著者
新井 佐知子 伊東 正吾 可知 真奈美 杉山 稔恵 楠原 征治
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.183-189, 2009-12-25 (Released:2010-04-02)
参考文献数
12
被引用文献数
3 5

豚の運動器疾患で多く見られる脚弱症の原因である骨軟骨症と骨関節症のモデル作成として,5%パパイン液を用いた発生試験と,その臨床症状や軟骨病変の観察を行った。体温や臨床症状は3日ほどで改善したが,軽度の跛行は14日まで観察された。しかし,軟骨の肉眼的な病変は日を追うごとに重篤化し,亀裂や糜爛などの病変の領域は広範囲になった。膝関節へのパパイン液注入の試みは,今後の骨軟骨症や骨関節症による脚弱の診断技術を確立する上で,大きな役割を果たすモデルになりえる可能性が考えられた。
著者
高田 良三 佐野 拓哉 香川 龍太郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.23-32, 2020-06-20 (Released:2020-10-08)
参考文献数
26

離乳子豚にもちだわら(モチ米,玄米)およびコシヒカリ(うるち米,玄米)を給与した時の飼養成績,乾物·窒素消化率,血漿尿素態窒素濃度および遊離アミノ酸濃度,肝臓Lysine-ketoglutarate reductase (LKR,リジン分解酵素)活性へ及ぼす影響について検討を行った。試験区はトウモロコシ,大豆粕,脱脂粉乳を主体とした対照区,対照区のトウモロコシを全量もちだわら,コシヒカリで代替したもちだわら区,コシヒカリ区の3試験区とした。各試験区に4頭ずつ合計12頭の離乳子豚(LWD種,開始体重7.2±0.2kg)を用いて21日間の飼養試験を行った。21日間の飼養試験の結果,0-14日および0-21日の日増体量では,いずれももちだわら区が対照区よりも有意に高くなり,コシヒカリ区は高くなる傾向が認められた。飼料摂取量は,もちだわら区がどの期間においても対照区よりも有意(P<0.05)に高くなり,あるいは高くなる傾向が見られた。コシヒカリ区における飼料摂取量は0-14日において,対照区よりも高くなる傾向が認められた。飼料効率は3週間の試験期間全体においては各試験区間に違いは認められなかった。血漿尿素態窒素(PUN)濃度は,コシヒカリ区が対照区に対して有意に低下したが,もちだわら区では対照区との違いは認められなかった。乾物の消化率はもちだわら区とコシヒカリ区がいずれも対照区よりも有意に高かった。肝臓LKR活性は対照区に対してもちだわら区,コシヒカリ区いずれも有意に低い値を示した。血漿遊離アミノ酸濃度において,バリン,ヒスチジン濃度は対照区に対して両飼料用米区ともに有意に高い値を示した。以上,結論として,離乳子豚へのもちだわら,コシヒカリ給与はトウモロコシ給与と比べて日増体量を高くし,特にもちだわら給与によって大きく向上することが明らかとなった。また,PUN濃度の低下,肝LKR活性の低下が観察されたことから,離乳子豚への飼料用米給与はタンパク質代謝に影響を及ぼし,タンパク質蓄積量は高くなることが示唆された。
著者
山口 昇一郎 金子 和典 川島 幸子 竹村 陽 増本 憲考 笠正 二郎 舟橋 弘晃 吉岡 耕治
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.155-160, 2017-12-21 (Released:2018-03-14)
参考文献数
6

我々は,豚凍結精液に用いる精液希釈液にカフェインを添加して人工授精(AI)を行うと子宮内に出現する白血球数を抑制し,子宮内の生存精子数を増加させることで繁殖性が向上することを明らかにしている。この技術を応用して,本研究では,カフェイン添加モデナ液を用いて豚液状精液のAIを行うことで一般農場における暑熱期の繁殖性が向上するかについて検討した。供試精液は,約2年間にわたって月に1回,農場の飼養する種雄豚から採取した。適温期(11〜5月)および暑熱期(6〜10月)における平均異常精子割合は,それぞれ20.4%および38.4%であった。AIは,子宮頸管注入式カテーテルを用いて液状精液100ml(注入精子数として平均43億)のみを注入するControl(適温期n=23,暑熱期n=23),精液注入前に50mlのモデナ液を注入するModena区(適温期n=32,暑熱期n=25),同様に50mlのモデナ液に30mMのカフェインを添加したCaffeine区(適温期n=28,暑熱期n=27)とした。暑熱期におけるControlおよびModena区のAI後の分娩率は,適温期に比べて有意に低下した(P<0.05)。Caffeine区では,暑熱期においても適温期と分娩率に差は認められなかった。以上のことから,暑熱期においてカフェイン添加希釈液をAI時に注入することにより精液性状悪化に伴う分娩率の低下を改善できることが明らかとなった。
著者
石田 藍子 芦原 茜 勝俣 昌也
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.64-72, 2015-06-26 (Released:2015-09-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

我々はこれまでに,飼料用玄米と規格外カンショを配合した飼料を肥育豚に給与することを想定して飼養試験をおこなってきた。その結果,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論づけている。また,茨城県内ではカンショ加工残さの飼料化がおこなわれている。そこで本実験では,実証試験として,茨城県内の養豚生産者の一般管理下において,飼料用玄米50%とカンショ加工残さ(試験1:干し芋残さ,試験2:芋ようかん残さ)22.5%を配合した飼料を肥育後期豚(体重65 kgから120 kg)へ給与し,飼養成績および肉質に及ぼす影響をトウモロコシ主体の市販飼料と比較して検討した。試験1では,日増体重が飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により高くなったが(P<0.05),試験2では差が無かった。背脂肪内層の脂肪酸組成は,試験1および試験2で,飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により一価不飽和脂肪酸割合が高くなり,多価不飽和脂肪酸割合は低くなった(P<0.05)。以上の結果より,飼料用米およびカンショ加工残さの併給は,実際の養豚生産者の飼養管理下において,トウモロコシ主体の市販飼料と遜色ない飼養成績を示し,脂肪酸組成に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
勝俣 昌也 芦原 茜 石田 藍子 小林 裕之
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-28, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 5

玄米でトウモロコシの全量を代替できるか確認すること,玄米とカンショを併給するときの配合割合を検討することを目的として,3つの肥育試験を実施した。実験1では,トウモロコシ(75%配合)の全量を玄米で代替して肥育後期豚に給与したが,日増体量,飼料摂取量,飼料効率ともに影響はなかった。実験2では,玄米の配合割合を3水準(30,52.5,75%)設定し,玄米とカンショの併給が肥育後期豚の飼養成績と肉質におよぼす影響について検討した。日増体量,飼料摂取量に飼料の影響はなかった。飼料効率には飼料が影響する傾向があり(P<0.10),玄米30%配合区が低かったが,ほかの試験区のあいだに差はなかった。1頭あたりの玄米の給与量を増やすために,実験3では肥育前期から玄米(52.5%配合)を給与し,肥育後期は玄米(52.5%配合)とカンショ(22.5%配合)を併給した。肥育前期(30kg∼70kg)と全期間(30∼120kg)をとおしての飼料摂取量は,玄米·カンショ併給区が高く(P<0.05),全期間をとおしての飼料効率は玄米·カンショ併給区で低かった(P<0.05)。しかし,肥育後期には飼料の影響はなかった。実験1,2,3をつうじて,玄米を給与すると皮下脂肪内層の飽和脂肪酸と1価不飽和脂肪酸の割合が高く,多価不飽和脂肪酸の割合が低くなった。とくに,オレイン酸の割合の上昇とリノール酸の割合の低下は,再現性が高かった。実験2では,皮下脂肪内層の融点が玄米の給与で高くなったが,実験1と3では変化しなかった。胸最長筋のドリップロスやせん断力価には,玄米あるいは玄米とカンショの併給の影響はなかった。これらの結果から,トウモロコシの全量を玄米で代替して肥育後期豚に給与しても飼養成績と肉質に問題はなく,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論した。
著者
末吉 益雄
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.Supplement, pp.44-51, 2014-05-30 (Released:2014-11-13)
参考文献数
24
被引用文献数
1
著者
和賀 正洋 押田 敏雄 坂田 亮一
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.10-16, 2016-03-05 (Released:2016-06-13)
参考文献数
16

豚肉ヘム色素抽出液を還元して吸収スペクトルを観察した結果,ミオグロビン(Mb)とヘモグロビン(Hb)の他にシトクロムc (Cyt. c)が吸光スペクトルに影響することが強く示唆された。これらのヘム色素の各種誘導体を観察した結果,CO処理したMb,Hb (COMb, COHb)ならびにCyt. cは互いに異なる分光光学的特徴を持っており,COMbは541および578nmに,COHbは539および568nmに,Cyt. cは520および550nmにそれぞれ特徴的な吸光特性が見られ,スペクトル形状が異なった。そこでこれらのヘム色素の吸収ピークである6波長および,COMbとCOHbの等吸収率点がある5波長の合計11波長から3波長を任意に選択し,ランベルトベール則に基づいてテスト溶液のヘム色素濃度の算出を試みた。この算出精度を比較した結果,538,568ならびに578nmの吸光係数を組み合わせた場合に最も高い精度でMb,HbおよびCyt. cを同時に定量出来た。
著者
押田 敏雄 猪股 智夫 英 俊征 佐藤 憲明 氷熊 謙二 矢山 和宏 小西 信一郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.58-62, 1992-06-20 (Released:2011-06-08)
参考文献数
13

豚血液の生化学成分の測定について血清を用いた場合と血漿を用いた場合の濃度差を比較し, あわせてそれぞれの溶血傾向について検討し, 以下の成績を得た。溶血程度を吸光度測定 (日豚会誌. 25. 1988) で比較し, 血清および血漿の溶血程度を区分した場合, 血清では-が53.3%, ±が33.3%, +が6.7%, ++が6.7%を占めたのに対し, 血漿では-が46.6%, ±が16.7%, +が20.0%, ++が16.7%を占めた。生化学成分の測定値について血清と血漿を比較した結果, 血清と血漿で差がないものとしてAlb, BUN, Na, K, Cl, ALP, CPK, GPT, LDH, Glu, T-chol および Tri-G があげられ, 差があるものとしてTP, T-bil, Cre, Ca, GGTおよびGOTがあげられた。血清と血漿の測定値で差があった項目について, 相関をみると, すべての項目について, 両者の間には有意な相関が成立した。さらに, 相関係数が0.7以上, 回帰係数が0.7~1.2の範囲のものとしては, TPおよびCaがあげられた。
著者
坂田 亮一 勝俣 学 押田 敏雄 島田 裕之 神田 宏
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.76-81, 2004

通常の豚肉を用いて, 高温と低pH処理によりPSE様状態を呈する肉を人為的に調製した。調製した豚肉試料がどの程度のPSE状態であるか判定するために, 試料から抽出した筋漿タンパク質の変性程度を透過率 (Transmission Value: TM値) で測定した。その保水性, ならびにソーセージを試作しクッキングロス, 物性などの項目について比較検討を行い, PSE様豚肉における保水性とクッキングロスの関係について調べた。また加熱後の各豚肉ソーセージ試料の色調を測定し, 生肉でのPSE状態との関連性を検討した。PSE処理時のpHの低下に伴いTM値が上昇し, 筋漿タンパク質の変性が顕著に進んだ。ろ紙加圧法による保水性の測定値 (M/T値) は試料のPSE状態が進むに伴い, その値が徐々に低下し, クッキングロスは増加した。用いた試料において, 保水性とクッキングロスの間に負の相関が認められた。また, PSE様肉の保水性とクッキングロスともに, その測定値は対照区より劣る値を示した。色調測定での Hunter 値において, PSE状態の進行とともに正常肉に比べてLおよびb値の上昇とa値の低下が明らかにみられ, L<sup>*</sup>, a<sup>*</sup>およびb<sup>*</sup>も同様の変動を示し, 肉眼的所見からも赤色に乏しく白けた色調を呈した。物性測定の結果では, PSE状態が進むにつれテクスチャーが低下する傾向がみられ, このようなソーセージは商品価値が低いものと判断された。
著者
山田 未知 平山 紀子 山田 幸二 杉田 昭栄 山内 克彦
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.166-174, 2002
被引用文献数
1

照明の色が豚の発育性・産肉性および脂肪組織と筋肉の脂肪酸組成に及ぼす影響について検討した。肥育前期・後期・試験期間全体の一日平均増体量および飼料要求率は, 無灯火区, 赤色照明区, 青色照明区, 白熱灯照明区の各区間に有意な差は見られなかった。枝肉歩留および背脂肪の厚さにおいても各区間に有意な差は見られなかった。背脂肪の脂肪酸組成ではC18:0が青色照明区で低い値を示し, 無灯火区と青色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。また, C18:2では無灯火区が低い値を示し, 無灯火区と赤色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。胸最長筋内脂質の脂肪酸組成ではC14:0が無灯火区で高い値を示し, 無灯火区と白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。またC18:0では赤色照明区が高い値を示し, 無灯火区と赤色照明区間, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。その飽和脂肪酸は赤色照明区が高い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間, 青色照明区と白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。また不飽和脂肪酸は赤色照明区が低い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。さらに不飽和脂肪酸に対する飽和脂肪酸の比では赤色照明区が高い値を示し, 赤色照明区と青色照明区および白熱灯照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。血中脂質成分では, 中性脂肪, 総コレステロールおよびHDL-コレステロール量は各区間に有意な差は見られなかった。しかし, 総コレステロールに対するHDL-コレステロール比では青色照明区が低い値を示し, 青色照明区と赤色照明区間に有意な差が見られた (P<0.05)。
著者
飯田 涼介 金子 麻衣 纐纈 雄三
出版者
The Japanese Society of Swine Science
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.8-16, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,種雌豚の3産次までの生存割合が低い繁殖農場(LRR農場)の若雌種豚の育成法と生涯繁殖成績を特徴づけることと,低い生存割合に関するマネジメント因子を調べることであった。3産次までの生存割合は,3産次まで生存した雌豚数を初交配雌豚の数で割り算出した。若雌種豚の育成法と農場マネジメントについての調査(性成熟前の制限給餌の有無,育成雌豚の飼料の種類,自家育成雌豚の使用割合)を行うために,2008年に同一の生産記録ソフトを用いる115農場に調査票を送付した。回答のあった81農場(70.4%)の記録を2008年に導入された15,678頭の雌豚の繁殖成績と合わせた。3産次までの雌豚の生存割合の下位25パーセンタイル(71.6%)を基に,農場をLRR農場と普通農場に分類した。農場レベルの分析では,LRR農場は普通農場に比べて,分娩割合が3.4%低く,淘汰割合が7.7%高かった(P<0.05)。また,LRR農場は普通農場に比べて,制限給餌を行う農場,育成雌豚に妊娠豚用の飼料を使用する農場の割合が高かった(P<0.05)。さらに,LRR農場の自家育成雌豚の使用割合は,普通農場に比べて29.2%高かった(P<0.05)。雌豚レベルの分析では,LRR農場の雌豚の繁殖障害による1-3産次までの淘汰割合が,普通農場に比べて6.2-11.2%高かった(P<0.05)。しかし,雌豚の生涯平均離乳子豚数における農場グループ間での差は見られなかった(P=0.79)。マルチレベルの比例ハザードモデルでは,雌豚の淘汰ハザードは,性成熟前の制限給餌と高い自家育成雌豚使用割合に関連したが(P<0.05),育成雌豚の飼料の種類とは関連しなかった(P=0.21)。初交配後60週齢における生存確率は,制限給餌された雌豚で80.1%となり,制限給餌されなかった雌豚で84.1%となった。結論として,雌豚の長期生存性の実現に,性成熟前の過度な飼料制限は勧められない。さらに,自家育成雌豚を使用する際に,若雌種豚の繁殖形質の健全性に関する選抜をより厳しく行うことを勧める。
著者
海老原 五郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.191-196, 1988
著者
脇屋 裕一郎 大曲 秀明 立石 千恵 河原 弘文 宮崎 秀雄 永渕 成樹 井上 寛暁 松本 光史 山崎 信
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.207-212, 2014

二酸化炭素等温室効果ガス濃度の上昇に起因して地球温暖化が進行しており,夏季における我が国の養豚は影響を受ける可能性が指摘されている(高田ら,2008)。それによると,2060年の夏季には北海道を除いたほとんどの地域で日増体量が低下し,特に関東以西では日増体量の15~30%の低下が予測されている。また,平成22年度の夏季は,我が国の多くの地点で平均気温が統計開始以来最も高い記録的猛暑となり,家畜の生産に影響が出たことは記憶に新しい(農林水産省,2012)。これらのことから,豚肉生産における暑熱対策技術の確立は全国的にも重要な課題と考えられる。暑熱環境下で飼養成績を改善する手段として,飼料中のエネルギー含量を調整する取組が行われており,COFFEYら(1982)やKATSUMATAら(1996)は,飼料に油脂を添加することで,暑熱環境下の肥育豚の飼養成績が改善されるとしている。しかし,KATSUMATAら(1996)は,油脂を配合することで背脂肪厚が増加することを報告しており,油脂添加と併せて背脂肪厚を抑制できる技術の確立を検討する必要がある。著者ら(脇屋ら,2009; 2010)は,佐賀県の特産農産物である茶の製茶工程で発生する加工残さの機能性に注目し,その給与試験を行っている。それによると,慣行飼料に対して重量比で肥育前期2%,肥育後期1%添加することで,抗酸化成分であるカテキン等による肥育豚の背脂肪厚低減効果を確認しており,油脂添加のような脂肪蓄積が促進される条件下でも背脂肪厚の抑制が期待できる。
著者
當眞 嗣平 翁長 桃子 桃原 紀子 及川 卓郎
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.121-129, 2017
被引用文献数
9

<p>沖縄県の在来豚であるアグーは,西洋系品種の普及により一時期,絶滅の危機に瀕していたものの,肉質に優れていることが評価され,ブランド豚として注目を集めている。しかしながら,その肉質についての知見は少ない。そこで,本研究では,アグーの品種特性を明らかにするため,アグー16頭(雌6頭,去勢10頭)と国内で広く用いられている三元交雑種(LWD)(デュロック種雄×F1交雑種雌;ランドレース×大ヨークシャー)18頭(雌9頭,去勢9頭)を110 kgまで肥育し,発育,枝肉形質および肉質について調査を行った。発育と枝肉形質に関連する項目については,一日増体量,枝肉歩留りおよびロース面積は,アグーがLWDよりも有意に低かったのに対し,背脂肪厚はアグーが有意に厚かった。肉質に関連する項目については,加熱前の保水性は,アグーがLWDよりも有意に劣ったのに対し,加熱時の保水性を示す加熱損失率は,アグーが有意に優れていた。さらに,筋肉内脂肪含量と圧搾肉汁率もアグーがLWDよりも有意に高かった。背脂肪内層の脂肪酸組成において,アグーはLWDと比べて,一価不飽和脂肪酸含量が有意に高く,多価不飽和肪酸は有意に低かった。さらにアグーの脂肪融点は,LWDよりも有意に低かった。これらの結果から,アグーは国内で広く用いられているLWDと比べて発育や産肉量は劣るものの,特徴的な肉質を持つことが明らかとなった。</p>
著者
石田 藍子 芦原 茜 勝俣 昌也
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.64-72, 2015

我々はこれまでに,飼料用玄米と規格外カンショを配合した飼料を肥育豚に給与することを想定して飼養試験をおこなってきた。その結果,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論づけている。また,茨城県内ではカンショ加工残さの飼料化がおこなわれている。そこで本実験では,実証試験として,茨城県内の養豚生産者の一般管理下において,飼料用玄米50%とカンショ加工残さ(試験1:干し芋残さ,試験2:芋ようかん残さ)22.5%を配合した飼料を肥育後期豚(体重65 kgから120 kg)へ給与し,飼養成績および肉質に及ぼす影響をトウモロコシ主体の市販飼料と比較して検討した。試験1では,日増体重が飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により高くなったが(P<0.05),試験2では差が無かった。背脂肪内層の脂肪酸組成は,試験1および試験2で,飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により一価不飽和脂肪酸割合が高くなり,多価不飽和脂肪酸割合は低くなった(P<0.05)。以上の結果より,飼料用米およびカンショ加工残さの併給は,実際の養豚生産者の飼養管理下において,トウモロコシ主体の市販飼料と遜色ない飼養成績を示し,脂肪酸組成に影響を及ぼすことが明らかになった。