- 著者
-
前中 久行
- 出版者
- 日本雑草学会
- 雑誌
- 雑草研究 (ISSN:0372798X)
- 巻号頁・発行日
- vol.46, no.1, pp.48-55, 2001-03-30 (Released:2009-12-17)
- 参考文献数
- 6
- 被引用文献数
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ある植物が, その植物固有の性質として雑草性をもっているとしても, 人間活動を妨害していなければ現実の雑草ではない。自然環境の構成要素として, 人間が植物に求めている役割には, 植物が存在することで生じる機能, 景観・緑環境の形成要素, 文化財や生活のアメニティ要素, 生物的自然要素がある。農耕地では雑草である植物が, 市街地においては, このような働きを果たすこともある。代表的な場面が, 地面が植物で被われることが, 第一義的に意味をもつ, 芝生地やのり面である。現実に大阪府下の公園緑地の芝生地には, スズメノカタビラ, シマスズメノヒエ, シロツメクサなどが優占する。踏みつけ強度のやや低いと思われる草地では, 出現する種類数が増加し, ニワゼキショウ, カタバミ, セイヨウタンポポなどが出現するようになるなど, 利用の実態に応じた芝生ができあがっており, 多様なレクリエーション活動に役だっている。造成後時間をへたのり面で, 出現頻度が比較的高いものは, 当初の緑化草種ではなく, ススキ, セイタカアワダチソウ, チガヤ, メリケンカルカヤなど, 後から侵入した植物であるが, これらも, 土砂流出防止や裸地の視覚的遮蔽などの効果をもっている。セイタカアワダチソウを, 6月から9月まで時期をかえて刈り取った場合, 成長シーズンの終わりの地下部の現存量は, 地下部への蓄積が開始される8月に刈り取ったときに最も小さくなった。6月刈の場合, 開花時期は無刈り取りとほぼ同じであった。7月刈はややおくれて11月上旬に開花し, 草丈は約60cmであった。6月刈や7月刈では, 花序, 草丈ともに小型化したために, 通常の見苦しさがなく観賞にも耐える状況であった。