著者
大橋 伸生 斯波 光生 上谷 恭一郎 高村 孝夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.639-646, 1971

1) Seventy days peritoneal dialysis was performed for seven months in a thirty year old woman who was suffering from acute renal failure following 'cold wave' neutralizer (potassium bromate) poisoning. After twenty two days of total anuria and twenty days of oliguria, urine flow resumed and creatinine clearance increased to a level of 6.5ml/min. on the one hundred and twenty-ninth day. However, she needed periodic peritoneal dialysis. Mental disorder (schizophrenia) found out since the fourtieth day and loss of hearing disturbed the treatment. Finally she died of chronic renal failure on the two hundred and seventh day at a mental hospital. 2) Thirteen cases of potassium bromate poisoning were reported in Japan and seven cases died of renal failure (mortality rate, 54%). 3) Eight cases among fourteen survivors with prolonged oliguria for more than three weeks recovered renal function sufficient to maintain usual life.
著者
小川 由英
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.12, pp.1553-1558, 1981-12-20

キシリトール大量輸液により蓚酸カルシウム結晶が組織に沈着することが報告され,キシリトールが蓚酸代謝に関係することが示唆された.蓚酸カルシウム結石群12人と対照群7人にキシリトールを投与し,蓚酸代謝を調べる目的で尿中及び血漿蓚酸を測定した.10時間空腹状態とした患者に5%キシリトール500mlを2時間で点滴したところ,尿中蓚酸排泄は直ちに増加した.キシリトール点滴開始より3時間での尿中蓚酸排泄量の増加は結石群が2.92±1.59mg(SD)で,対照群が2.25±1.48mg(SD)であった.一方尿中蓚酸濃度は点滴中は低下し,点滴終了後は上昇した.キシリトール投与前の血漿蓚酸値は結石群が2.64±0.43mg/lで,対照群が2.29±0.92mg/lであった.キシリトール負荷終了時の血漿蓚酸値は結石群が2.64±0.62mg/lで,対照群が2.81±0.56mg/lであった.キシリトール負荷試験の結果より結石群と対照群の間に蓚酸代謝上の相違は認められなかった.
著者
永松 秀樹 筧 龍二 平賀 聖悟 加藤 幹雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.996-1002, 1987-06-20

過去3年間に当科で経験した神経因性膀胱70症例につき治療経過を中心に検討を加えた.対象の年齢は13歳から87歳(平均58.4歳),男女比2.2:1で,発症後6ヵ月以上経過していた例が約半数を占めた.神経因性膀胱の分類は,脳膀胱16例,脊髄膀胱25例,末梢神経障害膀胱21例,その他および不明8例であり,原因疾患は骨盤内手術,脳血管障害,脊髄損傷の順に多かった.初診時の泌尿器科的合併症は,尿路感染27例,前立腺肥大症12例,腎機能障害および尿道カルンクルス各3例などで,その他61%に残尿を認めた.膀胱内圧曲線の分類は,弛緩型膀胱48例(69%),正常型7例,無抑制膀胱6例,痙性膀胱5例,いわゆる抑制膀胱と無緊張性膀胱各2例であった.治療法は保存療法単独63例(90%),手術療法併用7例(10%)で,保存療法では薬物療法を69例に施行し,残尿のみられた例では,自己導尿を主体とする間歌的導尿を30例に併用した.手術はTUR-P 5例,膀胱瘻造設2例で,うち1例にLapides' cutaneousvesicostomyを施行した.間歇的導尿例の平均残尿量は治療前205ml,治療後84ml,平均残尿率は治療前56.5%,治療後28.9%で共に有意(p<0.001)の改善を認めた.また,薬物療法と間歇的導尿法でカテーテルフリーとなったものは13例(43%)で,保存療法単独でも残尿の減少と尿路感染の消失に有効であったが,カテーテルフリーを目標とすれば十分な成績とはいえなかった.
著者
白井 純宏 川上 茂生 吉田 正貴 上田 昭一 中村 武利 本田 由美
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.90, no.10, pp.847-850, 1999-10-20
被引用文献数
3 1

透析患者に合併した膀胱肉腫様癌の1例を経験したので報告する.症例は65歳女性.平成8年3月,慢性糸球体腎炎による腎不全のため血液透析導入となった.平成9年6月より肉眼的血尿が出現し,膀胱鏡検査にて右側壁から後壁にかけて広範囲に隆起性病変を認め,TUR-Btによる病理組織診はsarcomaであった.臨床病期T3bN0M0,StageIIIの診断にて同年9月10日,膀胱子宮全摘術を施行した.最終的な病理組織診断は移行上皮癌(Grade3)の成分と異型紡錘形細胞の増殖をみる肉腫様の部分とで構成された肉腫様癌(sarcomatoid carcinoma)であった.透析患者に合併した膀胱原発の肉腫様癌は極めて稀であり,調べ得た限りでは本症例は本邦2例日である.
著者
郷 秀人
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1675-1680, 1993-09-20
被引用文献数
12 11

1992年1月から11月にかけ,副腎腫瘍患者8例に対し,腹腔鏡下に副腎摘除術を施行した.右側2例,左側6例で,内分泌非活性腫瘍の1例を除き残り7例はいずれも原発性アルドステロン症であった.術前画像診断による腫瘍の大きさは,10〜20mmと比較的小さいものばかりであった.手術は,5ないし6本のトロッカーを刺入し行った.全例患側副腎を摘除することができた.手術時間は2時間45分から9時間32分(平均4時間53分)であった.術中重篤な合併症はなく,出血も平均207mlと少なく,輸血を必要とした症例はなかった.術後の回復は開放性手術に比べ,かなり早く,順調であれば,第1病日に経口摂取し,遅くとも第3病日までには歩行を開始した.ある程度腹腔鏡操作に慣れていれば,本術式は安全に行える手技であり,患者への侵襲も少なく,非常に有効な方法と思われた.
著者
菅野 理 平野 順治 平野 和彦 久保田 洋子 沼沢 和夫 川村 俊三
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.523-527, 1984

悪性褐色細胞腫に2年6ヵ月間ラベタロールを投与し血圧を良好にコントロールできた1症例を報告する。患者は35歳男性で、末梢冷感、発汗発作、頭痛を主訴に1980年8月9日入院した。術前検査はNora-drenarineのみが高値で、かつ遠隔転移が確認されず、異所性良性褐色細胞腫と診断し手術を施行したが、摘出不可能であった。そこで術後よりLabetalolを投与し、血圧のコントロールを行っていたが、1年3ヵ月後に肺及び骨転移をきたし悪性褐色細胞腫と診断した。Endoxan、Aclacinon、Vincristineによる化学療法で、肺転移巣は6ヵ月間不変であったが、その後増悪し、D1Cを合併し1983年3月15日死亡した。褐色細胞腫の血圧のコントロールにLabetalolは有効であると考えられた。
著者
宮林 慶介
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.421-432, 1931-08

Um die Tatsache zu beweissen, dass die ganze subepitheliale Bindegewebeschichten der harnableitende-Organen nach der intravenosen Karmininjection moglichst fruhzeitig, wie Tepeloff und Schuchow behauptet, als allen Bindegewebsteile anderer Organen durch Kalminmasse diffuso Imbibition zeigen kann, und dass diese Karminimbibition nicht von solchen Karminmasse, welche durch den Harnwegenschleimhaut aus der Harnwegenlumen ruckresorbierte Karminmaase bedingt, wie Schuchow zeigt, sondern bloss durch vasculare Zirculation beschaffnete Karminmasse bedingt ist. Nach eingehender experimentelle Untersuchung zeigt der Schluss wie folgt. (1). Schon 5 Minuten nach der intravenosen Karmininjection in der Kaninehenohrvenen bemerkt man deutlich ausgepragte, blassrosa bis rotliche, diffuse Karminfarbung der subepithelialen Bindegewebsschichten der Ureter. Harnblaso, Urethra, Nierenbecken; babei findet man noch keine deutliche Karminfarbung in der Subepithelialen oder interstitiellen anderer Organen. Diese Rotfarbung crleicht GO' -120' nach der Injection an die hochsten Punkt und danach allmahlich sich ausgeht. (2). Granulare Karminspeicherung der ganzen reticulo-endothelialen Systeme, Hiscyociten und Epithelien treten sehr spats nach diesen diffusen Karminfarbuug auf. (3). Diese diffuse Karminfarbung der subepithelialen Bindegewebsschichten ganzen Haruabeitende-Organen bedingt nicht durch die aus der Niere sezernierten Karminmasse, sondern bloss durch vascularen Zirculation beschaffnete Farbstoffe. (4). Die Schleimhaut-Epithelzellen ganzen Harnableitende-Organen werden von der Karminmasse in der Harnwegelumen, welche nicht nur aus der Niere sezernierte, sondern in der Lumen injizierten, nicht gefarbt, solange sie Vitalen Tatigkeit ethalten.
著者
波戸 定吉 小室 秀一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.85-99, 1934-02

Bis-heute wurden als Kontrastimittel bei intravennoser Pyelographie Uroselectan B, Abrodil, und Perabrobil u. a. m. abgewadt. Bedauerlicherweise waren jedoch die Verbrauchskosten zu hoch. Neuerdings hat nun Dr. Y. Sugii, Assistent-Professor an der kaiserl. Universitatsklinik zu Tokyo ein neues Sohattenmittel hergestellt, welches unter dem Namen. "Sugiuron", in den Handel gekommen ist. Um uber die Wirkung des Mittel bei praktischer Anwendung sicher zu sein wurde es an 1O Fallen vor dem offentlichen Verkauf versucht. Die Versuchsfalle sind folgende:
著者
藤本 宜正 伊藤 喜一郎 岸川 英史 東田 章 高羽 夏樹 小林 義幸 中森 繁 佐川 史郎 園田 孝夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.795-800, 1997-09-20
被引用文献数
8 3

(背景)心筋血流イメージング剤として開発された^<99m>Tc-methoxy-isobutyl-isonitrile(^<99m>Tc-MIBI)は腫大上皮小体にも集積することが知られている.われわれは,上皮小体機能力進症の術前局在診断における^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィの有用性について検討した.(対象と方法)1994年6月から1996年9月の問に当科で上皮小体摘除術を施行した,原発性上皮小体機能充進症(PHPT)11例と二次性上皮小体機能力進症(SHPT)13例(1例は亜全摘除術後の再発例)を対象とした.^<99m>Tc-MIB1600MBqを静注し,150分後のde1ayedimageでの集積像を陽性と判定して,手術所見と比較検討した.(結果)PHPT11例のうち10例は単発性腺腫,1例は原発性過形成で,腺腫10腺中9腺と過形成3腺中2腺が^<99m>Tc-MIBIで描出された(感度84.6%).術中に確認した正常腺への集積や偽陽性像はみられなかった(predictivevaluepositive 100%).描出されなかった2腺の重量はともに200mg,描出された11腺は300〜4300mg,平均1246mgであった.一方,SHPT!3例では手術時に49腺を確認し,過形成43腺を摘除あるいは部分切除した.43腺中28腺(重量290〜2639mg,平均999m1茎)が描出され(感度65.1%),これら28腺と描出されなかった15膜(90〜540mg,平均283mg)の平均重量に有意差を認めた.術中に正常大と判断した6線への集積はみられなかったが,1例に甲状腺結節に集積した偽陽性像がみられた(predictivevaluepositive96,6%)(結論)^<99m>Tc-MIBIシンチグラフィは腫大上皮小体の描出に優れ,上皮小体機能亢進症,特にPHPTの術前局在診断に有用である。しかし,重量300mg以下の小さな腫大腺の描出には限界があると考えられる
著者
金子 茂男 八竹 直 宮田 昌伸 水永 光博 渡部 嘉彦 谷口 成美 井内 裕満 松田 久雄 栗田 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.955-960, 1991-06-20
被引用文献数
5 3

陰茎硬度周径連続測定法を本邦において臨床応用するにあたり,正常人における夜間陰茎勃起現象の解析とその安全性について検討した.本邦正常成人16名(年齢24〜44歳,平均31.1歳)を対象とし,陰茎硬度周径連続測定にはRigiScan^<TM>を用いた.測定部位は環状溝から約5mm陰茎根部寄り(遠位側)と根部(近位側)の2箇所である.陰茎の平均最小周径は遠位側で62.7mm,近位側で65.4mmであり,勃起時の平均最大周径は遠位側で102.5mm,近位側で108.6mmであった.周径が10mm以上のびたときを勃起とすると約1時間20分に1回の頻度で勃起が生じており,この勃起の平均持続時間は遠位側で23.0分,近位側で38.3分であった.10分以上持続した硬度の最大値は遠位側で82.9%,近位側で85.4%であった.1例に測定部位の一部に発赤を認めたが処置を必要とするような副作用はなかった.RigiScanによる陰茎硬度周径連続測定は簡便,安全かつ客観的に夜間陰茎勃起現象をとらえることができ,今後勃起不全の診断,治療効果の判定 に役立つものとおもわれる.
著者
安川 修
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.620-628, 1988-04-20
被引用文献数
1

1. クエン酸リアーゼを用いた酵素法による測定で正常健康人109例,及びカルシウム結石患者231例の尿中クエン酸排泄量について検討し以下のような結果が得られた. 1)健康人男子72例,および女子37例の尿中クエン酸排泄量は383.9±156.5mg/day,および452.6±171.4mg/dayであり,女子の方が5%の危険率で有意に高値を示した.また,カルシウム結石群では男子326.2±203.6mg/day,女子374.2±219.7mg/dayであり,男子は5%の危険率で低値を示し,女子は結石再発群のみが有意な低値を示した. 2)健康人の男女の排泄量の統計学的検討により,クエン酸排泄量の正常下限値を男子200mg/day,女子250mg/dayとして低クエン酸尿症を定義したところ,結石群では男女とも約30%の低クエン酸尿症が認められた. 3)過カルシウム尿症あるいは過蓚酸尿症と低クエン酸尿症の合併は,いずれも結石群の10%前後に過ぎなかった. 4)尿中クエン酸排泄量と尿量,尿中マグネシウム,尿酸,リンおよび蓚酸排泄量の間には弱い正の相関を示す傾向が認められた. 2. カルシウム結石患者に対し,クエン酸剤を1日3gを経口投与し,尿中パラメーターの追跡検討を行ったところ尿pHと尿中クエン酸排泄量の有意な上昇の持続が観察された.また6ヵ月以上の投与症例での検討では結石再発防止効果が予想される結果が得られた.