著者
安冨 歩 深尾 葉子 脇田 晴子 長崎 暢子 中村 尚司 生田 美智子 千葉 泉 西川 英彦 中山 俊秀 葛城 政明 苅部 直 渡辺 己 星 泉 小寺 敦 上田 貴子 椎野 若菜 與那覇 潤 黒田 明伸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

人間を含む生命の生きる力を「神秘」として捉え、その発揮を阻害する要因たる「暴力」を合理的に解明する研究戦略を「合理的な神秘主義」として見出した。こうして発揮される神秘的な力こそが秩序形成の原動力であり、それは個々人の魂の脱植民地化を通じて実現される。この側面を無視した秩序論は必然的に暴力を正当化することになる。
著者
椎野 若菜
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第50回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.A01, 2016 (Released:2016-04-22)

本分科会の目的は、女性調査者の多くが自らのキャリア形成と同時に直面する結婚、妊娠、出産、介護、また未婚、離婚、死別といったライフイベントによる調査者自身の属性の変化と、それに伴う調査地との関係やポジショナリティの変化、そして調査を続けるための困難や工夫について焦点をあて、そうした経験をも民族誌的データとしていく試みの提案と、またそうした困難や情報を共有するネットワーキングの提案を行うことである。
著者
椎野 若菜
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.59, pp.71-84, 2001

ルオ村落社会では, 既婚の男が死んだあと, 残された妻は「墓の妻 (<i>chi liel</i>)」とよばれ, 亡夫の代理になる男と「テール (<i>ter</i>)」関係を結ばねばならない。寡婦は亡夫の妻であり続けながらジャテール (<i>jater</i>) とばれる代理夫を選択し, 彼と亡夫の土地で「夫婦」生活を送る。<br>従来の多くの研究における寡婦に関する慣行は, 夫の集団が彼の死後もその妻に対し保持しうる権利として解釈されてきた。寡婦と性関係を結ぶ男たちとのかけひきをも描いた, 寡婦の生活実践を究明するものは極めて少なかった。そこで本稿では, 寡婦が夫の死後, 新たな男との関係を築きそれを維持していく過程に注目した。まず慣習的規範や信念などと絡み合う, 寡婦をめぐる人間関係を抽出したうえで, そのなかにおける寡婦の生活の社会的側面と, 性生活におよぶ寡婦の個人的側面を支える, テール関係の様々な局面についての考察を試みた。<br>その結果, このテール関係は父系的土地慣行を前提としているだけでなく, 性に関する細かな慣習的規範,「娼婦」のレッテルなど, 寡婦にとって圧力になりうる諸要素の影響下に成り立っていることが判明した。一方で寡婦は, そうした社会的な圧力と人間関係の絡み合いのなかで生じる力のバランスを巧みに利用し, 不都合があれば逆に慣習的規範を関係解消の理由づけとして使い, 代理夫を頻繁に変え得ることが明らかになった。つまりルオの寡婦は, 個々のもつ社会的状況に応じて策略を練り, 男たちとかけひきしながら自由に代理夫を選択するという, 実践を続けているのである。
著者
椎野 若菜
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.59, pp.71-84, 2001-12-10 (Released:2010-04-30)
参考文献数
49

ルオ村落社会では, 既婚の男が死んだあと, 残された妻は「墓の妻 (chi liel)」とよばれ, 亡夫の代理になる男と「テール (ter)」関係を結ばねばならない。寡婦は亡夫の妻であり続けながらジャテール (jater) とばれる代理夫を選択し, 彼と亡夫の土地で「夫婦」生活を送る。従来の多くの研究における寡婦に関する慣行は, 夫の集団が彼の死後もその妻に対し保持しうる権利として解釈されてきた。寡婦と性関係を結ぶ男たちとのかけひきをも描いた, 寡婦の生活実践を究明するものは極めて少なかった。そこで本稿では, 寡婦が夫の死後, 新たな男との関係を築きそれを維持していく過程に注目した。まず慣習的規範や信念などと絡み合う, 寡婦をめぐる人間関係を抽出したうえで, そのなかにおける寡婦の生活の社会的側面と, 性生活におよぶ寡婦の個人的側面を支える, テール関係の様々な局面についての考察を試みた。その結果, このテール関係は父系的土地慣行を前提としているだけでなく, 性に関する細かな慣習的規範,「娼婦」のレッテルなど, 寡婦にとって圧力になりうる諸要素の影響下に成り立っていることが判明した。一方で寡婦は, そうした社会的な圧力と人間関係の絡み合いのなかで生じる力のバランスを巧みに利用し, 不都合があれば逆に慣習的規範を関係解消の理由づけとして使い, 代理夫を頻繁に変え得ることが明らかになった。つまりルオの寡婦は, 個々のもつ社会的状況に応じて策略を練り, 男たちとかけひきしながら自由に代理夫を選択するという, 実践を続けているのである。