著者
岸川 淳一 横山 謙
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.354-356, 2022 (Released:2023-01-25)
参考文献数
9

回転分子モーターである好熱菌V/A-ATPaseのATP加水分解反応中の複数の中間体構造をクライオ電顕で捉えた.得られた構造から,3つの触媒部位で起こる反応(ATP結合・ATP加水分解・反応産物の放出)と回転軸の120°回転が協奏するtri-site機構で機能することが明らかになった.
著者
沖 真弥 大川 恭行
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.348-350, 2022 (Released:2023-01-25)
参考文献数
6

我々の開発した光単離化学(Photo-Isolation Chemistry: PIC)という技術は,関心領域(ROI)の高深度トランスクリプトーム情報を高解像度の光照射によって抽出できる.大小さまざまなROIに対応できるため,マウス脳の領野,マウス胚の微小細胞集団や,細胞内の非膜型オルガネラの高深度トランスクリプトーム解析に活用できる.
著者
小林 千草 松永 康佑 Jaewoon JUNG 杉田 有治
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.298-300, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
9

筋小胞体カルシウムイオンポンプは代表的なP型ATPaseであり,ATP加水分解のエネルギーを用い輸送を担う.著者らは分子動力学法計算を基にした反応経路解析によりカルシウムイオンポンプによる輸送の分子論的なメカニズムを提唱した.膜タンパク質の構造変化とカルシウムイオン輸送の関係について述べる.
著者
神野 圭太
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.276-279, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
16

生物は感覚情報を利用して行動上の意思決定を行う.情報という抽象的な量と,実際の生物の行動のパフォーマンスにはどのような関係があるのだろうか.筆者らは最近,大腸菌の走化性行動をモデル系として,細胞が環境から獲得する情報量と行動のパフォーマンスの関係を解析した.主要な結果をここで平易に解説する.
著者
丹澤 豪人
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.303-304, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
8

細菌のリボソームは,2つの保存されたタンパク質RRFとEF-Gの協働によりサブユニットにリサイクルされるが,分子基盤は未だ不明である.本稿では,EF-G,RRF,2つのtRNAが結合した70Sリボソーム複合体のX線結晶構造をもとに,リサイクルにおけるtRNAとRRFの積極的な役割を紹介する.
著者
清水 啓佑 宇佐美 将誉 溝口 郁朗 藤田 祥子 川野 竜司
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.271-275, 2022 (Released:2022-11-25)
参考文献数
16

近年ナノポア計測技術の進展はめざましく,DNAナノポアシーケンサが実用化された.原理的には,この方法でタンパク質のアミノ酸シーケンスも可能であるため,ポリアミノ酸鎖の検出に最適なナノポアが探索されている.我々は最近,アミノ酸配列を人工設計したペプチドにより脂質膜中でβバレルナノポアを構築しポリアミノ酸鎖の検出に成功した.本稿では,その詳細について紹介したい.
著者
島本 勇太 高木 潤
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.255-258, 2015 (Released:2015-09-29)
参考文献数
13

The microtubule-based metaphase spindle is subjected to a variety of mechanical forces during cell division. Despite the accumulated knowledge of spindle components and their interactions, we still do not know how this micron-sized structure generates and responds to forces while maintaining its overall integrity, due primarily to the lack of an experimental tool to dissect its system-level mechanics. We have recently developed a biophysical assay that allows for applying and measuring forces in the vertebrate metaphase spindle. Our data reveal the spindle’s remarkable physical property and suggest how it can be advantageous for error-free cell division.
著者
豊田 正嗣
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.56-57, 2022 (Released:2022-03-25)
参考文献数
8

神経や脳をもたない植物は,どのようにして傷つけられたことを感じて,その情報を全身に伝えるのだろうか.最新のイメージング技術によって解き明かされた植物の全身を流れる高速シグナルと,神経系とは異なる植物独自の傷害感知・情報伝達機構を紹介する.
著者
池上 浩司 瀬藤 光利
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.178-181, 2012 (Released:2012-07-25)
参考文献数
20

Post-translational modifications of proteins change dramatically and dynamically protein structures and functions. Tubulin, which forms microtubules, undergoes highly unique post-translational modifications, polyglutamylation and polyglycylation. These modifications, in particular, accumulate in the axoneme of cilia or flagella. Recently, we and others have identified enzymes that perform or reverse those modifications. The discovery of enzymes enables to investigate the physiological roles of the modifications by means of model organisms with knockout or knockdown techniques. We here review recent knowledge, focusing on our own findings, about the roles of polyglutamylation and polyglycylation in ciliary or flagellar structure and motility.
著者
酒井 邦嘉
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.179-184, 1994-09-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
15

Experimental and clinical studies in primates indicate that visual information is stored and retrieved by interactions between the temporal association area and the medial temporal lobe structures including hippocampus. Recent findings from single-neuron recordings have provided new evidence that perceptuai aspects of the temporal neocortex are closely related to its memory function based on association. On the grounds that long-term memory of objects is acquired and organized by neuronal tuning and associative mechanisms, I further present a model of the cognitive memory system that unifies perception and imagery.
著者
矢木 真穂 加藤 晃一
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.232-234, 2022 (Released:2022-09-25)
参考文献数
9

クマムシは,水分を失うと乾眠と呼ばれる状態に移行して生命活動を一時停止し,極限環境耐性を獲得する.最近の研究により,クマムシの細胞内に豊富に存在するタンパク質が,水分消失に伴って繊維状の集合体を自発的に形成することで,すぐさま脱水状況に対応できる仕組みを兼ね備えていることを見出した.
著者
百武 徹
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.175-177, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
10

受精環境を模した高粘度かつ粘弾性を有する流体中を遊泳する精子の運動特性に関する研究例を紹介する.粘度増加のみでは精子の運動性は低下するが,Shear thinning粘弾性流体というレオロジー特性が,特徴的な鞭毛形状による精子の直進性向上をもたらしており,さらには精子の協調的な遊泳を促進している.
著者
蔵本 由紀
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.11-18, 1979-01-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

The development of macroscopic forms or patterns is a charcteristic of nonequilibrium open systems, including living organisms, ecosystems, inorganic chemical reactions and fluid systems. For a certain class of these phenomena, a set of parabolic partial defferential equations called reaction-diffusion equations works well as a model or a metaphor. In this article, some basically important spatio-temporal patterns exhibited by reaction-diffusion equations are summarized. They include standing periodic structure, propagating domain, trigger waves and their modifications, phase waves, and chaotic pattern. The origins and the properties of these patterns are explained in a qualitative way, without going into mathematical details.
著者
西村 多喜
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.170-174, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
16

生体膜は様々な脂質分子種から構成されており,微小領域における脂質膜環境は細胞機能において重要な役割を果たしている.このようなナノスケールの脂質膜環境が細胞内でどのように形成され,さらに感知されるのかについて,脂質交換タンパク質と脂質代謝酵素の機能連関から概説する.
著者
南野 徹 木下 実紀 森本 雄祐 難波 啓一
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.165-169, 2022 (Released:2022-07-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1

細菌の運動器官であるべん毛を作るために必要なタンパク質輸送装置は,細胞膜を隔てた電位差を主要な動力源に利用してべん毛の部品を細胞外へ運び出す.この輸送装置には,プロトン駆動型輸送エンジンに加え,ナトリウム駆動型エンジンや膜電位センサーが搭載されていることが,最近の筆者らの研究で明らかとなった.