著者
松山 直樹
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.177-206, 2013-02-21

This is a Japanese translation of 'Was the Austrian School a "Psychological" School in the realm of Economics in Carl Menger's view?' was published by Gilles Campagnolo in the volume he edited: Carl Menger: Neu erörtert unter Einbeziehung nachgelassener Texte / Discussed on the Basis of New Findings (Frankfurt/Main: Peter Lang, 2008)
著者
横本 真千子
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.123-138, 2013-02-21

インドネシアにおいて1980年代の経済成長期に女性の労働力化率が上昇したことを受けて, 富裕層世帯のみならず都市中間層の勤労者世帯とくに夫婦共働き世帯において, 家事, 育児, 介護を担う女性家事使用人への需要が増加している。こうした都市の女性家事使用人の需要を満たしているのが, 農村出身の女性である。農村出身の女性家事使用人が都市で働くための入職ルートとして仲介業者が存在する。実際に農村において家事使用人の調達をおこなうのは募集人である。若年で低学歴および縁故をもたない農村出身女性は正規の労働市場に参入することが困難であるため, 同郷出身の仲介業者と募集人による家事使用人の入職ルートによって都市への出稼ぎの機会を得る。 小論では, バンドンの女性家事使用人仲介業者とその募集人および50人の女性家事使用人を対象におこなったアンケート調査をもとに, 学歴や縁故を持たない農村出身の女性家事使用人の都市への入職ルート(仲介業者と募集人), 女性家事使用人の就業形態, 学歴および職歴構成, 女性家事使用人の出身農村世帯の家族・家計構成および出身地域の産業構造, さらにライフサイクルについて考察をおこなった。
著者
篠崎 彰彦
出版者
九州大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:0022975X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-25, 2005-08-27

本稿では、生産性の歴史と国際比較をもとに、人口減少下の日本経済を展望するための論点整理と実態把握を試みた。一般には、人口の減少を所与とすれば、経済成長は鈍化すると考えられるが、生産性の上昇率次第で「経済の縮小」は避けられる。また、高齢化を所与とすれば、生産性の停滞はやむをえないとみられがちだが、さまざまな創意工夫(全要素生産性)と新技術の導入(技術装備率)によって、それも克服可能である。2030年までの日本を射程した場合、人口減少と少子・高齢化は避けられそうにないが、基礎力を充分に発揮すれば、経済縮小と生産性停滞の悲観シナリオは回避できる。問題は、人口が増加し、平均寿命が短く、生産性上昇率がはるかに高かった高度成長期に形成された強固な再分配の構造にある。時代の変化に対応して分配の構造をうまく再設計しなければ、富を創造する力が削がれて悲観シナリオが現実のものとなり得る。
著者
櫻田 譲
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.1-16, 2023-12-07
著者
西村 巧
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.54-67, 1995-05
著者
青木 芳将 金盛 直茂 土居 潤子
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.77-90, 2020-01-17

天然資源の発見は,国内の所得格差にどのような影響を及ぼすのであろうか。本稿では,天然資源の発見が,民族間の資源獲得競争(レントシーキング活動)を引き起こすことにより,短期的には,民族間の所得格差を縮小させるが,長期的にはそれを拡大させることを示した。これは,民族が大きく2つに大別される国において天然資源が多いほど所得格差が広がるという Fum and Hodler (2010) の実証結果によって支持されるものである。
著者
篠藤 涼子 グラシエラ
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.77-90, 2010-03-11

本稿では, 財務諸表監査の制度化過程の1つのモデルとして, 日本におけるその導入過程について整理した。 日本に財務諸表監査が導入されたのは第2次世界大戦後のことである。従来から財務諸表監査の必要性は認識されていたが, 自発的な実施には至らなかった。それが, 戦後経済の変化に伴い, 法的強制力のもと導入された。財務諸表監査の経験を有していない日本では, 財務諸表監査を段階的に導入する過程が採用された。財務諸表監査制度を運用するために, 第1に監査の担い手である専門家としての監査人の育成, 第2に被監査側である企業の受け入れ体制の整備, そして第3にこれらが拠って立つ監査基準の確立が同時に行われた。このような導入過程である会計制度監査の仕組みは, 当時の日本において, 財務諸表監査を行う状況が整っていなかったことを考慮して策定されたものである。そのような日本独自の段階的な導入過程が, 他国にとって財務諸表監査制度を導入する際の検討材料となりうることを考察した。
著者
谷口 勇仁
出版者
北海道大学大学院経済学研究院
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.5-13, 2017-06-13

企業事故・不祥事の発生原因については,倫理制度の不備や安全文化の欠如など多くの要因が指摘されている。その中で,実務家を中心にしばしば指摘される要因として形骸化があげられる。そこで,本稿は,企業事故・不祥事の発生原因の1つである「規則の形骸化」を引き起こす要因を探索することを目的とする。具体的には,①規則の形骸化に影響を与える要因は何か,②その要因はどのように規則の形骸化に影響を与えるのかという問いを設定し,規則の形骸化の発生プロセスに,不正のトライアングル理論(Fraud Triangle Theory)を適用し,分析を試みる。まず,規則の形骸化の内容と特徴を検討し,規則の形骸化を①規則の形式的な遵守と②規則の暗黙的な不遵守に分類した。次に,不正のトライアングル理論(FTT)を規則の形骸化の発生プロセスに適用し,検討を行なった。検討の結果,(1)認識された圧力は,規則の形骸化の動機として位置づけられること,(2)認識された機会は,形式的な遵守と暗黙的な不遵守の選択要因として位置づけられること,(3)合理化は規則の形骸化の決定要因であること,を明らかにした。
著者
内藤 隆夫
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.95-106, 2013-02-21

本稿では明治期の佐渡鉱山が製錬部門において導入した, 混汞製錬・搗鉱製錬・沈澱製錬・青化製錬という, 金銀の製錬を主とする4つの新技術を取り上げた。そして, 「貧鉱の大量処理」「コスト意識」「装置工業化」という視点をもとに, 上記の4つの技術の内容, 導入と展開の過程, 意義と限界について考察した。以上を通じて明治期佐渡鉱山の製錬部門における技術導入の特質を解明し, それとともに, 明治後半期が近代佐渡鉱山史において非常に重要な時期だったのではないかという仮説を導き出した。
著者
佐藤 茂行
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.26-38, 1991-03
著者
大矢 繁夫
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.1-9, 2008-12-11

商業銀行は、その本質的機能である信用創造によって、資産と負債の両側を同時に膨張させる。そのとき、やがて劣化が必然であるような資産も抱え込む。このことは避けられない。資産劣化は事後に判明するからである。劣化が必然的な資産とは、バブル的に価格上昇した資産やそれを担保にした貸出し等である。銀行の信用創造は、どこまで厳格な資産審査をできるかにもよるが、上のことを避けられない。信用創造は、銀行資産の「架空」化をもたらさざるをえない、という認識である。以上の認識を前提に、本論文では、まずドイツの銀行の信用創造能力の高まりを追った。銀行の信用創造能力を高めるのは、現金取引の縮減であり、それをもたらすキャッシュレス・ペイメントの進展である。まずこの状況を追った。次いで、ドイツの銀行は高められた信用創造能力によって、「架空」資産をいかに抱え込んだかを把握しようとした。銀行は「架空」資産の抱え込みに慎重でありうるとしても、それを完全には回避しえない。そうであるならば、金融当局は、そのことをどのように認識し、対応しようとするのか、最後にこの問題を検討した。
著者
吉見 宏
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.146-162, 1996-03
著者
宮本 謙介
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-25, 1990-06
著者
樋渡 雅人
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.3-26, 2010-09-10

本稿は,日本の伝統的な村落社会を特徴付ける「自治村落」概念との比較の視座から,ウズベキスタンにおける地縁共同体「マハッラ」の特徴を考察したものる「自治村落」の場合と同様に,ウズベキスタンのマハッラ,とくに自治的機構としての「マハッラ委員会」の性格は,上部権力の統治や介入の歴史的経緯によって強く規定されてきた。一方で,現在のマハッラ委員会の「公権力」的な権限や諸機能は,法的枠組みや上部権力の権威に依拠する側面はあるものの,同時に,そこに居住する諸個人の活動によって日々再生産されているという側面がある。本稿では,こうした村落内部の組織化の過程にも着目しつつ,現在のマハッラの性格を検討する。前半において,「自治村落論」の骨子や,マハッラの歴史的,政治的背景を概観する。後半において,アンディジャン州のマハッラの具体事例を扱い,マハッラの組織的構造を検討する。とくに,住民間の共同関係(血縁,講,その他の社会的紐帯)に注目し,マハッラ委員会の存立基盤としての共同関係の役割を,主体間の重層的な関係性に基づくネットワーク・モデルの構造パラメータの推計を通して把握する。
著者
宮下 弘美
出版者
北海道大学經濟學部
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.140-161, 1994-03
著者
谷口 勇仁
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.179-187, 2009-12-10
被引用文献数
1

2000年6月に発生した雪印乳業株式会社の集団食中毒事件は社会的に大きな注目を浴び,製品の安全性に関するエポックメイキングな事件として位置づけられている。また,学術的にも,雪印乳業集団食中毒事件は様々な観点から検討がなされている。特に,食中毒事件の発生原因について,直接の原因や組織的原因等,様々な要因が検討されている。 本稿では,雪印乳業集団食中毒事件の発生原因について考察された研究を検討し,その発生原因として指摘されている様々な要因について整理・検討を行うことを目的とする。まず,雪印乳業集団食中毒事件について概観し,雪印乳業集団食中毒事件に関する公式見解とメディアの見解を検討する。その後,雪印乳業集団食中毒事件の発生原因について考察している先行研究を整理し,(1)競争環境の激化,(2)事故経験の忘却,(3)利益優先主義の企業風土,(4)安全意識の欠落という要因を抽出した。
著者
工藤 剛治
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.13-33, 2009-12-10

日本は第2次大戦に敗北し,占領軍によって社会経済上の大きな変革を迫られた。この「GHQ革命」は農地解放や財閥解体を断行し,労働組合の合法化を実現したが,そのことによって,戦後日本の階級構造は戦前日本,戦時期日本あるいはGHQが想定したアメリカ型の階級構造とは著しく異なるものになっていった。大企業の場合,経済パージによって中堅・若手の経営幹部が経営トップの位置につき,また株式の相互持合なども活用しつつ,資本と経営の分離を加速していった。その結果,他国に例を見ないほど,資本所有者からの経営者の自立が促された。これら新経営者にとって長年勤めてきた企業こそ,その権力母胎であったから,彼らは企業を共同体とみなすイデオロギーを発達させた。その結果,対労働の関係では,彼らは階級的労働組合を嫌い,企業内労働組合=第 2組合を育成する政策を採用した。こうして戦後日本の大企業経営者は,資本と労働をともにコントロールする「経営者革命」の達成に成功した。このユニークな階級構造を反映した経営スタイルこそ「日本的経営」と呼ばれるものであった。
著者
工藤 剛治
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.13-33, 2009-12-10

日本は第2次大戦に敗北し,占領軍によって社会経済上の大きな変革を迫られた。この「GHQ革命」は農地解放や財閥解体を断行し,労働組合の合法化を実現したが,そのことによって,戦後日本の階級構造は戦前日本,戦時期日本あるいはGHQが想定したアメリカ型の階級構造とは著しく異なるものになっていった。大企業の場合,経済パージによって中堅・若手の経営幹部が経営トップの位置につき,また株式の相互持合なども活用しつつ,資本と経営の分離を加速していった。その結果,他国に例を見ないほど,資本所有者からの経営者の自立が促された。これら新経営者にとって長年勤めてきた企業こそ,その権力母胎であったから,彼らは企業を共同体とみなすイデオロギーを発達させた。その結果,対労働の関係では,彼らは階級的労働組合を嫌い,企業内労働組合=第 2組合を育成する政策を採用した。こうして戦後日本の大企業経営者は,資本と労働をともにコントロールする「経営者革命」の達成に成功した。このユニークな階級構造を反映した経営スタイルこそ「日本的経営」と呼ばれるものであった。