- 著者
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安田 浩
- 出版者
- 一般社団法人情報処理学会
- 雑誌
- 情報処理 (ISSN:04478053)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.2, pp.128-132, 1999-02-15
- 被引用文献数
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情報産業の花ともいうべきマルチメディアサービス産業の規模は2010年にはGNPの5%を超え, 従来型の自動車産業や家電産業を抜き, 先進国の「米」となると想定されている. この情報産業の大繁栄をもたらす原因は, 情報大量消費文化に端を発する情報大量流通である. 21世紀を特徴付けるこの情報大量流通は,「通信網」と「マルチメディア」が「専門家のための」ではなく「大衆のための」要素となっていくことからもたらされるのである (「ディジタル」が技術を大衆化し,「インターネット」が通信網を大衆化し,「MPEG」がマルチメディアを大衆化した). たとえば使いやすいTV対話は, 専門家同士の打合せのみに使用されていたものが, 主婦の井戸端会議にも使われるようになろう. 取締役会や学会理事会といった小さな集団での電子投票が, 国民投票の電子化になってこよう.「電話網の大衆化」が「隣の家でも電話する・子供でも電話を使う」ことならば,「通信網とマルチメディアの大衆化」は, 仮に2人の人間が物理的に近い距離にいたとしても,「ある場面ではフェース・ツー・フェースよりも通信網を用いたほうが効率的なコミュニケーションが図れる」ということになろう. また素人の性急な個別要求を満足させるための通信網も必要となろう.「専門家」が使う場合には,「機能・性能・コスト」が未熟・不満足であっても本人の工夫によりそれなりの使用効果をあげることが可能である. しかしながら「大衆」が使うとなれば, 無意識ではあるが「機能・性能・コスト」に対する要求条件は厳しくなってくる. したがってより高速・高機能な通信網が要求されることは自明の事実であろう. 本稿は, このような流れの中で, マルチメディアの現状と現状要素技術の進展の状況を述べ, 将来の技術開発方向を模索するものである.