著者
市橋 匠 酒井 哲夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.472-480, 1998
参考文献数
15
被引用文献数
5

気管支閉鎖症の4例を報告した。1例目は感冒症状から右上肺異常影を発見された32歳の女性。3年後にV字型に成長し, CTで右S^1領域に粘液瘤と周囲の透過性亢進を認めた。気管支鏡で右B^1が欠損していた。2例目は23歳の左上肺異常影の健診指摘男性例。CTでニボーを伴う粘液瘤と周囲の透過性亢進を左S^3領域に認め, 肺の血流/換気スキャンでは血流低下とair trapを示した。3例目は62歳の左中肺異常影の健診指摘女性例。CTで左S^3b領域にだるま型の腫瘤と周囲の透過性亢進を認めた。胸腔鏡下に楔状切除。病理上は粘液貯溜で拡張した細気管支と周囲の気腫を認めた。4例目は43歳の右下肺異常影の健診指摘女性例。CTで右S^<10>に索状影と周囲の透過性亢進を認め, 気管支鏡では右B^<10>が欠損していた。気管支閉鎖症の本邦例をX線検査上の粘液瘤と限局性気腫の有無の組み合わせで4群に分類し気管支閉鎖の完成の時期と臨床所見の関係についての仮説を導いた。
著者
増本 駿 川上 覚 井上 勝博 岡松 佑樹 粥川 貴文 謝 柯智 高畑 有里子 原田 大志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.7-10, 2019-01-25 (Released:2019-02-06)
参考文献数
8

背景.気管気管支巨大症(Mounier-Kuhn症候群)は気管気管支の内腔が異常に拡張する稀な疾患で,しばしば慢性呼吸器感染症を伴う.症例.64歳女性.近医で施行されたCT検査にて気管気管支の著明な拡張を認めたため,当科紹介となった.気管支鏡検査では,気管内腔の著明な拡張と,気管気管支軟化症の所見を呈した.また,右肺底区気管支粘膜に白色顆粒状の変性を認め,同部の生検組織では気管支粘膜組織内にアミロイド沈着を認めた.結語.限局型アミロイドーシスを伴った気管気管支巨大症の1例を経験した.
著者
酒井 徹也 笹田 真滋 徐 千恵子 杉原 快 石岡 宏太 高橋 左枝子 中村 守男
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.417-422, 2018-09-25 (Released:2018-10-13)
参考文献数
13

背景.気管支鏡検査は被験者の苦痛の強い検査であり,苦痛軽減のため鎮静薬などが考慮されるべきである.当院では気管支鏡検査時の苦痛軽減を目的とし,ミダゾラムと塩酸ペチジンの2剤併用による鎮静をルーチンに行っているが,本使用法は過鎮静のリスクがあり,我が国においては未だ議論の余地がある.今回我々は気管支鏡検査における本鎮静法の苦痛レベルおよび安全における忍容性を評価した.方法.2016年8~12月までの気管支鏡検査実施例で前方視的に患者苦痛度アンケートおよび術中バイタルサインのデータ収集を行った.気管支鏡挿入前に塩酸ペチジン17.5 mgと2~3 mgのミダゾラムを静脈内投与し,鎮静の深度に応じてミダゾラム1~2 mgの追加投与を行った.結果.本研究に61例が参加された.ミダゾラムの初回投与量,追加投与量の平均値はそれぞれ2.8±0.1 mg,1.8±0.3 mgであった.術中の記憶があると回答した割合は11.5%であり,気管支鏡の再検を容認した割合は82.0%であった.重篤な低酸素血症や低血圧により拮抗剤や昇圧剤を使用した症例はいなかった.結語.本研究では,気管支鏡検査におけるミダゾラムと塩酸ペチジン併用は検査中の患者苦痛が軽減され安全における忍容性も高かった.本鎮静レジメンの導入は,再生検も含めた気管支鏡検査の患者同意を得るのに有利である.
著者
小清水 直樹 井上 裕介 伊藤 靖弘 岩嶋 大介 菅沼 秀基 小林 淳 朝田 和博 須田 隆文 千田 金吾 田井 久量
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.25-30, 2009-01-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
15

背景.気管気管支アミロイドーシス(以下ア症)は中高年に多くみられる疾患であり若年者の報告はまれである.症例.15歳女性.2004年より嗅覚の低下があり,アレルギー性真菌性副鼻腔炎が疑われた.2006年8月鼻出血が続き,易出血性の副鼻腔ポリープがみとめられた.当院耳鼻科でポリープ切除術を施行し,鼻腔アミロイド(AL型)と診断された.全身検索目的および乾性咳嗽にて,当科に紹介となった.気管支鏡検査では,気管下部よりびまん性に粘膜の発赤・浮腫性の腫脹があり,易出血性で気道は狭小化していた.気管支粘膜生検でもアミロイドの沈着をみとめた.明らかな基礎疾患はなく,その他の臓器にはアミロイドの沈着はみられず,原発性と考えられた.呼吸器症状は軽微で,若年者でもあることから,吸入ステロイド剤投与にて経過観察をしている.4ヵ月後の胸部CTでは,気道病変に変化をみとめていない.検索した限りでは,原発性気管気管支ア症としては,本例が最年少であった.結論.基礎疾患のない若年者にも,気管気管支ア症がみられることがある.びまん性気管気管支ア症に対する副作用の少ない有効な治療法の開発が望まれる.
著者
橋本 みどり 高橋 守 長谷川 喜弘 本田 泰人
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.66-70, 2013-01-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
14

背景.気管支鏡検査中の急性肺水腫は重篤な合併症の一つである.症例. 40歳女性.抗菌薬にて肺炎が軽快しないため当科に転院.気管支鏡検査を施行したが,気管支内腔を観察し終えた頃から,多量の血性泡沫状痰の喀出と著明な低酸素血症を認めた.胸部単純X線写真で肺水腫と診断し,呼気終末陽圧換気(positive endexpiratory pressure ventilation : PEEP)を伴う人工呼吸管理を開始,ステロイドパルス療法,利尿剤投与にて翌日には抜管した.入院時のマイコプラズマ抗体価は80倍で, 2週間後に640倍に上昇しており,マイコプラズマ肺炎と診断した.結論.急性肺水腫は,頻度は多くないが致死的な気管支鏡検査時の合併症であり,気管支鏡検査施行時には緊急時を想定した十分な準備が必要である.
著者
野本 靖史 藤沢 武彦 山口 豊 柴 光年 馬場 雅行 門山 周文 山川 久美 斎藤 幸雄 ト部 憲和 木村 秀樹
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.247-253, 1990-05-25 (Released:2016-10-01)
被引用文献数
8

中枢気道の狭窄性病変・出血性病変29例, および肺末梢病変3例に対し, 気管支ファイバースコープ下エタノール注入療法(Bronchofiberscopic Ethanol Injection=BEI)を施行し, 以下の結果を得た。(1)出血に対する止血作用は強力で, 100%有効であった。(2)気道内腔にポリープ状に突出する腫瘍に対しての気道開大効果も大きかった。(3)速効性の点ではNd : YAGレーザー照射に劣ると思われた。(4)壁外腫瘍の圧排による気道狭窄例では気道開大効果はほとんど得られなかった。(5)合併症は注入部位から漏出したエタノールにより惹起された咳嗽以外認められなかった。(6)末梢病変に対する腫瘍縮小効果は, 1例のみ認められたが, エタノール注入の方法・量など検討すべき点は多いと考えられた。(7)BEIは高価な機器を必要とせず操作も容易であり, 適応を選べば, 中枢気道の狭窄性病変・出血性病変に対する極めて有効な内視鏡下治療の一手段であると考える。
著者
中曽根 悦子 山沢 英明 瀧上 理子 中山 雅之 間藤 尚子 中屋 孝清 坂東 政司 杉山 幸比古
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.205-209, 2013-03-25 (Released:2016-10-29)
参考文献数
14

背景.インフルエンザA (H1N1)2009では,鼻咽腔拭い液の迅速検査の感度は低いことが知られており,確定診断を得るのが時に困難な場合もある.症例. 33歳,男性. 2011年2月,発熱,咳嗽が出現し近医にて鼻腔拭い液のインフルエンザ迅速検査を施行したが陰性であった.その後呼吸困難が悪化,胸部X線で両側のすりガラス陰影を認め,当科を紹介受診した.鼻咽腔拭い液の迅速検査は計4回陰性,鼻腔拭い液のインフルエンザA (H1N1) RT-PCR検査も陰性であったが,気管支肺胞洗浄液のRT-PCR検査が陽性であり,インフルエンザA (H1N1)肺炎と診断した. ARDSに至る重症肺炎であったが,ペラミビルの連日反復投与を中心とした治療で改善した.結語.重症インフルエンザA (H1N1)肺炎では,下気道検体を積極的に採取しRT-PCRを施行することは,確定診断を得る上で有用である.ペラミビルの反復投与の有効性について,さらなる症例の蓄積が望まれる.
著者
河西 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.530-540, 1989-11-25 (Released:2016-10-01)
被引用文献数
2

成人遺体100体について, 気管支動脈の起始から肺門にいたる走行を肉眼解剖学的に剖出した。気管支動脈は右2本, 左2本のケースが最も多い。その起始は, 1)大動脈より出る最上位の右肋間動脈, 2)右鎖骨下動脈, 3)左鎖骨下動脈, 4)大動脈弓, 5)下行大動脈, の5部位に分類できる。左右の肺門における気管支動脈の走行は, 右上枝, 右下枝, 左上枝, 左下枝の4枝を区別できる。上記5つの起始と肺門における4枝との間には, 一定の規則性が認められる。右上枝は起始1)から出ることが多く(85%), ときに2)からの枝を有する。左下枝は97%で起始5)から出る。左上枝は起始4)または5)から出るが, ときに3)からの枝を併有する。起始3)と4)からの枝は, 2分して右下枝と左上枝となることが多い。右下枝は最も変異が多く, 起始4)または5)から出るが, 大動脈の上位で出る枝は気管の前を通り, 下位で出る枝は気管と食道の間を経て, ともに気管分岐部の下方にでる。これらの所見をもとに, 気管支動脈の一般走行をFig.3に模式的に示した。肺外および肺内気管支静脈についても実体顕微鏡のもとに剖出した。肺静脈の1枝が腕頭静脈に注ぐ例, また気管支静脈が左心房に注ぐ例が観察され, 形態学的には, 肺静脈と気管支静脈が明瞭に区別できないことが判明した。以上の結果を総合して, 肺の循環動態を考察した。
著者
吉富 淳 高橋 毅 佐藤 篤彦 中村 浩淑 妹川 史朗 須田 隆文 千田 金吾
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.150-153, 1998-03-25 (Released:2016-10-01)
参考文献数
10

アルカリ性洗浄剤の誤嚥による気道浮腫の気管支鏡所見を経時的に観察しえた。症例は89歳女性で, 1996年6月17日に自殺企図にて家庭用洗浄剤ドメスト^[○!R](pH約12, 1%水酸化ナトリウム, 5%次亜塩素酸塩を含有)を飲み嘔吐, 誤嚥をきたし, 3時間後に当院救急外来を受診した。気管支鏡検査では, 咽喉頭から気管支までの粘膜の著明な発赤, 浮腫と白苔の付着を認めた。声門が開存していることから, 気管内挿管はせず様子をみた。翌日の気管支鏡検査では気道内に白色粘稠分泌物が増加しており, 中枢気道粘膜の生検では粘膜下にリンパ球を主体とする炎症細胞浸潤が存在した。bronchial toiletを施行し, ステロイド, 抗生物質, H2ブロッカーの投与等を行い, 気道閉塞や食道狭窄に陥ることなく軽快した。
著者
藤島 清太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-9, 2004-01-25 (Released:2016-10-15)
参考文献数
7

肺末梢の細胞を非観血的に採取する主な手法として,気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage: BAL),気管支洗浄(bronchial lavage: BL)があり,種々の疾患の診断や病態解析に頻用されている.本稿ではBAL,BLについて,概念と歴史的経緯,具体的検査法と合併症,および解析法と各疾患で呈する所見について概説し,併せてBAL,BL以外の検査法についても簡単に触れることとする.
著者
當銘 玲央 宮城 一也 喜友名 朋 Gretchen Parrott 金城 武士 原永 修作 健山 正男 藤田 次郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.411-416, 2019

<p><b>背景.</b>シングルユース(単回使用)の気管支鏡はその特性から集中治療室や救急部での使用経験が報告されているが,呼吸器内科での使用経験の報告は少ない.当院でシングルユースビデオ気管支鏡を使用した症例について報告する.<b>症例.</b>2016年4月から2017年3月の間に,11例延べ14件に対しシングルユースビデオ気管支鏡が使用された.代表的な2例を示す.症例7は77歳男性.右膿胸の治療中に喀血にて挿管となった.シングルユースビデオ気管支鏡を用いて血餅除去を行ったが気管粘膜と血塊の判別が難しく,通常の気管支鏡へ変更とした.症例9は63歳男性.両側誤嚥性肺炎,左膿胸の診断で入院となった.左右主気管支内に多量の喀痰が貯留するため数日おきに吸痰を行ったが,時間外はシングルユースビデオ気管支鏡を使用した.上記2例を含め,14件中7件は緊急または時間外使用であった.<b>結論.</b>シングルユースビデオ気管支鏡は通常の気管支鏡に取って代わるものではないが,軽量で設定も簡便なため特に緊急時に有用であった.また,気管支鏡の損傷を気にせず手技を行うことができ,交差感染が起きないことも利点である.</p>