著者
青島 矢一 延岡 健太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.20-36, 1997 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
17

競争環境が厳しくなる中,短いリードタイムで連続的に製品を導入していくことがますます重要になってきている.しかし,個々の新製品開発プロジェクトで創造される「プロジェク卜知識」を,他のプロジェクトヘと効果的に移転・伝承する体系的なメカニズムをもつ企業は必ずしも多くない.それは,プロジェクト知識が開発の過程やシステムに関係する暗黙知的要素を多く含むがゆえのマネジメントの難しさを反映している.本論文は,プロジェクト知識を効果的に移転・蓄積する方法として人的移転型プロジェクト連鎖と時間的オーバーラップ型プロジェクト連鎖の2つの方法を議論する.プロジェクト間の直接連鎖に関するこうした議論は従来の新製品開発組織論に新しい視点を提供する.
著者
小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.60-71, 1997 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
4

本研究ではイノベーションでユーザーが重要な役割を演じる条件を「情報の粘着性(stickiness of information)」という視点から明らかにする.「情報の粘着性」という概念は近年,提唱されたものであり,体系的に収集されたデータをベースに議論が展開されることはこれまでほとんどなかった.その意味で本研究は,「情報の粘着性仮説」を概念的議論から経験的調査をもとにした議論へと橋渡しする試みであると言える.また,本稿ではこの仮説から引き出される実践的インプリケーションについても経験的調査の結果をベースに議論する.
著者
松永 真理 日置 弘一郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.4-13, 1996 (Released:2022-07-22)

女性についての組織論的研究は,当初の女性への制度的不平等の現実関心から,現在では組織論のレベルでの問題関心によって論じられる必要がある.制度的に不平等が存在している場合には,それを指摘するだけで十分な問題提起になり得たが,理論的なレベルでは,女性の組織行動を扱う理論枠組みが必要となっている.本論文では実務と理論の双方から,女性の役割モデルとしての家刀自の概念を提出する.
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.62-75, 1996 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
1

統合という問題を分化との関連において論じる.個人にせょ,集団にせよ,組織にせよ,そのシステムの分化の程度に応じた統合をはかることが,システムの発展や成長のために要請される.分化と結びつけられることなく統合ばかりを旗頭にするようでは,個人レベルでは独断的で権威主義的なパーソナリティ,組織レベルでは(表現は適当ではないが)ファシズムのような組織を生み出してしまうことになる.本稿では,「分化に応じた統合」という観点から,複数の分析レベルにまたがって議論が成立するようなクロス・レベル・イシューが試論的に展開される.
著者
楠木 建 野中 郁次郎 永田 晃也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.92-108, 1995 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
11

組織の保有する知識は(1)知識ベース,(2)知識フレーム,(3)知識ダイナミクスという3つのレイヤーの重なりとして把握できる.それぞれの知識のレイヤーは相互に異なる組織能力を提供しており,したがって組織能力は重層的な性格をもっているというのがわれわれの概念的フレームワークの基本的なアイデアである.この論文では上場している日本のすべての製造業企業を調査対象とした大規模サーベイに基づいて日本企業の製品開発における組織能力についての仮説を導出し,われわれの概念的フレームワークのもつ意義とインプリケーションを考察する.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.66-79, 1995 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
2

長期的視野から,新しい情報技術が,組織の境界や規模,組織構造のデザインに与える影響を検討する.新しい情報技術は組織デザインの基本的制約条件を,従来の不確実性の除去から,多義性の除去へとシフトさせ,専門化の利益と顧客満足度を両立する組織構造を可能にする.また情報技術が高度化すればするほど,組織における管理者の職務は,より人間的・社会的スキルを必要とするものになる.
著者
西山 茂
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.43-51, 1987 (Released:2022-07-14)

庭野日敬の事例を通して,また,組織者―天啓者―幹部の対内関係,および教団―環境の対外関係に注目しつつ,天啓者を抱えた新宗教の教団組織者が,教団の急膨張期に示しやすい路線上の行き詰まりを路線転轍のリーダーシップによって克服する過程を分析し,さらに,教団組織者のリーダーシップが,機能論的なリーダーシップにとどまらず,超俗的な意味の脈絡をもつ宗教的なリーダーシップを併せもっていることを指摘する.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.66-77, 1985 (Released:2022-07-14)

時代は経営組織に創造性を要求している.本稿では創造的経営組織のデザイン論の確立を目指し,まず第1に創造的経営組織デザイン論には適切な組織学習および創造的意思決定過程の管理という2つの課題が含まれることを指摘する.次いで既存の組織デザイン論の限界をふまえつつ,それぞれの課題について議論し,そこでの研究上の理論的要請や展望を明らかにしてゆく.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.52-62, 1986 (Released:2022-07-14)

組織のダイナミックな変容はしばしばドメインの定義に関連しているといわれる.しかし,その関係の分析的な議論はほとんど存在していない.本稿では通常のドメインに代えて,より広いドメイン・ユニバースという新しい概念を導入し,独自の組織変動論を展開している.
著者
高田 昭彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.55-66, 1986 (Released:2022-07-14)

今やネットワークを論ずることはブームであり,産業組織の新しい形態としても,市民運動の新たな戦略としても大きな期待が寄せられている.では,「組織」万能の現代になぜ「ネットワーク」が注目されるのか.この本質的問題は,従来の社会的ネットワーク論や組織関連分析では捉えられない.本稿では,草の根運動における連合形成に焦点を合わせて,ネットワークとは,理念的にも組織的にも既存の産業社会に対するオルターナティヴであることを明らかにしていく.
著者
今井 賢一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.2-12, 1986 (Released:2022-07-14)

社会学,経済学,経営研究,および運動論としてのネットワーキング論において提出されている「ネットワーク組織」の概念,および内容を,インターディシプリーな観点から考察し,各分野の諸研究の間に概念共鳴というべきものを見出しうるか否かを検討する. 展望論文であると同時に,その内容との関連で筆者独自の「取引コスト」に関する考察を行い,また「ネットワーク論集」という概念を示す.
著者
野中 郁次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.79-90, 1987 (Released:2022-07-14)

戦略論に対する合理的アプローチとプロセス・アプローチの両者を総合する分析視角として,生成するプロセスそのものとしての戦略という概念が提唱される.戦略を,情報の絶えざる創造から創発するプロセスと捉えた上で,情報概念を再検討し,形式情報と意味情報の特性が明らかにされる.さらに組織と集団,個人の各レベルに固有の情報創造の方法論について考察し,レベルを超えた動的協力現象を促進する要因を分析する.これらの議論を通じて最後に,直観を戦略に取り込む方法を考察する.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.68-78, 1987 (Released:2022-07-14)

本稿では,コンティンジェンシー理論以降の組織研究を検討し,そこにみられる新しいパラダイムの崩芽を探る.新しいパラダイムとして,組織認識論が提唱される.組織認識論は,コンティンジェンシー理論の基礎であった情報処理モデルにおける情報の概念にかわって,「意味」を鍵概念として展開される理論であり,集合的な認識過程という観点から組織現象を捉えようとするものである.本稿では,組織認識論の基本的なパースペクティブが明らかにされる.
著者
富永 健一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.45-55, 1987 (Released:2022-07-14)

組織学会25年の歴史はバーナード理論への熱烈な関心からスタートし,それがしだいに組織-環境の枠組によってとって代わられてきたと要約し得る.しかし,組織の社会学理論にとっての中心問題の一つが,メゾ水準での組織の機能的要件問題と,ミクロ水準での個人の欲求充足問題との分離にある事情は25年前も現在も変わりがない.これについてのバーナードの二元論的な理論化の意義を再検討する.
著者
河合 忠彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.54-66, 1987 (Released:2022-07-14)

日本経済の戦後の好パフォーマンスの重要な一因は「企業間での競争と協調の適切なミックス」が実現したことだが,そのようなミックスの実現に際し,財界組織,ことに経団連が重要な役割を果した.また,それが可能となったのは,企業,業界・財界組織,政府等を主要な構成主体とする日本の産業システムが,エリート的,各主体の高い自律性,および構造的安定性,等のユニークな属性を有していたためであった.
著者
小林 敏男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.64-72, 1987 (Released:2022-07-14)

リーダーシップを含めて諸現象を認識する主観=自我は超越的には存在せず,間主体的な相互作用が取り交わされていくうちに,事後的に形成されるのであり,こうした認識主観の形成原理を調べることによってこそ,リーダーシップ論の認識論的現実妥当性が確保されるのみならず,そもそも主体間での関係の一形態であるリーダーシップのエイドスを見出すことができるのである.極言すれば,リーダーシップがなければ主体における主観=自我は明確には形成されないのである.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.34-42, 1987 (Released:2022-07-14)

成熟を脱却し新たな成長可能性を模索するなかで,日本企業は新しい型の戦略を展開している.それは国際ネットワーク戦略であり,それとともにネットワーク型の組織も現われている.本稿では日本企業のグローバリゼーションにかかわるこのような最近の現象を概観し,その問題点を検討する.
著者
金井 一賴
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.32-42, 1987 (Released:2022-07-14)

既存の組織知識の転換や新しい組織知識の創造は,企業家的活動なしには実現できない.本稿では,中小組織における企業家のリーダーシップに焦点をあわせ,それを組織学習の視点から,具体的な事例をもとに分析していくことにする.そして,この分析に基づいて,中小組織の企業家的リーダーシップの主体や方法およびそれが組織学習にどのような影響を与えているかということを明らかにしたい.
著者
大畑 裕嗣
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.10-18, 1987 (Released:2022-07-14)

現代の社会運動のリーダーシップは,復活しつつある群集心理学によっても,またマルクス主義組織論によっても十全に把握することはできない.新たな運動リーダーシップ論の礎石を,従来,利益集団論で主として用いられてきた政治的企業家モデルに求め,集合行為の生成に際して政治的企業家がとる戦略的リーダーシップ・モデルの素描を行う.同時に,このモデルの運動論としての射程の限界にもふれる.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.43-54, 1988 (Released:2022-07-14)

組織変革の理論には,戦略行動をうみだす組織の主体的側面が組み込まれなければならない.本稿ではまず組織の主体的側面を組織文化の次元においてとらえ,それと戦略行動とのダイナミックな関係を記述する枠組みとして,デザイン・パースペクティブが提唱される.次いでこの枠組みを用いて組織変化の理論モデルを構築,簡単な事例による説明を経て,組織変革における主体的―連続的側面の重要性を指摘する.