著者
清田 勝 井上 伸一 山田 雅彦
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では子供達が自動車とすれ違ったり追い越されたりするときに、どの程度危険を感じるかを行動学的および生理学的に評価する手法の開発を試みた。その結果、自動車とすれ違う歩行者の危険回避行動調査と心拍実験から、30km/hの制限速度は歩行者にとって安全ではなく、20km/h程度に抑制する必要があることが明らかになった。この結果を踏まえて、通過交通の削減と走行速度の抑制を目的とした二つの安全対策を検討した。一つは対象地区(佐賀市日新・新栄地区)のほとんどの道路に20km/h速度規制を掛けるとともに、速度抑制デバイスの一種である高さ8cmのハンプを設置する対策である。二つ目は、対象地区への4箇所の流入部に通学時間帯(7:00-8:30)に限って指定方向外進行禁止(進入規制)を掛ける対策である。前者は主に車の走行速度を低減させるための対策であり、後者は通過交通を排除するための対策である。これらの安全対策がどの程度対象地区の交通環境の改善に有効であるかを検証するために社会実験を実施した。その結果、高さ8cmのハンプは車の走行速度を6.5〜20km/h減速させる効果があることが分った。特に、高速の車を排除するのに有効である。しかしながら、通過交通の排除にはほとんど機能しなかった。また、指定方向外進行禁止が掛かった流入部では流入交通量が激減し、対象道路の交通環境は改善されたが、他の道路では迂回した自動車の増加によってかえって環境が悪化する事態を招いた。指定方向外進行禁止は部分的には通過交通の進入を抑えることが可能であるが、経路を変更して進入して来る車を防止することはできないことが明らかになった。児童はもちろんのこと、地区住民や保護者もハンプの継続を強く要望していたにもかかわらず、騒音や振動の被害に悩まされている沿道住民の強い反対で22基のハンプのうち14基が撤去された。騒音や振動の問題を解決しない限り、本格実施に結びつけるのは難しい。騒音・振動が発生しにくいハンプの開発や狭さくなどの他の速度抑制デバイスとの組み合わせを検討する必要がある。
著者
鶴島 博和 櫻木 晋一 亀谷 学 菊池 雄太 城戸 照子 西村 道也 新井 由紀夫 徳橋 曜 安木 新一郎 図師 宣忠 阿部 俊大 西岡 健司 名城 邦夫 山田 雅彦 向井 伸哉
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1. 2018年5月20日日本西洋史学会(広島大学)でDr David Roffeを招聘してDomesday Moneyersと題する研究報告、5月24日熊本大学においてThe Domesday Text Projectという講義を行った。2. 9月2日から8日までは、熊本大学と同志社大学においてThe International and symposium workshop on Money and its Circulation in the Pre-Modern Western Eurasian World in 2018を開催した。報告者は地中海世界のイスラーム貨幣に関してはスペインの大学からProf. F. M.atima Escudero, Prof. Alberto Canto, Carolina Domenech Belda 、Prof. W. Schultz、と科研メンバーの亀谷学が、世界のキリスト教世界に関してはイギリスからDr William Day , Dr Adrian Popescuが、スペインからはProf. D.Carvajal de laと Vega Dr Albert Estrada-Riusが、そして科研メンバーの阿部俊大が行った。議論は、多岐にわたり、とくに少額銀貨の流通に関して有意義な知見をえた。スペイン貨幣史研究の指導的研究者である Prof. Alberto Cantoからはこれまで経験したシンポジウムの中で最良のものの一つであるという評価を得ている。これらの報告内容に関しては報告書(2029 for 2018)に収録する予定。3.熊本地震で出土した益城町出土の古銭を地元の協力を得て分析し報告書を出版した。研究を地域に貢献することができた。4.2019年1月23日から2月10日まで鶴島がイタリアでProf. Andrea Saccocci, Prof. Monica Baldassariと研究打ち合わせを行い本年度のシンポジムに関する意見交換を行った。オックスフォード大学でZomiaに関する研究会に招待されて貨幣史から見たイングランドの無統治地域についての報告を行った。3月28日は今年度まとめの研究集会を行い、29日にドイツとバルト海の交易と貨幣についてProf. Michael Northと研究打ち合わせを行った。
著者
服部 良久 青谷 秀紀 朝治 啓三 小林 功 小山 啓子 櫻井 康人 渋谷 聡 図師 宣忠 高田 京比子 田中 俊之 轟木 広太郎 中村 敦子 中堀 博司 西岡 健司 根津 由喜夫 藤井 真生 皆川 卓 山田 雅彦 山辺 規子 渡邊 伸 高田 良太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

23人の研究分担者が国内外の研究協力者と共に、中・近世ヨーロッパのほぼ全域にわたり、帝国、王国、領邦、都市と都市国家、地方(農村)共同体、教会組織における、紛争と紛争解決を重要な局面とするコミュニケーションのプロセスを、そうした領域・組織・政治体の統合・秩序と不可分の、あるいは相互関係にある事象として比較しつつ明らかにした。ここで扱ったコミュニケーションとは、紛争当事者の和解交渉から、君主宮廷や都市空間における儀礼的、象徴的な行為による合意形成やアイデンティティ形成など、様々なメディアを用いたインタラクティヴな行為を包括している。
著者
吉村 豊雄 三澤 純 稲葉 継陽 足立 啓二 山田 雅彦 松本 寿三郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の中心をなす日本史研究班は、16・17年度に引き続いて、熊本大学が収蔵する日本最大の前近代組織体文書たる永青文書所蔵の細川家文書(細川家の大名家文書)のなかで、藩制の基幹文書となっている「覚帳」「町在」の系統解析に全力をあげつつ、前近代日本社会・日本行政の到達形態について実態的な成果を出すことに努めた。その結果、「覚帳」の系統的解析を通して驚くべき成果を得た。すなわち、本研究で明らかになってきたのは、日本近世の領主制が農村社会の自律的運営能力の立脚する方向で、次第に農村社会からの上申事案・上申文書の処理を業務とする割合を強め、ついには農村社会からの上申文書を中央行政機構における稟議制の起案書として、地方行政に関わる政策形成を行うに至るという、従来、想像もされてこなかった19世紀、幕末の行政段階である。熊本藩では、18世紀以降、こうした傾向を強め、中央行政機構では、こうした状況に対応した行政処理・文書処理のシステムを整備し、19世紀段階には農村社会からの上申文書を起案書とし、中央行政機構の稟議制に基づく地方行政を展開している。本研究において主対象とした熊本藩の中央官庁帳簿たる「覚帳」は、こうした歴史的推移をたどる。同時に、中央行政機構の稟議にかかった上伸事案は、農村社会で無数に生成される要望・嘆願の類いのごく一部であり、その多くは中央行政機構に上申されることなく、農村社会の段階で処理・解決されている。18世紀後半以降の地方行政は、農村社会の政策提案能力に依存しつつ、領主支配の根幹に関わる事案について上申させ、これを稟議処理し、執行することで成り立っていたと言える。
著者
山田 雅彦
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.71, pp.61-72, 1995-05-10 (Released:2009-09-04)
参考文献数
23

This paper tries to find an answer to the question : What is the 'transformation' of 'imposed relevancies' into 'intrinsic relevancies' in A. Schutz's theory? The results of the present author's investigation are as follows.Imposed relevancies in Schutz's theory refer to those things objectified at the moment when routine activities are interrupted. Socially imposed relevancies in particular emerge at the moment when routinized cooperative activities including systems of relevancies of the actor himself/herself and of others are interrupted. In contrast, intrinsic relevancies signify those things objectified in the process of voluntary action.The transformation of imposed relevancies into intrinsic relevancies accrues when the actor deals with the interruption of routine activities voluntarily. In the process of transformation imposed relevancies come to be subsumed under the actor's 'Wissenvorrat (stock of knowledge at hand) ' which regulates voluntary actions. Moreover, they activate as well as shake 'Wissenvorrat.' Thus, in this process, one cannot distinguish intrinsic relevancies from imposed ones, self from others. Furthermore, the same process of activating and shaking 'Wissenvorrat' is comprised of the possible leaps of the systems of relevancies into new dimensions. Such leaps signify learning new schemata for the understanding of new situations.
著者
岡崎 敦 丹下 栄 山田 雅彦 花田 洋一郎 大宅 明美 森 貴子 城戸 照子 徳橋 曜 足立 孝 岩波 敦子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、西欧中世文書史料を対象として、近年の西欧中世史料学・史料論研究の動向を整理・分析し、重要な論点を提示・検討することを目的とした。この際、西欧の主要地域や学界を広く視野におさめるとともに、比較史的観点を重視した。以上の目的を遂行するため、ときにゲスト研究者を招聘しながら、定期的にテーマを特定した研究会・シンポジウムを開催した。研究の成果は、個別論文や学会報告として公表するとともに、毎年度年次成果報告書を刊行して公開した。
著者
近藤 高貴 山田 雅彦 草野 恭文 酒井 健司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.177-179, 2000-06-30
被引用文献数
4

カワシンジュガイの天然宿主としては, これまでヤマメ, アマゴ, ヒメマスとニジマスの4種が知られている。これらの魚種は全てサケ属に属し, これまでイワナ属の魚種がカワシンジュガイの宿主になることは報告されていなかった。北海道富良野市内を流れる布礼別川で1997年7月7日に採集したアメマスとカワマスの鰓に, カワシンジュガイの幼生が多数寄生していることを見いだした。この幼生の殻長は0.22∿0.37 mmで, 放出時の幼生の大きさ(殻長約0.07 mm)に比べるとかなり成長していた。このことから, イワナ属に属するこの2種がカワシンジュガイ幼生の宿主となっていると考えられた。