著者
ヒリナスキエヴィッチ イアン 新谷 洋子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.629-640, 2014-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
33
被引用文献数
2 3

Nature Publishing Groupは,研究助成金機関のニーズに応えるため,また研究者,図書館員,データリポジトリ管理者,データ規格提唱者などのステークホルダーを対象とした調査の結果を踏まえて,まったく新しいデータジャーナルを開発した。それが2014年5月創刊の『Scientific Data』である。Scientific Dataでは,その特有の論文タイプとしてData Descriptorという新しい形式を採用している。Data Descriptorは,従来の科学論文の要素と機械可読メタデータとを組み合わせ,データの種類を問わない均一な検索,関連出版物とのリンク付け,さらにはデータマイニングが可能になるように考案されている。本稿ではオープンデータの重要性からScientific Dataの創刊に至る背景,Scientific Dataの特長とこれからの可能性について述べる。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 佐々木 弘子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.178-185, 1996-08-20
参考文献数
13
被引用文献数
3

昆布だしの抽出法の迅速化・合理化・実用化を目的に、食品の新しい処理方法として加熱過程に超音波照射を併用した加熱抽出法を試み、昆布だしの溶出成分と嗜好の関係を調べ、好適な調製条件を検討した。1)超音波照射を併用した加熱法は対照の照射無しの加熱法に比べ成分溶出量がやや多く、良好なだしが得られた。2)超音波照射有りのだしは対照の照射無しのだしに比べ明度の低下が進行し、色差の値に差が見られ、照射の影響が認められた。3)だしの好適調製条件では、加熱時間は照射有りの場合8分間と対照の照射無しの場合15分間であった。これらだしは総窒素量・5'-ヌクレオチド・無機質の含量は近似値を示したが、照射8分間のだしは遊離アミノ酸が顕著に多く、嗜好的にも優れていた。その上、加熱時の消費電力量を28%低下させ有利であった。従って超音波を併用した加熱法は、従来の加熱法や浸水法よりも嗜好性に優れた昆布だしが得られ、抽出時間も短縮及び消費電力量も低減できることが示唆された。
著者
岩谷 洋子
出版者
建築史学会
雑誌
建築史学 (ISSN:02892839)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.30-55, 2022 (Released:2023-10-12)

フランチェスコ・ボッロミーニによるローマのオラトリオ会のヴァッリチェッリアーナ図書館の計画
著者
納谷 洋子
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.447-454, 1988-05-01 (Released:2010-01-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The presence of a molt-inhibiting hormone (MIH) in crustaceans versus the molting hormone (ecdysteroids) has been biologically demonstrated, however, only a little of the chemical nature of MIH is known so far Our attempt to isolate MIH produced in the X-organ of the eyestalks (ES) resulted in the characterization of xanthurenic acid as an ecdysone biosynthesis inhibitor (EBI) In addition, it was found that 3-hydroxy-L-kynurenine (3-OH-K) present in the X-organ of ES was also biotransformed into xanthurenic acid. The inhibitory action was shown in the cultured Y-organ-complex homogenate as well as in the crayfish by injection of 3-OH-K that revealed the delay of ecdysis. The preliminary study of ED50 of the active compounds appeared to account for most of but not the full potency of ES extract. Therefore, a molt-inhibiting phenomena is probably the result of the action by the multiple factors including EBI. After the mode of inhibitory action of the recently isolated sinusgland neuropeptide is shown, the involvement of a hormone in the negative control of molting will be clarified.
著者
木村 友子 福谷 洋子 菅原 龍幸 佐々木 弘子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1995-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
11

To develop a new cooking method for rapid rehydration of dried radish (strips of dried radish), several conditions for rehydration including a step of ultrasono-irradiation were studied. The conditions for the best rehydration were determined at 5,25 and 40°C and the effects of ultrasonication on physical properties and palatability of the cooked radish were investigated. The results were as follows:(1) The amount of water absorbed into dried radish increased as the rehydration time goes up. The irradiated radish showed further improved swelling in shorter time and their tissues were softened faster than those in the control without irradiation.(2) When rehydration was conducted under the suitable conditions at the water temperature of 25°C, no difference was observed between the subjects irradiated for 15 min and those soaked for 30 min without irradiation, with regard to in the contents of moisture, total sugar, free sugar, crude protein, free amino acids and ashes, and the remaining proportions of mineral components in both subjects were 81% for Ca,70% for iron and 69% or more for Mg.(3) For texture characteristics, ultrasono-irradiated radish after cooking exhibited large rupture strain and chewiness than the control without irradiation. In addition, the permeability of seasonings was a little higher in ultrasono-irradiated radish and also the odor specific to the dried radish was somewhat decreased, resulting in superior taste evaluation.
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.585-593, 1994-07-15
被引用文献数
7

Dried shiitake mushrooms were rehydrated with ultrasonic-irradiation in search for rational rehydration methods. Its effects on the texture properties and the preference test were studied. The following results were obtained ; water absorption by the shiitake mushrooms, the color of yellowing of the rehydration liquid and its browning were greater with ultrasonic-irradiation than in the control without the irradiation. The irradiated shiitake mushrooms had less hardness and gumminess and were softer. Irradiation time was 20 min and total immersion time was 2h for Jyodonko adn 1h for Jyokoshin at 5℃ and 25℃ which are within a suitable rehydration range. Under these conditions, water absorption reached 90% of the maximum and the shiitake mushrooms scored high preference points in such properties as softness and gumminess. Irradiation slightly affected on the content of RNA and the composition of 5'-GMP, 5'-AMP, 5'-UMP, 5'-CMP and free amino acids in steam-cooked shiitake mushrooms.
著者
木村 友子 福谷 洋子 菅原 龍幸 佐々木 弘子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 = Journal of cookery science of Japan (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1995-02-20
被引用文献数
1 1

干し大根(割り干し)の迅速な水戻し法を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた水戻しを行い, 水温5, 25及び40℃設定での好適条件を探索し, 更に煮物にした製品の理化学的性状と食味変化に及ぼす超音波照射の影響について検討し, 次の結果を得た。1) 干し大根は水戻し時間経過と共に吸水量が増加するが, 照射した方が短時間で膨潤し組織は速く軟化した。2) 水戻し時間が長くなると, 一般成分の全糖・遊離糖, 粗蛋白質, 遊離アミノ酸, 灰分, 無機質の含量は著しく減少する傾向を示したが, 超音波照射有無の差はわずかであった。3) 干し大根の水戻しの好適条件は水温25℃設定の15分照射と対照の照射なしの30分浸漬で, 両試料の一般成分値はほぼ同等値を示し, 無機成分の残存率もCa81%, Fe70%, Mg69%以上で良好であった。4) 煮物調理では照射した製品は照射なしの製品に比しテクスチャー特性の破断歪率が有意に大きく, 歯応えがあり, 調味液の浸透割合がやや高く, 干し大根の特有の臭気も多少緩和され, 食味評価も優れていた。以上の結果から, 干し大根の水戻し法に超音波照射を行うことは水戻し時間が短縮でき, 嗜好にも関与し効果的であると考えられた。
著者
細谷 洋子
出版者
四国大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

駆け引きのプロセスを楽しむカポエイラ教材の基礎的研究として、カポエイラの社会的位置づけ、カポエイラの基礎的な身体技術、練習内容の軸となるカポエイラの理念を明らかにした。その結果、カポエイラは「問いかけと応答」という行為の意味を重視することが特徴といえ、異文化間教育などにおける教材化の軸になる理念であると考察された。
著者
伊藤 要子 水谷 洋子 山田 学 宮田 伸樹 山田 高路 小栗 隆
出版者
The Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.134-140, 1990-04-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
23

Activities of clotting and fibrinolytic factors in golden hamsters under acute alcohol consumption were measured with fluorogenic peptide substrate. The obtained data were as follows;1) Concentration of blood alcohol reached to the maximum values on 1hr after administration of alcohol.2) Prothrombin and factor X activities began to decrease on 1hr after administration. But their activated form, thrombin like and factor Xa like activities significantly increased on 1hr, then returned to initial value on 4hrs after administration.3) Although plasminogen activity began to decrease on 1hr, activated form of it, plasmin like, and t-PA like activities increased on 1hr and returned to the initial values or decreased on 4hrs. Both prekallikrein and kallikrein like activities significantly increased from 1hr.Under acute alcohol consumption, activities of clotting and fibrinolytic factors (prothrombin, factor X, plasminogen) in golden hamster were changed into their activated form (thrombin, factor Xa, plasmin) at the corresponding time that concentration of blood alcohol reached to the maximum values.
著者
佐藤 真実 森 恵見 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】本州の中央部にあり,日本海に面す福井県は,嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北は,平野を中心に米づくりが盛んであり,嶺南は,海に面して滋賀,京都に隣接する。日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」で実施した聞き取り調査に基づき,昭和30〜40年代の福井県における家庭料理「副菜」の特徴を明らかにし,現在でも作られている家庭料理について紹介することを目的とした。</p><p>【方法】聞き取り調査の結果および福井県の食に関する出版物から副菜を抽出し,特徴および地域性についてまとめた。</p><p>【結果および考察】県内の聞き取り調査によると,昭和30〜40年代の海岸地域を除いた福井県の日常食としては,3食ともに米飯,野菜や山菜料理が主なものであった。日本海に面することから海からの恵みもあったが,魚介類は時々食べるご馳走であった。春には,山菜を収穫し,保存する。秋冬には,だいこんや芋を用いた料理を作った。これらの野菜には,大豆・大豆加工品(打ち豆,油揚げ,豆腐),北前船の影響で入荷される乾燥ニシンなどが組み合わせ食材として使用された。中でも,だいこんは,葉っぱを「あえもん飯」,根を「から大根」「たくあん・たくあんの煮たの」「長寿なます」「こじわり」「みがきかぶし」などに利用した。「だいこんおろし」は,おろしそばや油揚げ飯にも利用される。山菜は,「こごみ」「わらび」「ぜんまい」等を「こごみの胡麻和え」「わらびのおひたし」「ぜんまいの煮物」「ぜんまいの白和え」「にしんと水ぶきの煮もの」などに利用した。とくに「ぜんまい」は現在でも高価であり,ごちそうとして,春祭り,秋祭り,報恩講などに利用される。</p>
著者
船山 道隆 小嶋 知幸 山谷 洋子 加藤 正弘
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 : 日本高次脳機能障害学会誌 = Higher brain function research (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.329-341, 2008-09-30
参考文献数
33
被引用文献数
1 3

&nbsp; 症例は56 歳右利きの男性である。50 歳から英語が読みづらくなり,52 歳より喚語困難が出現し,徐々に音韻からの意味理解障害や顕著な表層失読や表層失書を伴う語義失語を呈するに至った。言語によるコミュニケーションに支障をきたし仕事から退いたが,日常生活は自立している。物品使用の障害を認めず,人物認知の障害は軽度にとどまった。視覚性の意味記憶検査では生物カテゴリーと加工食品では成績低下を認めたが,それらのカテゴリーで日常生活に支障をきたすことはほとんどなかった。非生物カテゴリーでは意味記憶障害は認めなかった。頭部MRI では左側頭葉の前部から下部を中心に萎縮が認められた。<br>&nbsp; 少なくとも現時点での本症例において,非生物カテゴリーでの意味記憶は保たれており,語彙の理解および表出の障害は失語の範疇で捉えることが妥当であると考えた。一方で生物カテゴリーにはわずかながら意味記憶障害が存在した。また,語義失語は語彙の貯蔵障害という見解が多いが,本症例の障害の中核は,語彙と意味記憶の間の両方向性のアクセス障害にあると考えた。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.585-593, 1994

干し椎茸の合理的な戻し方を見出す目的で, 超音波照射を取り入れた方法を用い, 椎茸の物性及び嗜好性などに及ぼす影響を検討し, 次の結果を得た.<BR>1) 水戻しに超音波処理を用いると, 超音波処理しない椎茸に比し吸水量が増加し, 戻し汁は黄味度が増し褐変が進行した.<BR>2) 蒸し調理した椎茸のテクスチャー特性では超音波照射したものの方が硬さ・ガム性の値が小さく軟化した.<BR>3) 水温5℃と25℃の水戻しの条件では超音波照射時間は20分が望ましく, 全浸漬時間は上冬薙が2時間, 上香信が1時間で最大吸水量の90%に達し, 官能評価では椎茸は柔らかく歯ざわりが適当で, 戻し汁の色の濃度が濃く感じ, 味は旨味があり良好と評価された.<BR>4) 蒸し調理した椎茸中のRNA含量や5'-GMP, 5'-AMP, 5'-UMP, 5'-CMP, 遊離アミノ酸含量に及ぼす超音波照射の影響はわずかにすぎなかった.<BR>以上の結果から, 干し椎茸の水戻しに超音波照射を取り入れることは有効であると考えられる.
著者
木村 友子 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.151-159, 1991-02-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

鶏肝臓をマリネに加工して食べやすくする目的で, マリネ調味液 (食酢・サラダ油に醤油を付加し, さらに清酒を25, 50, 75%添加したもの) に5℃の冷蔵庫で168時間漬け込んだ.その間の望ましい調製条件ならびに清酒がマリネに及ぼす影響について検討した, (1) マリネ調味液の食塩水を醤油に置換したマリネは官能評価において有意に好まれる判定であった.(2) マリネの清酒の浸透は清酒添加量増加に伴いほぼ比例してアルコール量が増加することを認めた.(3) おいしいマリネの調製条件は食酢12.5%, サラダ油12。5%, 醤油25%, 清酒50%の調味液に24時間漬けたマリネで硬さ, 舌ざわりが好まれ, 肝臓特有の臭気が緩和され, かすかな酸味 (pH5.3) があり, 清酒無添加マリネよりタンパク質の含有量が多く遊離アミノ酸の増加が著しく, アンモニア量も少なく味も良好で, 色も赤味度と彩度の値が高く, Aw値0.95, 細菌数104/gで保存性も優れていた.(4) マリネの清酒添加の影響は, とくに物性の硬さの値や色相の赤味度が漸増し, 食味にも関与し無視できない要因であった.
著者
佐藤 真実 森 恵見 岸松 静代 谷 洋子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.214, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】本州の中央部にあり,日本海に面す福井県は,嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北は,平野を中心に米づくりが盛んであり,嶺南は,海に面して滋賀,京都に隣接する。日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」で実施した聞き取り調査に基づき,昭和30〜40年代の福井県における家庭料理「副菜」の特徴を明らかにし,現在でも作られている家庭料理について紹介することを目的とした。【方法】聞き取り調査の結果および福井県の食に関する出版物から副菜を抽出し,特徴および地域性についてまとめた。【結果および考察】県内の聞き取り調査によると,昭和30〜40年代の海岸地域を除いた福井県の日常食としては,3食ともに米飯,野菜や山菜料理が主なものであった。日本海に面することから海からの恵みもあったが,魚介類は時々食べるご馳走であった。春には,山菜を収穫し,保存する。秋冬には,だいこんや芋を用いた料理を作った。これらの野菜には,大豆・大豆加工品(打ち豆,油揚げ,豆腐),北前船の影響で入荷される乾燥ニシンなどが組み合わせ食材として使用された。中でも,だいこんは,葉っぱを「あえもん飯」,根を「から大根」「たくあん・たくあんの煮たの」「長寿なます」「こじわり」「みがきかぶし」などに利用した。「だいこんおろし」は,おろしそばや油揚げ飯にも利用される。山菜は,「こごみ」「わらび」「ぜんまい」等を「こごみの胡麻和え」「わらびのおひたし」「ぜんまいの煮物」「ぜんまいの白和え」「にしんと水ぶきの煮もの」などに利用した。とくに「ぜんまい」は現在でも高価であり,ごちそうとして,春祭り,秋祭り,報恩講などに利用される。
著者
細谷 洋子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-16, 2014 (Released:2014-06-11)
参考文献数
27

アフロ・ブラジル文化カポエイラは,アフリカ系奴隷によってブラジルで創造され,近年ブラジル社会,歴史,文化の象徴としてブラジル国家によって認められた民族スポーツである。本稿はこのようなカポエイラの,幼児を対象にした教授内容を明らかにし,授業構成の観点とその鍵となる概念を考察することを目的とした。その結果,授業パターンにおいて,幼児の心身の発育発達段階を考慮して,多様な動きの体験が優先された。そしてカポエイラの独特の世界観が重視されない「ジョゴ」(カポエイラのゲームを意味する。以下「ジョゴ」と略す)が行われていると考察された。授業構成の観点として「行為の意味を重視する」ことが重要であることが明らかになった。つまり,技の完成度よりもジョゴを行う二人の間で技が行われることで生じる「問いかけと返答」という意味を重視する傾向が考察された。更には,「問いかけと返答」の意味生成において,即興性が基軸となる「ジョゴ」概念が授業構成の観点として重要であり,この「ジョゴ」概念はカポエイラ特有の文化的特性であるという知見が得られた。