著者
黒松 功 今村 哲也 杉村 芳樹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.815-822, 2006-11-20
被引用文献数
7 2

(目的)80W KTP (potassium-titanyl-phosphate)レーザー(GreenLight PV^[○!R] surgical Laser System, American Medical Systems, Minnetonka, Minnesota)を用いた前立腺肥大症に対する光選択式前立腺蒸散術(PVP)は術中出血が少なく,手術翌日の尿道カテーテルの抜去が可能である.今回,当院において,本邦で初めてPVPを導入し,良好な治療成績を得られたので報告する.(対象と方法)2005年4月から同年10月までに前立腺肥大症による下部尿路症状を有し当院にてPVPを施行した患者66名のうち術後6カ月までの経過観察が可能であった57名を対象とした.原則として術前検査を外来にて施行の上,入院当日にPVPを施行した.麻酔は全身麻酔が7名で残りは腰椎麻酔のみで施行した.還流液には生理食塩水を使用し,術後は18Fr.尿道カテーテルを留置し,牽引・持続洗浄は施行せずに翌日これを抜去することとした.術前,術後2週,1カ月,3カ月,6カ月の時点における国際前立腺症状スコア(IPSS),QOLスコア,最大尿流量率(Qmax),残尿量(RUV)を評価した.また術前および術後3カ月での前立腺体積,PSA値も測定した.(結果)すべての症例で術中合併症を認めることなく手術を施行可能であった,抗血小板薬内服下に手術を施行した1名が術後2日目に尿道カテーテルを抜去した以外は,全例で術翌日の抜去が可能であった.術前,術後2週,1カ月,3カ月,6カ月の時点におけるIPSSは20.2±8.9から11.4±7.8, 9.3±6.0, 6.6±5.0, 6.1±5.0と有意に低下した,また最大尿流量率(ml/s)は7,2±2,9からそれぞれ13.6±7.6, 12.2±6.1, 15.3±7.4, 15.3±7.5と有意に増加した.輸血,術後のカテーテル牽引,持続洗浄を要した症例はなく,術後合併症では一過性の尿閉が2例,排尿時痛を4例に認めた.(結論)80W KTPレーザーを用いた前立腺肥大症に対する光選択式前立腺蒸散術(PVP)の安全性と有効性を示した.
著者
金子 裕憲 中内 浩二 間島 寧興 川上 睦美 熊川 寿郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.819-822, 1994-05-20
被引用文献数
1

内分泌療法に抵抗性となったStage D_2前立腺癌例に対し、diethylstilbestrol diphosphate (DESP)の大量投与療法を行うにあたり、^<31>P magnetic resonance spectroscopy(^<31>P MRS)による治療効果の早期判定の可能性を検討した。症例は83歳男性で1984年3月初診。除睾術を施行後、chlormadinon acetate及びcyclophosphamideを中心とした内服治療で経過観察をしていた。1991年12月頃より腫瘍マーカーの再上昇があり、1992年4月貧血と右胸壁腫瘤が認められ、5月6日当科に入院した。胸壁の腫瘤は生検の結果、前立腺癌の肋骨転移と診断され、6月11日よりDESP500mg/日の点滴静注を開始した。初回投与4時間後の^<31>PMRSで、高周波領域成分の広範囲な増加とともに、phosphodiesters(PDE)、phosphomonoesters (PME)のピークの増高が認められ、すでに治療に反応して腫瘍の細胞に変化が生じていることが示唆された。同様の所見はその後も継続して観察され、細胞の破壊が進んでいるものと思われた。臨床的には10日目頃より腫瘤の縮小が認められ、腫瘍マーカーも低下して治療の効果が確認された。以上の結果から、^<31>PMRSは臨床所見や画像診断に先んじて治療の有効性を早期に判定できる可能性が考えられた。
著者
井坂 茂夫 岡野 達弥 島崎 淳 村上 信之 原 徹 片海 七郎 吉田 豊彦 長山 忠男 和田 隆弘 北村 温 香村 衡一 石川 堯夫 外間 孝夫 座間 秀一 佐藤 信夫 小寺 重行 川地 義雄 並木 徳重郎 梶本 伸一 伊藤 晴夫 皆川 秀夫 高岸 秀俊 村山 直人 真鍋 溥
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1662-1667, 1992-10-20
被引用文献数
4

日本において近年腎細胞癌患者数が増加してきていることが言われているが,人口動態の変化をもとにした発症率に関して最近の実情を報告したものはほとんどない.人口約500万人,手術設備のある25の泌尿器科を有する千葉県において,過去10年間の腎細胞癌患者の実態を調査した.郵送アンケート方式にて組織学的に確認された症例について検討した.調査項目は,性別,年齢,住所,職業,症状,発見のきっかけとなった検査法,手術日,腫瘍径,臨床病期などであった.22の施設から回答が得られ,1980年から1989年までの間に千葉県在住で560例が報告された.年間10万人当たりの発症率は10年間で0.32から2.07へと増加した.小さくて無症状かつlow stageの癌が急激に増加しつつあることが判明したが,転移病期のものの減少は認められなかった.腎細胞癌増加の主体は診断方法の発達による早期診断症例の増加であると考えられたが,なんらかの発癌因子が関与している可能性も否定できなかった.
著者
高橋 薫 福崎 篇 目時 利林也 折笠 精一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.806-812, 1986

経皮的腎結石摘出術後の腎瘻を有しIVP上正常尿管と考えられる10症例10尿管について,特別な水分負荷をすることなく,仰臥位,無麻酔下で腎瘻よりPressure-Flow Study(PFS)を行なった.腎瘻からの溶液注入量を低注入率(0.5ml/min)から高注入率(10ml/min)まで変化させ,各注入量時の腎盂内圧の変化を比較検討した.また注入液に色素を加えたものを0.5ml/minの定速で注入し,色素が膀胱に達するまでの時間(transit time, T)を測定した.さらに腎瘻から造影剤を注入して各注入率時の尿管の輸送形態をレ線学的に比較し,PFSの結果と比較した.生理的自尿排出時(注入率,F=0ml/min)の腎盂内圧は12〜22.5cmH_2O,平均16.2±3.0cmH_2Oであった.(2)3ml/min以下の低注入率では,腎盂内圧の上昇をみるが,4ml/min以上の高注入率では不変ないし下降した.(3)Transit time(T)は,350〜850sec,平均610±158secであった.腎盂の形態が正常の3例の平均は417secであり,transit time(T)は水腎症の程度に影響された.(4)尿管輸送形態のレ線学的観察により3ml/min以下の低注入率時には主に蠕動運動により,また4ml/min以上の高注入率時には主に尿管が管状となって尿を輸送することが判明した.(5)PFSの結果に基づき計算した尿管抵抗は,注入率が3ml/min以下と4ml/min以上でそれぞれの回帰直線は明らかに異なっていた.このことは(2)及び(4)の結果とよく一致していた.
著者
金田 隆志 星 宣次 毛 厚平 高橋 とし子 鈴木 謙一 佐藤 信 折笠 精一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.33-42, 1998-01-20
被引用文献数
2 1

(目的)健常者の抹消血液中にはケラチン19は存在せず、もし血液中から検出されれば上皮性癌細胞が存在しているものと考えられる。そこでnested RT-PCR法を用いて、種々の尿路性器悪性腫瘍患者の抹消血液からケラチン19 mRNAの発現の有無を検討し、転移との関連を検討した。(方法)ヒト尿路性器癌培養細胞12種類、泌尿生殖器担癌患者39例、健常者9例を対象とし、患者および健常者の抹消静脈から血液6mlを採血し、Ficillを用いてnested RT-PCRを行い、サザンブロッティングで確認した。(結果)用いた培養細胞は全て陽性で、検出率は健常者リンパ球1×10個に対して腎癌細胞TOS-1は1個の混入でもケラチン19 mRNAが検出され、膀胱癌細胞KK47では1×10^6個の混入ではじめてケラチン19 mRNAが検出された。健常者9例の抹消血は前例陰性であった。尿路性器悪性腫瘍患者の抹消血では転移のみられない症例よりも、転移を有する症例のほうがnested RT-PCRの陽性率が高く、またリンパ節のみの転移よりも他の遠隔転移を有する症例のほうが陽性率が高かった。また、短期間の観察であるが、転移の有する場合でもnested RT-PCR陽性のほうが予後不良であった。疾患例では、精巣腫瘍は検出されにくく陰茎癌は検出されやすい印象であった。(結論)RT-PCR法を用いたケラチン19 mRNAの抹消血よりの検出法は尿路性器腫瘍にも利用できる。
著者
菅藤 哲 平松 正義 竹内 晃 大山 力 佐藤 信 斎藤 誠一 福崎 篤 遠藤 希之 荒井 陽一
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.35-41, 2004-01-20
被引用文献数
1

(目的)精巣腫瘍55症例に対し高位精巣摘出術と同時に対側精巣生検を行った.その結果精巣CISと診断された症例はなかったが,そのうち2症例において後に対側精巣に精巣腫瘍を発生した.そこで我々は生検の感度に問題がなかったかどうか,そして我々の結果がスキャケベクの理論に整合性を認めるかどうかを検証した.(症例と方法)後に精巣腫瘍を発生した2症例の生検標本のパラフィンブロックを再度切り出しし,ヘマトキシリン・エオジン染色とPLAP抗体(クローン番号:8A9)を用いて免疫染色を行い,再度評価しなおした.他の53症例の標本も再度評価しなおし,その結果精巣CISが認められた症例の対側精巣の転帰を追跡調査した.(結果)後に精巣腫瘍を発生した2症例の標本うち1症例の標本において精巣CISが認められた.又,残りの53症例の内1標本において精巣CISが認められた.この症例は本人の失踪により対側精巣の転帰は確認できなかった.CISは3.6% (55症例中2症例)に確認され,2症例において偽陰性となったことが確認された.(結論)精巣CISに対する精巣生検の感度を上げるには泌尿器科医及び病理医が精巣CISについて知識を深め,スキャケベクのガイダンスに従った方法で行われるごとが重要と考えられる.
著者
高塚 慶次 宮本 慎一 田宮 高宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1373-1384, 1981-11-20

夜尿症の病因を解明するには,小児の膀胱機能の年齢発育に関する知見が不可欠である.機能的膀胱容量と平均尿流量率とは容易に測定でき,かつ,正常小児の膀胱機能を評価する上で,有用な指標である.前者は強い尿意のあったときの排尿量,後者はそれを排尿時間で除した値として求まる.この方法により,4歳〜14歳迄の正常小児102名に対して,水負荷後の排尿量と平均尿流量率を測定し,分散分析法によりデータを解析した.結果は以下の如きであった.1)機能的膀胱容量は4歳から14歳迄,年齢と共に増加する.2)男子では同年齢の女子に比較し,僅かながら膀胱容量は大である.3)平均尿流量率は,略々排尿量の平方根に比例する.4)平均尿流量率は年齢に伴って増加する.このことは,かなりの程度に,年齢増加に伴う排尿量の増加によるものであるが,共分散分析により,年齢そのものに伴う増加のあることを,確認した.5)女子の平均尿流量率は,同年齢男子に比べ大である.
著者
古田 昭 成岡 健人 長谷川 倫男 鈴木 康之 池本 庸 大石 幸彦
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.570-573, 2003-07-20

前立腺粘液癌は非常に稀な腺癌であり,その病態はあまり知られていない.われわれは免疫染色にてprostate specific antigen(以下PSA)陽性,carcinoembryonic antigen(以下CEA)陰性で,印環細胞を認めず,通常の腺癌を合併した症例を経験した.免疫染色にてPSAとCEAの両方が検索されていた自験例を含む32例の報告について検討した結果,PSA染色陽性23例中17例,CEA染色陽性10例中3例に通常の腺癌の合併が認められた.また,印環細胞は6例に認められ,そのすべてがCEA染色陽性であった.このことは,前立腺粘液癌のなかにはPSA染色陽性で通常の腺癌の一亜型と考えられるものと,PSA染色陰性かつCEA染色陽性で前立腺部尿道の腸上皮化生に由来するものの2つのタイプが存在する可能性が示唆された.
著者
仙賀 裕 里見 佳昭 福田 百邦 絵鳩 哲哉 中橋 満 穂坂 正彦 田中 祐吉 三杉 和章
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1818-1823, 1988-11-20
被引用文献数
1

Neuron Specific Enolase(NSE)は神経細胞,神経内分泌細胞のマーカーとして用いられるが,最近正常尿細管細胞また腎癌細胞にも存在することが明らかにされたため,抗NSE抗体を用いた免疫組織化学的技法により腎癌におけるNSEの発現度を検索し,腎癌の組織像とNSEの発現の関係について検討した.全割面標本を作製した23例を対象とした.23例中17例70%に陽性反応を認め,腎癌ではかなりの頻度でNSEが出現することが明らかとなった.low grade群(G1,G2)は15例中9例,high grade群(G3,G4)8例中8例NSEの出現を認めた.high grade群はNSEの発現度が高いため,解糖系の代謝が亢進しているとも考えられた.NSEの発現と予後どの関連については,low grade群で陰性例は陽性例にくらべ若干良好であった.high grade群では全例陽性のため判断はできなかった.抗NSE抗体を用いた免疫組織化学的検索により,腎癌の組織像と臨床経過の関係の一端が明らかにできるものと考えられた.
著者
温井 雅紀
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.950-956, 1997-11-20
被引用文献数
3

(背景)前立腺重量と血液データとの関係に関する疫学的検討は,今までに行われておらず,この研究はそれらの関係を調べるために行われた。(対象と方法)北海道Y町において1988年から1990年に行った前立腺集団検診受診者のうち,50歳以上の前立腺癌を除いた432名を対象とした。血液検査(β-カロチン,総タンパク,総コレステロール,GOT,GPTなど)と前立腺重量測定を行い,前立腺重量と血液データとの関係を検討した。前立腺は経直腸的超音波断層像(TRUS)にて検査し,正常前立腺と前立腺肥大症(BPH)に分類した。前立腺重量は渡辺の方法に従い,TRUSより計測した。また,前立腺重量と喫煙・飲酒・身長・体重・年齢との関係も検討した。(結果)SASのlogistic procedureとgeneral linear models procedureによる分析では,正常前立腺重量とβ-カロチン・身長・体重が有意な正の相関を示し,喫煙と正常前立腺重量は有意な負の相関を示した。前立腺肥大症症例と正常例を比較すると,血清β-カロチンは肥大症の有意なpositive riskであり,HDL-コレステロール,飲酒および喫煙はnegative riskであった。(結論)血清β-カロチンと喫煙は前立腺肥大の形成に影響を与えていると考えられた。
著者
相澤 卓 金 泰正 吉川 慎一 間宮 良美 秋山 昭人 大野 芳正 大久保 雄平 三木 誠 橘 政昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.463-468, 2002-03-20
被引用文献数
6 4

(目的)近年,医療費抑制などの目的で種々の疾患においてクリニカルパスの導入が試みられている.当院でクリニカルパスを用いて治療したTURP(経尿適的前立腺切除術)症例について検討した.(対象・方法)平成11年6月より12年3月までの間にTURP目的で入院した69症例のうち32例にクリニカルパスを使用し,治療を計画した.これらの患者の入院期間,医療費給付点数等を各症例について計算し,同時期に入院し,クリニカルパスを使用しなかった37症例と比較した.(結果)クリニカルパス導入症例では平均入院期間±標準偏差は12.7±2.8日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は48,424.2±4,437.5点であった.クリニカルパスを使用しなかった症例では平均入院期間±標準偏差は14.7±5.2日であり,平均医療費給付点数±標準偏差は55,365.5±16,805.1点であり,入院期間はやや長く,医療費給付点数もやや高い傾向にあった.(考察)クリニカルパスを使用することで効率的な診療ができ,医療費抑制にもつながることが示唆された.また,それぞれの患者の個別性にも注意を払い,クリニカルパスを作成していかなけばならないと考えられた.
著者
福井 準之助 山口 建二 仲間 三雄 富田 康敬 原田 勝弘 小俣 和一郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.1561-1566, 1985-10-20

71歳,16歳,23歳女性に生じた3例の心因性尿閉を報告する.全症例共,神経学的検査で異常なく,器質的下部尿路閉塞も認められなかった.2症例で尿閉は"emotional stress"の後に生じた.症例1では両側VURと軽度の肉柱形成膀胱を認めたが,症例2と症例3では通常の泌尿器科検査では異常がなかった.全症例で膀胱容量は500ml以上で尿流動態検査にて排尿中の外括約筋のaction potentialの増大を認めた.精神科的考察では,症例1はdepressionの1つの型であり,抗うつ剤の投与で尿路症状の改善をみた.症例2はヒステリーであり,精神安定剤と自律神経訓練法により尿路症状の改善をみた.症例3は神経分裂病によるもので,種々の治療に対し抵抗性であった.結婚と共に症状の消失をみたが,その後離婚し,再び残尿の増大を認められた.心因性尿閉の治療は,泌尿器科医と精神科医との協力の下でなされるべきである.
著者
田代 和也 岩室 紳也 中條 洋 波多野 孝史 古田 昭 野田 賢治郎 川島 淳
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.434-438, 1997-03-20
被引用文献数
3

(目的と背景)ESWL後に残石なしとなった症例の上部尿路結石の再発率を知るため検討を行った。(対象と方法)対象は1989年7月から1994年12月までにESWLを施行し,残石なしとなった単一部位結石で6ヵ月以上経過観察しえた395例であった。再発確認は原則KUB,時に超音波断層で行った。検討項目は全体の再発率および性別,患側,結石の数,部位,大きさ,結石既往症の有無,基礎疾患の有無,水腎症の有無に関して検討した。また,同時に対側再発率についても検討した。再発期間は残石なしとなった日から起算し再発が確認された日までの実測非再発率で算定した。(結果)全体の同側非再発率は1年96.5%,3年78.8%,5年65.3%であった。対側の非再発率は1年98.1%,3年92.5%,5年87.2%であった。因子別5年非再発率は結石の数で単発71.1%,多発31.6%(p<0.01),既往例別てばなしが77.1%,ありが35.7%(p<0.01),基礎疾患別でなしが67.7%,ありが35.7%(p<0.01)で統計学的有意差を認めた。しかし,性別,患側,部位,大きさ,水腎症の有無は同側再発に影響を認めなかった。(結論)上部尿路結石のESWL後の同側再発では結石の数,既往例,基礎疾患のあるものが危険因子と考えられた。また,ESWLは従来の開放性手術に比べ再発率を増加させる可能性が危惧された。