著者
山田 盛夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-98, 1985

「レーマーは,木星が地球に最も近い位置での第1衛星の食から最も遠い位置での食(113回目)の時刻を予測して観測したところ,22分(正しくは16分36秒)のおくれを得た.彼は,このおくれが地球の公転軌道の直径を光が伝わる時間であると解釈して,光速度を求めることができた」という話が多くの光学の教科書に紹介されている.しかし,この結論に至るまでの過程はあまり明確ではない.ここでは,この過程を詳細に吟味した結果について報告する.
著者
鈴木 亨
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.147-148, 2011

震災から10日後の3月21日の夜,後輩から1通の電子メールが転送されてきた。被災地で避難所を回って心のケアを担当する友人が,不安と疑問を抱えているとのこと。以下に続く質問を見ると,どうやら,放射線についての知識がほとんどない人が,高汚染地域の一般的な被曝対策を示されて戸惑っているようすがありありと伺われる。どの地域にいる人か問い合わせると,福島第一原子力発電所から50km離れた「福島市」とのこと。急遽回答として書いた「緊急メモ」を送った。オリジナルのものは質問者に対する一問一答の形式であったが,主たる内容について書きあらためたものが以下である。
著者
鈴木 亨
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.209-210, 2011
参考文献数
5

福島第一原子力発電所から200km離れた首都圏においても,放射性降下物の影響は無視できない程度になっている。首都圏に点在する筑波大学附属学校構内で自主的におこなった環境放射線調査から,「自然環境下での濃縮過程の存在」と「地域による高線量値」が明らかになった。このような客観的事実を十分理解した上で対応することが,教育的に重要であると思われる。
著者
菊池 文誠 名古屋 光男
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.240-243, 1988

放射線に関係した実験で従来から半減期の短い核種を授業で用いることはほとんど不可能であった.今回^<42>Ar-^<42>Kジェネレータから抽出した半減期12.5時間の^<42>Kを用いていくつかの実験を試みた.その結果,教育現場で充分利用出来ることがわかったのでジェネレータの概要と実験の具体例および教材としての有用性について紹介する,
著者
八木 一正 三上 良太 久坂 哲也 Anderson David Nashon Samson
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.91-96, 2006

過去の研究において,子どもたちに正しい科学的概念を形成させるために,素朴概念の修正を考慮した教授方法が採用される必要性や,素朴概念の修正に関して「メタ認知的支援」を行い,「メタ認知的モニタリング」の働きを促す事の有用性が示されている。そこで本研究ではその事を踏まえ,素朴概念の中でも素朴物理学を修正する事を狙いとし,遊園地を活用した科学体験学習の開発に取り組んだ。そして,実際に科学体験学習を開催して参加者を対象にアンケートやテストによる調査を行い,その分析結果から,今回行った科学体験学習は素朴物理学の修正に有効である可能性が示された。
著者
田端 修
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.52-54, 2009
参考文献数
2

NHK出版の「ピタゴラ装置DVDブック」を入手したことをきっかけに,力学分野の課題研究として,「ピタゴラ装置」製作実習を実施した。エネルギーの伝達の仕方を物理的に考えること,失敗してもあきらめず装置に改良を施して乗り切ること,楽しい装置を作ること,等を柱に取り組ませた。完成までのプロセスで摩擦や衝突などの様々な力学現象に実際に触れることができ,理解を深められる取組みであったのでここに紹介する。
著者
森 雄兒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.274-277, 1993
参考文献数
4

教科書などの交流の単元では,インピーダンスなどの計算の仕方が,詳細に説明されているが,その物理的意味については説明が大変あいまいである。そこで,数式を使うことなく,インピーダンスや位相差などの意味を考えさせる授業を試みたので報告する。
著者
村石 幸正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.154-159, 1995
被引用文献数
4

「(原爆被爆者の子孫を含め)放射線被ばくによってヒトに統計的に有意な数の遺伝的影響が誘発されるという証拠は得られていない。」という文章との出会いをきっかけに,もっと放射線に対する正しい認識と知識を持つ必要がある考えるようになった。そこで,放射線の影響なども含めた「放射線を正しく知る」ことを目標とした「放射線の学習」という単元を設定し,実践を行った。
著者
筒井 和幸
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.315-318, 2009
被引用文献数
1

2009年3月9日に高等学校の新しい学習指導要領が公示され,数学と理科は2012年度の入学生から先行実施される。学習指導要領解説も含めて高校の理科教育,物理教育に生じる課題を考察した結果,個々の教員の指導力とともに学校の教育課程経営の在り方が重要性を増すことがわかった。本稿ではこれらの考察の結果を報告するとともに,日本物理教育学会(以下,本学会とする)を中心とした物理教育関係者による組織的な取り組みについて提案を行う。
著者
勝木 渥 石井 廣湖
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.196-204, 1996

平成7年度センター試験「物理」の解答分析の資料に基づいて,個々の設問にわたる解答状況を調べ,受験生の物理に対する理解の傾向と問題点を探る。
著者
阪路 裕
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.52-55, 1983

ガリレオの「新科学対話」の中に,落下運動や放物運動についての研究成果が詳しく書きしるされている.そこにみられるガリレオの考え方や研究のすすめ方は,これから物理を学ぼうとする生徒に物理の考え方や物理の方法を教えるのによい手本になる.「新科学対話」を教材にして授業をおこない,ガリレオの探究のあとをたどらせてみたら多くの生徒が興味をもって参加し,物理学習への導入として効果があった.
著者
萬處 展正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.141-144, 2000

高校物理の実験で速度測定が容易になれば,生徒実験が増加し,データ分析も取り組みやすくなると期待できる。「ビースピ」は玩具であるものの,速度測定器として力学実験に使いやすく,精度の上でも実用性があるという結論を得た。生徒が楽しみながら物理現象や概念の理解を深める器具であることを,実験の具体例を挙げながら考察する。
著者
萬處 展正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.156-159, 2002

従来,「糸を伝わる波の速度」の実験では,長いバネを代用してきた。しかし,糸でも十分な長さがあれば実験可能であることが判明した。また公式の検証より公式の導出をねらいとしたスタイルにして取り組ませたところ,納得のいく結果が得られた。導出の過程で両対数グラフを用いるなど,他教科との乗り入れを行い,総合的な学習の時間に取り組むテーマにもなりうる。
著者
佐久間 彬彦 定本 嘉郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.12-15, 2010
被引用文献数
2

凸レンズを通る光の道筋の作図について通常の授業を受けた中学生は,その多くが光の道筋の作図をすることができることが分かった。また,光の道筋と共に,凸レンズによってできる像を正確に記入できる生徒は,記入できない生徒より,像の大きさや位置を理解していることが明らかになった。しかし,像を正確に記入できた者のうち,像の大きさや位置の正解者の割合は約50%であり,凸レンズを通る光の道筋とできる像の作図を指導するだけでは,凸レンズによってできる像の理解が進むとは考えにくい。
著者
中畑 雅行
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.365-369, 2002
被引用文献数
1

小柴昌俊先生が2002年ノーベル物理学賞を受賞された。受賞の理由は,「天体物理学とくに宇宙ニュートリノの検出にパイオニア的貢献」であり,アメリカペンシルヴァニア大学のレイモンド・デイヴィス・ジュニア教授との同理由共同受賞であった。また、同賞は「宇宙X線源の発見を導いた天体物理学へのパイオニア貢献」を行ったリカルド・ジャコーニ氏にも与えられた。このように,2002年ノーベル物理学賞は,ニュートリノやX線といった新たな手法での天体 宇宙観測の道を開いたという業績にたいして与えられた。小柴先生のノーベル物理学賞受賞は,実験物理学の分野では,日本で初めてである。小柴先生は,義受験神岡町の神岡鉱山内に「カミオカンデ」という名前の実験装置を建設し,超申請や太陽から飛んでくるニュートリノを捕らえたということが、受賞の直接的な理由となった。本解説では,「ニュートリノとは何か」,「どのような現象を捕らえたのか」,「今後どのように発展していくのか」といったことについて解説する。
著者
大谷 徳樹 富永 昭
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.228-232, 2004

永久ゴマ加速装置の働きを理解するため,デジタルオシロスコープを用いて電圧の時間変化を測定し,解析を行なった。ベース-エミッタ間電圧においてトランジスタの電流増幅作用がOFFとなっている時間帯に-8V程度の定電圧が生じている。この定電圧は,トランジスタのベース-エミッタ間における電子なだれによるツェデー電圧のあらわれである。ベース-エミッタ間はツェナー電圧8Vのツェナーダイオードとして振舞う。