著者
松下 浩一
出版者
日本万国家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.J8-15, 2015-04

山梨県は南の富士山に代表されるように,西に北岳や間ノ岳,北に八ヶ岳など標高の高い山がそびえており,かつ八方を山に囲まれていることから,その斜面を利用した果樹生産が盛んな地域である。甲府盆地は8月に気温が40℃になったと思えば,11月には氷点下を記録するという寒暖差の激しい地域である。そのため家畜を飼育する環境としては決して恵まれた地域ではない。そのような地域での養鶏産業といえば,採卵鶏は30戸足らずで約62万羽,肉用鶏はブロイラーだけでなく,甲州地どりや甲州頬落鶏などの特産鶏の生産を含めても20戸にも満たない状況である。このように決して養鶏が地域の主産業になっているわけではないものの,それぞれの養鶏農家が高い意識をもって経営に取り組んでいる。畜産試験場も養鶏科は技術面で,畜産普及科は経営面で養鶏農家をバックアップすべく農家との交流を頻繁にするように心がけており,良好な関係を維持している。一方,高病原性鳥インフルエンザの発生に伴って,衛生面を重視する必要から農場間の行き来は少なくなったものの,電話を使ってさまざまな要望が出されてくる。これを解決するために,基礎研究をベースに応用研究として極力農家の生産形態に近い状況で飼育することを心がけている。研究内容は品種改良や飼養管理から飼料栄養に至るまで実施しているが,中でも飼料栄養の調整による技術は農家レベルで実用化されやすく,成果発表会などでも反応が良い。本内容は,生産性向上や品質向上を目的に,飼料栄養の調整により実施した研究のうち,山梨県内を中心に農家レベルで実用化された技術の一部について紹介するものである。
著者
桑山 岳人 小川 博 宗近 功 河野 友宏 一戸 健司
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-95, 1996
被引用文献数
3

赤色野鶏,緑襟野鶏,セイロン野鶏,日本鶏16品種,および白色レグホーンの鳴声を録音し,声の高さ,長さ,音節数についてサウンドスペクトログラフィーを用いて分析した。声の高さは,灰色野鶏とセイロン野鶏が最も高く,赤色野鶏,緑襟野鶏および矮鶏では比較的高く,声良鶏が最も低かった。声の長さは,東天紅鶏が最も長く,唐丸鶏および声良鶏が長かった。音節数は,野鶏では3~5,日本鶏では2~4,白色レグホーンでは4であった。
著者
桑山 岳人 小川 博 宗近 功 河野 友宏 一戸 健司
出版者
日本万国家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.89-95, 1996-03-25
参考文献数
6
被引用文献数
3

赤色野鶏,緑襟野鶏,セイロン野鶏,日本鶏16品種,および白色レグホーンの鳴声を録音し,声の高さ,長さ,音節数についてサウンドスペクトログラフィーを用いて分析した。声の高さは,灰色野鶏とセイロン野鶏が最も高く,赤色野鶏,緑襟野鶏および矮鶏では比較的高く,声良鶏が最も低かった。声の長さは,東天紅鶏が最も長く,唐丸鶏および声良鶏が長かった。音節数は,野鶏では3~5,日本鶏では2~4,白色レグホーンでは4であった。
著者
古田 賢治 下村 茂美 大橋 等
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.265-268, 1982-09-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
3

洗濯による作業服の微生物汚染程度の低下を明らかにする目的で, 細菌により人工汚染した材料と自然汚染した材料を用いて洗濯による付着菌数の減少を調べた。その結果, 従来慣行的に行われていた洗濯は微生物汚染の程度を低下させるのに効果があり, 洗濯した作業服を直射日光下で乾燥させるのが望ましいことが明らかとなった。
著者
上田 博史 横田 浩臣 田先 威和夫
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.113-120, 1979-05-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

飼料中のメチオニン過剰がヒナのエネルギーおよび窒素の利用性を低下させることは既に報告した。メチオニン過剰による成長阻害はグリシンによって緩和されることが知られている。本実験では, グリシンによる緩和効果を飼料エネルギーおよび窒素の利用性の面から検討した。供試ヒナには8日齢の白色レグホーン雄を用い, 2羽を1群とし, 各試験区に4群ずつを割りあてて12日間飼育した。対照飼料にはメチオニンとグリシンを適量補足したダイズ蛋白質を用い, 蛋白質含量が20%になるように調製した。これにさらに1.5%のメチオニンを添加したものをメチオニン過剰飼料とした。さらにこれら両飼料に1.5%, 3.0%および4.5%のグリシンを添加した飼料を調製し, 飼育試験終了後ヒナの屠体分析を行った。対照飼料においては, 過剰のグリシンを添加しても障害はみられなかった。一方, メチオニンの過剰給与はヒナの増体重, 飼料摂取量および飼料効率を著しく減少させたが, これらはいずれもグリシンの添加で軽減され, 特に飼料効率ではメチオニン適量飼料との間に差が認められなかった。屠体成分はメチオニンの過剰給上与により脂肪が減少し, 水分が増加した。メチオニン適量および過剰飼料に高濃度のグリシンを添加すると, 脂肪含量の減少がみられた。しかし, 蛋白質含量は試験飼料によって影響を受けなかった。以上の結果より, メチオニン過剰飼料を摂取したヒナのエネルギー蓄積量は著しく低下したが, グリシン添加により低下の度合は減少した。飼料エネルギーの代謝率 (代謝エネルギー/総エネルギー) は飼料間で差がなかったが, 代謝エネルギーの利用性(エネルギー蓄積量/代謝エネルギー摂取量) はメチオニン過剰飼料で最も低く, これはグリシン添加により改善されたが, メチオニン適量飼料には及ばなかった。窒素の利用性 (窒素蓄積量/窒素摂取量, および窒素蓄積量/飼料摂取量) も過剰のメチオニン添加で有意に低下したが, グリシンの添加によりメチオニン適量区と同程度にまで改善された。またグリシンによる成長阻害の緩和は飼料摂取量に差がない場合でもみられることから, 飼料の利用性の改善によるところが大きいものと考えられる。
著者
河野 憲太郎 樋浦 善敬 山本 興三郎
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-14, 1971-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
18
被引用文献数
3 3

1. 鶏卵の卵黄をLUFT11)の10%アクロレイン0.05Mりん酸緩衝液 (pH 7.4) に5~7日間冷暗所で固定, 3~7μ, 通常5μの凍結切片を作成, スダンIVまたはスダンブラックB-55%アルコール液, 1%ナイルブルーA液, BAKERの酸ヘマティンなどで脂質染色を施し, また切片作成後, HELLY液後固定-アザン染色, ピリジン抽出後 SCHIFF反応 (アクロレイン-SCHIFF 反応) などを行なった。実験鶏に対しあらかじめスダンIVまたはスダンブラックBの飼料中混合給与, または色素のコロイド液の静脈内注射を行ない, 卵黄内に形成される色素の縞によって卵黄球が形成された時期を推定した。色素の縞模様の形から発育中の卵黄内には一種のポテンシャル流を生じるのではないかと考え, 電気的モデル試験を行なった。回路は流体力学で利用されるKOHLRAUSCH橋を用いた。2. 白色卵黄球はラテブラ, ラテブラの頚, パンダー核, および胚盤の周囲の卵黄表層に分布し, 他の部分には黄色卵黄球のみが観察された。ラテブラの中心部から胚盤の隣接部にかけて原始卵黄球が分布し, 胚盤に接近するほど小型化し, 包含物中に空胞を生じ, 遂には小泡の集団のような構造を呈した。3. 白色卵黄球には, 大きな滴状包含物を1個含む3~25μの原始卵黄球から, 多数の微小滴状包含物を含む40μ前後のものまであり, その直径が増加するに伴なって, 包含物は微細化し, かつ数を増す傾向を示した。黄色卵黄球は径30~150μで, 微細な顆粒状包含物を無数に含むが, 部位によっては顆粒がやや粗いものも存在した。両卵黄球の包含物は, その染色性からたんぱく質が主成分で, 少量のりん脂質を含むことを示し, 基質はたんぱく質のほか脂肪の存在を示した。中性脂肪滴は流動的で, その局在が明らかでなかった。両卵黄球間の最大の差は基質のりん脂質の濃慶にあり, 白色卵黄球の基質は酸ヘマティンに対しほとんど陰性か弱陽性であったが, 黄色卵黄球は強陽性を呈した。4. 層状構造はラテブラにおいて常に認められ, 原始的な卵黄球とやや大型の卵黄球とが交互に配列するが, 外層ほど黄色卵黄球の形態に近づく。ラテブラの外側の黄色卵黄球の層では, 少数例を除いて形態や染色性は層状構造を示さなかった。5. 卵黄球間の連続相は原始卵黄球の存在部位でかなり多く, その他の卵黄球の部位ではごく少量であった。その染色性は少量のたんぱく質の存在を示した。6. 卵黄の中層ないし内層のスダン色素の縞模様は, ラテブラの頸の附近で一旦大きく隆起し, 陥凹し, さらにラテブラの頸に沿って小さく隆起する傾向を示した。電気的モデル実験の結果, 高抵抗部に適当な範囲内の抵抗をかけ, その抵抗を絶縁部に接近するほど高めることによって, この模様を近似的に再現し得た。7. 以上の結果を基として, 卵黄球の種類, 成分, 分布, ポテンシャル流の原因などに関し考察を加えた。
著者
イダマルゴダ アルナシリ 杉山 道雄 小栗 克之 荒幡 克己 甲斐 諭 柳 秦春
出版者
日本万国家禽学会
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.234-244, 1998-07-25
参考文献数
7
被引用文献数
1

世界主要都市における鶏卵価格の内外価格差は,かなり大きいことが指摘されてきたが,その卵価水準に最も影響する生産費と流通マージンの国際比較分析について飼料費を除き,殆ど研究されていない。研究は国内でなされても国際比較はなされていないのは,生産費の概念が統一されず,不明確であったことにもよっている。<br>本研究は鶏卵生産費の概念を直接費(飼料費十ひな費)と間接費(労働,建物費,機械,道具費,農薬費等)として,1996年世界20ヵ国の政府,大学機関にメールメリッドで調査票を送付し,15ヵ国につき回答を得て比較分析を行ったものである。調査国にはアメリカ,カナダ,イギリス,オラング,ブラジル,インド,中国,バングラディシュ,ネパール,スリランカ,イラン,サウジアラビア,日本,韓国,台湾の15ヵ国である。これらの国は低生産費国,中生産費国,高生産費国に大別されるが,低生産費は高生産費国である日本の1/3近くで生産している。低生産費国の主な要因は単に飼料費が安いばかりではなく,安い労働費の影響が大きい。中生産費国は主としてアメリカなどで,近代的技術ばかりでなく,飼料費が安いことに基づく。高生産費国は飼料の輸入国であり,やや高くなるばかりでなく,賃金が高くなる。高労働費を節約するため施設化が進む場合,労働費や施設費を個々に比較するのでなく,同じく労働節減機能をもつものとして施設&bull;労働費として比較されるべきである。<br>マーケティングマージンをみると,日本はその近代的設備を導入しているものの,労賃率は高く,飼料費も高い。<br>これらの結果から,各国に生産費,価格水準の比較に当たっては飼料費,雛費の直接費ばかりでなく間接費が重要となる。とくに間接費のうちでも労働費,施設費を合体した施設&bull;労働費として比較すべきである。
著者
丸 猶丸 一戸 健司 石島 芳郎 佐久間 勇次 佐々木 実
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.83-87, 1966-04-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

従来実施が困難とされていたヤマドリ, ニッポンキジに人工授精を応用し, 次のような結果を得た。1. ヤマドリでは受精率90.1%, 対受精卵孵化率85.3%, 対入卵孵化率67.5%であった。2. キジの場合は受精率77.5%, 対受精卵孵化率87.1%, 対入卵孵化率67.5%であった。3. 週1回のマツサージ法による精液の採取量は, ヤマドリ, キジの何れにおいても0.02ml内外で, 採取直後の精子の活力は90%であつた。4. 繁殖期における産卵数は, ヤマドリ19個 (11~40個), キジ27個 (18, 35個) であった。5. 孵化に要する日数は, ヤマドリは24.5日, キジでは23.2日であった。以上の結果から, ヤマドリ, ニツポンキジの人工授精による繁殖が可能であることが立証された。
著者
丸 猶丸 一戸 健司 斉藤 臨 平林 忠
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.96-101, 1968-04-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
8

1. ヤマドリの産卵数は平均19.8 (5~40) ケ, 産卵期間は55.7 (10~97) 日で可成りの個体差がみられ, その最盛期は4月中旬~5月中旬と思われた。また年令の点では, 3, 4才のものが優れていた。2. 人工授精による受精率は84.3%, ふ化率 (対受精卵) は84.0%と良好な結果が得られた。3. 精液の採取可能期間は3月上旬~6月上旬までで3月中旬~4月中旬が最も結果がよく, その採取量は平均0.025 (0.005~0.1)ml, 一般に3, 4才の種禽から多量の精液が得られた。4. 上記の3点から, ヤマドリの繁殖適令期は3, 4才と思われ, またその繁殖最盛期に♀, ♂によって約1ケ月間の幅があるので, これらの調整がヤマドリの増殖をより有効ならしめる要因であると推察した。5. 一般に♀雛の発生は♂雛よりも多く, この傾向は受精率の高い場合により明瞭に現われていた。また産卵順位と雛の性比との間にも何等かの関係があるように思われた。6. 雛の成育には, 4週令頃より♀, ♂による差異が認められ, この頃が雛の♀, ♂分離飼育の適期と推察した。以上は, 過去5年間に亘る人工授精によるヤマドリの繁殖成績を考察したものであるが, 不備の点が多いので, 今後なお追試によって解明したい。
著者
樋浦 善敬 河野 憲太郎
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.286-291, 1982-09-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
35

本研究は採卵鶏の産卵開始期における2黄卵の産卵の機序を調査した。供試鶏120羽に脂溶性色素, スダンIII或いはスダンブラックを連日24時間間隔で静脈内注射した。これら鶏から産卵開始後30日間に産卵された正常卵2,914個と2黄卵157個の各卵黄内の色素輪を観察して, 卵巣卵胞の成長と排卵の様相を検討した。2黄卵の内, 約85%は2個の卵黄内の色素輪数が同じく, 残り約15%は両卵黄内の色素輪数が異なっていた。また前者における2個の卵黄の平均重量差は0.28gであり, 後者の場合には両卵黄の重量差は平均1.08gであった。両者の平均値の差は0.1%水準で有意であった。1日に休止期から急速成長相へ転移する卵胞の数は0, 1及び2個の場合があり, それらの出現相対比率はそれぞれ23.6%, 62.9%及び13.5%であった。同日に急速成長相へ転移した2個の卵胞の内, 約27%はほぼ同時に排卵されたが, 残りは互に排卵日を異にした。本実験結果から, 産卵開始期においては急速成長相へ転移する卵胞数, 卵胞の序列制及び卵胞の排卵反応性などがまだ充分に確立されていないことが明らかとなった。従ってこのような状況下で2黄卵もまれに産卵されるものと推察された。
著者
田名部 尚子 小川 宣子
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.282-285, 1975-11-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
5

市販ウズラ卵を1974年5月より1975年4月まで毎月中旬に名古屋•岐阜地区の3店より購入してその卵質を調査した。卵黄高, 卵黄係数, 卵白高はいずれも著しい季節的変動を示し, 気温の上昇とともに低下し7月および8月に最低になった。また気温の下降に伴い高くなり10月から3月までは高い値を示した。6, 7, 8月には腐敗卵の発生がみられ, 7月には25%に達した。このことから市販ウズラ卵は産卵後かなり長い期間 (20~60日) 経過したものが店頭におかれていることが想像された。