- 著者
-
千田 金吾
- 出版者
- 浜松医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
特発性間質性肺炎(IIP)とEpstein-Barr virus(EBV)との関連を検討し,以下の知見を得た。病理組織学的に確診されたIIP29例と,肺線維症を有する全身性進行性強皮症(SSc-IP)の5例を対象とし,生検時に得られた肺組織を検討材料として以下の項目を検索した.対照としては,15例の正常部分肺を用いた。1)PCR法による肺組織中のEBV genome DNAの検出:肺組織より抽出したDNAを用い,two-step PCR法を用い,標的遺伝子の存在の有無を検討した。2)肺組織におけるEBV latent membrane protein 1(LMPl)に対する免疫染色:抗LMP1モノクローナル抗体を一次抗体とし,SAB法にて免疫染色を施行した。さらに,IPF症例のLMP1染色陽性例と陰性例について,その臨床像を比較検討した。その結果,1)two-step PCRでのEBV genome DNAの検出頻度はIIP24/25例(96%),SSc-IP5/5例(100%),対照10/14例(71%)であり,IIPにおける検出頻度は対照に比し,有意に高率であった(p<0.05)。2)IIP29例中9例の肺胞II型上皮に,LMPlに対する免疫染色が陽性であった。一方,SSc-IP症例と対照例は全例陰性であった。経過観察が可能であったIIP20例において,PaO_2値が15torr以上低下した症例を"進行例"として予後調査を行った結果,LMPl陽性7例中5例(71%)が"進行例"であったのに対し,LMPl陰性例の"進行例"は13例中1例(8%)のみであり,有意差が認められた(p<0.01)。これらの結果は,IPFにおけるEBVの病態的関与を示すものと思われた。