著者
八木 一正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.109-124, 1999-06-25 (Released:2017-02-10)
参考文献数
47
被引用文献数
4

「感性」は物理教育界において長く重要視されてこなかったが,近年,学習意欲や創造性の源泉として教育学の分野では見直されつつある。そういう中で筆者も以前から生徒の「メタ認知」的発達に着目し,感性を高めることを目的とした年間授業プログラムを開発してきた。そこでは,実験や体験を重視し,生徒に人間社会や自然との身近さを実感させる授業展開を試みた。その結果,生徒の感性を高めることが可能になり,物理教育の今日的重要課題である物理嫌いも改善され履修者も増加することがわかった。
著者
成見 知恵
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.116-119, 2015

「すっとびボール」は,ダイナミックな衝突現象を実感することができる優れた実験教材である。(株)ナリカでも販売されている。まっすぐに穴を開けることにさえ注意をすれば,安価な材料で比較的簡単に製作可能である。自作した物であっても非常によく飛ぶが,落とし方によって飛ぶ高さに違いがあることに不思議さを感じ,実験を行った。その結果,自作すっとびボールがうまく飛ぶ時には,各衝突が順次行われる「連続衝突モデル」が成り立ち,そのためにはボールに適度な隙間が必要であることがわかった。
著者
西尾 成子
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.253-258, 2002

ノーベル賞は,スウェーデン生まれのアルフレッド・ノーベルの遺志に基づいて創設された。1901年第1回の物理学賞受賞者はレントゲンであった。レントゲンは,1895年,希薄気体放電(真空放電)と陰極線の研究をしているときに,エックス線を発見した。この発見は現代物理学の幕開けを告げるものとなった。
著者
林 壮一 川村 康文 村上 聡
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.191-196, 2015

東日本大震災後に高等学校で物理を学習した生徒に対して,高校時代の物理で実施した実験や放射線に関する講義・実験や実習などの調査をアンケートによって行った。その結果,物理実験を行った経験のある生徒の割合は,山崎らが調査した結果に比べて増加していた。しかし,放射線に関する講義や実験,実習の経験のある生徒は全体の10%以下であり,山崎らの調査結果同様にその実施の割合は少ないままだった。このことから,東日本大震災後であっても,放射線に関する学習がほとんど実施されていないことが明らかとなった。
著者
山崎 敏昭 村田 隆紀 岩間 徹 笠 潤平 山口 道明 萬處 展正 高田 雅之 谷口 和成 宮永 建史 藤田 利光
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.358-363, 2004
参考文献数
8

イギリスの新しいAレベル物理コース「アドバンシング物理」は,今日の社会で生かされている物理学の姿を示すことを特徴の一つとしている。電磁気学においても,実際の変圧器,発電機,モーターなどの仕組みや設計の学習を通して,電磁気学の原理を具体的に学ぶことに力点をおいている。このアプローチについての分析と評価をすると共に,日本の高校物理での電磁気学と比較検討し,日本におけるカリキュラム改善の可能性,方向性について検討する。
著者
岡田 直之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.150-155, 2010-09-06 (Released:2017-02-10)
参考文献数
15

夕焼け実験に用いる懸濁液の光の散乱断面積の波長依存性を分光光度計により測定し,レイリー散乱の理論曲線と比較した。アクリルエマルションの懸濁液はレイリー散乱の特性にほぼ等しく,牛乳やセッケンの懸濁液はレイリー散乱の特性から離れ,エーロゾルの特性に近いことを明らかにした。
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.433-442, 1999

1999年度の物理教育学会年会が北海道大学で開催された。8月8日(日)には支部編集代表者会議,評議会,理事会が開かれ,8月9・10日と北海道とは思えないほどの蒸し暑さの中で,特別講演・原著講演・特別企画が行われた。以下にまとめと各氏の講演の抄録を発表順に掲載する。ご講演なされた先生方と参加された会場の皆様の熱気を帯びた発表と質問・討論に物理教育への熱意が感じられた大会であった。
著者
末廣 輝男 大久保 晃男 佐藤 憲夫 三浦 浩二 古賀 秀昭 太田 照明 大久 正敏 高橋 弘之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.121-123, 1977

気柱の開口端で音叉を鳴らしながら気柱の長さを変化させ,音の強弱を耳で聴取して共鳴点を探る実験は従来から高校あるいは大学教養課程の物理学実験のテーマとして取上げられてきた.この実験は直接的である点で秀れているが,反面,音叉の振動が早く減衰すること,音圧最大の点を耳で判断するためにあいまいさが残ること,誤差を見積るのが難かしい等の問題がある.このため充分に定量的な実験とは言いかねる欠点があった.そこで音叉のかわりに低周波発振器と低周波増幅器に接続されたスピーカーを音源に用い,更に共鳴点ではスピーカーコーンの振幅が大きくなることを利用してスピーカーボイスコイルからコーンの振幅に比例した電圧を取出し,これをメータで読むことにより共鳴点を見出すことにした.これにより実験の精度および再現性が向上し,気柱の直径を変えた時の音速の変化等も検知することができた.
著者
山田 盛夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.292-296, 2006
参考文献数
6

フレネル回折の理解に役立つよう,(1)コルニューの渦巻き線上の回折波の振幅ベクトルの動き,(2)回折波強度のグラフ化,(3)回折像の形成の3つを連動させるプログラムを作成した。これに実験条件を入力したシミュレーション像と実験写真を比較し,両者の一致を確認した。ここで取り上げたフレネル回折は単スリット回折,複スリット回折,直線縁による回折、細線による回折である。
著者
長谷川 雅一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.154-155, 2012
参考文献数
1

生徒に実感を持たせるための電気分野の教材を工夫した。そのうちの2種を紹介する。「ガラス容器スピーカー」は,新潟県の理科長期派遣研修員が開発した「鍋スピーカー」を改良したものである。教室中に響く音の大きさ,音質(高音)の良さ,中が透けて見えることが特徴である。また,「エレキギター」はホームセンターの材料を使い,手軽に作製できるようにした。いくつかの研修会で先生方に紹介したが,好評価をいただいた。これらは,別稿で吉楽先生が研修会で使用したものの原型である。
著者
川村 康文
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.506-511, 2000-12-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
3

高度科学技術社会にあって,我々人類が,科学的なものの見方や考え方を身につけることは重要なことである。またこれまでこのような観点から,青少年が身につけるべき科学的なものの見方や考え方が,多方面から提案されてきた。しかし青少年が,現時点でどのような科学的なものの見方や考え方をしているかについては,これまでに十分には明らかにされてこなかった。本研究では,青少年の科学観について調査した結果について報告する。
著者
横関 直幸
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.292, 2018-12-06 (Released:2019-01-08)

本誌の第66巻第2号(2018)に掲載された「音波の指導法の再考」(川内 正 氏)について,引用文献に挙げられたもの以外に,ぜひ読者に知ってもらいたい文献がある。それは「音波の指導で気になっていること」(石川 昌司 氏)である。
著者
本弓 康之 林 正博 富永 昭
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.245-249, 2003-12-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
5

音速を求める「Kundtの実験」は,気柱共鳴管の中においた粒子が周期的に集まることを利用している。しかし,この周期的な粒子の集まりは,粒子によってその様子が異なる。そこで,「Kundtの実験」に関連した実験事実を明らかにし,物理教育での「Kundtの実験」に関する取り扱いについて考える。
著者
小野寺 力 吉田 雅昭
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.212-215, 2011
参考文献数
18

LEDのIV特性を測定した結果から発光エネルギーEが増加するとしきい値電圧V_<th>が増加することを示した。LEDの順方向電流が20mAのときの順方向電圧V_fを発光エネルギーEこ対してプロットした結果から,順方向電圧V_fと発光エネルギーEの関係は直線V_f=E/eの傾向に従っている。しかし,GaNを基礎としたと考えられるLEDでは直線と測定値のずれが大きく,V_f>E/eの関係になっている。IV特性の理論式から考察した結果,この原因としては理想因子n_<ideal>が大きいことと寄生抵抗として直列抵抗成分が存在することが考えられる。これらのことから「LEDを用いたプランク定数の測定実験」では,LEDのIV特性が理想特性からずれていることを考慮に入れて実験する条件を設定する必要があることを示した。