著者
安東 茂典 梶田 弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.40, no.456, pp.14-22, 1992

Static longitudinal stability of tailless airplane is evaluated theoretically with two methods. One is quasi (or modified)-strip method and the other is a lifting surface theory—DLM. Computation is made on the basis of available data of Northrop XB-35. The both methods agree each other only qualitatively; of course results of DLM should be much more reliable. Allowable limit of longitudinal CG position may be almost comparable with that of conventional airplanes. The airplane efficiency factor, e concerning with induced drag, is computed which is also satisfactory at least for cruising configuration.
著者
伊藤 誠 稲垣 敏之
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.369-374, 2015-12-05

自動車の運転支援や自動運転の技術開発は目覚ましい.自動車の運転操作は,人間にとっては容易に可能なものである.しかし,自動車は多主体の交通参加者が複雑に関与しあう道路交通システムにおいて移動を行うものであることから,自動化は容易ではなく,少しずつ機能を向上させつつ段階的に進展させざるを得ない.運転支援・自動運転のシステムは,ドライバのニーズにマッチした商品性を訴求しつつ,人とシステムとのインタラクションにおける齟齬が発生しないように慎重に設計されなければならない.本稿では,自動車分野における運転支援システムの安全性に関するヒューマンファクタの課題を示し,それらの課題に対する取り組みの動向の一端を紹介する.自動車と有人宇宙船は大きく異なるが,自動車分野の動向を知ることは有人宇宙船開発に有用と思われる.
著者
武市 昇
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.110-116, 2015-04-05

宇宙エレベータは,1本のケーブル(建設初期ケーブル)を静止軌道上から地上まで伸展し,さらにこのケーブルを利用して多くのケーブルを付加することにより容易に建造することができるものと考えられている.しかし,建設初期ケーブルの伸展に伴い作用する重力が徐々に増加するため,質量中心を静止軌道上に保つことができずケーブル全長の伸展を完了する前に下端が地上に達してしまう.質量中心を少しずつ上昇させるような軌道制御を行うことにより,静止軌道を保ちながらケーブル全長を伸展することができる.静止軌道上にケーブル伸展機構,イオンスラスタおよび推進剤を含む総質量40トンの建設初期ケーブル伸展システムを構築することにより,9日間で建設初期ケーブルの全長の伸展を完了できる.
著者
石川 洋二
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.62, no.9, pp.305-309, 2014-09-05

建設会社の視点を生かしつつ構想した長さ96,000kmの宇宙エレベーター建設構想を紹介する.本構想は,カーボンナノチューブ製のケーブル,地球の発着場であるアースポート,ケーブルを昇降する乗り物であるクライマー,各高度に設置されたステーションから構成される.主要な建設工程はケーブルの建設であるが,最初の一本のケーブルを静止軌道から降ろしてきた後,そのケーブルを用いて補強用クライマーがケーブルを補強する.クライマーが昇降できるようケーブルにはあらかじめ張力をかけ,510回の補強により約20年かけてケーブルを建設する.ケーブルダイナミクスの解析結果から,風やクライマーによるコリオリ力の影響は制御できるものと考えられた.アースポートの主要部は海上の浮体構造物とし,ケーブルを固定し,張力を制御する.静止軌道ステーションはモジュール構造から構成され,宇宙太陽光発電システムの建設も担う.建設スケジュールとコストも検討した.
著者
由井 剛 北井 保夫 野原 勝 小原 秀雄
出版者
一般社団法人日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.383-389, 2012-10-05
参考文献数
2

イプシロンロケットはM-Vロケットと同じく,内之浦宇宙空間観測所(USC)で組立,点検,打上げを行う.その際使用する地上系(施設,設備)は,既存のものを有効活用しつつ,新たな目的を持って新規開発,改修を計画した.新たな目的とは,運用の革新,つまり省人化,時間短縮,機動性,安全性の大幅な改善を実現することである.ここでは,イプシロンロケットが目指すコンパクト(少人数,短時間で実行可能)な点検・整備・打上げを可能にする自動・自律点検,ロケット管制のモバイル化(移動可能式),安全性と運用性を格段に高めた打上げを可能にする遠隔地打上げ運用を実現する地上系の開発について紹介する.
著者
小林 啓二
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.350-354, 2015-11-05 (Released:2017-06-08)

平成23年に発生した東日本大震災では,多数の航空機が救援活動に従事した.一方,一般に災害発生から72時間が経過すると被災者の生存率が激減すると言われているが,同震災においては救援航空機,特にヘリコプタによる初動時の迅速な救援活動を妨げる要因も顕在化した.宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,総務省消防庁,自治体消防,災害派遣医療チーム(DMAT)等の災害対応機関と連携して大規模災害時における救援航空機の安全かつ効率的な運航管理を実現する技術の研究開発を進めており,消防防災ヘリやドクターヘリ等の実運用下での評価実験を実施してきた(「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」の研究開発).平成25年度からは,このD-NETを発展させ,航空宇宙機器(航空機・無人機・人工衛星)の統合的な運用による災害情報の収集・共有化,及び航空機による救援活動を支援する「災害救援航空機統合運用システム(以下,本システム)」の研究開発を進めている.本稿では,救援航空機の運用課題を整理し,安全かつ効率的な救援航空機の運用を実現する本システムの研究開発状況と今後の展望について紹介する.
著者
浅井 圭介 鈴木 一義
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.247-249, 2023-09-05 (Released:2023-09-05)
参考文献数
3

二宮忠八(以下,忠八)は我が国の航空技術の先駆者である.飛行原理発見に至る思考過程を文書に残し,模型飛行機を製作して飛行実証を行ったという点で,忠八は航空技術史上において特別な存在だと言える.忠八考案の有人飛行機が実現することはなかったが,彼が作成した様々な技術資料や自作の模型飛行機が,忠八自身が創建した飛行神社や彼の故郷の八幡浜市の施設に保管されている.二宮忠八の動力飛行研究は当時の最先端を走るものであり.航空宇宙技術遺産の第一号認定に値する技術である.