著者
敷地 孝法 滝脇 弘嗣 村尾 和俊 藤田 真弓 荒瀬 誠治 浦野 芳夫 石上 剛史
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.13, pp.1202-1204, 2003-12-01

66歳,女性.左手の有痛性の発赤・腫脹に対してノイロトロピン(R)が奏効し,臨床経過より反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)と診断した.約1か月前に左手に強い疼痛と腫脹が出現し,近医で抗生剤の投与を受け一時は軽快したがすぐ再燃.当科受診時,左手全体に熱感・発赤を伴う腫脹あり.WBC7,100/μl,CRP0.12mg/dl.組織細菌培養は陰性.病理組織像も蜂窩織炎の所見なし.入院のうえ,再び抗生剤を点滴したが効果なし.ノイロトロピン(R)を4T/日から内服したところ1週間で効果が現れ,3週間で疼痛,腫脹とも消失した.RSDは四肢に生じる難治性の慢性疼痛症候群の一つで,初期には発赤・腫脹を伴うため蜂窩織炎との鑑別が難しい.早期の診断と治療が予後を大きく左右するため,まずはRSDを疑うことが重要と思われた.
著者
内田 敦子 土居 敏明 難波 倫子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.503-505, 2007-06-01

要約 31歳,女性.ネフローゼ症候群の治療中に,円形の落屑性局面が体幹を中心に次々に出現するようになった.病理組織学的に不全角化を伴わない角質増生,顆粒層の減少,有棘層の菲薄化がみられ,臨床症状と併せて連圏状粃糠疹と診断した.ネフローゼ症候群の改善と尿素軟膏の塗布により,皮疹は約2か月後には軽快した.本疾患は,悪性腫瘍や結核に合併することが多く,消耗性疾患のデルマドロームの一型と考えられている.
著者
一ノ宮 愛 西本 勝太郎 田中 正和
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.265-270, 2018-03-01

要約 23歳,女性,看護師.初診の3年前より右足底疣贅に対しヨクイニンを内服したが効果なく,左足底にも拡大し2015年7月当科を紹介受診した.右母趾腹〜母趾球部,第1足趾間周囲,左母趾球部,踵,アキレス腱部に角化性局面を認め,右足底は癒合しモザイク疣贅の状態であった.削り処置と液体窒素凍結療法を行ったが足底はほとんど変化なく,35日後より夜間のみの活性型ビタミンD3密封外用療法を毎日患者自身で施行してもらった.外用16日後,明らかに軽快し,68日後・初診100日後治癒した.疣贅治療には絶対的に有効なものはなく,病型,重症度,年齢,部位,治療歴,治療へのコンプライアンス等を考慮して治療法を選択する必要がある.活性型ビタミンD3密封外用療法は治療に難渋することの多い足底疣贅に対して有効性を期待できる治療法の1つであると考える.
著者
山本 向三 飯塚 万利子 赤坂 江美子 馬渕 智生 梅澤 慶紀 太田 幸則 松山 孝 小澤 明 藤井 光子 川端 寛樹 渡邉 治雄 古屋 由美子 黒木 俊郎 谷 重和
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1161-1164, 2005-11-01

要約 62歳,女性.神奈川県宮ヶ瀬の山林にハイキング後,右膝に吸血したヒルに気付いた.その14日後より吸血部に紅斑と,同部の疼痛が出現し,38℃台の発熱も認め,さらに2日後には,吸血部を中心に環状に紅斑が拡大した.また,全身に発疹が出現し,頭痛,関節痛,全身倦怠感などの全身症状も伴っていた.セフェム系抗生剤点滴を行い,これらの症状は改善した.なお,Lyme病抗体価は陰性であった.皮膚症状としての環状紅斑,また全身症状を呈したヒル咬傷は稀と思われた.
著者
西川 武二 稲田 めぐみ 高 理佳 赤尾 信明
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.14-17, 2000-01-01

46歳,女性.初診の2週間前から躯幹に軽度の痒みと違和感を伴う爬行性線状皮疹が出現した.好酸球数,IgE値は正常.8種類の寄生虫抗原(宮崎肺吸虫,ウエステルマン肺吸虫,アニサキス1型幼虫,ブタ蛔虫,イヌ糸状虫,イヌ蛔虫,ネコ蛔虫,マンソン裂頭条虫プレロセルコイド)を用いたELISAはいずれも陰性,ドロレス顎口虫抗原を用いたELISA,寒天ゲル内二重免疫拡散法も陰性であった.線状皮疹の終点とその遠方を含めて外科的に切除後,皮疹と自覚症状は消失した.脂肪組織内に虫体断片があり,腸管断面の形態より有棘顎口虫の幼虫と同定した.摂食歴とあわせ,自験例はウナギの肝吸いから感染した可能性が高いと考えられた.今後creeping-diseaseの感染源としてウナギの生食あるいは肝吸いも念頭におく必要があると思われる.
著者
松岡 晃弘 矢島 健司 渡部 秀憲 川上 民裕 相馬 良直
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.98-101, 2008-04-10

要約 シクロスポリン内用液含嗽療法は,扁平苔癬や天疱瘡による難治性口腔内病変に対して,その有効性が報告されている.筆者らは,78歳の女性の天疱瘡患者の,ステロイド内服治療に抵抗する口腔内病変に対し,ネオーラル®内用液含嗽療法を行い,その良好な治療効果を確認した.含嗽時に口腔内灼熱感と疼痛がみられたが,粘膜症状の改善とともに軽減した.その他の副作用はなく,シクロスポリンの血中濃度も測定感度以下であった.シクロスポリン内用液は天疱瘡に対する保険適用がなく,含嗽という投与形態も認められていないため,天疱瘡に対するシクロスポリン内用液含嗽療法は安易に行ってよい治療法ではない.しかし,適切に使用すればほとんど副作用はなく,高い効果が期待できることから,ステロイド増量や免疫抑制薬内服が困難な患者に対しては,十分なインフォームド・コンセントを得たうえで,試みてもよい治療法であると思われた.
著者
後藤 一美 丸山 友裕
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.1131-1133, 2003-11-01

掌蹠・腋窩多汗症患者10例に対して,入院の上,水道水イオントフォレーシスを行った.治療期間は約2週間,治療時間は各10~20分,1日1~3回連日施行した.効果判定は患者の自己評価に基づいて行った.手掌では,10例中著効6例,有効2例,やや有効2例,足底では,7例中著効1例,有効4例,やや有効2例,腋窩では,3例中著効2例,やや有効1例であった.また,各部位の全対象患者において無効例は認められず,本療法の有用性が示唆された.
著者
大沼 すみ 竹川 清 岡島 光也 川口 とし子 大沢 純子 北村 和子 池澤 善郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.597-601, 1997-07-01

過去4年間にラノリン製剤による接触皮膚炎を23例経験した.男性6例,女性17例.平均年齢は35.6歳であった.基礎疾患はアトピー性皮膚炎が最も多く,18例,78%を占めた.基礎疾患の罹病期間は平均10.8年と長くなっていた.原因薬剤はアズノール軟膏が最も多く15例,次いでアンダーム軟膏が10例であった.1995年の当科におけるラノリン,ラノリンアルコールのパッチテスト陽性率は4.5%であった.基礎疾患の約8割を占めたアトピー性皮膚炎では,総IgEが4桁の症例が最も多く,罹病期間も平均13.3年と長くなっていた.また,顔面の皮疹を伴う症例が大半を占め,原因薬剤の使用部位も顔面が最も多くなっていた.ラノリン製剤は種々の医薬外用剤,化粧品に含まれているが,重症,難治性で顔面に皮疹があるアトピー性皮膚炎の症例では,ラノリン製剤の接触皮膚炎を疑って,パッチテストを行うことが望ましいと思われた.
著者
帖佐 宣昭 江良 幸三
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.132-134, 2008-04-10

要約 皮膚真菌症の診断において,苛性カリ(KOH)直接鏡検検査は重要であり,菌の検出を容易にするのに従来からパーカーブルーブラックインク(Parker-super-Quink permanent-blue-black-ink:Parker BB)を加え汎用されていた(パーカーブルーブラックインク・KOH法:Parker BB・KOH法).しかし,1995年までにつくられた製品だけが使用可能で,現在市販されているParker BBでは染色できず利用できない.当科では現在市販されているパーカーブラックインク(Parker-Quink black-ink)をKOH液に加えて使用し(パーカーブラックインク・KOH法:Parker B・KOH法),癜風,カンジダ症などをはじめ皮膚真菌症において菌要素がきれいに青染されることを確認している.筆者らが行っているParker B・KOH法は,従来のParker BB・KOH法と比較しても遜色なく,菌要素がきれいに青染され,実地診療上,真菌の直接鏡検検査としてきわめて有用である.
著者
鹿毛 勇太 磯田 祐士 大川 智子 渡邉 裕子 金岡 美和 相原 道子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.31-35, 2017-01-01

要約 70歳,男性.右上顎洞悪性黒色腫術後に全身の紅斑が出現した.皮疹出現より4日目に発熱と皮疹が急速に増悪し,Stevens-Johnson症候群と診断した.被疑薬はすべて中止し,ベタメタゾン8mg/日の点滴を開始し,翌日よりステロイドパルス療法を施行したが病勢が進行し,表皮剝離が進行したため,中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)と診断した.集中治療室に転棟し,全身処置を行いながら血漿交換療法,大量免疫グロブリン静注療法を併用した.最大表皮剝離面積は80%に及んだが,16日目より皮疹の改善がみられ,32日目には完全に上皮化し,後遺症を残さず治癒した.TENの急速進行期では,各種の免疫調整効果を組み合わせた治療が有効であると考えた.
著者
北村 清隆 熊谷 武夫 西部 武嗣 小西 喜朗 石崎 宏 金原 武司
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.519-522, 1967-04-01

K-4249-O軟膏は,K-4249(科研化学株式会社開発)を主剤とした軟膏である(処方別記)。K-4249は下記の組成をもつた黄色油状物質で,かなり強い抗真菌作用(星芒状白癬菌に対する最小発育阻止濃度は5μg/ml) IC≡C・(CH2)8COO(記号省略) C17H21O2I Phenyl−11—iodo−10—undecynoate 処方 K-4249………0.5% 水溶性基剤………99.5%をもつといわれる1)。われわれ2)はさきに,本物質を主成分としたチンキ剤による白癬の治療成績を報告したが,今回はK-4249-O軟膏による成績を述べる。
著者
葉山 惟大
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.132-137, 2018-04-10

summary化膿性汗腺炎は慢性・炎症性・再発性・消耗性の皮膚毛包性疾患であり,患者のquality of life(QoL)を著しく障害する.本邦では男性優位,家族歴が少ない,重症患者が多いなど海外とは異なる背景がある.病態生理は毛包を中心とした自然免疫の活性化であり感染症ではない.近年γ-secretaseの変異が自然免疫の活性化の原因であることがわかり,家族性化膿性汗腺炎患者を中心に変異が報告されている.治療は海外のガイドラインを参考に行うが,適応外の治療も多い.まず患部の外科的切除を最初に検討する.切除にて改善しない,または手術ができない場合はクリンダマイシン外用またはテトラサイクリン系抗菌薬内服,続いてリファンピシン+クリンダマイシン内服が推奨されている.上記の方法で効果がない場合はアダリムマブの投与が推奨されている.エビデンスレベルが高く,患者のQoL維持にも有用であるが,本邦では適応外であり,今後の適応拡大が望まれる.
著者
澤田 俊一 八木沼 健利 上出 良一
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.677-681, 1990-06-01

ピロキシカムによる光線過敏症の発症機序を検索するために,本症患者8名について臨床的特徴ならびにピロキシカムの光パッチテストの結果をまとめ,さらにチメロサールとその関連物質のパッチテストを行った.ピロキシカムの光パッチテストまたは内服照射試験を行った7例は,全例陽性反応を示した.パッチテストでは施行した7例全例がチメロサールならびにその抗原決定基の一つであるチオサリチル酸に強陽性を示したが,塩化第2水銀およびUVA照射ピロキシカムは陰性であった.これらのことよりピロキシカム光線過敏症の発症には,チメロサールとくにチオサリチル酸との交差感作が重要な役割を果たしていることが示唆された.
著者
佐々木 りか子
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.158-160, 2009-04-10

要約 2007年7~9月に秋田県の某小学校において,水泳授業に際して30名の児童に耐水性サンスクリーン剤を使用させ,その後の水質調査を実施した.文部科学省のプール水質基準に規定されている測定項目に加えて,今回の試験ではプール水中の亜鉛濃度も測定を行った.亜鉛の水道水への排出基準は2007年12月に強化され,2mg/lと定められているが,それと照らし合わせても,プール授業時においては明らかに基準を下回っていた.そのほかの測定項目は遊離残留塩素の値を除き,プール授業期間中すべてにおいて基準値を逸脱することはなかった.
著者
原藤 玲 畑 康樹
出版者
医学書院
雑誌
臨床皮膚科 (ISSN:00214973)
巻号頁・発行日
vol.57, no.13, pp.1160-1162, 2003-12
被引用文献数
2