著者
黒川 公平 今井 強一 柴山 勝太郎 山中 英寿 篠崎 忠利 登丸 行雄 北浦 宏一 高橋 溥朋
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.659-666, 1986
被引用文献数
7

上部尿路外溢流の5例を報告し診断治療について論じた.5例のうち3例が原因不明であり,うち2例は数日の安静で治癒し,他1例も約2週の安静で治癒した.残り2例は尿管結石,子宮癌術後の尿管狭窄の症例であり,前者は持続した疼痛,微熱のため切石術を行ない,後者は溢流尿による麻痺性イレウスを伴なったため狭窄部の手術を行なった.1968年〜1984年までの上部尿路外溢流の報告のうち記載の不十分な症例を除き,自験例を含む104例を検討した.腎盂自然破裂,自然腎盂外尿溢流,あるいは尿管自然破裂は鑑別することが非常に困難であるため,経皮的腎手術の経験をもとに,それらの新しい臨床的診断基準を提唱し,104例を再集計し診断治療にも言及した.
著者
石井延久 渡辺 博幸 入沢 千晶 菊地 悦啓 川村 俊三 鈴木 騏一 千葉 隆一 常盤 峻士 白井 将文
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.954-962, 1986
被引用文献数
5

従来より,我々は器質的インポテンスの治療に陰茎プロステーシスの挿入手術を行っていた.しかし,我国では陰茎プロステーシスの挿入手術を希望する患者は実際には余り多くないことから,非観血的な方法が望まれていた.そこで我々は強力な血管平滑筋の弛緩作用を有するProstaglandin E_1(PGE_1)の陰茎海綿体注射が器質的インポテンスの治療に応用できるか否かを検討した.方法は22〜27Gの細い翼状針を用いて,2〜20mlの生理的食塩水に溶解したPGE_1 20μgを注入し,その前後の変化を陰茎温度とErectiometerで観察した.動注は血管カテーテルを用いて生理的食塩水20mlに溶解したPGE_1 20μgを注入した.結果はPGE_1を陰茎海綿体に注射した71例のうち,51例(72%)に完全勃起がみられた.のこる9例(13%)は不完全な勃起,6例(8%)は陰茎の増大のみ,5例(7%)は全く変化がみられなかった.完全勃起はPGE_1注射後2〜3分で陰茎の増大がおこり,約2〜3時間持続した.PGE_1により殆ど勃起のおこらない症例は高齢者や陰茎海綿体の萎縮,血管障害の疑われた症例に多くみられた.しかし,骨盤内手術など末梢神経障害や脳・脊髄など中枢神経に器質的障害のある症例でも,PGE_1の陰茎海綿体注射により,性交可能な勃起がみられたことから,今後はPGE_1の器質的インポテンスヘの治療に応用できることがわかった.一方,PGE_1の陰茎海綿体注射により完全勃起のおこらない骨盤骨折1例と糖尿症の2例の内陰部動脈造影を行ったところ,骨盤骨折症例では内陰部動脈の損傷があり,陰茎動脈は造影されなかった.この症例は血管性のインポテンスの合併があり,PGE_1の内陰部動脈へ注入によっても陰茎の温度は余り上昇せず,勃起も回復しなかった.しかし,糖尿病の2例はいずれも陰茎動脈まで造影され,PGE_1の動注により陰茎の温度の上昇がみられ,一過性ではあるが勃起の回復がみられた.このことから,PGE_1の動注が静注など投与方法を工夫することにより,将来血管性インポテンスの治療に応用できるようになるのではないかと期待される.
著者
森口 英男
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1485-1492, 1986-09-20

蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムから構成される上部尿路結石80個に対して,2種類の赤外分光光度計(620MX,IRA-2)を用いてwhewellite,weddellite,apatiteの定量を試みた.1)Bellanatoらが報告した吸光度比D780cm^<-1>/D520cm^<-1> (IRA-2)と,TGによって求めた蓚酸カルシウム1水化物含有比whewellite/weddellite+whewelliteには,r=-0.54の相関を認めた.2)高崎が報告した吸光度比D1,100-1,000cm^<-1>/D1,320cm^<-1>(以下Dp/Do)は,TGによって求めたapatite含有率とr=0.96(620MX),r=0.95(IRA-2)の相関を示した.3)吸光度D920cm^<-1>は,TGにより求めたweddellite含有率とr=0.87(620MX),r=0.81(IRA-2)の相関を示した.4)吸光度D780cm^<-1>は,TGにより求めたwhewellite含有率とr=0.89(620MX),r=0.88(IRA-2)の相関を示し,吸光度D520cm^<-1>(IRA-2)は,whewellite含有率とr=0.92の相関を示した.5)各吸収帯の深さ(Fig.1,Fig.2のio,ip)は,TGで求めたwhewellite,apatite含有率とよく相関した.6)3,600-3,000cm^<-1>,920cm^<-1>,780cm^<-1>,670cm^<-1>の各吸収帯について,吸収帯の形状と深さから,3段階に分類した.whewelliteに特徴的な形状を0点,weddelliteに特徴的な形状を2点とし,それらの中間を1点とした.その合計点と,TGにより求めた蓚酸カルシウム2水化物含有比weddellite/weddellite+whewelliteとは,r=0.93(620MX),r=0.95(IRA-2)の相関を示した.以上から,蓚酸カルシウムと燐酸カルシウムから構成される結石では,赤外分光光度計の機種にかかわらず,赤外分光分析によるweddellite(D920cm^<-1>),whewellite(D780cm^<-1>,D520cm^<-1>),apatite(Dp)の定量が可能であることがわかった.また,吸光度の代わりに,吸収帯の深さを用いることも可能であると思われる.さらに,3,600-3,000cm^<-1>,920cm^<-1>,780cm^<-1>,670cm^<-1>の各吸収帯を,点数化(weddellite score)すれば,蓚酸カルシウム2水化物含有比が求められること,高崎が報告したDp/Doとapatite含有率には,直線的な相関関係があることから,結石試料を秤量しなくても,whewellite,weddellite,apatiteの半定量が可能であると考えられる.
著者
南方 茂樹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.1896-1903, 1990-12-20

24時間尿中のイオン化Caの実測を試み,その測定方法の検討,正常健康人およびCa結石患者群での比較,Ca結石患者のうち過Ca尿症および正Ca尿症患者における比較検討,並びに再発防止治療の前後での尿中イオン化Caなどについて検討を行い,以下の結果を得た.イオン化Ca濃度の測定は,検体尿のイオン強度の近似値を測定後,各検体毎のCaイオン標準液を作製し,Ca選択電極を用いて行ったが,その再現性および正当性はほぼ満足のいくものであった.尿中イオン化Ca濃度は総Ca濃度と強い相関がみられ,Caイオン化率はクエン酸および燐酸とは弱いながらも負の相関がみられた.イオン化Ca排泄量はCa結石患者群では健康対照群に比較して著明な高値を示し,更に,過Ca尿症の結石患者群はイオン化Ca排泄濃度ならびに排泄量共に,正Ca尿症群より有意の高値を示した.クエン酸療法では,そのイオン化率は投与後有意の低下が認められ,米糠療法では,尿中イオン化Ca排泄量は投与後に有意な低下がみられ,Caイオン化率にも低下傾向が観察された.以上より,尿中イオン化Caの測定は,他の結石関連物質の測定と同様に,再発注Ca結石症患者の促進因子の重篤度の検討,あるいは,Ca結石症患者の再発防止療法の効果を検討するための重要な指標になり得るものと考えられた.
著者
平井 正孝 中野 優 牛山 知己 増田 宏昭 太田 信隆 田島 惇 河邊 香月 阿曽 佳郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1761-1764, 1988-11-20

7例の再燃前立腺癌症例に対し,13.56MHzのRadio Frequency波(RF波)による温熱療法と,VP-16,peplomycinによる化学療法を行った.その結果,4例で前立腺腫瘍内温度が42℃以上に到達したことを確認できた.腫瘍の縮小は,7例中6例で認められた.副作用は,火傷が1例,食欲不振が1例,下痢が3例に出現した.以上より,本療法は,ホルモン低抗性となった前立腺癌に対して有効であると考えられた.
著者
野村 一雄 藤岡 知昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.822-830, 1993-05-20

進行胃癌に対するLAK細胞の臨床応用のための基礎的研究として,健康成人および胃癌患者の末梢血リソパ球よりIL-2添加完全培地(非動化10%ヒトAB型血清添加RPMI)および無血清培地 (AIM-V)によりLAK細胞を誘導し,その性状について検討した.完全培地を使用した場合,健康成人より分離した末梢血リンパ球は,4日目には培養前の60%に回復し,そのNK活性およびLAK活性は4日目以降に著明に増強した.また,培養4日目で無血清培地を使用した場合も完全培地の場合と同様のリンパ球の増殖,細胞傷害性が認められ,その増殖細胞は,いずれの培地を使用した場合も,CD25,HLA-DR,CD3およびCD16細胞が高率で,ともに活性化T細胞,NK細胞の集団と考えられた.また,LAK細胞は単独でIFN-γおよびIL-βを産生し,その産生能は経時的であり,腫瘍細胞の刺激で増強した.TNF-αはLAK細胞をCaki-1またはK-562で刺激した場合に比較的早期に産生された.よってLAK細胞の直接的細胞傷害性に加え産生されたサイトカインを介する抗腫瘍効果も示唆された.さらに,胃癌患者の末梢血リソパ球においても,無血清培地を使用した培養4日目の細胞回復率は,健康成人の場合と同様で,その培養リンパ球は自己腫瘍および培養胃癌細胞を含む広い抗癌スペクトルを有していた.以上の結果は,IL-2添加無血清培地により誘導されたLAK細胞が臨床上有効であることを支持するものと考える.
著者
本間 之夫 塚本 泰司 安田 耕作 大園 誠一郎 吉田 正貴 進士 恵美
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.669-680, 2002-09-20
被引用文献数
10 27

(目的)International Prostate Symptom Score (IPSS) と BPH Impact Index(BII)の日本語訳の言語的妥当性を検討する.(方法)IPSSとBIIの日本語訳の作成を多段階の手法で行った.順翻訳の作成は,5名の泌尿器科医師と2名の翻訳者と1名の看護師が,各自で行った翻訳と日本の排尿障害臨床ガイドラインにある翻訳を討議して行った.これを2名の米語を母国語とする翻訳者によって逆翻訳し,原著者と討議した.あわせて20名の前立腺肥大症患者を対象に詳しい個人面接を行った.(結果)原作者からはおおむね同意が得られたが,大きな問題点が2つよせられた.それは,IPSSの質問文すべてにあるhow oftenが日本語訳にはない点,および,QOL indexの回答肢の日本語訳をより感情的な表現とすべきとする点であった.前者については,質問票の始めに回答は頻度で考える旨の説明文を置くことで合意が得られた.後者については,88名の患者で追加調査を行い,いくつかの選択肢についてはその訳をより感情的なものにして合意に達した.(結論)IPSSとBIIの日本語訳について言語的な妥当性を検討し,妥当と思われる日本語訳を作成した.