著者
三木 武寛 大林 由美子 目黒 敬一郎 岡本 雅之 岩崎 昭憲 小川 尊明 三宅 実
出版者
日本小児口腔外科学会
雑誌
小児口腔外科 (ISSN:09175261)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.105-108, 2008-12-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
17

In clinical oral surgery, we often encounter cases of infants who fall down while holding a toothbrush in their mouth and receive an oral injury from a toothbrush. This particular case was that of a 5-year-old girl who accidentally injured her left buccal mucosa with a toothbrush. After the injury, she was immediately brought to the hospital by ambulance. When she arrived at our hospital, the toothbrush was still embedded in the oral wound. We examined her oral wound by computer tomography (CT). We found that the tip of the toothbrush was located in the vicinity of the left medial pterygoid muscle, and there was neither damage from the toothbrush itself nor on the maxillary artery and basal skull. We removed the toothbrush carefully under local anesthesia, and then cleaned the wound by adequate normal saline and administered antibacterial drugs (SBT/ABPC) intravenously. No serious complications were seen after the treatment.It is strongly suggested that in such a case an immediate examination be conducted by CT in order to avoid severe complications and to insure a good healing process.
著者
村井 政史 伊林 由美子 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.227-230, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
12

症例は31歳の女性で,出産後に上下の口唇に黄白色の痂皮ができ,剥けるようになった。剥脱性口唇炎と診断し,陰証および虚証で,出産後で気血ともに虚した状態と考え帰耆建中湯で治療を開始したが無効で,同じく気血両虚の十全大補湯に転方したが改善せず,胃の調子が悪化した。胃腸への負担が少ない虚証の方剤がよいと考え補中益気湯に転方したところ,口唇の痂皮は著明に改善しほとんど目立たなくなった。剥脱性口唇炎は慢性に持続した炎症性疾患であることから少なくとも口唇の局所は陽証と考えられ,少陽病をもカバーしうる補中益気湯が奏効したものと思われた。また,剥脱性口唇炎には何らかの精神医学的要因が関与している可能性があり,柴胡の解鬱・抗ストレス作用や陳皮の理気・鎮静作用もまた,本症例で補中益気湯が奏効した一因であると思われた。
著者
角野 香織 佐藤 菜々 中芝 健太 大久 敬子 藤井 伽奈 橋本 明弓 片岡 真由美 里 英子 小林 由美子 増田 理恵 張 俊華 木島 優依子 中村 桂子 橋本 英樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-088, (Released:2021-01-15)
参考文献数
19

目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を前に,保健所は感染者の把握・追跡の中核的役割を担う一方,その機能がひっ迫する事態に陥った。日本公衆衛生学会から保健所機能の支援を訴える声明が発出されたことを受け,教育研究機関に所属する筆者らは,都内保健所での支援に参加した。本報告は,支援の経緯を記述し支援体制への示唆をまとめ,保健所と教育研究機関が有機的に連携するうえで必要な要件を考察すること,支援を通して見えた保健所における新型コロナウイルス感染症への対応の課題を提示すること,そして支援活動を通じた公衆衛生学専門職育成への示唆を得ることなどを目的とした。方法 本支援チームは,2大学の院生(医療職13人・非医療職5人)から構成され,2020年4月から約2月の間支援を行った。支援先は人口約92万人,支援開始当初の検査陽性者累計は約150人,と人口・陽性者数共に特別区最多であった。本報告は,支援内容や支援体制に関する所感・経験を支援メンバー各自が支援活動中に記録したメモをもとに,支援体制の在り方,支援中に得られた学び,支援を進めるために今後検討すべき課題を議論し報告としてまとめた。活動内容 支援内容は,「新型コロナウイルス感染症相談窓口」「帰国者・接触者相談センター」での電話相談窓口業務,陽性者や濃厚接触者への健康観察業務,陽性者のデータ入力他事務業務であった。各自が週1~2日での支援活動を行っていたため,曜日間の情報共有や引継ぎを円滑に行うために週1回の定例ミーティングやチャットツール,日報を活用した。結論 教育研究機関が行政支援に入る際には,感染拡大期の緊張状態にある保健所において,現場の指揮系統などを混乱させないよう支援者として現場職員の負担軽減のために尽くす立場を踏まえること,学生が持続可能な支援活動を展開するための条件を考慮することが必要であることが示唆された。一方,本支援を通して保健所の対応の課題も見られた。行政現場の支援に参加することは,教育研究機関では経験できない現場の課題を肌で感じる貴重な機会となり,院生にとって人材教育の観点でも重要だと考えられた。新型コロナウイルスの感染再拡大ならびに他の新興感染症等のリスクに備え,今後も教育研究機関と行政がコミュニケーションを取り,緊急時の有機的関係性を構築することが求められる。
著者
末永 和也 大林 由美子
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.142, pp.45-55, 2020-03-31

本研究は,消滅可能性都市として指摘されている南知多町の人口流出を防ぐための方策や人口を増やすことを検討するために,住民意識調査や専門職の意識調査を分析し,現在,計画内容が検討されている地域福祉計画の策定に寄与できることを目指している. 分析結果より,30 歳代および50 歳代以上の住民には「南知多町に住み続けたい」と考える人の割合が高いことに比べ,40 歳代の住民は,「南知多町に住み続けたい」と考える人の割合は低い傾向にあり,その理由として仕事,医療・福祉の面での課題がみられた. また,住民と専門職の間には学校統廃合の意識に差があった.住民は,学校統廃合には現状維持を求める意見が約5 割であることに対し,専門職は,現状維持したほうがよいと考える意見は約3 割であった.先行研究では,人口を減少させない方策として,小中高校の存続に力を注ぐことであると述べられている.このまま学校統廃合を進めていった場合,さらに人口流出が加速する可能性がある。 これらの分析をふまえ,地域福祉計画を策定していくためには,「専門職参加」「行政職員参加」だけでなく「住民参加」が必須であり,住民をいかに巻き込むことができるか鍵となることが考察された.
著者
神林 ミユキ 大林 由美子 伊藤 正明
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
vol.138, pp.151-165, 2018-03-31

多職種連携教育(IPE)と社会福祉士の連携教育が並行して実施する前に,次の2 点を明らかにする必要がある.1 点は社会福祉士の連携の特性が明確に把握されていることであり,もう1 点は医療系学部主導のIPE のカリキュラムにおける社会福祉士の連携力涵養の可能性である. 本研究では,この2 点の課題を検証するために,文献調査とIPE 実践調査をおこなった.結果は社会福祉士が学ぶ「連携」という用語は,IPE において活用される「連携」よりも広い意味をもつが,IPE において社会福祉士を目指す学生たちは,その概念を体現できておらず,ソーシャルワーク・アセスメントも行っていないことがわかった.調査の限界はあるが,連携の特性を明らかにするよりも共通点を活用することがIPE との並行に必要であること,社会福祉士養成に携わる教員がIPE カリキュラム作成に積極的に関わることが,間接的に社会福祉士の連携力の向上に有用であることを見出した.
著者
佐藤 由美 落合 広美 小林 由美子 泉田 佳緒里 栗原 アツ子 若木 邦彦
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.250-255, 2016 (Released:2016-10-12)
参考文献数
9

背景 : 近年, メトトレキサート (MTX) は, 関節リウマチ (RA) の治療薬として広く用いられ, 使用頻度は増加している. しかし, 副作用としてのリンパ腫の発生も多く報告されるようになった. 今回私たちは, 左膝関節滑膜に発生した MTX 関連リンパ増殖性疾患 (MTX-LPD) のまれな 1 例を経験したので報告する. 症例 : 62 歳, 女性. 9 年前に RA 発症, 8 年前より MTX 投与開始. 8 ヵ月前より左膝関節の腫脹と疼痛を認めた. 関節液細胞診にて MTX-LPD が疑われ, 滑膜切除術が行われた. 結論 : 発生部位として非常にまれな滑膜に限局した MTX-LPD の 1 例を経験した. 細胞診検体よりセルブロックを作製し, 確定診断に近づくことができた症例であった. 加えて, 新潟県立リウマチセンターで発生した MTX-LPD 10 例を検討し, 若干の考察を加えて報告する.
著者
袖山 悦子 志田 久美子 小林 由美子 北谷 幸寛 Sodeyama Etsuko Shida Kumiko Kobayashi Yumiko Kitatani Yukihiro
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.41-47, 2012-11

The present study aimed to provide knowledge on the promotion of interprofessional collaboration including health professionals who implement care for the elderly with a wide variety of needs. A survey was carried out to understand elderly care professionals awareness of their specialties and cooperation with other specialists. Subjects were 49 physical therapists, speech therapists, occupational therapists, dietitians, nurses, and care workers who have been working for approximately four years in long-term care health facilities, hospitals, and care stations in Prefecture A. Survey items included: 1) specialties and disadvantages regarding the professions of the subjects, 2) the necessity of collaborating with other professionals and its reasons, 3) priorities in collaborating with other professionals, and 4) the degree of ease in collaborating with other professionals and its reasons. Data were analyzed by tallying up scores by survey item. Descriptions were classified according to their similarities, and category names reflecting their themes were added. Associations among the categorized data were then examined to identify factors contributing to the promotion of collaboration. The results were as follows: The subjects collaborated with other health professionals while recognizing its necessity, and most of them cooperated with nurses. Health professionals involved in elderly care were aware of their specialties and disadvantages, and attempted to provide care that compensates for those weak points in collaboration with other professionals. It is also necessary to set up meetings and other opportunities for opinion exchange to promote interprofessional collaboration.本研究は、多様なニーズを持つ高齢者ケアを実践している各専門職が多職種の中で自己の職種をどのように捉え、他職種をどのように活用しているのかの実態を調査し、連携促進への示唆を得ることを目的とする。研究対象は、A県内の介護老人保健施設、病院、ケアステーションに勤務する就職後4年目の理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、栄養士、看護師、介護福祉士の49人である。調査内容は、①自己の属する職種の専門性・弱点、②他職種との連携の必要性とその理由、③連携する職種の優先順位、④他職種との連携し易さとその理由である。データ分析方法は、調査項目ごとに単純集計した。自由記述については、意味内容の類似性に従い分類し、その内容を反映したカテゴリーネームをつけてデータを分析した。次に分析したデータ間の関連性を解釈し、連携促進への要因があるのか考察した。その結果、「各専門職は連携の必要性を認識して多職種と連携しており、看護師が連携する職種の第1位だった」「各専門職は、自己の職種の専門性・弱点を自覚し、他職種と連携して弱点を補完したケアをしようとしていた」「多職種連携では意見交換ができる時間や場を設定することも必要である」ことが明らかになった。
著者
伊東 明彦 小林 由美子 杉原 正泰
出版者
日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.5-10, 1989-02-20
被引用文献数
1

The significance of depth of score, the kinds of binders and granules for compression on dividing of scored tablets was investigated. Scored tablets with the rate of depth of score per thickness varying with 10, 20 and 30% were prepared using hydroxypropylcellulose (HPC), potato starch, acacia and gelatin as binder and sieved granules in three particle sizes and no sieved granules as granules for compression. Dividing strength of the scored tablets decreased with an increase in depth of score and was affected by the kinds of binders. Weight variation of the divided tablets was the smallest on the tablet of 30% depth of score prepared from sieved granules irrespective of the kinds of binders and physical characteristics of granules. However, when the rate of depth was lower than 20%, the weight variation of the divided tablets was affected by the kinds of binders and physical characteristics of the granules. With 20% depth of score, tablets using potato starch and gelatin as binder showed little weight variation. In case of the 10%, tablets using potato starch and granules of 16-32 mesh showed better results. Tablets prepared with non-sieved granules showed effect of particle size distribution of granules on weight variation of divided tablets even in the case of the 30% depth.
著者
村井 政史 伊林 由美子 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.41-44, 2013 (Released:2013-07-20)
参考文献数
22

ホットフラッシュに陰証の方剤が奏効した1例を報告する。症例は56歳の女性で,閉経後に顔面のほてりと発汗を認めるようになった。加味逍遙散と苓桂朮甘湯で治療を開始したところ,ホットフラッシュはやや改善したが,疲れた時に増悪した。そこで証を再考し,陰証で虚証と考え小腹不仁が著明であったため,八味丸に転方したところホットフラッシュはほとんど出現しなくなった。しかし疲れやすく,疲れた時にホットフラッシュが増悪したため,心下痞鞕を目標に人参湯を併用したところ,疲れにくくなりホットフラッシュは出現しなくなった。ホットフラッシュには陽証の方剤が有効な場合が多いが,病態に応じて陰証の方剤も考慮すべきと思われた。
著者
木田 新一郎 栗原 晴子 大林 由美子 川合 美千代 近藤 能子 西岡 純
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.87-104, 2021
被引用文献数
4

<p>沿岸域において,今後10 年程度の期間で取り組むべき研究の方向性と意義,そしてその遂行に必要な研究基盤について論じた。沿岸域は外洋域と陸域を結びつける,フィルターかつリアクターとしての役割をもつ海域であると同時に,人間社会に身近であり,多様で生産性豊かな海域である。沿岸域の物質循環を理解し,将来にわたってその豊かな生態系を維持していくためには,物理・化学・生物が分野横断的に連結し,組織立ったプロセス研究を進める必要がある。変化の時空間規模が小さい沿岸域の現象を把握するには,観測データが依然として不足している。しかし,これまでの長期モニタリングデータに加えて新たな観測機器の開発,衛星観測の高解像度化,ドローンの登場によって状況は大きく前進しつつある。この現状をふまえて,今後必要と考える研究基盤と数値モデルの展望を議論した。</p>
著者
村井 政史 伊林 由美子 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.34-37, 2016

症例は48歳の女性で,高層ビルで勤務中に地震が発生してビルが大きく揺れ,その後から動揺性めまい感が出現するようになった。陰証で虚証と考え真武湯で治療を開始したところ,動揺性めまい感は改善した。ところで,この患者の職場は入退室管理に指静脈認証によるセキュリティシステムを導入しており,当院を受診する前までは認証エラーが多かったのが,真武湯を服用するようになってからは調子よく認証されるようになった。静脈認証エラーの原因の一つに,冷えで血管が収縮して血流が低下し,血管パターンが変化することが知られている。そのような血流が低下した状態を,陰証の方剤で温めることによって解消し得ると思われた。
著者
小林 由美子
出版者
東北女子短期大学 研究活動推進委員会(紀要・年報部会)
雑誌
東北女子短期大学紀要 (ISSN:24351385)
巻号頁・発行日
no.58, pp.18-24, 2020-03-19

ハンドベルは、カスタネット、鈴、タンバリンなどと同様に、幼児にとって持ちやすく奏でやすい楽器である。しかし、幼児用の楽譜を見ると、ハンドベルはメロディーを奏でるようになっているものがほとんどで、メロディーの音を何音か担当し、間違えないように緊張して待つのでは、折角のハンドベルを楽しむことができないように思う。私は、幼児が無理なくハンドベルを楽しむためのやり方を試行錯誤し、全体を2 つか3 つのグループに分け、各グループにⅠ、Ⅳ、Ⅴ 7 の和音のどれかを担当させ、奏でるときに、ぬいぐるみなどを使って合図をすることにより、大勢で奏でる連帯感も生まれ、余裕をもってハンドベルの持つ華やかな響きを楽しむことができるように思った。又、音域を広げたり、同じ和音を分散して奏でるなど、身近な曲を使って楽しんで行えたやり方を書かせていただいた。
著者
角野 香織 増田 理恵 張 俊華 木島 優依子 中村 桂子 橋本 英樹 佐藤 菜々 中芝 健太 大久 敬子 藤井 伽奈 橋本 明弓 片岡 真由美 里 英子 小林 由美子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.186-194, 2021

<p><b>目的</b> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を前に,保健所は感染者の把握・追跡の中核的役割を担う一方,その機能がひっ迫する事態に陥った。日本公衆衛生学会から保健所機能の支援を訴える声明が発出されたことを受け,教育研究機関に所属する筆者らは,都内保健所での支援に参加した。本報告は,支援の経緯を記述し支援体制への示唆をまとめ,保健所と教育研究機関が有機的に連携するうえで必要な要件を考察すること,支援を通して見えた保健所における新型コロナウイルス感染症への対応の課題を提示すること,そして支援活動を通じた公衆衛生学専門職育成への示唆を得ることなどを目的とした。</p><p><b>方法</b> 本支援チームは,2大学の院生(医療職13人・非医療職5人)から構成され,2020年4月から約2か月の間支援を行った。支援先は人口約92万人,支援開始当初の検査陽性者累計は約150人,と人口・陽性者数共に特別区最多であった。本報告は,支援内容や支援体制に関する所感・経験を支援メンバー各自が支援活動中に記録したメモをもとに,支援体制の在り方,支援中に得られた学び,支援を進めるために今後検討すべき課題を議論し報告としてまとめた。</p><p><b>活動内容</b> 支援内容は,「新型コロナウイルス感染症相談窓口」「帰国者・接触者相談センター」での電話相談窓口業務,陽性者や濃厚接触者への健康観察業務,陽性者のデータ入力他事務業務であった。各自が週1~2日での支援活動を行っていたため,曜日間の情報共有や引継ぎを円滑に行うために週1回の定例ミーティングやチャットツール,日報を活用した。</p><p><b>結論</b> 教育研究機関が行政支援に入る際には,感染拡大期の緊張状態にある保健所において,現場の指揮系統などを混乱させないよう支援者として現場職員の負担軽減のために尽くす立場を踏まえること,学生が持続可能な支援活動を展開するための条件を考慮することが必要であることが示唆された。一方,本支援を通して保健所の対応の課題も見られた。行政現場の支援に参加することは,教育研究機関では経験できない現場の課題を肌で感じる貴重な機会となり,院生にとって人材教育の観点でも重要だと考えられた。新型コロナウイルスの感染再拡大ならびに他の新興感染症等のリスクに備え,今後も教育研究機関と行政がコミュニケーションを取り,緊急時の有機的関係性を構築することが求められる。</p>
著者
角野 香織 増田 理恵 張 俊華 木島 優依子 中村 桂子 橋本 英樹 佐藤 菜々 中芝 健太 大久 敬子 藤井 伽奈 橋本 明弓 片岡 真由美 里 英子 小林 由美子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
2021

<p><b>目的</b> 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な感染拡大を前に,保健所は感染者の把握・追跡の中核的役割を担う一方,その機能がひっ迫する事態に陥った。日本公衆衛生学会から保健所機能の支援を訴える声明が発出されたことを受け,教育研究機関に所属する筆者らは,都内保健所での支援に参加した。本報告は,支援の経緯を記述し支援体制への示唆をまとめ,保健所と教育研究機関が有機的に連携するうえで必要な要件を考察すること,支援を通して見えた保健所における新型コロナウイルス感染症への対応の課題を提示すること,そして支援活動を通じた公衆衛生学専門職育成への示唆を得ることなどを目的とした。</p><p><b>方法</b> 本支援チームは,2大学の院生(医療職13人・非医療職5人)から構成され,2020年4月から約2月の間支援を行った。支援先は人口約92万人,支援開始当初の検査陽性者累計は約150人,と人口・陽性者数共に特別区最多であった。本報告は,支援内容や支援体制に関する所感・経験を支援メンバー各自が支援活動中に記録したメモをもとに,支援体制の在り方,支援中に得られた学び,支援を進めるために今後検討すべき課題を議論し報告としてまとめた。</p><p><b>活動内容</b> 支援内容は,「新型コロナウイルス感染症相談窓口」「帰国者・接触者相談センター」での電話相談窓口業務,陽性者や濃厚接触者への健康観察業務,陽性者のデータ入力他事務業務であった。各自が週1~2日での支援活動を行っていたため,曜日間の情報共有や引継ぎを円滑に行うために週1回の定例ミーティングやチャットツール,日報を活用した。</p><p><b>結論</b> 教育研究機関が行政支援に入る際には,感染拡大期の緊張状態にある保健所において,現場の指揮系統などを混乱させないよう支援者として現場職員の負担軽減のために尽くす立場を踏まえること,学生が持続可能な支援活動を展開するための条件を考慮することが必要であることが示唆された。一方,本支援を通して保健所の対応の課題も見られた。行政現場の支援に参加することは,教育研究機関では経験できない現場の課題を肌で感じる貴重な機会となり,院生にとって人材教育の観点でも重要だと考えられた。新型コロナウイルスの感染再拡大ならびに他の新興感染症等のリスクに備え,今後も教育研究機関と行政がコミュニケーションを取り,緊急時の有機的関係性を構築することが求められる。</p>
著者
奥村 詠里香 追分 俊彦 掛上 謙 林 顕代 中川 拓也 林 由美子 林 篤志
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.97-102, 2015

<b>【目的】</b>白内障混濁別の散乱光と白内障手術前後における散乱光の変化を検討する。<br><b>【対象及び方法】</b>平成26年4月から同年9月までに富山大学附属病院で白内障手術を施行した38例50眼に対し、白内障手術前後に眼内散乱光測定装置C-Quantを用いて散乱光を測定した。核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障、retrodotsに分類して混濁の程度分類を行い、各白内障の混濁程度、術前視力、眼球高次収差と散乱光の関係、白内障手術前後の散乱光の変化について検討した。<br><b>【結果】</b>核白内障、皮質白内障の混濁程度と散乱光値には相関が認められた(p<0.01)が、retrodotsの混濁程度と散乱光値には相関はなかった。核白内障、皮質白内障の術前視力と散乱光値、眼球高次収差のRMS値と散乱光値には相関はなかった。核白内障、皮質白内障の散乱光値は術前と比較し、術後で散乱光値が有意に低下していた(p<0.01)。後嚢下白内障は症例数が少なく統計処理は行っていないが、核、皮質、後嚢下白内障の中で後嚢下白内障の術前散乱光値が最も高値であった。<br><b>【結論】</b>今回、白内障の混濁別の散乱光値について検討できた。核白内障、皮質白内障の混濁増加に伴って散乱光値は上昇し、白内障手術によって散乱光値は低下した。 混濁別では後嚢下白内障の散乱光値が最も高値であった。散乱光測定検査は、白内障の診療に役立ち、また、視力以外の見えにくさの評価法として用いることができると考える。
著者
田村 暢章 三宅 実 小川 尊明 大林 由美子 長畠 駿一郎 羽場 礼次
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.364-367, 2005-07-20 (Released:2011-04-22)
参考文献数
17
被引用文献数
2 3

Malignant tumors rarely arise from jaws cyst. We report a case of squamous cell carcinoma arising from a nasopalatine duct cyst. A 70-year-old man presented with a swelling in the palatal gingiva at the middle of the maxilla. Oral examination showed a 28×25mm swelling with a puncture mark, asmooth surface, and normal color. Radiographic examination revealed a round translucent image measuring 15×12mm in diameter in the middle of maxilla. The image was clearly demarcated. Under general anesthesia, extirpation of the cyst was performed for a diagnosis of nasopalatine canal cyst. Histopathological examination of the resected specimens showed transition of histologically normal cystic epithelium to squamous cell carcinoma. After the first operation, partial resection of the maxilla was performed. Three months after the partial resection, left jugular lymph node metastasis was detected. Partial neck dissection, chemotherapy, and irradiation were performed. Twelve months after partial resection of the maxilla, right jugular lymph node metastasis was found. Radical neck dissection was performed.For 2 years 4 months, there was no disease recurrence. However, the patient died due of pneumonia on April 13, 2002.
著者
三浦 篤史 青木 芙美 桃井 宏樹 柳沢 国道 大井 敬子 大橋 正明 竹内 玲子 小林 由美子 佐々木 由美 大倉 輝明 跡部 治
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.719-725, 2009-01-30 (Released:2009-04-08)
参考文献数
6

佐久総合病院では,筋弛緩薬,カリウム製剤などはハイリスク薬として扱われているが,インスリンは事故防止のために標準化された対策がなされていない。今回我々は,多職種に渡ったチームを構成し医療改善運動を行なった。チームでは薬剤師が中心となり,Quality Control (QC) 手法を利用してインスリン投与の過誤を防止するための対策に取り組んだ。その結果,インスリン取り扱いに関するヒヤリ・ハットは減少した。薬剤に関したヒヤリ・ハット事例は多く,薬剤師のリスクマネジメントに果たす役割は大きいと考えられる。今後,薬剤師は積極的にリスクマネジメントに関わり,医薬品が関与する医療事故を未然に防止することが望まれる。そのことからも,QC手法を活用し,医療改善運動に取り組むことは効果的な活動と考えられた。
著者
佐々木 邦博 米林 由美子 平岡 直樹
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.419-422, 2001-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

長野市松代町は城下町であり,水道網が発達していた。武家屋敷において庭園の水を隣家から隣家へと流す泉水路が存在し,現在でも一部ながら残されている。江戸時代における泉水路の形成過程,その範囲,その用途を明らかにするのが本研究の目的である。対象地は上級武家屋敷地であった殿町とした。真田家文書などの水道絵図から分析すると,次の結論が得られた。中水道が江戸時代中期頃に形成され始め,後期には泉水路として水系を形成する。殿町にはほとんどの家に泉水路が流れ,主に生活用水として,後期には部分的には養魚池の給水源としても用いられていた。その範囲はおそらく松代城下町全体に及んだのではないかと推測される。
著者
小林 由美子
出版者
東京女子体育大学・東京女子体育短期大学
雑誌
東京女子体育大学紀要 (ISSN:03898806)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.26-49, 1986-03

The Bulgarian Women's Team received a perfect score in both composition mark and execution mark components of their team performance in the final round of the 12th World Rhythmic sports Gymnastics Competition in 1985. Both the Soviet Union and the People's Republic of Korea teams, the runner-ups to the Bulgarians, also received perfect scores in the composition of their team performances in the final round. Since the perfect 10 has been increasingly awarded in individual competitions as well as in team competitions, the purpose of this study was to determine the meaning of this score in the composition component. The first three teams, Bulgaria, Soviet Union, and People's Republic of Korea, were selected to be reviewed in this study, along with the Japanese team, (the sixth). Videofilms taken at the 12th World Rhythmic sports Gymnastics Competition were used in analyzing the performances of these four teams-The following elements of the performances were analyzed: (1) team formation and time duration of performance. (2) exchanges of apparatus and difficulties. (3) technical contents body technique and order of technique by apparatus. It was found that the Bulgarian team had the fewest number of exchanges of apparatus of all four teams. However, the Bulgarians showed a variety of new ideas in formation changes and exchanges of apparatus. The Soviet Union had the highest number of and many different types of exchanges of apparatus which were evaluated as Superior Difficulties techniques. Moreover, each Russian gymnast executed very difficult body technique . The Koreans emphasized manuevers using the feet and acrobatic techniques in their performance. Although these three teams received the ten points in composition, the judges seemed to award this score on the basis of different composition aspects. In order to receive a higher score in composition on the basis of the "Code of Points", it was assumed that not only many variations in formation changes and new ideas of exchanges of apparatus were required, but also that originality had to be emphasized. Since only a few points could be ascertained from the video film reviews in this study, further research studies would be more helpful for a better understanding of Rhythmic sports Gymnastics competitions.