著者
上野 恭裕
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.21-32, 2004-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
29

現在の日本企業は事業集中を進めているが,関連型多角化も行われている.組織構造は事業部制組織が一般的だが,職能別組織も依然として重要な地位を占めている.また事業部制組織も欧米のものとは異なり,分権化の程度は低く,日本独特の混合型も多く存在する.組織は戦略に従うという命題は支持されるが,組織構造には多様性も存在する.日本企業は環境の変化に対応して組織改革を行っており,その道筋は多様である.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.4-10, 2004-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
4

多角化企業の業績が思わしくないといわれているが,電機産業の多角化戦略の業績を比較すると,コア事業を持っている多角化企業は比較的高い経営成果をあげていることがわかる.本論文では,コア事業が高い経営成果に結びつく理由として,企業内部の多様な人々の心理的エネルギーを動員することができる,事業間の複雑な相互依存関係からシナジーを実現することができる,コア事業にはトップの関与があるため事業部長では行うことのできない種類の意思決定を事業レベルで行うことができる.これらの分析をもとに,コア事業をもつ多角化戦略を実行するための方策について考える.

1 0 0 0 OA 戦略の審級

著者
石井 淳蔵
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.17-25, 2003-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
21

本稿の目的は,市場戦略(マーケティング)の審級(妥当な判断の帰属点)に関する基礎的な検討を行なうことである.市場が戦略の審級としての地位を失う現代にあって,それを理解することの理論的意義は高い.環境に審級を求める議論と行為者の準拠枠に審級を求める議論を検討しつつ,絶対的な審級の困難,戦略固有の環境における開かれた合理性の概念の意義,そしてそこから導き出される理論的課題の在処を指摘する.
著者
原田 勉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.49-61, 2003-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
40

本稿では,ITに関するアウトソーシング,内部調達,並存型,という代替的な利用形態の可変費用削減効果を測定した.その結果,製造業では内部調達,アウトソーシング,非製造業ではアウトソーシングにコスト削減効果が確認された.しかし,並存型については費用削減効果は確認されなかった.したがって,組織能力の点では,短期的にはスタック・イン・ザ・ミドルの現象が確認されたのである.
著者
長瀬 勝彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.44-55, 2003-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
29

実験的研究方略は,因果関係が記述できるなど,他の多くの手法にはない長所を持っている.組織論が反証可能性を確保した通常の科学として発展を遂げていくためには,欠かすことのできない研究方略である.しかし一方で,厳密な科学的手続きを重視するあまり,現場の意思決定の生き生きとした部分の分析は自重してきた観がある.今後は柔軟に新しい領域に展開していくことによって,組織研究全体の発展に資することが期待される.
著者
亀田 達也 塚崎 崇史
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.23-30, 2003-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
17

本稿は広義の進化心理学が組織研究に対してもち得るインプリケーションを論じる.Toda(1961)の「キノコ喰いロボット」を題材に,適応的視点が人間の心理・行動のデザインを探る上で有効であることを示す.次に,人間にとっての中心的な適応問題が,集団生活における正負の相互依存構造から生まれることを論じる.本稿では,社会規範の維持を中心に,組織・集団におけるマイクロ-マクロ・ダイナミクスの特徴を適応の観点から素描する.
著者
加護野 忠男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.4-10, 2003-06-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
16

環境決定論と主体的選択論は,組織研究の対照的な分析視角であるだけでなく,組織における行為者の対照的な認識スタイルでもある.よい選択を行うためには,二つの認識スタイルのバランスが必要である.しかし,組織の成熟化とともに,環境決定論的認識スタイルが強まりがちである.このバランスを回復するには,組織の戦略駆動力を高める必要がある.この戦略駆動力を高める方法について考察する.
著者
藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.11-22, 2003-06-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

もの造りの経営学(技術・生産管理論)の立場から,「設計情報」概念を用いたオペレーション・ベースの戦略論の可能性を考察する.まず,もの造り現場の競争力は,もの造りの組織能力とアーキテクチャ(製品・工程の設計思想)の間の相性によって影響されると見る.そして,得意・不得意アーキテクチャの見極めに基づく「両面戦略」を説明する.次に,もの造り現場の競争力を最終利益に結び付ける戦略の枠組を考える.その基本は,「アーキテクチャの位置取り戦略」である.
著者
島田 昌和
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.46-55, 2003-06-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
19

新たなビジネスを創出するには,さまざまなタイプの経営者に対して事業に適合した枠組みを準備し,適切に資金を供給することが不可欠である.資本主義草創期の渋沢栄一は,株式会社による公益モデル,合資会社によるハイリスク・ハイリターンモデル,合名会社と匿名組合による個人ビジネスモデルを提供した.同時に株式市場の持つ信用創造機能をフルに活用して様々なタイプの経営者への資金供給を自らが率先して担った.
著者
山崎 敬一 葛岡 英明 山崎 晶子 池谷 のぞみ
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.32-45, 2003-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
15

この論文では,リモートコラボレーション空間において,遠隔地にいる作業者がどのようにして時間と身体的空間を組織化しているかを,エスノメソドロジー的相互行為分析の手法で明らかにする.さらにそうしたリモートコラボレーション空間での共同作業に対するエスノメソドロジー的・社会学的分析に基づき,社会学者と工学者からなる筆者らの共同研究グループがデザインした,いくつかのリモートコラボレーションシステムについて紹介したい.
著者
原田 勉
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.64-90, 2002-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
26

本稿の目的は,日本の製造業におけるNC工作機械の技術普及を分析対象とし,その規定要因を実証的に明らかにすることにある.本稿の基本的な主張は,NC化以前の旧技術における学習,知識の蓄積が新技術の採用を促進する要因であったというものである.換言すると,代替的な新・旧技術間には,技術能力の点でスピルオーバー効果が存在しており,それが技術普及に決定的に重要な役割を果たしていたのである.
著者
三品 和広
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.8-19, 2002-06-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
18

日本型企業モデルの特長は,下部階層における技能形成のあり方と,それに基づく高い組織的実務能力にある.その裏返しとして,現状では事業経営責任者のキャリア形成と職務環境が戦略の形成と遂行に適した形になっておらず,日本企業は戦略不全に陥りやすい構図がある.ただしこの構図には論理的必然性はなく,日本型企業モデルを発展させて問題を解決することは可能である.
著者
長岡 貞男
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.35-48, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
22

近年,APS(新写真システム),MPEG(動画圧縮技術), DVDなど技術標準の創出と普及のためのパテント・プールに よる企業間協力が行われるようになってきている.本稿は,1.どのような条件において技術標準の革新のために企業間競争ではなく企業間協力が必要になるのか,2.アウトサイダー企業の登場など企業間協力が円滑に進まないことがある原因は何か,その解決策は何か,3.パテント・プールが技術標準の更なる革新への企業間競争を阻害しないためにはどのような条件が必要なのかを,理論と実際のパテント・プールの事例によりながら分析する.
著者
永田 晃也 佐々木 達也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.15-25, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
10

本稿では,知的財産マネジメントにおける戦略パフォーマンスの決定要因を定量的に分析し,戦略論の基本的なイシューとの関連を慮した検討を行う.近年の経営戦略論の論壇では,戦略的ポジショニングの重要性を強調する見解とResource-based viewが対峙している.しかし,本稿の分析結果は,い ずれの戦略アプローチが合理的であるのかは一般的に言えるものではなく,事業戦略が依拠する技術の成熟度によって異なることを示唆している.
著者
井桁 貞一
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.57-65, 2002-03-20 (Released:2022-08-03)

日米政府によるプロパテント政策およびソフトウェア特許についての保護の変遷を通じて,特許の重要性を概説し,現在の電機メーカーの特許戦略を富士通株式会社の例を通して,説明している.特許戦略として,有力特許の取得,権利の活用,他社特許侵害の回避に対する戦略および最近出現したビジネスモデル特許への対応などについて詳述している.
著者
宮崎 正也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.114-127, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
35

コミュニケーション研究の分野において新聞,雑誌,書籍,ラジオ/テレビ放送などのメディア内容を分析することで社会的文脈や行為主体の意図を推論するための手法として,「内容分析」が開発されてきた.本稿では,この手法をインクジェット・プリンタ業界の事例研究に応用する.業界全体での製品コンセプトの変遷と各企業の競争上の注目点を新製品ニュース・リリースの分析によって描く.その結果から各社の競争戦略を読み解く.
著者
輕部 大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.95-113, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
35

本稿は,HPC産業において,日米企業が顕著に異なる性能向上アプローチを選択し,それぞれ独自の性能進化を実現したという事実を明らかにする.その上で,個別企業の資源プロフィールと競争環境とが時間展開的に相互規定関係にあるという点に注目することによって,発見事実の説明を試みる.新規参入を契機とした競争環境の変化によって,個別企業レベルでは既存企業が既存の資源蓄積をベースにした新たな技術的可能性の探索行動とその実現に注力しなくなるため,産業レベルでは既存の資源蓄積に基づく性能進化の可能性が閉ざされることが起きうる,というのが最終的な主張である.
著者
竹村 正明
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.4-15, 2001-12-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
32

製品開発研究は過去10年間で膨大な努力が投入されてきた.本稿では,この領域におけるパラダイムが確立したことがその理由であるとえている.このパラダイムは設計学を基礎理論にし,生産管理論,組織論,マーケティング論などから広く知見を取り込み融合科学的に発達してきた.本稿では,そのパラダイムがどのようなものかを察するために,設計学の基礎を概観し,今後それのもつある種の課題について検討する.大量の努力投入で成果がほとんどで尽くしたかに思えるが,依然として理論的な研究が必要であることが指摘されるだろう.
著者
藤本 昌代
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.96-107, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

本研究は,学会など外部の職業集団に準拠し,所属集団へのコミットメントが低く,コスモポリタン的とされるプロフェッショナルを,多元的な組織・集団の中の個人という視点から分析するものである.本研究のアプローチは,産業組織の構造,専門分野,所属組織での自己の位置づけなど,それぞれの組織・集団での自己評価が,移動可能性の逓減,認知的不協和を引き起こし,組織準拠性に影響を与えるというものである.これらの現象を多峰性関数のローカル・マキシマムという概念を用いて説明を行う.
著者
島田 達巳
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.32-43, 2001-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
28

情報システム(IS)のアウトソーシングは,「請負的」から「戦略的」の度合いを高めつつある.本稿では,社会ISの形成に向けて,民間企業と自治体との比較の視点から,ISのアウトソーシングの背景は何か,民間企業と自治体におけるアウトソーシングの違いは何か,そしてインターネット時代におけるアウトソーシングがどのような方向性を持ちどのような課題を抱えているのかについて述べる.