著者
本庄 裕司
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.4-18, 2015-09-20 (Released:2016-06-29)
参考文献数
34

本稿では,日本のスタートアップ企業を対象に,資本構成に注目した分析を試みる.スタートアップ期の重要な外部金融であるデットファイナンスに焦点をあて,資本構成の経年的な変化を示す.検証結果から,スタートアップ企業は,設立後にエクイティファイナンスよりもデットファイナンスを相対的に増加させることを明らかにした.あわせて,簡単な動学パネルデータモデルを用いて,スタートアップ企業のデットファイナンスの決定要因を分析する.推定結果から,キャッシュフローの小さい企業,成長率の高い企業,固定資産比率の高い企業ほど,デットファイナンスを増加させており,また,資本構成は過去の資本構成に依存することを示した.
著者
梅崎 修 島貫 智行 佐藤 博樹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.2-15, 2020-09-20 (Released:2020-10-08)
参考文献数
46

本稿は,公的な表彰・認定の取得を第三者機関による雇用主ブランディングと位置づけて,表彰・認定の取得数が採用時の人材確保と従業員の定着に与える効果を検討した.中堅・中小企業を対象とした質問票調査データを用いて統計的に分析した結果,表彰・認定の取得数が採用者の質的確保と従業員の離職率低下に貢献することが示された.大企業に比べて人材確保に劣る中小企業は第三者機関の雇用主ブランディングを活用することが有効になる.
著者
原 寛和 平坂 透 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.4-19, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
34

米国意匠特許データを用いたネットワーク分析により,デザイン重視のコンシューマーエレクトロニクス企業2社の意匠創作ネットワークを比較した.その結果,デザイン戦略の違いで組織設計が異なる可能性が示唆された.製品群で一貫したデザインを目指す場合,組織の規模を管理してネットワーク密度を高めることで,デザイン言語など暗黙知の共有と実践が容易になる.他方,開発生産性あるいは製品の個性を重視する場合,ネットワーク密度を低く抑え,プロジェクトの独立性を維持する組織設計が有効となる.
著者
永井 裕久 キャロライン F. ベントン 椿 広計 木野 泰伸
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.25-35, 2016

<p> 変化の激しいグローバル環境において,潜在能力の高いグローバル・リーダーの探索,育成,効果測定は,各国研究者にとって重要かつ緊急な研究課題である.本稿では,海外文献研究を通して,Ⅰ期:グローバル・リーダーに求められる行動特性や個人的特徴(1990~),Ⅱ期:グローバル・リーダーの育成方法(2005~),Ⅲ期:グローバル・リーダーシップの測定尺度効果検証(2009年~)3期の研究フェーズを概観し,今後の研究課題の展望を導き出す.</p>
著者
松原 日出人
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.52-63, 2014-03-20 (Released:2014-06-30)
参考文献数
30

本論文は,ミカン産業における三ヶ日地域の革新を題材に,地域の革新実現を,地域内の諸主体が織り成す複雑な経路から分析するものである.我が国のミカン産地が1970年前後から克服しがたいジレンマの前に衰退を強いられる中,三ヶ日はそれを克服する革新を実現した.三ヶ日の革新プロセスを詳細に把握するならば,そこには当初の個々の意図を離れて集合的に一連の革新が遂行される,いわば集合的な企業家活動が浮かび上がる.
著者
柴田 友厚
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.53-63, 2012-12-20 (Released:2013-10-01)
参考文献数
29
被引用文献数
3

新しい技術の台頭によって,既存技術か新技術かという技術選択に直面した多くの企業は,合理的理由によって通常,両方の技術を一定期間開発するという並行開発を行う.だが,成功する並行開発の仕組みに関する知見は十分に蓄積されていない.本稿ではまず,先行研究の知見を整理し,それらを踏まえたうえで,並行開発の枠組みを概念的に導出する.次に,松下電器産業の並行開発事例を分析し,その妥当性を例証する.
著者
内田 大輔
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.55-68, 2016-12-20 (Released:2017-08-28)
参考文献数
51

本稿は,株主による企業への関与が,株主総会への参加という手段を通じて,どのように生じているかを検討した.1984年から2014年における日本企業の株主総会を事例に実証分析を行った結果,(1)企業パフォーマンスの低下は,株主総会への出席者数には影響を与えない一方,株主総会での質問者数を増加させること,(2)関与の手段の利用可能性の向上は,株主総会の出席者数および質問者数の両方を増加させることが明らかにされた.
著者
宮田 憲一 渡邉 大介
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.32-48, 2013

本稿の目的は,PC 製品における製品アーキテクチャの変化を検討し,その背後にある企業の組織能力について明らかにすることである.本稿は,1970年代から90年代の米国デスクトップPCを対象にして,アップル(アップル系PC)とマイクロソフト(インテル系PC)のアーキテクチャの違いを観察することにより,従来強調されてきたような組み合わせ能力の巧みさだけではなく,擦り合わせ能力も適切に活用することがPC産業における競争力につながることを明らかにする.
著者
高井 文子
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.46-57, 2017-09-20 (Released:2018-01-15)
参考文献数
21

本研究は,日本のオンライン証券業界を対象として,黎明期の新市場の中で戦略グループが誕生し支配的となっていくプロセスと,その中で模倣が果たす役割について,理論的かつ実証的に検討することを目的としている.これまで密度依存理論において議論されてきた競争効果と正当性効果との力関係の変化を計測していくことで,黎明期の企業間競争で模倣されることのプラスの効果とマイナスの効果の二面性を実証的に示した.
著者
古川 久敬
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.47-58, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
43

有力とされてきた知見や議論に,発想を縛りつけられていることはないのか? 組織が抱えているパラドックスの観点から,組織,集団,個人を見つめ直してみると,重要でありながら,看過されている組織行動のダイナミックスと原理が洞察できる.本稿では,モチベーション,リーダーシップと集団活動,そして創造性とイノベーションの3つの領域に絞り,パラドックスを意識化することで,従前の見解や論理をとらえ直し,再考を迫っている新たな研究も随時引用しながら,組織行動研究の新たな展開可能性について論じる.
著者
宮島 健
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.4-17, 2018-12-20 (Released:2019-02-12)
参考文献数
79

本稿では,人々が「残業を肯定的に捉える他者の信念」を実際よりも過大に推測している可能性(i.e., 多元的無知の生起),そして多元的無知が行動に及ぼす影響における心理的安全の調整効果を検証した.その結果,残業に対する他者の肯定的態度を人々が実際よりも過大視していたことと,多元的無知状態の個人は,職場の心理的安全風土を高く知覚していると意見表明が促進されることが示された.
著者
多田 浩司
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.58-70, 2012-09-20 (Released:2013-10-01)
参考文献数
40

本稿は「感情知能」と「上司と部下の関係性」を質問紙調査のデータを用いて統計的に検討したものである.大手製造業で実施した研修の結果から,感情知能とは生得的な特性ではなく,後天的に向上させることが可能な能力であり,かつ感情知能の向上は上司と部下の相互作用を促進させる効果があることが示された.さらに,知覚した感情情報を処理するにあたっては,そのプロセスについても重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
前川 美絵
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.66-80, 2015-09-20 (Released:2016-06-29)
参考文献数
46

本稿は,製品を構成するサブシステムの製品アーキテクチャに注目し,複数プロジェクト間の組織調整プロセスを分析している.デジタル複合機開発の事例分析を通じて,プロジェクト間で共通化されるサブシステムが擦り合わせ型とモジュラー型の場合で,適合的な調整プロセスが異なることを明らかにした.さらに,両タイプの製品アーキテクチャの特性を持つサブシステムが併存する場合に有効なマネジメント例を示した.
著者
高橋 伸夫 大川 洋史 稲水 伸行 秋池 篤
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.4-14, 2013

一つの組織を対象にして時系列的かつ定期的に調査を行うことで横断的調査では見えなかった事実が分かってくる.本稿では,日本企業X社について,大規模な組織再編を挟んで10年近くにわたり,9回,定期的かつ継続的に全数調査してきたデータを取り上げる.その結果,見通し指数と満足比率の間には直接的因果関係があるが,自己決定度と満足比率の間の関係は疑似相関である可能性が高いことが分かった.
著者
一瀬 敏弘
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.57-72, 2017

<p> 本稿では,警察庁が自治体警察と分業することで生じる情報の非対称性問題をインセンティブの観点から考察した.分析の結果,警察官僚が自治体警察の最高幹部に就任することで,自治体警察内の人事権を掌握し,人事情報の非対称性問題を緩和する.その一方で,警察庁は,自治体警察で早く昇進した者に人事業務の責任を負わせ,その代わりに将来の昇進可能性をインセンティブにすることを通じて,間接的に自治体警察を管理統制するシステムを構築していた.</p>
著者
高橋 泰城
出版者
The Academic Association for Organizational Science
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.23-34, 2014-06-20 (Released:2014-10-03)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本稿では,ニューロエコノミックス(神経経済学)の現在の新しい展開に関して,物理的入力刺激と知覚反応の大きさとの関連を調べる「心理物理学」の方法や知見を応用することが重要であることを解説し,経営やマーケティングの観点からも概観的に解説を行う.また,筆者の行っている研究を,そのような観点から紹介し,経営判断などにも関係するタイムマネジメント,ワークライフバランスやビジネスエシックスの研究への応用の方向性についても論じる.
著者
一瀬 敏弘
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.57-72, 2017-03-20 (Released:2017-09-11)
参考文献数
47

本稿では,警察庁が自治体警察と分業することで生じる情報の非対称性問題をインセンティブの観点から考察した.分析の結果,警察官僚が自治体警察の最高幹部に就任することで,自治体警察内の人事権を掌握し,人事情報の非対称性問題を緩和する.その一方で,警察庁は,自治体警察で早く昇進した者に人事業務の責任を負わせ,その代わりに将来の昇進可能性をインセンティブにすることを通じて,間接的に自治体警察を管理統制するシステムを構築していた.
著者
鳥海 不二夫
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.47-59, 2015

インターネットの発達とともにWEB上には様々な情報が蓄積され,一般ユーザが自ら情報を発信するconsumer generated media(CGM)の発展はめざましい.ブログやソーシャルメディアの利用が一般ユーザで広まり,本稿ではTwitterのビッグデータとはどのようなものなのか,その具体的な内容について説明し,それらを応用した研究・実用事例を紹介する.最後に,実際にデータを使ってみたい方のために,データの収集方法について紹介する.