAR技術の活用による効率向上が期待されているが,実用化には至っていない.本研究では,ピッキング作業の効率向上のために,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使ったARによる直感的な指示を行うピッキング作業支援システムを開発し,その効果を検証した.HMDによる表示は,実際の視野角に対して表示画角が制限されており,実用化の障壁となっていると考え,VRにより複数のHMD表示画角を再現し,比較分析を行った.その結果,ピッキング作業には70度の表示画角が必要であることが分かった.
著者
水野 淳太 後藤 淳 大竹 清敬 川田 拓也 鳥澤 健太郎 クロエツェー ジュリアン 田仲 正弘 橋本 力 奥村 明俊
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.106-120, 2016-05-24

我々は,災害時にTwitterに投稿される膨大な情報を効率良く検索するために対災害SNS情報分析システムDISAANAを開発し,スマートフォンおよびPCで誰もが利用可能なWebアプリケーションとして試験公開している.本稿では,まず先行システムについて説明し,その問題点についてまとめる.次に,それらの問題をDISAANAがどのように解消するかを説明する.特に,不適切な回答候補の抽出を回避するために導入したモダリティ解析について詳述する.評価実験では,東日本大震災時のツイートに対して,人手で構築した192問の質問とその回答からなる評価セットを用いて本システムの評価を行った.評価の結果,先行システムに比べてF値が7ポイント改善した.エラー分析結果に基づいて,今後の改善方針について考察する.さらに,自治体で実施したDISAANAの有用性検証実験の結果についても報告する.
著者
井上 義隆 松村 択磨 深澤 佑介 山田 和宏
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.11-21, 2019-05-24

本研究では写真を美的評価するエンジンを深層学習で構築し,デジタルカメラ型デバイスへ実装した.デバイスでは深層学習の推論処理をリアルタイムに動作させ,撮影すべき構図を撮影者に推薦する機能を実装した.構図推薦カメラは初心者の撮影技術をサポートするだけでなく,熟練者に対してもシャッターチャンスの気づきや構図を追求する機会を与えることができる.
著者
佐藤 弓子 土井 裕介 寺本 圭一
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.54-62, 2012-07-26

家庭内の機器に通信機能を搭載し各機器を協調制御させることにより,消費エネルギーの削減や創蓄エネルギーを組み合わせた最適化などに寄与するエネルギーマネジメントシステムが注目を集めている.エネルギーマネジメント向けの通信規格の1つであるZigBee SEP2.0のデータ形式として,XMLをコンパクトに符号化したEXIの採用が検討されている.EXI自体,メッセージサイズは小さいものの,符号化前や復号化後に自由度の高いXMLデータモデルを扱わなければならないため,メモリやCPUなどの資源に厳しい制約のある組込み機器へ単純に搭載するには困難がある.本研究では,直接EXIを操作可能にするXML-Less EXIを提案し,ZigBee SEP2.0で利用するデータ形式に対応した通信アダプタを試作後,その有効性について評価する.
著者
米澤 祐紀 土井 裕介
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.52-60, 2015-10-03

IoT(Internet-of-Things)はさまざまな領域での応用が期待される.そのうちの1つに,スマートグリッドなどを含む標準仕様で構成されるシステムがある.このようなシステムでは,異なるベンダの異なる機器の統一的な制御に,多くの機器・機能を包含した標準が定義される.そのような標準仕様では,しばしば,XMLスキーマによるデータモデルやメッセージ形式を定義する.一方,標準で定義される多様なデータモデルを含むXMLスキーマは肥大化しがちである.このような肥大化したXMLスキーマを,IoTで用いられる組込み機器で処理するのは最適ではない.本研究では,計算機資源に制約のある組込み機器を,XMLを利用する標準仕様に統合するために,仕様で定義されたXMLスキーマを機器にあわせて最適化する方法(XMLスキーマ簡約)を述べる.あわせて,本手法をEXIに適用した際のEXI文法のサイズ削減効果についても示す.
著者
佐藤 大祐 美原 義行 佐藤 吉秀 田中 悠介 宮本 勝 佐久間 聡
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-10, 2018-01-30

本研究では,イベント会場における混雑度を即時的に把握・可視化することで,イベント運営者に混雑リスクの注意喚起をすることを目指す.イベント会場内の混雑度の取得のため,会場内にBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを多数設置し,来場ユーザのスマートフォンアプリ(以下,アプリ)で取得したBLEビーコン電波情報をサーバで収集することで会場内の群集密度を計測する.1つのBLEビーコンがカバーする範囲内の人数として,そのBLEビーコンの電波を最も強く受信したユーザの数を数えることで求め,この人数をカバー範囲の面積で割ることで群集密度を求める.BLEビーコンを設置できない箇所も存在するため,空間内挿によりBLEビーコン地点間の混雑度を求める.本システムを,2日間で約5万人が来場する大規模なイベントに対して適用した.表示デザインの視認性の観点から判断し,10m程度の間隔でビーコンを設置し,ビーコンの出力電波強度を最大の+4dBmに設定した.イベント期間中の混雑時間帯において,会場で電波受信環境を調査したところ,圏外となった地点が存在しなかったことを確認した.そして,イベント期間中,本システムはアプリからの全120万件のビーコン電波受信ログのアップロードに対して,エラー率0で処理を完了させた.最終的な群集密度表示については,イベント運営者に実態と混雑度マップを比較いただき,実態と差異がなかったという評価をいただくことができた.In this research, we aim to alert the congestion risk to event operators by instantly grasping and visualizing the congestion degree at the event site. In order to acquire the congestion degree in the event site, we installed a lot of BLE (Bluetooth Low Energy) beacons and collected the BLE beacon information acquired by the visitor's smartphone application by the server. The server measures the congestion degree in the hall. Place the BLE beacon in the venue so that radio waves from at least one BLE beacon can be received at any point. There are no omissions in the number of installed users. In this research, the crowd density to be used as an indicator of congestion degree is obtained for correspondence of congestion risk. The number of people within the range covered by the BLE beacon is obtained by counting the number of users who received the radio waves of the BLE beacon most strongly and the crowd density is obtained by dividing this number by the area of a coverage area. Since there are places where BLE beacons can not be installed, the degree of congestion between BLE beacon points is obtained by spatial interpolation. In order to improve scalability, processing for finding the BLE beacon that received the strongest radio waves was cut out to the application side. In 2 days visitors offered this service with a large scale event of about 50,000 people. Regarding crowd density indication, we asked event operators to compare actual conditions and congestion degree maps, and received an evaluation that there was no difference with the actual situation. For the architecture that shared functions on the application side and the server side, processing was completed with an error rate of 0 with respect to the upload of all 1,200,000 beacon radio reception logs from the application. Furthermore, the effectiveness of being able to grasp the congestion degree in a bird's eye view from the operator was evaluated.
著者
丸 三徳 関口 隆昭 林 新 天谷 真一
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.66-73, 2018-05-22

より安全・安心な車両走行を実現するため,カーナビの経路探索機能の研究を行っている.実際の道路を走行する際にレーン変更が困難となる経路を探索してしまうという問題の解決に向け,車両のレーン変更を考慮した経路探索方式を開発する.本稿では特に,レーン変更が困難となる経路の検出アルゴリズムを提案する.まず,具体的な事例の分析を行い,問題のある経路となる条件を導出した.そして条件に該当するか否かを,カーナビ用地図データを使って判定する方法を検討した.試作・評価により,発見済みの事例以外の事例についてもレーン変更が困難であるか否かを判定できることを示し,提案方式の有効性を確認した.さらに,検出精度向上に向けたカーナビ用地図データの拡張方針を明らかにした.In order to realize safer and more comfortable driving, we have studied on route calculation function of car navigation systems. To solve a problem that the car navigation systems often provide users with routes including difficult lane-changing, we have developed a route calculation method considering lane-changing of vehicles. In this paper, we propose a method for detecting the route that includes difficult lane-changing. We analyzed case examples of the problem and clarified the conditions for being problematic routes. We considered a method to judge whether the route fulfills those conditions or not by using conventional car navigation map data. By prototyping and evaluating our proposed method, we showed effectiveness of the method that was able to judge whether additional case examples included difficult lane-changing or not. Further, required contents of car navigation map data for improving detecting accuracy were specified.
著者
神山 剛 久住 憲嗣 稲村 浩 小西 哲平 太田 賢 福田 晃
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.84-102, 2018-05-22

本論文では,実際のスマートフォンユーザ約700名に対するアンケート調査と約400名の端末ログ収集調査によるデータを用い,アプリケーション使用など実際のスマートフォン利用パターンを導出し,パターンごとにその特徴を示すことで,様々なサービス企画・研究開発に有益なスマートフォン利用モデルを提案する.本モデルは,1日単位のスマートフォン利用を,ユーザ属性やアプリケーション使用傾向などの特徴を定量的に示すものである.クラスタリングによる利用パターン分析の結果,全体的に6つの利用パターンの存在が確認された.また,同一ユーザでも日によって異なる利用パターンが存在するという仮説を検証したところ,例外的なパターンを除くと,90%のユーザの利用パターンはたかだか2つ程度であることが確認された.This paper presents a smartphone usage model that will be useful as ground data for works such as proposals on improving services/technologies related to smartphones. It is based on an actual-use survey involving about 700 smartphone users. We conduct web interviews with users to get their demographic data - age, sex, for example, and gather many kinds of usage traces from their device using our logger application. The model describes 1) daily usage pattern (combinations of application usages) and 2) pattern features - demographics, major application usages and so on. Through a cluster analysis of the usage traces, we find there are six typical daily usage patterns and half the users have multiple patterns that differ with the day.
著者
宇佐美 真 杉村 博 一色 正男
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.64-75, 2017-05-25

バーチャルリアリティ(VR)は,技術の進化にともない市場急成長が期待されている.ヘッドマウントディスプレイの高機能化に代表されるように,視覚に向けた映像出力の技術が実用化されてきた.次なるVRへの要求として手や指を使ったアクションをVR映像上のコンテンツにフィードバックするインタフェース技術の重要性が認識されている.しかし,既存手法におけるジェスチャのようなアクションを認識する方式は物理的反力がないため映像変化と,手や指の感覚齟齬に起因する違和感が発生しやすい.そこで,柔らかい実体物(柔軟物)は,外力を加えられると形状変化するという点に着目した.指で押し込まれた周辺の歪みを観測することから力覚を推定し,指が感じる反力として提示する方式を検討する.実体物と重ねて表示されるバーチャル映像に力覚インタラクションの結果を同調して反映することで,視覚と力覚が整合すると考えられる.その結果,違和感が縮小すればVRコンテンツの臨場感向上の効果が期待できる.そこで本稿では指の感じる反力を提示するために,柔軟物の弾力性を活用する.柔軟物が押し込まれた周辺の歪曲度合いを視覚認識するため,柔軟物の表面に形状自由度特性を有する2次元L字型のマーカ装着を施した力覚提示装置を開発した.この装置が指で押し込まれるときに発生する形状変化をカメラで視覚認識することで力覚量を推定し,VRシステムにフィードバックする方式を提案する.指の押し込みと同調して発生するマーカの歪曲度合いを観測するための実装を行い,実験ではXY座標軸におけるマーカ位置変位量からユークリッド距離を求めることで柔軟物の歪曲度合いを推定し,力覚量に相当する数値をシステムにフィードバックすることが可能なことを確認した.Virtual Reality (VR), rapid growth of the market is expected due to the evolution of technology. Image output technologies are commercialized for the sense of vision as represented by highly featured head-mounted displays. An importance as a next requirement of VR is recognized, which is the interface technology to feed back the action using hands and fingers into content on VR images. However, in an existing method to recognize actions such as gestures, since there is no physical reaction force, a sense of discomfort is likely to occur due to inconsistency of the image changes and the finger, hand sense. We focus attention on a soft-material object (soft object), which is distorted by external forces. We study a method to estimate force-sensations by observing the perimeter distortions where the soft object is pushed down by a finger, and to display a reaction force sensed by the finger. It is assumed that the sense of vision and the force-sensation are consistent by reflecting the result of force-sense-interactions, synchronized with displayed virtual images to be overwrapped with real objects. As a result, the discomfort is reduced, and an effect of improved realism in VR content is expected. Therefore, in this paper, in order to display the reaction force which is sensed by the finger, we develop a force display device by utilizing the elasticity of the soft object. The device is equipped with a two-dimensional L-shaped marker, which incorporates shape-flexibility-characteristics on the surface of the soft object in order to visually recognize the distortion degree of perimeter where is pushed by the finger. We propose a method that is fed back to the VR system by estimating force-sensations quantity by a camera, which recognizes shape-changes occur to be in the force display pushed by the finger. We implemented a method to observe the distortion degree of the marker to be generated synchronously with pushing down the finger. In the experiment, the distortion degree of soft object was estimated by calculating the Euclidean distance from the displacement quantity of marker positions in the coordinate axis at XY, and confirmed that it was possible to feed numerical values which is equivalent to force-sensations back into the system.
著者
瀬古 俊一 青木 良輔 井原 雅行 小林 透
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.12-21, 2013-12-25

本論文では,Web上の興味を刺激される情報を煩わしい操作なく取得可能な操作ユーザインタフェース,InfoSkinを提案する.簡易かつ容易な情報取得操作を実現するために,実世界でのウィンドウショッピングの行動メタファに着目した.本論文では,そのメタファに基づいて情報の取捨選択を容易に行える操作ユーザインタフェースを実現するための要件を定義し,その要件に沿ったシステムを設計・実装し,検証実験を行った.その結果,実装したシステムが既存の操作ユーザインタフェースと比較して興味が刺激され,情報の認識を向上させる効果があることを確認した.また,商用サービスなどへの適用を通して本ユーザインタフェースのシステムとしての汎用性の高さを確認した.
著者
芦村 和幸 小松 健作 一色 正男
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.19-28, 2012-07-26

Webは世界中で共通的に利用されるがゆえに,その相互運用性,国際化,入出力方法の多様性,および利用者への親和性を保証する必要があり,そのために,W3C[1]等による国際的な技術標準化が現在も行われているが,時代とともにWebで扱うコンテンツは多様化し,マルチメディア系コンテンツの需要が飛躍的に増加してきたため,従来の方法で表現することが難しくなってきている.開発者はこのようなWeb利用の進化に合わせるため,独自の手法を使って対応するようになっていったが,それがコンテンツ普及の妨げになりつつある.本稿では,標準的なフレームワークに沿ったソフトウェアをWebアプリケーション開発者に提供することで,開発者の力量に依存することなくコンテンツの多様化に対応する方法として,W3C MMIアーキテクチャ[2],[3],[4]を利用した標準化フレームワークに沿ったライブラリの実装方法について論ずる.また,実際に上記ライブラリを実装したうえで評価を行うとともに,開発ソフトウェア標準化の現状について述べる.The Web is used globally and commonly, so Interoperability, Internationalization, Multi-Modality and Accessibility are essential. That's why W3C[1] has been tackling international standardization for Web technologies. However, Web contents have been changed much and multimedia contents are getting more and more populer these days. So it is getting more and more difficult to render the contents using conventional ways. Therefore, this paper proposes a standard library based on the W3C MMI Architecture[2],[3],[4] so that developers can handle variety of Web contents regardless of their skills. Also, this paper discusses how to implement the library and evaluate it, and then explain the current status of standardization of the library.
著者
池田 和史 服部 元 松本 一則 小野 智弘 東野 輝夫
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンシューマ・デバイス&システム(CDS) (ISSN:21865728)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.82-93, 2012-03-21
被引用文献数
1

近年,TwitterのようなブログやWeb掲示板などに投稿された商品やテレビ番組などに対する口コミ情報を分析してマーケティングなどに応用する評判解析技術に注目が集まっている.これらは手軽に情報発信することが可能なため,新鮮かつ多数の意見を即座に収集するツールとして,その活用は大きな可能性を持っている.一方で,評判は投稿者の年齢や性別,趣味などのプロフィールに応じて異なることが多いが,ブログや掲示板には投稿者の年齢や性別が記載されていない場合が多く,投稿数や平均的な意見などの表面的な情報しか抽出できず,プロフィールごとの意見を抽出できないことが課題であった.この問題を解決するため,著者らはTwitter上の口コミ投稿者の日常的な投稿内容を解析することで,年代,性別,居住地域などのプロフィールを推定する技術を開発した.本技術を利用することで,ネット上の口コミ情報をプロフィールごとに分類,集約することが可能となり,商品の改善やテレビ番組の企画などに生かすことが可能となる.性能評価実験の結果,提案手法の汎用的な推定精度は性別で88.0%,年代で68.0%,居住地域で70.8%であり,視聴率測定などへの応用を想定したプロフィール分布誤差の評価では,分布に偏りがある場合でも性別で8.8%,年代で12.4%,居住地で14.0%と実利用に十分な精度であることが示された.This paper proposes a real-time analysis technology of the online opinions of commercial products and broadcast TV programs. As many people submit their opinions via social media services, such as Twitter, utilizing these real-time and huge amounts of opinions is strongly desired as a novel marketing tool. However, it is impossible in many cases to understand the overall trend of such enormous user opinions by browsing the information stream on the screen. In addition, though presuming the ratio of positive and negative opinions is useful, that discrimination is not much enough because the ratio of opinions differs depending on user demographics (age, sex, area, etc.) The proposed technology makes it possible to analyze the contents of Twitter streams related to commercial products or broadcast TV programs, and estimate the demographics of the users by tracking and analyzing their past tweets. This analysis attracts peoples such as, product planners, broadcast TV directors, and advertisement agencies that produce and promote products/TV programs for target segments. Our experimental results show that the estimation accuracy of the proposed algorithms is, 88.0% in sex, 68.0% in age, 70.8% in areas, respectively. The error ratio in the distribution of estimated demographics was 8.8% in sex, 12.4% in age, 14.0% in area, respectively, which is high enough for practical use.