著者
星 拓男 須賀 明彦 熊谷 恵 宮部 雅幸 佐藤 重仁
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR CLINICAL ANESTHESIA
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.609-612, 1996-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
8

患者は24歳女性.誤って漂白剤を浴び,アルカリ腐食性角膜潰瘍のため入院した.入院後,角膜穿孔と角膜移植を繰り返し,合計7回の角膜移植を受けた.この間痛みは,角膜の状態悪化とともに増悪し,ブプレノルフィンの筋注を最高1日6回まで必要とした.しかし薬物血中濃度から内服が守られていないことがわかり,痛みを訴える一方で,安静を守らないなど不審な点も多く,心理的要因を疑い精神科を受診したところ虚偽性障害が疑われた.薬物療法,面接,行動療法を行なったところ,それまでの痛みはブプレノルフィンを筋注して欲しいための嘘であったことがわかった.慢性痛を訴える患者では,チーム医療および精神科的アプローチの重要性を痛感した.

1 0 0 0 OA 観察研究

著者
田中 優 川口 昌彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.676-680, 2016-11-15 (Released:2016-12-09)
参考文献数
11

観察研究には,コホート研究,横断研究,ケースコントロール研究,ケースシリーズ研究,記述研究がある.各々の研究デザインの良いところとそうでないところが存在する.観察研究はバイアスがあり,知っておかないと,論文の内容について誤解を生じる可能性がある.結果に影響を与えるものに偶然誤差,系統誤差,結果-原因,交絡があり各々調整方法がある.こういったことを踏まえて論文を読んでいけば大きな誤解は防げると思われる.
著者
原 哲也 穐山 大治 戸坂 真也 趙 成三 澄川 耕二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.531-534, 2004 (Released:2005-05-27)
参考文献数
9

術野の消毒に用いた10%ポビドンヨードによる接触性皮膚炎に対する損害賠償調停申立事件を経験した. 全身麻酔下の手術のために術野を10%ポビドンヨードで消毒し, 拭き取りは行わずに手術を開始した. 終刀後, 右鼠径部に線状小発赤を発見した. 発赤部に対し治療を行うも, 瘢痕を形成し固定した. 退院後, 国と主治医を相手に右鼠径部の病変に対する損害賠償が請求され, 調停の結果, 賠償金の支払いにより和解した. 液状のポビドンヨードとの長時間接触により接触性皮膚炎をきたす可能性がある. 比較的まれな合併症であっても医事紛争に至る例もあり, 日常的な医療行為にも細心の注意が必要である.
著者
飯田 豊 鬼束 惇義 片桐 義文
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-39, 2010-01-15 (Released:2010-02-19)
参考文献数
10

当科では, 消化器外科手術後疼痛管理をブプレノルフィン持続皮下注入 (Bu皮下注) で施行している. 従来施行してきたモルヒネ持続硬膜外注入 (Mo硬膜外注) と比較検討したところ, 鎮痛効果, 補助鎮痛薬使用回数, ガス排泄までの日数には差を認めなかった. 膀胱内留置バルーン抜去までの日数はBu皮下注の方が短かった. 帰室時PaCO2はMo硬膜外注の方が高値であった. Bu皮下注でみられた副作用は投与中止により速やかに軽快した. Bu持続皮下注入は手技的にも簡便で安全であり, 呼吸抑制も少ないため有用な術後疼痛管理法である.
著者
山田 卓生
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.303-308, 2006 (Released:2006-05-26)
参考文献数
9
被引用文献数
4 2

宗教上の理由で輸血を拒否する患者に対し, いかに対処するべきかは, この30年の間医療関係者を悩ませてきた. とりわけ外科手術における輸血の必要性は言うまでもないが, 他方でインフォームドコンセントの考え方によれば, 明白な意思に反する輸血をするわけにはいかない. 当初は輸血拒否に当惑したが, 徐々に患者の意思を尊重するようになってきた. 意思を無視して輸血をすれば, たとえ快方に向かっても損害賠償の義務があるとする最高裁判決も出た. 子供についてどうするか, とくに, 親が自己の信仰に基づき子供への輸血を拒否することを認めるべきかが争われている.
著者
梅垣 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.507-517, 2005 (Released:2005-09-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

2002年現在, わが国では推定約312万件以上の麻酔が行われ, そのうち約188万件以上が全身麻酔により行われている. しかしそれに対応する, 手術室で麻酔業務に携わる麻酔科医数は, 2002年時点でわずか6,087人に過ぎない. 従来の主たる業務を手術室の麻酔とし, これを保険医療制度下で行う麻酔科開業は事実上困難であった. 近年, 厚生労働省は麻酔科開業医の出張麻酔を保険医療における対診と認め始めた. しかし, 自治体によってはいまだ出張麻酔を主たる業務とする麻酔科診療所開設に門戸が閉ざされており, 出張麻酔開業医はまだまだ少数にすぎない. 現在, 麻酔科医の就業には多様な形態がみられる. そのなかで保険医療機関としての麻酔科開業は, 唯一麻酔科医が病院との間で雇用関係ではなく, 対等の立場で業務を行えるものである. 出張麻酔を主とした麻酔科開業は, 現在の麻酔科のマンパワー不足をただちに解消に結びつけるものとは思われない. しかし長期的展望からみると, 麻酔科医の将来設計の一選択肢となり, 麻酔科を志す医師を増やし, かつ手術室の麻酔業務からの離脱を食い止める一つの方策であると考える.
著者
星野 晋
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.296-302, 2006 (Released:2006-05-26)
参考文献数
2

本論では, エホバの証人の輸血拒否を新しい医療技術をめぐる文化摩擦と位置づけ, 文化人類学の視点から検討した. エホバの証人の輸血拒否の基礎となる世界観や宗教集団としての特徴には, 異常性は見出せない. 彼らは, 輸血や血液製剤の副作用が社会問題化したのを背景に, 患者の自己決定権という新しい思想に沿ってこの問題の解決を図ろうとしてきた. また, 血液成分の一部の利用を個々の信者の判断にゆだねるという歩み寄りもみせている. 異文化としての彼らの価値観を許容する以上, 親としての判断能力を否定することはできず, 子供のみを彼らの社会から引き離して輸血を行うことは難しいと考えられる.
著者
眞鍋 治彦 久米 克介 加藤 治子 前原 大 平田 顕士
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.2-11, 2008 (Released:2008-02-16)
参考文献数
27
被引用文献数
1

帯状疱疹罹患例のなかで, 高齢者, 重症皮疹, 急性期高度疼痛, 皮疹出現に先行して疼痛を認める例は, 長期間疱疹痛が持続し帯状疱疹後神経痛に移行しやすい. このような患者では, アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬を適切に用いるとともに, 発症早期より, 繰り返し神経ブロックを行うか, あるいは硬膜外腔に局所麻酔薬を連続的に注入するなど十分な鎮痛処置を行い, 疱疹痛が軽減・除去された状態を保つ必要がある. また, 神経ブロック適応外例では, リドカインの点滴静注を繰り返す. これらの方法は, 帯状疱疹による疼痛刺激の持続がもたらす末梢や中枢の感作・機能異常の発生を防ぎ, 帯状疱疹後神経痛への移行阻止に役立つと考えられる.
著者
駒澤 伸泰 上農 喜朗
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.252-258, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
5
被引用文献数
2

米国麻酔科学会は,2002年に「非麻酔科医のための鎮静・鎮痛薬投与に関する診療ガイドライン(ASA-SED)」を改訂した.ASA-SEDは鎮静を,反応性や呼吸・循環状態によって,軽い鎮静から,中等度鎮静,深い鎮静,全身麻酔までの連続した4段階に定義した.ガイドラインは下記の6点,すなわち,(1)術前患者評価:術前合併症,気道評価,絶飲食時間の設定,(2)患者モニタリング:酸素化のモニタリング,呼名に対する反応評価,心電図,カプノグラム,(3)鎮静担当者の確保とその訓練:鎮静担当者の集中と一次救命処置,二次救命処置等の緊急時対応,(4)緊急用機材の準備と薬剤投与:蘇生用薬剤,陽圧換気・気道管理器具,静脈路確保,(5)薬剤投与方法の原則:鎮静薬と鎮痛薬の相互作用,拮抗薬の準備,用量滴定,(6)回復期のケア:退室基準・退院基準策定の重要性,を強調している.さらに,ASA-SEDは一貫して鎮静が目標レベルより深くなった場合の準備と対応が必須であるとしている.
著者
田代 雅文 有村 達之 細井 昌子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.388-396, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
17
被引用文献数
1

慢性痛と心理・社会的要因との関連が注目されている.日本臨床麻酔学会第35回大会シンポジウムでの講演をもとに,慢性痛患者にどのように心理アセスメントを行うかについて,特に怒りについて論考した.怒りという否定的感情と慢性的な痛みには関連がある.慢性痛患者の怒りの表現形式は怒りの興奮よりも怒りの抑止が多い.感情を読み取るツールとして表情ポスターと表情カードを紹介した.慢性痛の治療において怒りを治療対象とする観点は重要である.感情調整の一つとしての怒りへの対処の仕方について,交流分析,アサーション・トレーニング,芸術療法,マインドフルネストレーニング,弁証法的行動療法で用いられている承認戦略を概説した.
著者
藤原 勇太 岸本 朋宗 平林 政人 土井 克史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-24, 2017-01-15 (Released:2017-02-15)
参考文献数
10

症例は83歳の男性で,盲腸腫瘍の診断にて腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術が予定された.既往に両側緑内障があり,右眼は失明していた.麻酔導入はフェンタニル200μg,プロポフォール50mg,ロクロニウム40mgで急速導入し,経口挿管を行った.その後,経鼻胃管を鼻腔内に挿入すると心拍数50/minから15/minへと高度の徐脈となり,挿入操作中止すると心拍数42/minに回復した.本症例では三叉神経-心臓反射(trigemino-cardiac reflex:TCR)の可能性が考えられた.経鼻胃管挿入時には,TCRにより徐脈をきたす可能性があることを念頭に置くことが重要である.
著者
佐藤 雅美 白神 豪太郎 廣田 喜一 福田 和彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.603-610, 2010 (Released:2010-10-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

京大病院デイ・サージャリー診療部(DSU)は本邦国立大学附属病院としては初めての日帰り手術専用施設として設立され,2000年1月より診療を開始した.DSUでは2009年12月までに総計10,148件の麻酔科管理手術が行われたが,患者個々の周術期情報を収集・解析し,麻酔・周術期ケアの改善を図ってきた.例えば,婦人科子宮鏡手術ではmonitored anesthesia care(MAC)の導入により術後回復時間が短縮し,日常生活回復度の患者自己評価が向上した.安全かつ患者満足度の高い日帰り麻酔・周術期ケアを提供し,さらに向上させていくためには,患者からの周術期情報を取得しフィードバックしていく不断の努力が緊要であり,そのためには麻酔科医のみならず看護師,外科医との協働が必須である.
著者
関川 綾乃 高木 俊一 磯崎 健一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.291-295, 2018-05-15 (Released:2018-06-23)

病的肥満患者に対する意識下挿管を同一症例で短期間に3回経験した.57歳,男性.身長173cm,体重150kg,BMI 50kg/m2.左上腕骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.マスク換気困難・挿管困難が予想され,意識下挿管を選択した.鎮静薬投与後,局所麻酔薬を散布しMcGRATH(McG)で気管挿管を試みたが,声門の同定に難渋し約30分かかった.33日後,右大腿骨骨折に対し観血的骨接合術を予定した.エアウェイスコープ(AWS)による声門の同定は容易で,約10分で挿管できた.初回手術から42日後,両上腕骨骨折に対する観血的骨接合術を予定した.AWSによる声門の同定は容易で,約15分で挿管できた.AWSは病的肥満患者の意識下挿管に有用である可能性が示唆された.
著者
笹川 智貴 岩崎 寛
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.655-669, 2008-06-15 (Released:2008-08-13)
参考文献数
18

筋弛緩薬投与を行う際, 特に麻酔科医の頭を悩ませるのは術中の維持投与法である. 術中の体動や咳嗽反射を起こさず, かつ手術終了とともに素早く回復する状態に保つことが目標となる. ロクロニウムはベクロニウムとほぼ同等の作用持続時間をもつため, 従来の間欠的投与法でも大差なく使用することはできる. しかしこのほかにも持続投与法, 目標制御注入法 (target controlled infusion: TCI) のような各種投与法が存在するため, 状況に応じて使用する必要がある. 共通する投与のポイントはこれらの投与法の利点・欠点をふまえ, 筋弛緩モニターを有効に使用するとともに薬物動態を意識して投与することである.
著者
田島 照子 栗山 亘代 角谷 和美 上野 脩 小川 幸志 畑埜 義雄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.361-363, 2005 (Released:2005-07-29)
参考文献数
7

腰部脊柱管狭窄症 (lumbar spinal canal stenosis: LCS) による下肢痛の疑いで硬膜外ブロックの依頼を受けたところ, 帯状疱疹による下肢痛と判明した3症例を経験した. 3症例とも65歳以上で下肢痛の既往があった. 当院麻酔科の初診時には皮疹が出現した後であったため, 帯状疱疹の診断が可能であった. 腰神経領域における帯状疱疹の早期では, ほかの疾患との鑑別が困難な症例があり, 注意が必要である.
著者
小田 裕
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.555-564, 2010 (Released:2010-10-28)
参考文献数
15

局所麻酔薬の中枢神経毒性は,血中濃度の上昇に伴って脳内の濃度が上昇した結果,GABA作動性抑制性ニューロンが広範囲に抑制されることによって生ずる.中枢神経毒性は心毒性にも密接に関与しており,中枢神経毒性を亢進あるいは減弱させる薬物は心毒性にも影響を与えうる.静脈麻酔薬,吸入麻酔薬はいずれも局所麻酔薬の中枢神経毒性を抑制するが,交感神経α2受容体作動薬であるデクスメデトミジン,β1受容体遮断薬であるプロプラノロールも脳に直接作用して同様の作用を有する.局所麻酔薬の脳内濃度の推移は,血中濃度と類似しているが,リドカインとレボブピバカインでは血液中から脳内への移行の度合に差がある可能性が示唆された.
著者
磯野 史朗 飯寄 奈保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.931-941, 2010 (Released:2011-02-07)
参考文献数
32
被引用文献数
1

睡眠時無呼吸は非常に頻度の高い疾患であり,睡眠時無呼吸が診断されていない術前患者も多く存在する.睡眠時無呼吸患者では周術期に重篤な合併症を起こしやすいことが明らかとなっており,すべての麻酔科医はこの疾患について少なくとも基本的知識を有するべきである.この論文では,睡眠時無呼吸の臨床的特徴,治療方法,病態生理について最新の知見を述べ,千葉大学医学部附属病院において行っている周術期気道管理方法について解説する.
著者
伊藤 浩子 松原 香名 井上 鉄夫 坂本 英明
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.176-180, 2011 (Released:2011-03-11)
参考文献数
8

比較的短時間の耳鼻咽喉科手術のレミフェンタニル併用全身麻酔直後に,きわめて激しいせん妄を示した成人の症例を3例経験した.3例とも激しいせん妄状態が30分以上持続した.スタッフおよび患者自身に危険が及び,多くのマンパワーを必要とした.鎮痛不十分とレミフェンタニルの使用が関与していると考えられた.比較的短時間かつ少量のレミフェンタニル投与を全身麻酔に併用した場合には,術後せん妄が発生しやすくなる可能性について検討する必要がある.
著者
出田 眞一郎
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.384-388, 2016-05-14 (Released:2016-07-07)
参考文献数
17

デスフルランは血液/ガス分配係数が揮発性麻酔薬の中で最も小さいため覚醒が速やかで,また覚醒の「質」も非常に良い.しかし術直後の興奮を完全に防ぐことはできない.特に術後疼痛対策を十分に行っていないと疼痛が原因で興奮状態となる可能性がある.また,脂肪/血液分配係数も小さいため,肥満症例や長時間投与した場合でも組織に残存する量が多くならず,残存麻酔薬によると考えられる術後せん妄の発生を予防できる可能性がある.このようなデスフルランの特性は若年者に比して体脂肪率の高い高齢者にとっては,より早期の高次認知機能の回復が期待できる.
著者
西山 純一
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.902-909, 2013 (Released:2013-12-14)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

病院機能分化に伴う急性期医療の集約は,地域基幹病院への患者集中を誘導し,各施設では急増する手術を限られた人員で行うための,効率的な手術・集中治療の充実が重要視されている.システムの再構築,運用方法の見直し,業務環境の整備による効率化は,少ない人材を有効利用して良好な実績を実現するが,効率化により安全性が損なわれてはならず,生体の生命基礎の制御を専門とする麻酔科医が安全担保を前提に効率化を主導することは理にかなっている.本稿では,効率化への対策の一つとして,手術室の一足制について,その利便性,空間的メリットとともに手術室の空気清浄度から見た安全性について解説する.