- 著者
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河西 達夫
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
- 雑誌
- 気管支学 (ISSN:02872137)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.6, pp.530-540, 1989-11-25 (Released:2016-10-01)
- 被引用文献数
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成人遺体100体について, 気管支動脈の起始から肺門にいたる走行を肉眼解剖学的に剖出した。気管支動脈は右2本, 左2本のケースが最も多い。その起始は, 1)大動脈より出る最上位の右肋間動脈, 2)右鎖骨下動脈, 3)左鎖骨下動脈, 4)大動脈弓, 5)下行大動脈, の5部位に分類できる。左右の肺門における気管支動脈の走行は, 右上枝, 右下枝, 左上枝, 左下枝の4枝を区別できる。上記5つの起始と肺門における4枝との間には, 一定の規則性が認められる。右上枝は起始1)から出ることが多く(85%), ときに2)からの枝を有する。左下枝は97%で起始5)から出る。左上枝は起始4)または5)から出るが, ときに3)からの枝を併有する。起始3)と4)からの枝は, 2分して右下枝と左上枝となることが多い。右下枝は最も変異が多く, 起始4)または5)から出るが, 大動脈の上位で出る枝は気管の前を通り, 下位で出る枝は気管と食道の間を経て, ともに気管分岐部の下方にでる。これらの所見をもとに, 気管支動脈の一般走行をFig.3に模式的に示した。肺外および肺内気管支静脈についても実体顕微鏡のもとに剖出した。肺静脈の1枝が腕頭静脈に注ぐ例, また気管支静脈が左心房に注ぐ例が観察され, 形態学的には, 肺静脈と気管支静脈が明瞭に区別できないことが判明した。以上の結果を総合して, 肺の循環動態を考察した。