- 著者
-
恵紙 英昭
- 出版者
- 日本臨床麻酔学会
- 雑誌
- 日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.5, pp.722-730, 2014 (Released:2014-10-25)
- 参考文献数
- 12
ヒトと漢方薬は自然の生き物という共通点がある.漢方においては患者の診断・治療とは全人的治療であるという考えが根底にあり,薬と身体との対話(反応)を大切にしている.これは精神科治療(サイコオンコロジー領域)にも共通しており,細かく患者の訴えを聴取し,生活環境,食生活,嗜好,生活リズム,家庭生活,人間関係などの情報を得て治療を行っている.患者とのコミュニケーションでは,傾聴,つらさを共感する姿勢,安心感と情緒的サポートが大切であり,繊細さを求められる.それを多職種という緩和ケアチームで実践することが大切である.構成生薬の薬能・薬性を考えながら処方するが,治療者は患者の「食べられなくなったら死ぬのではないか」という恐怖と不安を十分に理解し,消化器症状を軽減しながら治療することを忘れずに薬物を投与することを意識した方がよいと考える.本稿では,症例を呈示して漢方薬の有用性を示したい.